遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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サブタイトルが思いつかない…
どうしてもギャレオと組ませたかったキャラを出します


護衛獣

 

 

 太陽が昇るように明日はやって来る。おはようございます朝です。

 

 早速朝抜けにだが昨日の海賊一家の詳細を部下たちに聞きに行く事にした。疲れがまだ残っていそうだったのでストラをしながらの聞き取り調査になった。

 

『海賊一家の長?金髪でめっちゃイケメンでした!男前です!クソが!』

『金髪のへそ出し女の子可愛かったですよ!ナイフ投げてきました!勿論当たりましたあはは!』

『オカマでした……うっとりするような良い声で奇襲してきました。…何なんですアレ?』

『うーん?何かいたような気がしたんですが…ああ召喚士が居ました。顔?覚えていないです』

『知的美人でした。出来る女、そうギャレオ副隊長が苦手そうな人です。え、召喚獣だったんですか?』

 

 ……我が部下ながら戦闘に対する感想はなかったのかと溜息をつきたい。しかし個人的には中々面白かったので良しとする。

 

『それとビジュさんは平気でしたか?』

『あの人俺達の殿をやってくれたんですよ』

『そのせいで毒キノコの胞子を喰らってました」

『ホント頭が上がりません』

 

 ビジュが負けた理由も分かった。どうやら一緒に探索でた部下達を守っていたらしい。道理でビジュが負けるはずだ。

 

 先生さんに対してだが皆海賊一家と知的美人アルディラに苦戦していて具体的な言葉が出てこなかった。…先生さんは実際にあってからのお楽しみにするさ。

 

 という事で、今日も元気に頑張る……ぞい。

 

「……兵站とは大事な事なんだな」

「悟ったような声を出してなんスか副隊長」

「……美味い飯が食いたい」

「あーあ。誰も言わなかったのに言っちゃ駄目っすよ!」

「すまん」

 

 今日も今日とて軍隊飯(マズい)を食う事になる。勿論不味い飯を食っても気力が回復しないしそれどころか士気も上がらない。つまりみんな言わないだけで

ストレスを溜めこんでいる。

 

 アズリア隊長が何も言わないので皆我慢しているがそれでも限度はある。つまりストレスや疲労がたまってくるのだ自分でも全く知らないうちに。

 

 漂流生活も慣れてくれば問題はないが、俺達の補給線となる飯だけは別だ。どうにかしなければ部隊としての維持が難しくなる。そんなことはさせないが、最悪部下の何名かがジャキーニ一家のように野菜泥棒を犯しかねん。

 

 

 

 

「ふむ、メイトルパか」

 

 という事で召喚をすることにしました。要は護衛獣という名目で家政婦さんを雇おうって話ですね。アズリア隊長には話をしたが苦い顔をされました。そして大きな溜息を一つ

 

『……私が何を言った所で貴様は聞かんだろうな』

 

 と仰られた。非常にお労しい。今までの事を考えても悩ませる事態が大きく心労もまた大きいのだろう。

 

 

 部隊から離れた浜辺、流石に人がいる前で召喚するのは憚られた

 

 メイトルパに繋がる緑のサモナイト石を握り静かに瞑想。

 

『―――聞こえますか?』

 

 ―――あれ?さっきの人ですの?

 

 ―――何か言い忘れたんですか?

 

 ―――ふがふが…ごくんっ!

 

 ―――どうかしましたカ?

 

「人数が減ってる?」

 

 気のせいか女の子二人の声が聞こえなくなってる。 時間がたってしまったからか?しかし他の者の声を聴く限りは以前とそう変わらない時間しかたってない?駄目だ召喚術の事となると良く分からない。

 

『力を貸してください。……家事炊事を手伝ってほしいのです』

 

 ―――???。えっと頑張るですの~

 

 ―――えっとそれならできますけど…

 

 ―――家事炊事ってなぁに?

 

 ―――ム。ちょっと苦手なのデスが…

 

 よく分かって無さそうなのが2名に少し不安そうなのが1名。残る一人は問題なさそうだ。少々不安そうだが。

 もう少し詳しく説明した方が良いのだろうか。

 

『かなりの大仕事でもしかしたら危険があるかもしれません』

 

 ―――うぅ危険そうなのは怖いですの~

 

 ―――戦うのですか?僕役に立てるのかなぁ…

 

 ―――戦いなら大丈夫だよっ!…でも家事炊事って何だろう?

