ごゆっくりお楽しみください
「イスラ!?」
「イスラさん!」
「チッ 遅ぇよ」
イスラが降りた時ギャレオは驚きレシィは喜びビジュは舌打ちで済ました。
「ゴメン遅くなっちゃった」
「おまえ、体の方は大丈夫なのか?」
イスラの軽い笑みにギャレオが驚き指を指す。正直ギャレオはイスラはまだ目を覚まさないだろうなとそう考えていたのだ。
命は助けたがその後はどう転ぶかは未知数だったのだ。
だから今ここに『イスラ』のままいることに驚いていたのだ。
「平気。寧ろ体が軽くて仕方がないんだ。今なら何でもできそうって感じ?」
「実際に周りの黒いの吹き飛ばしましたね。ここまで召喚術が得意だったんですか」
「そんな事は無いはずなんだけどね」
レシィの疑問に調子よく答えるイスラ。その笑みはどこまでも柔らかく不思議とレックスと重なってみえるほどだ。
その表情、そして動きにビジュはイスラへの警戒を解いた。元々そこまで敵視していなかったというのもあるが。
「そんで?まさか無策で来たって訳じゃないだろうな?」
「勿論。でもちょっと時間が欲しいな」
胸に手を当て確かに頷いたイスラはそう言って魔力を練り出し始めた。
その空気はギャレオもビジュもそして機会は少ないがレシィも知っている空気だった。
『貴様は……ッ!何故まだ動ける!貴様はもう終わったのだ!未来には必要ないのだ!』
何をしようとしているのかディエルゴも分かったのだろう。また黒い球体を呼び始める。先ほどまでいなかったその数はさらに数を増してきた。
「仕方ねぇ、ちっと無理をするか」
「ですね」
イスラが何をしようとしているのか分かったビジュとレシィは敵の迎撃へと移った。
元々ギャレオの時間稼ぎをしようとしていたのだ。やるべき事は分かっていた。
「イスラ、お前それは。…平気なのか?」
「ギャレオは自分のやるべき事をやりなよ。それとも僕が出番を全部かっさらってもいいのかい?」
「――フッ 頼んだぞ」
皮肉気に挑発する様に笑えばギャレオは呆れたように納得してストラを溜め始めた。
イスラのそれに合わせて胸の中にある。身体の中で眠り続けるソレに呼びかける。
(
呼びかけたのは己の中にある封印の剣。今までイスラが適格者となってから振るい続けた紅の暴君。それを呼び出そうとしていたのだ。
レックス達との戦いでボロボロになりそれでも酷使し結果、刃こぼれにより酷い状態になっていた魔剣。
イスラが精神的に折れたわけでもなければレックス達によって折れたわけでもなく、ましてやオルドレイクがしたのは病魔の呪いを解いただけ。
ギャレオのストラによって完全に復活した今イスラは魔剣を呼び出せれる様にまで回復していたのだ。
「今まで好き勝手に振るい続けてゴメン。今更都合の良いように振るおうとしてゴメン。謝ってもきりがないというのは知っているけど」
魔力が収束していく。イスラには確信があった、確かに魔剣を使えば遺跡であるディエルゴによって操られてしまう危険性があったが。
レックスに倒されたあの時に完全に接続が切れたのだと何故か理解していた。
より正確には
『今更!都合の良い事を宣うなぁぁああ!!』
「ごもっともだよ、本当に、ね」
ディエルゴの正論を素直に受け止めて、魔剣を呼び出すことに集中する。
使い手だけしかわからないそれはディエルゴの焦りを見れば核心に至るという物。
魔剣を呼び出すために集中する。今までの思い出、この島の事を、自分を助けようとしてくれる人たちを。
何よりも守りたい人を。思い浮かべる。
(頼む、この島を…僕の大事な人達を…皆を護る為に…来てくれ!)
