──アタシの名前は、イーブイ。
エーフィとシャワーズっていう、ちょっと厳しいけど優しいお姉ちゃんたちと一緒に旅してるの。
夢はね、パフォーマンスショーでたくさんの人やポケモンを笑顔にすること!
踊ったり、技を組み合わせて演出したり──いつかお姉ちゃんたちみたいにキラキラ輝ける存在になるのが目標なんだ。
でもね──最近、ちょっとだけ違う気持ちもあるの。
あの人間の子──エボルっていうの。
初めて会った時から、なんていうか、目が離せないっていうか……。
だって、人間なのに、すっごく強くて、冷静で、だけど本当は優しい。アタシが捕まってた時も、迷わず助けてくれて……
『……かっこよかったなぁ……』
ふと、アタシは草の上に寝転びながらつぶやいてしまった。
その時だった。
『……あら?今なんて言ったの?』
『イーブイ?』
気付けばすぐ近くで、エーフィとシャワーズがこっちを見ていた。
アタシ、慌てて耳をぴくっと動かして顔をそむけたけど……バレたかも。
『……まさか、エボルに惚れてるの?』
エーフィの目がちょっと鋭くなってる。やばい。
『そ、そんなこと……ないもん……!ただ、ちょっとだけ……番になれたらなぁ、って……』
『──はっきり言ったわね!?』
シャワーズが声を上げて跳ねるように立ち上がった。
『イーブイ、あんたまだ早すぎるわよ!そういうのは、もっと大人になってから考えること!』
『えぇぇ~……でも、番になるのってそんなにおかしい?』
アタシがそう言うと、シャワーズは顔を真剣にして言った。
『イーブイ。人間とポケモンは、番にはなれないのよ。……種族が違うもの』
『でも……そんなの、まだ分かんないじゃない。』
アタシはまっすぐ姉たちを見返した。
エボルがレイカやシルヴィアと普通に話してるのを見てきた。
どんなポケモンとも、心を通わせてるのを見てきた。アタシだって……助けてもらったし。
──あんな風に優しくされて、守られて。
それがただの偶然なんて、思えなかった。
『エボルは、アタシの言葉が分かる……ちゃんとアタシを見てくれる……それって、すごいことなんだよ?』
エーフィとシャワーズがしばらく黙った。
でも──少し柔らかい顔になった気がする。
『……確かに、あの子はちょっと普通じゃないかもね』
『……でも、まだ夢を追うのが先。ね?イーブイ、まずはパフォーマンスの練習、頑張りましょ?』
『……うん』
そうだよね、今はまだアタシ、強くもないし、上手くもない。
だけど──
心の奥の小さな灯だけは、消したくない。
だって、いつか……本当に大きくなった時。
その時また、堂々と伝えたいから。
『……じゃあ、大きくなったら考えてもいい?』
アタシの問いに、エーフィとシャワーズは少し目を合わせて、それから……小さく笑った。
『……大人になってから、ね』
『その時は……ちゃんと、私たちに話しなさいよ?』
『うんっ!』
──風が吹いた。
アタシの尻尾がふわっと揺れる。
空を見上げると、雲ひとつない快晴だった。
今日も練習しよう──パフォーマンスも、気持ちも、少しずつ、前へ。
だって、アタシはイーブイ。まだまだ、これからなんだから!