 

 ―――うーん、荒事は……でも必要とナラ

 

 比較的に受け入れられてるが荒事は苦手そうだ。今後の事を考えると多少は自衛能力があった方が良い、もちろん俺が盾になるのである程度は補えるがそれでも、だ。

 

 考える。誰を呼び出すか、どうして呼ぶのか。そして今後の付き合い方を。

 

 召喚獣を呼び出すという事はすなわち―――

 

「下手な考え休むに似たり?…か」

 

 結局利己的な考えでしか呼べないのだ。受け入れよう。

 

『今までのご協力感謝します』

 

 ―――?はいですの~

 

 ―――えっとつまり?

 

 ―――んー?じゃあね?

 

 ―――いいエ、どういたしまシテ

 

 礼は述べた、今まで好意的に接してきてくれた彼ら彼女らに感謝を。どうかこのリィンバウムに呼ばれてしまったときはまともな人に呼ばれるように、なんて。そんな無責任な事を考えながら。

 

 

 緑のサモナイト石を握る。契約の言葉を紡ぎ出す。

 

「古き叡智の術と我が声によって今ここに召喚の門を開かん……」

 

 幻獣界メイトルパ、亜人と幻獣の住まう緑豊かな世界。

 

「我が魔力によって異界より来たれ…」

 

 しかしこの詠唱なんか嫌だな。正直召喚者が優位に立つ技だもん、協力を要請しているんだから普通逆でしょ?

 

「新たなる契約の元……なんか面倒だな」

 

 あ、本音が出てしまった、まぁいいや。このまま行こう

 

「呼びかけに応えてくれるか?」

 

 まるで友人に語り掛けるようだな、緑の光が強まる中少し笑ってしまった。

 

 

「……っ!?」

 

 そうして現れたのは折れた角が特徴的な緑髪の気弱そうな大人しい少年が召喚されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が聞こえた。誠実そうな男性の声だ、これが召喚士と呼ばれる者の声なのかどうかは分からないが、随分と穏やかな声だった。

 

 力を貸してほしいと、そう言われた。力になれるのか心底不安だったがその声には応えたいとは少し思った。

 

 リィンバウムにいる召喚士たちは無理矢理呼び出し力を以て従わせるのだという。その筈だが声の主は違う気がした。

 

 だから

 

『呼びかけに応えてくれるか?』

 

 なんて声に手を伸ばしたのだ。

 

 

 光に吸い込まれる感覚、体が浮いたような気がした次の瞬間別の場所へと呼び出されたと気付いたのは強い嗅いだ事の無い香りがしたからだ。

  

(…大きな水?)

 

 よく利く鼻からはここがメイトルパとは違う場所だと知ることができる。ぎゅっと瞑った目を恐る恐る開けると強い日差しの光が目に入り、水の音が聞こえてきた。

 

 自分が呼び出された場所が何故水の近くなのか首を傾げながら目の前を見た。

 

 そこにはぬらりと聳え立った巨躯の男がこちらを見ていたのだ。

 

「ヒッ!」

 

 圧倒的な威圧感があった。村にいた男たちの誰よりも大きくそして体の厚みがあった。その手はゴツゴツとした岩のような形をしており自分の顔をすっぽりと覆えてしまうほど。腕の筋肉の太さはそこらの木にだって負けていないだろう。

 

 下半身もまた太く逞しい。服の上からでも鍛え上げられているとよく分かる大きさ。太いその足は力が宿っており走りに関しても一瞬で距離を詰めれそうな鍛えかたをしている。

 

「ふむ」

 

 その体に似合った重く低い声。見ればその顔は四角く体と同じようにゴツゴツとした巌のような男の顔だった。

 

「うわわわっ!?」

 

 厳ついその顔に思わず竦み上がる。悲鳴を上げなかったのはほぼ奇跡だった。そうしていると男がゆっくりと近づいてくる。

 

「食べないで…ぶたないで……!」

 

 本能的に後ずさってしまう。威圧感のある男が近づいてきたのだ、体は敏感に反応してしまう。

 

 

 だが男は何もせずゆったりとしゃがみ込んだ。まるで視線を合わせるかのように。

 

「すまない、怖がらせる気はないんだ」

 

「え?」

 

 ゆっくりと喋る声には不思議と恐怖感は無かった。少し困ったような眉尻を下げた厳つい顔があった。穏やかな目だった。

 

