暗部として鍛えられた子の漂流譚   作:ラン乱

22 / 42
その想いが向かう先:シャワーズside

──アタシはシャワーズ。

毎日、姉のエーフィと、そして妹のイーブイと一緒に旅をしてる。

わたしたちの目標は一つ。

 

──自分たちの技、動き、感情表現をステージという世界で魅せること。

ポケモンにできる表現で、人の心を動かすこと。

 

それがアタシたちの生きがいなんだ。

 

だけど最近──妹のイーブイが少し変わってきた。

 

もちろん、いい意味でね。

 

あの子は、以前よりもずっと練習熱心になってる。

朝早くから技のフォームを確認して、ステップも何度も繰り返す。

 

疲れて座り込んでるときだって、誰かの名前を思い出すと、すっと立ち上がるんだ。

 

──そう、“誰か”っていうのは、例の人間の男の子。エボル。

 

イーブイはエボルに命を助けられてから、どうやら特別な想いを抱いてるみたい。

 

……って、アタシが言うのもなんだけど、まあ、分かりやすいよね。

 

『エボルってさ、ほんとにかっこいいよね~』

『……もっと、強くなったら、隣に並べるかな』

 

なんて、こっそりつぶやいてるのを、アタシは何度も聞いた。

 

もちろん、姉のエーフィも気づいてる。

……というより、めちゃくちゃ警戒してる。

 

この前なんて、

『イーブイのためだから!あの人間と距離を置かせるべきよ!』

って、夜遅くまで真剣に相談してきたくらい。

 

エーフィの気持ちも分かる。

 

イーブイはまだ小さいし、種族も違う。

人間との絆って、簡単に形にできるものじゃない。

 

けど、アタシは……ちょっと違う考え方をしてる。

 

──もし、イーブイが“本気”なら、それはそれで応援してあげたい。

 

ただの憧れでも、一時の感情でも、そこから芽生える努力や想いって、無駄にはならないと思うんだ。

 

だって──

 

イーブイは、今、本当に輝いてるから。

 

あの子が見せる笑顔も、涙も、必死な姿も、全部が生きてる証。

「誰かのために頑張れる」って、実はとても素敵なことなんだ。

 

姉さんにはそのこと、まだ伝えられてない。

伝えたらきっと、怒られるか、泣かれるか……まあ、どっちか。

 

だけど、アタシたち三姉妹は、どんな形でも一緒に前に進んでいきたい。

 

イーブイが強くなろうとしているなら、見守ってあげたい。

エボルと何かあったとしても、その時は……ちゃんと向き合って、支えてあげたい。

人間とポケモンが番になることは、到底叶わない願いだったとしてもだ。

 

アタシにできることは、今はそれくらい。

 

だから、ステージの練習も、旅も、全部ちゃんと続ける。

 

たとえ“妹の恋”がどう転んでも──

アタシたち三姉妹は、いつでも一緒だから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。