5000文字ぐらいなら読みやすいかな?
遠征とは言うが島の広さなどを考えれば到着は昼ごろか。獣道とは言え森の中を歩くのは少しばかり苦労している。もっとも俺やビジュ、隊長は平気なのだが。
竜骨の断層。島の北西にある高台で先生たちが帝国軍と本格的な戦闘を開始する場所である。尤もそれだけの場所で以降は一度も本編では使われない場所なのだが。
ともかく今自分たちがそこに向かってるという事は原作第5話だ。この話では先生と生徒とのやり取りが重要な話となる。
島についてから自分の味方であるはずの唯一の先生が海賊や住人との交流でどんどん自分から離れていく事に不安をおぼえる生徒。青空教室の開催と学級崩壊との出来事を経て不安と不満が大爆発☆。
そうして泣いて逃げ出したところで帝国軍に捕まり助けに来た先生が…という話である。
今までどこかぎこちなくよそよそしかった先生と生徒の距離がグッと縮まるとてもいい話だ。そして俺事ギャレオが本格参戦する場所だ。
……どうしよう。相手との戦力差が分からない。先生さん達は俺等より強いのか?それとも俺達が強くて勝ってしまうのか?
「何湿気たツラしてんですかい副隊長さん」
「ビジュか。ここから見える光景は中々のモノだとな」
となんとかかんとか考えている間についたこの場所は竜骨の断層、一番上の層に当たる。ここから見える島の光景は…なるほど中々の絶景どころか凄いなコレ!?
まず近くに見えるはでっかい木。恐らくユクレス村のユクレスの木。その奥はどう見ても和風の城。奥まった方にはビルらしき近代的建築物。流石に狭間の領域は建造物はなく泉がかすかに見える。
「あの4つのデカいのは何だと思う?とてもではないが統一されていないが…」
「…デケェ木にシルターン風の城、デカい構造物、んで陰気そうな泉。何なんだありゃ」
「恐らくだがメイトルパ、シルターン、ロレイラル、サプレスのはぐれ召喚獣が住んでいる集落だろう」
ビジュと一緒にありゃ何だろうと言えば隊長がぬっと出てきた。わずかに驚いているのは同じか。
「なんで四界の建造物が?」
「わからん。それを今から調べるためここに拠点を設置するぞ」
「了解しました」
という事で、拠点を造るというよりは、あくまで仮拠点を造るべきというべきか。部隊を展開しあーやらこーやら。
…そう言えばふと気が付く。確かイスラが先生さんに発見されたのも今頃くらいか?イスラからの報告があればこの島の事情が分かるかも
…いやいや先生さんが事情を説明してくれたっけ?兎も角そろそろ戦闘だと思うと気が重い。
だが、ここからが始まりなのだ。だから気をしっかりと入れなおそう。
俺の望みの為に。
「隊長、副隊長はおられますか!」
それからしばらくして、部下からの報告があった。念のため付近の捜索に出ていた部下だ。
「どうした?何かあったか?」
「それが」
非常に困惑している部下が後ろから連れてきたのは…目を泣き腫らした女の子だった。その姿見た瞬間一瞬だけ怒気が漏れた。
「貴様……何をした」
「ご、誤解です副隊長!」
いつもの自分より2段階下がった低い声に驚いたのか部下の背筋がピンと跳ね上がる、心なしか冷や汗を掻いて目尻に涙が出ている。
「捜索の途中に遭遇しここまで連れてきたのです。自分は決してこの子を泣かせるようなことはしてません!」
確かにこの島ははぐれ召喚獣が多い。それもいきなり襲い掛かって来るのが多数。そんな所に子供を見かけたら保護するのは当然と考えるとこの部下に怒気を放ったのは筋違いだ。
謝ろうと、そう思った。保護をしたのは間違いないのだから。
だが、俺が何も言わなかったことに勘違いをしたのか声が上ずりながらコイツは叫んだ…叫んでしまった。
「じ、自分は確かにロリコンですが泣かせるような事は決してしません!!そのような不埒なこと絶対にしません!」
「………」
「………」
「ヒッ」
突然暴露された部下の業深き性癖に固まる空間。後ろの隊長が頭を抱えて女の子が小さな小さな悲鳴を上げた。
可哀想に今にも腰を抜かしそうだよ!このバカタレが!
「…すまん。保護ご苦労だった」
「あ、いえその」
「任務に戻れ。後は俺が引き継ごう」
「ア、ハイ」
思わずだろう性癖暴露を隊長や俺の前で叫んでしまったことを青くなるやら赤くなるやらでそのまま去っていく部下。
後で鉄拳を食らわせなければならないと決意する。
そして残されたのは俺と隊長と女の子。
「て、帝国軍…!」
「まさか、こんな所で女の子がいるとは、な」
隊長と女の子は先ほどの変態をいなかったものにするようだ。非常に棒読み感が強い。
そんな女の子の容姿は可愛らしい小顔に明るい亜麻色髪のツインテール。上品そうな衣服に緑のペンダント。驚いた可愛らしい声はくぎゅう!?
この娘アリーゼじゃん!アリーゼ・マルティーニじゃん!滅茶苦茶可愛いな!