「ただ、助けて欲しかっただけなのだが」

 

 ふむと頷き、手にしたサモナイト石を撫でた。それが自分を呼び出した物だと分かった。

 

「説明も無しに急すぎたな。すまなかった」

 

 頭を下げる男を見て、ようやく困っているのは相手の方で自分が怯えすぎてしまったことに理解した。

 

「い、いえ僕も、驚いてしまって…」

 

 震える声でそう絞り出す。動揺は隠せそうにないがそれでも相手が話そうとしているのだ。答えなければとそう思った。

 

「わかった。ではまず深呼吸だ。それで幾分かは落ち着くだろう」

 

 言われたとおりに深呼吸をする。不思議な香りが胸いっぱいに広がる。それを2回、先ほどまでとは違って焦りや恐怖は少なくなった。

 

「落ち着いたか」

 

「…はい」

 

「では自己紹介と行こう。俺の名はギャレオだ」

 

「僕の名前はレシィ。レシィって言います」

 

 目の前の男ギャレオは少し考えた後良い名前だなと厳つい顔を緩ませた。

 

 

 それが気弱な少年レシィの運命を変えた始まりの出会いだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レシィ…レシィ…ね。この子サモンナイト2に出てくる護衛獣じゃん!

 

 いや俺もサモンナイト2はあんまりやってないからもうほとんど覚えていないけどそれぐらいは覚えているよ!

 

 何で時代を越えて召喚されちゃったの?とかもしかしてサモンナイト2主人公護衛獣なしルート?とか色々と一瞬のうちに考えがよぎったけど。

 

 

 うちの食事事情の方がよっぽど最優先なんですよ!と妥協することにした。

 

 すまぬ未だ生まれていないであろうサモンナイト2主人公よ、お前さんは別の属性かあるいはモナティでも召喚しておくれ…。

 

 

「軍隊?の方、なんですか?」

 

「ああ、絶賛遭難中ではあるがな」

 

 自己紹介を済ませた後、事情を説明するためにゆっくりと歩きながら拠点に戻ることにした。一応召喚する前に説明はしたつもりがコミュニケーションを取るためにも

自分達の境遇を説明中なのだ。

 

「軍隊とは言え俺達は腕っぷししか自慢することのない連中でな。どうしてもその、雑事がてんで駄目で…」

 

「あ、あはは…」

 

 愛想笑いしてくるレシィ君は実に可愛らしい。男の子なんだけどなーまぁええやろ!

 

「だからレシィ、お前には皆の食事や雑事などをお願いしたい、頼めるか?」

 

「は、はい。僕戦うのは苦手ですけどそう言った事なら力になれると思います…」

 

 身を縮こませながらも頷いてくるレシィに申し訳なさと有り難さとないまぜになった感情を覚える。うちの軍隊にはいない逸材だ…。

 

「一応名目上は俺の護衛獣となる。とはいえ戦闘に関しては俺に任せておけ。苦手なんだろ?」

 

「その、すみません。僕は」

 

「良いんだ。寧ろ俺の不得意な事を補ってくれる。とても助かる」

 

「……はい」

 

 気持ちしょんぼりとしているレシィにそれ以上何か言うのは逆効果と考えゆったりと歩くのだった。

 

 

 

 

 

「副隊長が連れているのは誰だ?」

「メイトルパ?の子かアレ」

「副隊長がどっからから男の娘を攫ってきた!?」

「なるほど、ようこそ副隊長こちら側へ…」

 

 おっかなびっくり後ろについてくるレシィを拠点へと案内すれば出るわ出るわひそひそ声。そりゃそうだよね男所帯の中で可愛らしい子を連れてくればなんだと思うよね。うちのエースとなる子だぞ敬え馬鹿共。

 

「俺が召喚した子だ。うちの調理担当者になる」

「メイトルパの子が?それにアズリア隊長には?」

「すでに連絡済みだ」

「あーなるほど、いつもの独断ですね」

 

 説明をすれば納得というよりはアズリア隊長への同情の色が見えた。なんでやこれから飯が上手くなるんや別にいい…よね?

