──私はエーフィ。
日々の生きがいは、次女のシャワーズと共にステージを巡り、私たちの技で人もポケモンも笑顔にすること。
──そして、私たちにはとても大事な存在がいる。
妹のイーブイ。
その存在は、私たちの誇りであり、宝物。
どんなに小さなトラブルでも、私とシャワーズで守ってきた。
でも──最近、あの子の様子が明らかにおかしい。
ある日、町のスタッフさんと打ち合わせをしていた時のこと。
「そういえば、前に君たちを助けたエボルって子、すごかったね」
そんな言葉が耳に入った瞬間──
『……ふふっ』
イーブイは両前足で口元を隠して、耳をぴこぴこさせながらニヤニヤと笑っていた。
私は見逃さなかった。あの笑顔は、明らかに“ときめき”のそれ。
その後も、技の練習中。
新しいステップが上手く決まらず、イーブイが小さく弱音を漏らしかけた時──
『そんなんじゃエボルは見てくれないよ?』
シャワーズが冗談混じりにそう言うと──
『……っ!が、がんばるっ!』
イーブイの瞳に一気に火が灯り、むしろ普段より気合いを入れて技の調整に入っていった。
私は、その様子を見ながら──
(……こ、これは非常事態だわ……!!)
内心で絶叫した。
──妹が。
あの純粋で小さかったイーブイが……!
よりにもよって、人間に……!
私は、ステージ裏でシャワーズを引きずるように呼び出し、深刻な面持ちで口を開いた。
『シャワーズ、あの子、最近変じゃない?明らかに……その……あの人間に惹かれてるわ』
『あー……うん、まあ……そうかもね。』
軽く流すように返す妹に、私は声を荒げた。
『それだけ!?いいの!?このままイーブイが、どこかに行っちゃっても!?』
『落ち着いてよエーフィ。確かにちょっと舞い上がってる感じあるけど……練習だって前より頑張ってるし、悪いことばかりじゃないでしょ?』
『でも!人間よ!?あの子はポケモン!しかもまだ進化もしてない小さな妹よ!?』
『種族が違うって言っても、そんなに心配するほど?だってエボルって優しいし、危ないことするような人じゃ──』
『問題はそこじゃないの!!』
私はぴしっと前足を地面に叩いた。
『あの子が気持ちに飲まれて、自分の夢や道を見失ったらどうするのよ!?』
『……』
シャワーズは一瞬、言葉に詰まる。
でも、私はもう決めていた。
『たとえ一時の恋でも私は……イーブイが間違った道に進まないように、絶対に見守り続けるわ』
──エボルが悪い子とは思っていない。
でも、妹にとっての“初めての感情”には、時に無自覚な強さがある。
それに呑まれたら、後戻りできなくなるかもしれない。
だから私は、姉として──
誰よりも近くで、見守ると決めたのだ。
妹の幸せのために。
──それが、姉である私の役目なのだから。