その思いにこたえる様にイスラの髪は白髪となっていき……
その手に橙色の剣が形作り始めたのだ。
「…?んん!?」
「…?これは
近くにいたギャレオがギョッとした顔で二度見している事に気が付かずにイスラは己が召喚している魔剣を見る。
意匠は自分が良く振るっていた紅の暴君とよく似ているが色が明確に違った。
紅の暴君がその名のとおり真紅の色合いならば今自分が呼び出しているこれは橙色に近い色だ。朱色とでもいうのだろうか。
「――そうか。そうなんだね」
その魔剣が姿を現した時イスラは納得した。イスラの体内から翠色の淡い光が現れ破損した場所へ付着しその部分を修復していくのだ。
その翠の光は魔剣そのものを橙色へと変色させていく。そうしてボロボロだったはずの魔剣は復元されていく。
まるでイスラの新しい生誕を祝うかのように。
(これってギャレオのストラだよね…?はは、ホント此処までくると圧巻だよ)
何とも不思議でしかしどこか納得するその光景。何せ先ほどからの身体能力の上昇及び魔力や召喚術の明らかなテコ入れの原因は思い当たることが一つかないからだ。
『貴様さえいなければぁああ!!』
「え?俺のせい?」
未だに驚愕のギャレオをチラリと見て、無意識に口元を指でなぞり、イスラは知らない筈のその魔剣の名を高らかに謳いだす。
「来てくれ!不滅の炎・フォイアルディアよ!」
呼び出されたのは橙の魔剣。本来の世界ではイスラが手にすることは無かった魔剣。
その魔剣は今ここにイスラの手の元へ確かに現れた。
「凄いな…」
無事に呼び出されたそれを見て思わず感嘆の息を吐くイスラ。漏れ出す魔力が心地よく活力を与え続けているのだ。
それは周りにも例外なく。温かな風を運び生命力と魔力を分け与えていた。
「何だその魔剣は!?こっちの傷が塞がっていくんだが!?」
「魔力も回復してきます!でもその魔剣からギャレオさんの匂いがするんですけど関係あるんですか!?」
「うおっ!急に悍ましくなったぞその魔剣!」
体が快復して魔力がみなぎったのだろう。好き勝手言い始めるビジュとレシィに苦笑するイスラ。
確かにその通りだとそう思ったからだ。だって原因は間違いなくギャレオが死にかけていた自分ににストラで生命力を与えたからに決まってて。
そのせいでイスラの体どころか魔剣さえも治ってしまったのだから。
尤も当の本人は器用にもストラを溜めつつまだ驚愕から抜けていないのが笑いを誘うのだが。
「さて、それじゃ行こう。『
名を呟き、どうしてその名前を銘々したのか不思議そうにするも、全ては後にすることにして。
イスラは全力で魔剣を横薙ぎに振るった。
『ァァアアアアア!!!』
その雑にして確かな一撃はディエルゴの身体に明確な損傷与えた。何をしても傷つかず無敵を誇っていたその躰に明確な亀裂が入ったのだ。
「へっ お坊ちゃんが一丁前になりやがって」
そしてその隙を見逃すビジュではない。体力の回復に魔力の補充、これによりビジュはタケシーを召喚した。
「タケシィィイ!!力を寄越せぇぇ!!」
「ゲレレェェエン!!!」