 

 という事で連れてきたのは軍の陣地内調理場。レシィが目を開いて驚いている。

 

「うわぁ……」

 

「フッ 凄いだろ」

 

 レシィのうわぁは驚きではなく悲惨さを見てのうわぁです。なにせサバイバルでも何とかして掻き集めたもので貧相な台所事情というありさまだ。

 

 一応メイメイさんのお店で調理用具を揃える予定ではあったが、後回しになってしまっていたのが現状です。

 

「先ほども言ったが、ここをお前に任せたい。必要な物…人材に器具いや全てか。欲しいものがあったら言ってくれ」

 

「は、はい。えっと……」

 

 驚きながらも答えたレシィは辺りを見回しながら調理器具と食材を交互に見始め考え始めた。恐らく今できるもので何ができるのか考えているのだろう。

 

 正直、食えるものであれば何でもいい。そして美味ければなおよし。そんな考えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガツガツガツッ!

 ムシャムシャムシャ!

 ハフハフハフ!

 ゴキュゴキュ!

 

 咀嚼音と食器のなる音、そして必死に口を動かす音。それが今、帝国野営拠点に響いていた。

 

 まごう事無く今迄ひもじい思いをしていた部下達である、一応理性的な部下たちは今や必死に飯を喰らうそれだけの存在になっていた。

 

「うわぁ……」

 

 ドン引きなのは調理師レシィ。作ったのはひとまず量と手間を考えて鍋物にした。具材はメイメイさんの店で貰った物や釣った魚がメインだ、つまり海鮮鍋だろうか?

 

「流石だなレシィ」

 

「ええっと、ここまで食べて頂けるのは嬉しいんですけど今まで何を…」

 

 ドン引きのレシィは一歩引いた位置で俺と一緒に食い漁る部下達を眺めている、近くにいると配膳やお代わりを要求する部下達にこき使われると思っての判断だ。お腹すくと皆頭おかしくなるからね。

 

 ちなみに俺はまだ食っていない。ゆっくりと楽しみたい派なのだ。

 

「……あの食いっぷりで察してくれ」

 

「ア、ハイ」

 

 察してしまったレシィにうむと頷くと改めて向き直る。 

 

「改めてだが、俺たちの食事事情を頼みたいのだが…」

 

「はい、わかりました。その本当に僕が出来るのはこれだけですけど、でも力になれるのなら僕、頑張ります」

 

「うぅむ。本当にありがたい。しかし、メイトルパには家族がいるのだろう?」

 

 そう言えばレシィの家族ってどうなってるんだろう?しまったな…サモンナイト2もやっておくべきだった。でもあれ高難易度で挫折しちゃたしな…。

 

 なんて原作の知識を使おうとしている俺に割かしショックな言葉がレシィの口から出てきた。

 

「家族は…その、いません」

 

「…それは、すまない」

 

「いえ、それに僕は部族では一人前とは認められなかったので、そのこうして皆さんが美味しそうに食べてくれるのが嬉しいなんて」

 

 うんそうだったのか?その角が原因だったか?でもそれに触れるのは少々気が早いと思い触れずにおく。代わりに口一杯に魚をくわえている部下達に檄を入れる

 

「貴様ら!飯を食うのは良いが、作ってくれた者に対する礼ぐらいは言ったらどうなんだ!」

 

「ふごごっ…ごくんっ!申し訳ありません副隊長!」

 

「すんません!美味くてタガを外していました!」

 

 一喝すれば口に入って物を嚥下して謝罪する部下達。でもその手にはまだ椀がしっかりと握られてる。 

 

「しかしあまりにも美味で食う事しか考えれなかった我々の気持ちもどうか汲んでいただきたい!」

「レシィ君、決して我々は君を粗末に扱ったわけではない!感謝している!」

「美味い飯を有難う。俺達は阿保だからそこまで気が回らなかったんだ。ごめんな」

 

「男の娘……イイ…トテモヨキ」

 

 何か若干怪しいが感謝しているのは間違いなさそうだ。部下達からの評価も上々で問題はなさそう。

 

「とまぁこんな奴らなんだ。気持ち悪いかもしれないが今後も頼んでも良いか?」

 

「はい、精一杯頑張らせて」

 

 そこまでレシィが言おうとした時だった。緩んでいた空気にぴしゃりとした声が響いた。

 

 

「おいおい、人が哨戒している時に呑気に飯を食っていたんですかぁ?」

 

「ビジュ。そうか任務中だったか」

 

 ビジュが現れたのだ。しかもかなりのしかめっ面。どうやら自分が仕事中に呑気に部下や俺が休憩をしていたのが気に入らなかったらしい。 

 