(じゃなくて!)
まさかの生徒がこの子であることに驚きつつひとまずは隊長にどうするか伺う。まさか子ども相手に尋問をするとは思えまい。
「どうしますか隊長」
「武器を下ろしてやれ。怯えていてはまともに話もできない」
「了解しました」
という訳で保護という名目の連行をすることにしました。これも君の為だ許してくれアリーゼ。
「いい加減にしやがれこのクソガキがッ!」
「ひ……っ」
ビジュ怒りの恫喝。その剣幕にアリーゼは縮こまってしまう。アリーゼから見れば体格のいい刺青男の恫喝は中々の恐怖だろう。レシィも怖がるお墨付きだ。
「何を聞いてもだんまりばかりで一言もしゃべらねぇ。痛い目見ねぇと分かんねェのか?あァ…っ?」
というのも何を聞いてもマジで喋ってくれないからです。この島の何処から来たのか居るはずの保護者は如何したのか。マジで何一つ喋ってくれないからです。
……もしかして聞いているのがビジュだから?でも部隊の中で一番真っ当?なのはビジュだし…他の奴らはちょっと変な奴ばっかりだし…
「おいロリコン野郎テメェ隊長らの前で性癖暴露とか頭おかしいだろ」
「信じられません部隊内の風紀をどう考えてるのですか」
「しゃーないじゃん!副隊長にビビって正直に話した俺の身になってくれよ!」
後ろの阿保共は一体何をしているのか。
そして何で隊長はアリーゼの聞き取りを部下に丸投げなの?ソワソワしている隊長をちらりと見れば何だか気持ち嬉しそうに見える。それは先生さんと会えるかもと思ってるからですか?何この乙女、今は職務中ですよ!
「そろそろ止めとけ。怖がって口も開いてくれん」
「副隊長殿はそうおっしゃいますがねェ……ィヒヒヒ、喋らねぇ以上は体に聞くしか方法がないでしょうが?」
「ビジュ、流石にアウト」
デデーン!ビジュ君アウト―!その絵面傍から見ると最悪だってば。腕で×印を作ると白けた顔をされた。
「副隊長殿、何度聞いても何も言わねェコイツが悪いんですよ。ちっとは躾ねぇとそれが大人ってもんでしょ」
「そうだとしてもだ。聞き方というのがある」
ビジュの恫喝は効く人間には効果てきめんだが相手を選ぶ必要がある。…だったら何で俺がしないかって話ですよね。
正直、アリーゼを泣かせてしまうのではないかと怖くて話しかけれない俺がヘタレだからです。
「それに、こういう大人しい子は恨みや怒りを心の奥底に溜め込むんだ」
「はぁ?」
「俺の勘が言ってる。この子は将来アズリア隊長に並ぶ逸材になる」
「冗談でしょ?」
アリーゼは見た目通りの生粋の召喚師タイプ、つまり後衛だ。霊属性に適性がある為回復や攻撃、補助を受け持つことができる有能キャラの一人。彼女の強さのお陰で強いはずのヤードさんの影がますます薄くなることに…。
そんな彼女だが育て方を変えるとSPクラスになり何故か剣を装備し軽装備を身に纏い有能なスキルを引っ提げて前衛として花開くのだ!…なんで?*1
そして何より怒らせると長文を息継ぎなしで喋り出すというメンタルの強靭さも持つ。つまりつよい。
「………」
流石に嫌な予感がしたのか一歩だけビジュが引き下がった。危機感があって偉い!
「ではダメ出しばかりする副隊長殿にお任せしましょうか」
「俺がか?」
「ええ、どうぞ」
何で俺に…いや、考えてみれば人に任せてダメ出しばっかりなんて駄目にもほどがあるな。
なるほど、ならばこの俺の手腕を披露するときが来たか!
「ふむ、まず君の名前は?」
「………っ」
だんまりですね。口を真一文字にして誰が答えてやるもんかという強い意志を感じます。これは手強い。
「なるほど、では保護者の方はいるか?お父さんやお母さん、近しい人でも構わないぞ」
「………」
あ、悲し気に眉が下がった。喧嘩別れのようにした先生のこと後悔してるのだろうか。大丈夫直ぐに助けに来てくれるよ。でも口を開いてくれるとおじさん助かるなー。
「ふむふむ。なら友達はいるか?はぐれ召喚獣だらけのこの島だが友好的な子はいるだろう」
「っ!」
キュッと胸元を握りしめた。そこに友達召喚獣のキユピーのサモナイト石があるのか…大切にして置きなされ。
「ほぅ……ならお腹は空いていないか」
「???」
キョトンとした顔で見られた。正確にはこの人何を言ってるんだろうてきな
「餌付けかよ…」
うるさい、お腹がいっぱいになれば口も開くじゃないか。と懐を探るが、肝心なものが無かったことを思い出した。
「ナウパの実が…ああそう言えば失くしたんだった…」
「お前が落ち込むのかよ…」
非常用に乾燥ナウパの実を常備していたのだが、海に落ちた時にオジャンになったのだった…ああメイメイさんの店で売ってないかな。また食べたいなナウパの実…。
「さっきから煩いぞビジュ」
「副隊長が全然役に立ってないからですよ」
「ぬぅ……」
全く以て正論である。ならば正直に真正面からぶち当たってみるか!