悪戯雷精霊はその咆哮に合わせるかのようにビジュへと憑依。溢れ出る雷を武器へとして体に纏わせる。
『響命覚醒』
紫電の刃を手に持つビジュはありったけの魔力を放出しつつディエルゴへと居合を放つ。
紫電の斬撃がディエルゴの亀裂へと入り込み稲妻が暴れ出した。
『ヌゥゥウアアアア!!!』
「無駄だと分かんねぇのか!!」
その威力に、そして危機感によりディエルゴはやたら滅多らと『嘆きの牢獄』による魔力球体を放つがそれを切り裂くことで消滅させる。
『お、のれ!イレ…ギュラァアア!!』
イレギュラーな抜剣覚醒。イレギュラーな響命覚醒。ディエルゴは正しく目の前の存在を脅威だと認識した。
全てを手引きしたのはこのギャレオという男だと。この存在が世界を歪ませあり得ぬ未来へと進ませているのだと。
故に全力で排除すべきと判断した。
『ァァアア―――???』
『存在否定』この場にいる全てを纏めて終わらせるとそうした筈なのに、何故か身体が止まったのだ。
無論そのための魔力さえも完全に停止してしまった。
『???』
世界である自分が何も出来ずに只止まるという異常事態。何故と問えずにいるディエルゴに小さな声が届いた。
「約束したんです。世界すら止めて見せるって」
小さなその声は、ディエルゴの知らない誰かの声で本来いないはずの誰かで。ギャレオが呼び出したイレギュラーで。
やはりどこまでもギャレオが世界を破綻させていたのだ。
「待たせたなディエルゴ」
そして今、そのギャレオが翠に光る拳を振り絞っていた。
イスラが来てからの怒涛の展開。それを見逃す俺ではない。
イスラの抜剣覚醒。なぜ彼が不滅の炎を呼び出したのかは謎であるが。
それによってディエルゴの絶対的防御は無くなった。
ビジュの響命覚醒。これによりディエルゴの又深手で覆う事となった。
そして奴の攻撃も全てを切り裂いた。
レシィの伝説の審眼。存在否定による衝撃波を防いだレシィの援護。
これでもうディエルゴは只のサンドバッグとなった。
ここまで御膳立てをされたからにはかねてより研鑽し続けた俺の究極奥義がついにお披露目になるという事だ。
『イレギュラァアア!!貴様の!貴様のせいで未来は!』
「もういい。俺の願いの為に砕け散るがいい!!」
全身全霊の右腕を振りかぶる。荒ぶるストラが右腕を伝わり拳へ。
さぁてこの時の為の必殺技を謡いますか!!
豪・砕・拳
『どうして貴様が……何故……正しき未来は…消えて……』
目の前にいるのは砕け散って消滅していくディエルゴだ。俺の究極奥義を喰らって根元から崩壊したディエルゴは恨み辛みを吐き不思議そうに俺を見て消えて行った。
結局アイツは何だったのか、その答えを語ることもなく消えて行ったディエルゴ。
何となく俺の感ではあるがアイツは遺跡の核識の間にいた本物のディエルゴとは違う気がする。
…本当にこれから訪れる
ああいうのはメイメイさんぐらいじゃないと結局わからずじまいだ。
「ぬぅ……流石に…もう動けん」
体中のストラを全て使い果たし、疲労により砂浜で倒れてしまった。本当に疲労困憊なのだ。
皆俺の事を化け物扱いしいてるけど俺だって人間なのよ?