 流石に部下達も気まずくなったのか神妙に飯を食ってる…おいおい。

 

「なんスかこれは?」

 

「飯だ。ここにいるレシィが作ってくれたのだ」

 

 緊迫した不穏な空気、それともビジュが怖くなったのかレシィは身を竦ませて俺の傍に近寄っていた。みれば薄っすら目に涙が溜まっている。

 

「実はメイトルパから呼び出してな……」

 

 事の成り行きを説明する間、ビジュの目は俺ではなくずっとレシィに向けられていた。獲物を見つけたというよりは品定めをする目、何者なのか、どういった人間なのか視る目だ。 

 

「副隊長殿、野生に帰りたいのは分かりますがお仲間を呼ぶのは感心しませんねぇ」

 

 話を聞いた後ビジュが取ったのは嘲笑だった。心底見下した目をレシィに向けている、勿論その目を向けられたレシィは竦み上がるしかできない。 

 

「ふむ、レシィを呼び出したことでうまい飯が食える」

 

「俺達は軍隊ですぜ?長期間のマズい飯ぐらい耐えれるものですよ。なぁ?」

 

 部下達に笑いかけるが目が笑ってない、うんどう見ても怒ってる。部下にもそうだがなによりも俺に対してだ。

 

「ビジュ、この任務どれぐらいかかるかわからん以上士気を下げる訳にはいかん。よってこの判断が間違いだとは思わん」

 

「それが間違いなんですよ。アンタなら分かるでしょソイツがどれだけ弱いか」

 

 それは…まぁ見ればわかる。だからビジュが言いたいことも分かった。弱い存在が傍にいるという事の意味。

 

「俺達は軍隊だ、それがまぁ召喚獣とは言え雑魚を呼び出すってのは…どうお考えですか?」

 

「……俺がどうにかするさ」

 

「何も考えていない奴は直ぐそう言うんですよ」

 

 ぐうの音も出ない正論を言い放つの止めてくんない?んでレシィを怖がらせるの止めてくんない?ああもぅ涙がこぼれてる。

 

「あ、あの」

 

「……あ?」

 

「ぼ、僕お役に立ちますから…うぅ…ご、ご主人様の事を悪く言うのは止めてください~~!」

 

 後半はかなり消え入りそうな声だがレシィは驚くことにビジュに抗議したのだ、ただでさえ機嫌が悪いビジュに話しかけれるのは俺か隊長だけだというのに。

 

「……なるほど、何もわかっていない奴がここにもいたのか」

 

「ヒッ」

 

 恐ろしく低い声、まさしく癪に障ったのだろうその声は怒気が含まれていた。ビジュの事はよく理解しているつもりであるからこそここまでにしておこう。

 

「弱い者いじめは止めろビジュ。流石に見てられん」

 

「そいつをメイトルパに還せば話はそれでしまいですがねぇ副隊長殿?」

 

 嘲笑という笑いながらもジロりと睨みつけられる。言わんとすることも理解できるが部隊の事を考えればレシィの存在は必要だ。

 

 一触即発と言わないでも緊張した空気が流れる中止めたのは、やはりというか。

 

「ギャレオ、ビジュ。そこまでにしておけ」

 

 アズリア隊長だった。流石に上官命令に逆らう気はないビジュは忌々しそうに舌打ちをした。俺は啓礼の形で答えた。

 

「ギャレオ、その子が呼び出した子か?」

 

「はい、メイトルパから協力を仰ぎました」

 

 怖くて震えていたレシィの背中をそっと支える。この人は怖くないと思うのだがビジュの印象が強すぎるのだろう。

 

「そうか。…すまんが我々のために協力をしてくれるか」

 

「は、はぃぃぃいい」

 

 うーんなんか恐慌状態に陥ってますね。後でメンタルケアをするとして取りあえず隊長に報告だけはしておくか。 

 

「隊長今後はレシィに食事を頼むことにします、腕前の方は、部下に聞いた方が良いと思われますが問題ないでしょうか?」

 

「わかった。…その子の面倒は貴様が見るんだぞ」

 

「了解しました」

 

 話が早い隊長で本当に助かる。少しだけ言葉を柔らかくしていた隊長は今度はビジュに向き直る。

 

「ビジュ、この島は我らの想像以上に広い。地盤を固めるのは急務だ」

 

「……ええ、分かっています」

 

