数日が経った──
捕らえられていたポケモンたちはポケモンセンターでの治療を受け、次第に元気を取り戻していった。中には傷跡を残す者もいたが、ケルディオや他の三剣士たちの協力もあり、すべてのポケモンたちは安堵した面持ちで森や山へと戻っていった。
ケルディオはエボルの前に立ち、深く頭を下げた。
『……ありがとう、エボル。僕、あのままだったら……』
「礼はいい。それより、今後は無茶すんなよ。命あっての正義だ」
『うん!でも、次は僕が誰かを守るんだ。必ず!』
そう強く答えると、ケルディオは仲間たちと共に森の奥へと去っていった。
──
そして、エボルたちはしばらくこの町で過ごすことになった。
町の中心地から少し外れた静かな一角にある、小さなアパート。ポケモンも一緒に住めるという珍しい造りで、部屋にはミニキッチンと二段ベッドが備えられていた。借りたのは一週間の短期契約だが、久々に「屋根のある生活」ができることに、レイカとシルヴィアは嬉しそうだった。
『わあ〜!ベッドって柔らかいのね!ふかふか〜!』
シルヴィアはベッドの上で跳ね回り、尻尾をふりふり。
『ご主人様、今日はもう何もないですよね?少しだけ外の空気を吸いに行きませんか?』
「……ああ、そうだな。今日は“何もしない日”ってやつだ」
──
その日の午後、エボルはレイカとシルヴィアを連れて町の公園へ向かった。公園では小さなイベントが開かれており、模擬屋台や子どもたちのゲームブースが並んでいた。ポケモンたちも参加できる輪投げやミニバトルのステージも用意されていて、親子連れが賑わっていた。
『わあ〜見て見て、あのヤドンすごい!一輪車乗ってる!』
『あっちのプリンは歌ってるわよ!……って、あれは催眠術じゃない?』
公園のベンチに座ったエボルは、穏やかな日差しの中でぼんやりと空を見上げた。
空は高く、青く、まるで今までの戦いが幻だったかのように穏やかだった。
「……静かだな。悪くない」
『こういう時間、大切にした方がいいですよ、ご主人様』
レイカがそっと隣に座り、笑顔で言う。
『ねえエボル!見て見て!アタシ、風船三つ取ったよ!』
シルヴィアが嬉しそうに風船の紐を抱えて駆け寄ってくる。
「はしゃぎすぎて転ぶなよ」
『へーきへーき!……あっ、やば!』
案の定、シルヴィアは地面につまずいて風船を空へ飛ばしてしまった。
『ああああ!バイバーイ……』
『ふふふ、まったく騒がしいわね』
レイカが肩をすくめて笑い、エボルも小さく口元を緩める。
──
その夜、アパートに戻った三人はそれぞれ風呂に入り、夕飯を分け合った。メニューは近くの屋台で買ったカレーと、ポケモン用の特製きのみサラダ。
エボルは床に座り、食後の眠気を感じながらポケモン用のテレビに映るニュースをぼんやり見ていた。
「明日も……こうだといいな」
『えっ、何か言いました?』
「いや、なんでもない」
エボルは寝転がりながら、部屋の天井をじっと見上げる。
──明日はどこへ行こう。
戦いのない日々が、少しだけ続きますように──