「ギャレオさーん。そこにいるんですか~」
「レシィ…お前目は平気なのか」
目を両手で抑えながらフラフラと近づいてきたのはレシィだ。伝説の審眼でディエルゴを無理矢理止めたので目への負担が出てしまったのだろうか。
「大丈夫ですよー。ちょっと疲れちゃっただけで…横になりますね」
心配だったがレシィの言い方はとても軽いのでそこまでの損傷はないのだろう。そこら辺は絶対に嘘は言わない様にレシィとは約束しているので。
兎も角そう言うやいなや俺の腕を枕にしてコロンと転がったレシィ。俗に言う腕枕である。少し気恥しいのだが……まぁいいか。
「あーマジでだりぃ。もうやってらんねぇ」
「ビジュ…煙が出てるぞ」
体中から煙を出しながら寄ってきたのはビジュだ。響命覚醒を使った代償なのか口から煙が出ている。
内臓とか大丈夫だろうか?場合によってはクノンに長期入院をされそうな気がする。
「駄目だ。寝る」
「うぐっ!」
そう言うな否や砂浜に寝転がり俺の腹に足を載せてきた。勢いがあったので呻き声をあげるがビジュは一つも気にした様子もない。
俺も結構疲労しているのだが…別に構わんか。無理をしたのはビジュの方なのだから。
「疲れたね…レックス達は無事かな」
「隊長がいるのだ。心配することは何もない」
「そうだね。姉さんがいるのなら、その通りだ」
ほっと安堵の息を吐きながら来たのはイスラだ。抜剣覚醒したのはやはりそれなりに疲れたのか。一番ダメージが無いのに疲労の色が濃い。
だけどその顔は……
「随分と。スッキリとした顔だな」
今までの煽るような皮肉気な顔ではないとても穏やかで明るい顔だった。
恐らくこれが彼の素なのだろうと、そう確信できるほどに
「まぁね。誰かさんせいでね」
なるほどレックスか。確かにレックスがあそこまで説得をしたのならイスラのひねくれた性格も修正されるという物。
…アレ?ひねくれていたのは演技だったっけ?全部が全部演技とは思わないが…?ひねくれていたのも割と本当じゃ…
「これは気が付いてないね」
「素直に言ったらどうですか~」
「レシィ。君って結構口が悪いね」
「誰かさんのせいですね」
「……あ?」
つーかそんな事よりもイスラに聞きたいことがあるのだ。
「そもそもあの魔剣は何だ?どうやってあれを呼び出したのだ」
「知らないよ。僕が知ってる訳ないじゃん」
「銘を呼んだだろ。それで知らんとは言わさんぞ」
そもそもなんで不滅の炎をイスラが呼び出せたんだ?紅の暴君は?分からないことが多すぎるぞ。
「知っているのどっちかというとギャレオだよね。不滅の炎ってどこで知ったのさ」
「いやそれはお前が」
「元から知ってたでしょ。そう言う顔をしていた」
「ぬ!?」
「してたな。そもそもディエルゴの弱点も知ってだろお前」
「ですね。2本の核なんてどこで知ったんですか?」
まさかの俺氏。怒涛の質問攻めにあう。しょうがないじゃんゲームで知ってたなんて言えないしさ!そもそもそんなこと言えない緊急事態だったし!
「知らん知らん。多分軍事機密…そういう事にしておいてくれ」
「えー」
「へいへい」
「しょうがないですねぇ」
それぞれイスラにビジュ、レシィだ。聞かないでくれるのは助かるのでそのまま有耶無耶にしてほしいですよホント。
「……静かだな」
全員疲労により砂浜に身を投げている状況。波の音が実に心地よい。
遠くではカイルの船がボロボロになりながらもこちらに近づいているのが見えた。
「亡霊も球体も全部消えましたからね。…レックスさん達まだでしょうか?」
「直ぐに帰って来るよ。そうしたら諸々話さないとね」
「あー後始末が色々とめんどくせぇな。マジで寝るか」
……カイルの船結構壊れているなぁ。補修をせんといかんな。まぁ島の皆総出でやればすぐに終わるか。
それが終わったらカイルの船に乗ってこの島から出なければいけなくて…軍法会議をして…
そして雲一つない快晴を見て。
(――そうか)
ああ、終わったんだな。ふとそう思った。
「あ、皆がきた」
イスラが億劫そうに言った方向にはディエルゴを封印しにいたレックスたちの姿が見えて。
皆ボロボロだけど誰も欠けておらず無事そうでほっとして。
「ただいま。ギャレオ」
「ああ、お帰りだな。レックス」
そうして島での長い永い戦いは終わったのだ。
…小説版見ていないんですよ。だからまぁハイ。こうなっちゃいました!
不滅の炎。結局何だったんでしょうね。
やりたかったことをやり終えました(エピローグと諸々を除く)
次回は最終話。長いので分割かそれとも一気に投稿か。贅沢な悩みです。