「部下に当たるな。問題を起こせばそれだけ貴様の首が締まっていく」

 

「分かっていますよ」

 

 ビジュは問題行動を起こしすぎたのか、軍事裁判にかけられそうになっている、その最後の砦としてこの部隊に配属されたのだ。

 アズリア隊長の指揮下では問題行動を起こしていないので無用な心配だとは思うのだが。

 

 ………いかんな原作に引っ張られ過ぎている。どこかで考えをまとめた方が良いのだろう。

 

「とりあえず、レシィが作った物を喰いましょう。まずは腹ごしらえです」

 

「そうだな、頂くとしよう。ビジュ貴様もだ」

 

 そういって部下から椀を貰ったアズリア隊長。ビジュも椀を部下から貰った後踵を返していった。

 

 問題の味の方は、うん、非常に美味だったとだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ほどはすまんかったな」

 

 洗い物をレシィと一緒にしながらポツリとつぶやいた。部下がやると言い出したのだがこれもコミュニケーションの為だと引き受けたのだ。

 

「いえ、僕が弱いのは……本当の事…です」

 

 ビジュに言われた事を思い返したのか結構堪えているようだ。一応名目上では護衛獣として呼び出したのにはっきりと弱いと言われたのが辛かったようだ。 

 

「……この島の事は説明したな」

 

「はい」

 

「この島には、はぐれ召喚獣が多くいる。話が分かる奴もいれば襲い掛かってくるものも」

 

 獣の習性か、人間を見かけたら襲い掛かってくるはぐれ召喚獣は多い。いくら護人が居ても集落に居ないはぐれ召喚獣までも把握は出来ていないのだ。

 

 それに重要施設『喚起の門』あそこから召喚されたはぐれ召喚獣もまた多い。危険な奴らがいるのも当然だ。

 

「そして人間達……船を襲った海賊たちも発見された。おそらく彼等とは事を争う関係になるだろう」

 

 任務の事も話をした。剣の護送に海賊の襲撃、そして島への漂着にビジュが海賊達と戦ったことも。

 

「その、怖い人達なんですか…?」

 

「部下からの報告では割と愉快な面子とは聞いたが、慣れあうことはないだろう」

 

 嘘も交えているが、本当の事も入ってる。

 

 どれほどカイル一家が気持ちの良い人間であろうとも船を襲ってきた事実はゆるぎない事実で剣もあちらの手の内にある。

 剣を手放せない以上争う事になるのは明白。これは原作がどうこうという話ではないのだ。

 

「今後戦う可能性がある以上、部隊全員が戦闘に導入される可能性だってある。そんなときに非戦闘員がいると」

 

「僕、の事ですよね」

 

 肯定も否定もしない。レシィには戦える才があるが決して強者にはなれないのは見ればわかるのだ。

 

「何が起こるかわからない以上、弱者は強者の足手まといになる。それがビジュがイラつく原因だ」

 

「………」

 

 戦いになれば綺麗事はなくなる、あらゆる手を使う事になった場合レシィが標的になる可能性だってあるのだ。無論そんな事はならないと言えるがそれは相手側を知っている俺の言い分だ。

 

「言い方を変えればお前に傷付いてほしくないのさ。言い方は酷いがな」

 

「僕は…」

 

「アイツは多方面から見ることで良さがわかる不器用な奴だ。気難しいのは間違いないが決して外道ではない」

 

 偶に悪いことするけどね、悪党に関して必要以上に痛めつけるとか。…あれ?割かし普通?

 

「…怖かったです」

 

「ふふ、皆そういう。だが付き合ってみれば存外悪くないのだ」

 

 勘違いされやすいビジュに問題があるような気がするがこれはもうしょうがない。レシィには厳しいかもしれないがどうにかして慣れてもらうしかない。

 

 

 先行きは不安ながらもひとまず護衛獣レシィのお陰で部隊は態勢を保てたのであった。

 

 

 

 

 

 

 そうこうしている内に夜だ。船の修繕と島の探索に拠点の整備。やることは多いが少しづつ進んでいる、これもレシィのお陰だ。

 

 そして遂に船の修繕が進んだおかげで、多少の船の設備が使えるようになったのだ。まだ海に出すことは出来ないが部屋も少し確保できた。

 おかげでベットで寝れるようにはなったが…ビジュに譲ることにした。

 

「俺は鍛えているからな」

 

「……はぁ」

 

