暗部として鍛えられた子の漂流譚   作:ラン乱

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知りたいお年頃?

午後の柔らかな陽が、道端の草むらを穏やかに照らしていた。

軽い風が木々を揺らす音だけが響く中、一行は緩やかに進んでいた。

 

そんな時──

 

『ねぇ、エボル。ちょっと聞きたいことあるんだけど』

 

先頭を歩いていた俺の背中に、シルヴィアの声が届いた。

 

「ん?何だよ」

 

俺が軽く振り返ると、シルヴィアは少しだけ首を傾げながら、真面目な顔で言った。

 

『赤ちゃんって、どうやってできるの?』

 

「……は?」

 

一瞬、頭の中がフリーズする。

 

「……おい、今、何て?」

 

『赤ちゃん!できかた!だってさぁ、ポケモンも人間も赤ちゃんって生まれてくるじゃん?アタシ達はタマゴからだけど、でも、どうやって生まれるのか、よく分かんなくてさ!』

 

「……突然何を言い出すと思えば……それかよ……」

 

エボルは肩をぐるっと回すように振りつつ、深いため息を漏らす。

 

レイカが横から割り込んできた。

 

『シルヴィア、それはまだ早いわよ。そういうのは、もう少し大人になってからね』

 

『えぇ~~っ!?なんでよぉ~!気になるでしょ!?ねぇレイカも気になるでしょ!?』

 

『私はもう知ってるもの』

 

『うっ……ずるいっ!』

 

俺はそっぽを向いて、草むらに向かって歩き出した。

 

「……ったく、話はそれだけかよ。じゃあ先に進──」

 

その時だった。

 

草を搔き分けて数歩進んだ俺の視界に、異様な光景が飛び込んできた。

 

──ニドクインとニドキングが、○○○の真っ最中だった。

 

「……っ!!」

 

エボルは無言で即座に後退。

 

体を反転させるように戻り、後ろのレイカとシルヴィアに目を合わせないようにしながら言った。

 

「……別の道、行くぞ」

 

『えっ?どうかしたんですか、ご主人様?』

 

レイカが不思議そうに首を傾げる。

 

俺は何も言わず、草むらの奥をそっと指差す。

 

レイカは怪訝な顔で、そっと草を掻き分け、先を覗く。

 

──数秒後。

 

『………………っ!?』

 

一気にレイカの顔が真っ赤に染まった。

 

『……そ、そうですね!あの辺は通れません!ええ、通れませんから!べ、別の道を探しましょう!今すぐ!』

 

やたらと語気が早くなるレイカ。

 

シルヴィアは不思議そうな顔で尋ねた。

 

『えっ?なに?何があるの?アタシも見るー!』

 

「やめとけ、絶対にやめとけ」

 

俺が即答し、レイカが慌ててシルヴィアの肩をがっしりと掴む。

 

『だめっ、だめだめ!シルヴィアは、ぜーったい見ちゃダメよっ!!』

 

『ええー!?何で!?気になるぅー!』

 

『まだ早いのっ!!』

 

シルヴィアは必死に草むらの奥を覗こうと身を乗り出すが、レイカが全力でホールド。

 

俺はその様子を横目に見ながら、再び歩き出す。

 

「まったく……何でこんなタイミングなんだよ……」

 

草の揺れと共に聞こえてくる微妙なリズムと声は、聞きたくもないBGMになっていた。

 

後ろではまだ、レイカとシルヴィアの攻防戦が続いている。

 

『ねぇレイカ~ちょっとだけでいいから~!』

 

『だーめー!絶対だめ!!一生のトラウマになるから!!』

 

『トラウマになるほどの何なの!?気になるぅぅう~~!』

 

俺はもう、何も言わずに前を向いたまま早足でその場を離れることにした。

 

──こうして一行は、草むらを避け、別ルートでの道を選ぶこととなった。

 

シルヴィアの「知りたい欲」とは裏腹に、ちょっとだけ大人の世界を垣間見た……いや、垣間見させなかった午後の出来事だった。

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