「さて、と」
「!?」
ドスンとアリーゼの真正面に腰を下ろす。これで距離は近くなった。後は目を見て話すだけ。……めっちゃ警戒されてるけどね!
「すまなかった」
「え?」
誠心誠意を込めて頭を下げる。いや、本当に申し訳ない。
「怖がらせて済まなかった。先ほどの阿保…変態には俺からきつく灸をすえておく」
「うわぁーっ!駄目だギャレオさんに殺される!」
「当たり前だ。ったくせめて未亡人にしておけよ」
「当然の報いです。機械人形だったのなら擁護できるというのに」
「は?キッショ、変態が移るから近寄らないでくれる?」
「は?」
「は?」
なんか後ろの方で馬鹿共が言い争っているが気にしないでおく。お前らマジで子供に聞かせられないような話をするんじゃねぇよ
「そこのチンピ…ビジュは子供が苦手でな。ちとキツイ物言いになってしまうんだ」
「誰がチンピラだ?」
無視する。お前言い方チンピラだもん鏡を見てから…蹴られそうなのでお口をチャック。
「改めて話をしよう。見ての通りだが我々は帝国軍人、所属は帝国軍海戦隊第6部隊と呼ばれている部隊だ」
「…海戦隊」
ぼそりと呟きが聞こえてきた。興味を持ってくれただろうか?無理だな強面が多い変人部隊だ。まだ警戒が取れていない。
「我らはとある任務で船に乗っていたのだが、海賊に襲撃され、そして嵐に遭いこの島に遭難してしまったんだ」
「事情を話して良いんすかビジュさん?」
「知らん、アイツの好きにさせておけ」
「……」
アリーゼの顔が悲し気になる。そうだよなこの子もまた船に乗っていてこの島に遭難してしまったのだ。先生が付いていたから大丈夫だったんだけど……。
「……私を、どうするつもりですか」
小さな声でしかしはっきりと聞こえたのは、拒絶がいまだに残る声だ。
だから丁寧に接しなければ、この子が誰とかキャラとかそうではなく1人の人間として、行動するのだ。
「君を保護したいと、そう思ってる」
アリーゼの瞳が揺れた。
「重ねて言おう。君は恐らくパスティス行きのあの船に乗っていたのだろう?船を海賊から守れなかった事、本当に申し訳なかった。そして今度こそ君を守らせてほしい」
謝るという行動がどれだけ相手に伝わるのだろうか。俺にはわからないけど頭を下げるしかない、だってどんな理由があれ
「…嘘、だって貴方達はこの島の人たちを攻撃したって」
「理由があった。尤もそれは水掛け論になるがな。それについての弁明はしない」
あの戦闘については話をしたところで無駄だ。どちらが先に手を出したかなんてもう分からないし終わってしまった事なのだから。
「……私は、貴方達に何も話しません」
そんな空気が伝わってしまったのか結局アリーゼは黙秘することを選択したようだ。やっぱり説得というのは難しい。
「そうか。だが、これだけは覚えておいてくれ」
「?」
「我々は帝国軍人、民間人を守る、その為の軍隊だ」
「………」
だけど伝えたいことは伝えられたと思う。意味があるかどうか知らないけどね。
「…ふぅ」
…はー疲れた。やっぱ俺にはシリアスは無理だ。無理無理、そもそもこんなむさくるしく暑苦しい男に友好的に接する女の子なんている訳がないつーの。
もうシリアスは閉廷!終わり!解散!オラッくたばれシリアス!
「そうだな、君は甘いものが好きか?」
「?」
「うちの調理担当がプリンを作ってくれてたはずだ。後で君に上げるとしよう」
「プ、プリン!?」
レシィがメイメイさんのお店で何か貰ったらしく少しだけなら作れるらしい。流石レシィちょっと凄すぎる。
「私、何も食べません!」
「だが甘味は別腹だろう?涎垂ものの一品らしくてな競争が激しい」
「だから~~~~!!」
「正直俺も食いたい」
あーだこーだしていたらどんどん腹が減って来た。いつまでこの子を軟禁?していれば良いんだろう?
そもそもさっきから隊長は?同じ女性なのに一向にアリーゼと会話をしない隊長は何処に?
そうしてぐるりと見渡せば先ほどから変わらず我らがアズリア隊長殿はソワソワとしている。
アレ絶対先生さんと会えるのを楽しみにしてるよ。
何せさっき「お前たちが戦ったのがあの者なら必ずここに来る」「私が知っているあのものならばな」と非常に嬉しそうに仰ってたの。
恋する乙女かな?乙女だったわ。
そんな一向に進まないグダグダとしたやり取りをしている時だった。
「アリーゼ!」
そんな叫び声が聞こえてきたのだった。
何だか隊長がポンコツ気味に…
生徒はアリーゼでした。ゲームでは非常にお世話になりました。
原作キャラと会話させると楽しくて文章量が多くなってしまいます