 溜息をつかれたが実際俺は外で寝ても全然平気だ。これぞ鍛えた体のお陰!…と言いたいが月の光を浴びると不思議と心と体が落ち着いて行くのだ。

 流石リィンバウム、月からマナを得るというのは本当らしい。

 

 そんな事を考えながら今日も今日とて。夜にアズリア隊長に報告です。

 

 

「ギャレオ、明日だがどうやら高台を探索班が見つけたらしい。そこに拠点を敷くぞ」

 

「了解しました。しかし高台ですか?」

 

「ああ、何でも巨大な召喚獣の骨が出ていたとか」

 

 竜骨の断層やんけ!なるほどもう5話ですか、となると本格的に戦闘か…むぅ先生さんはいったいどれほどの腕前なんだろうか。

 

「何か考え事か」

 

「ここは一体何なのでしょうか。ただのはぐれ召喚獣の住む島だとは思えません」

 

 アズリア隊長の追及をさらりとかわす。まさか先生さんに個人的な興味があるとは言えまい。

  

「そうだな、流石に奇妙な島だ。普通ではないのはお前も分かるだろう」

 

「ええ、しかも海賊もいる。何よりあのビジュを負かした相手がいるのです」

 

 武者震いとよく似た好奇心。戦闘能力は?性格は?本当に俺の知る主人公なのか?とか。

 

 そして何よりもあの剣。抜剣覚醒をした先生とはどんな感じなのか、とか。

 

「……」

 

「どうかしましたか?」

 

「ビジュが報告してきた奴らの中で一人もしかしたら知っている奴がいるかもしれなくてな」

 

 先生さんの事か。軍学校では同期で主席争いをしていたとか。微笑ましい青春だ。そう思ってると何処か遠くを見つめながら口を開いた。

 

「軍学校で同期の奴でな、首席の座を巡って私が一方的に挑んでいたものだ。だが奴はいつも困ったように笑うだけで」

 

「ほぅ アズリア隊長と互角なのですか」

 

「悔しいがアイツの方が私よりも上だ。座学も実技も上手だったよ」

 

 忌々しそうに言ってるつもりだろうが、顔が滅茶苦茶穏やかになってるのをこの人は気付いているのだろうか?軍人という男社会で女性でいることに気苦労が絶えない中先生さんとのその青春は間違いなくかけがえのない物だったのだろうとうかがえる。

 

 俺とビジュと同じように。

 

「そんな奴が海賊に組みしているとは…」

 

「何か理由があるのかもしれません。もしくは捕まえられて無理矢理働かせられてるとか」

 

「ははっ、アイツが海賊に後れを取るとは全く思えんな」

 

 信頼度滅茶苦茶たけーなおい。流石は同期か?アイツの事は私が一番よく知ってるんだとか言いそう。全然構わないし寧ろ聞きたいがね。   

 

「ならばやはり理由があるのかもしれません。もし捕まえる事が出来たら連行しましょう」

 

「いいや、それには及ばん。アイツはどうしようもなくお人好しだが意固地でもある。それに私の思い過ごしかもしれないぞ」

 

「…そうでしょうか?勘ですがアズリア隊長のご友人だと思われますよ」

 

「だったら尚更私はアイツを許せんという事だ。海賊に手を貸したアイツをな」

 

 ほんの少し悲しそうにした隊長だがこちらに向けた顔は直ぐに指揮官の顔になっていた。

 

 

 そうして朝から早いぞと言い別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「ビジュ、部屋の居心地はどうだ」

 

「……悪くはありませんよ」

 

 船にある一部屋で盛大に溜息を吐くのはビジュだ。幹部として部屋へと割り当てられてるのに全然嬉しくなさそうである。  

 

「ふっ これで体の痛みとはおさらばだな。明日からは朝の寝起きは快適だぞ」

 

「……嫌味ですかい?」

 

「何がだ?」

 

「あーあーアンタはそういう奴でしたね」

 

 心底呆れたビジュは偉そうにベッドに腰かけた。実に様になっているのが笑いを誘う。

 

「なんすか」

 

「いや、なに昔を思い出してな」

 

 アズリア隊長が昔話を語ってくれたからであろうか軍学校で馬鹿をやってた時を思い出した。あの頃は若かった俺もビジュも。

 ビジュはあの時の事をどう思ってるのだろうか。……良い思い出だったと思ってくれればそれでいいのだが。

 

「チッ」

 

 舌打ち一つ。それでビジュの反応はおしまい。まぁ昔語りをするには気分でもないのだろう。今はそれでいい、今は。

 

「ではな、ビジュ。明日は遠征だ。ゆっくり休め」

 

「おいギャレオ」

 

 踵を返そうとしたところだった。機嫌が悪そうに、しかしどこか真面目なその問いに俺は首をひねる。

 

「アイツどうするんだ」

 

「……俺が守るさ」

 

 誰の事を言ってるのか察した。故にそう返すのだ。それが召喚した者の責務って奴だろ。

 

「召喚獣を使役する事を毛嫌いしていたお前がまさか雑事のために呼び出すなんてな」

 

「ああ、そうだな、その為に呼び出した」

 

 戦闘ではなく雑事を頼むため、果たしてそれは戦えというのとどれほど違うのだろうか。レシィは当然の様に受け入れていた、無理矢理呼び出し奴隷扱いのようなその扱いを。

 

「……お前がそう言うとはな」

 

「ああ、自分でも驚く」

 

「責任は取れよ」

 

「無論だ」

 

 召喚獣を呼び出すことに嫌悪感が薄れてしまった俺は果たしてあの時とは違ってみるのだろうか。

 

 召喚獣を呼び出す事について俺は慣れてしまったのかもしれない。    

 

 

 

 

 

 

 

「レシィ。まだ寝ないのか?」

 

「はい、明日は遠征に向かわれるというので今から仕込みをしているんです」

 

 レシィの様子を見に行けばまだ調理場で作業をしていた。芋の皮むきだろうか。確かに調理関連をすべて任せてしまっているが夜遅くまでは起きていて欲しくないのだが。

 

「それは明日すればいい。今日はもう休め」

 

「いいえ、これは僕にしかできない事です。だから頑張らないと」

 

 もしかしてビジュが言ったことを気にしてるのだろうか、だったらそれは間違いだ。訂正しないと。

 

「ビジュに言われたことを気にしているのか。そんな無理をしてまですることではないぞ」

 

「あ、いえ違います。確かにビジュさんに言われたことはその通りだって思いますけど、決してあの人が悪いとかじゃなくて」

 

 慌ててビジュに言われたことが原因ではないとレシィは言う。では何故と問うと少しだけ気恥しそうに答えた。

 

「僕が作った料理を皆さんが美味しそうに食べてくれるので。それで作るのが楽しくて」

 

「そうか。確かにレシィの作る飯は美味いからな」

 

 晩飯もレシィが用意してくれたものだった。やはりというか皆絶賛だった。部下達は勿論隊長も。恐らく絶対に言わないがビジュさえも。

 

「皆さんもご主人様もいっぱい食べますからね。だからこうして準備しているんです」

 

「そうか、ありがと……うん?今何と?」

 

 何か聞き捨てならない言葉が聞こえて聞き返すがレシィはキョトンとしたままだ。

 

「???えっとどうかしましたかご主人様」

 

「それは」

 

「???」

 

 ご主人様って俺の事か!?そっか確かに召喚したのは間違いなく俺だからご主人様って呼んでいるのか。

 

 ……ビジュにはああ言ったが俺もまだまだ未熟者そのものだ。

 

「レシィ、済まないがそのご主人様というのは止めてもらっていいだろうか」

 

「え?ど、どうしましたか僕何か言っちゃいけないことを言ってしまいましたか?」

 

 途端に不安そうになるレシィに慌てて付け加える。

 

「そうではない。ただその呼び方がどうしても俺には合わなくてな」

 

 うやまれるような人間ではないしそもそも俺はレシィとは対等でありたいというか…俺の我儘だなぁ。

 

「名前で呼んでくれ。その方が俺としてはとても嬉しい」

 

「わ、わかりました。じゃあギャレオさん?」

 

「ああ、これからもそう呼んでくれ」

 

 やはり名前で呼ばれるのが断然いい。そう思って頷けば不思議そうな顔をしながら作業を止めないレシィが居たのだった。 

 

 

 

 




選考理由は朴訥?な軍人と大人しい少年の組み合わせってエエやん…という事情だったり。
他に相性が良い組み合わせは遊撃要員のオルフルの子だろうなぁーとか。

次回ようやく先生さん達と出会う予定です。
感想がやる気に直結しますのでどうぞよろしくお願いします
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