偽りの兎座   作:コユルギミカン

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ユニオンの3匹

 カロス地方──ミアレシティを中心に、五芒星(ごぼうせい)のような地形を織りなしているのが()の地の地理的特徴だ。

 

 現在こそ、そこに生きる人々とポケモン達は平穏で安寧な日々を享受しているが、それはあくまで過去に起こった悲惨な戦争と事件の上で成り立っていることを忘れてはならない。

 

 はるか昔、約3000年前に起こった大戦争と、憤怒に駆られた暴王がもたらした最終兵器による、その凄惨な結末。そして、その破滅を現代にもたらさんとした、フレア団による事件。

 

 王族の末裔が歪んだ理想を実現せんとし、再び忌まわしき最終兵器を目覚めさせ、カロスを……いや世界を焼き尽くさんとした。その愚かな野望は、若きポケモントレーナー達の活躍によって阻止された。

 

 カロス地方に生きる誰の記憶にも真新しいその衝撃的な事件から、まもなく1年が経とうとしていた。

 

 

 クノエシティ──ミアレシティの北、つまりカロス地方の最北端に位置する小さな町。その町の外れには、鬱蒼(うっそう)とした森が広がっている。

 

 その森の中に、生い茂る木々に隠れるようにして廃墟が(そび)え立っていた。それは、現代の建築物の作りとはおよそ異なる、古めかしい意匠のある石作りの建物だった。

 

 おそらく、大昔の戦争で建てられた小規模の砦か何かの名残なのであろう。ところどころ朽ちてはいるが、その廃墟は町にあるポケモンジムに引けを取らないほどの大きさで佇んでいた。

 

 深い森の奥に位置するということもあってか、町の人間やポケモンたちも滅多に寄りつかないその廃墟には、多くの野生のポケモンが集団で暮らしていた。

 

 といっても、彼らはただの野生のポケモンではなかった。そのポケモンたちのほとんどは、例えばトレーナーの人間に捨てられて自力で生きていく術を失ったり、野生の群れから迫害を受けて追い出されたりと、各々複雑な事情を抱えていた。

 

 そういったポケモンたちが、何の因果かその廃墟のもとへと集まっていき、一つのコミュニティーを形成するに至ったのだ。彼らは、このコミュニティーのことを『ユニオン』と呼び、お互いを助け合い、共存していた。

 

 うさぎポケモンであるミミロップのリンもそのユニオンの一員だった。

 彼女は元々、カロス地方を旅する、ある若きポケモントレーナーの手持ちポケモンであったが、とある事情から彼女の娘とともにそこから離れていき、ユニオンに身を置くこととなった。彼女の娘は、うさぎポケモンのミミロルで、ユイという名であった。

 

 リンは、実力派のポケモントレーナーの元レギュラーポケモンということもあって、戦闘能力が高かったことから、ユニオンの『ガーディアン』に所属していた。

 

『ガーディアン』とはユニオンにおける自警団のようなもので、ユニオンに所属するポケモン間のトラブルを防止、解決してユニオン内の治安を維持したり、あるいはユニオン外から来る『訪問者』や『闖入者(ちんにゅうしゃ)』に対して監視や警告、場合によっては力づくで撃退し、ユニオンのコミュニティーとしての平和を維持する役割を担っていた。

 

 そんな立場であるリンはちょうどいま、日課のユニオン周辺の森のパトロールから帰投しようというところであった。森に夕陽のが差し込み、辺りの景色を赤く染め上げていた。

 

「はぁ〜あ……」

 

 リンは歩みを進めながら思わず、ため息とあくびが混じったような気の抜けた声を出してしまっていた。

 

「どうしたんだよ? でっけ〜ため息なんて吐いて」

 

 そう声をかけたのは、リンと一緒にパトロールに出ていた、本日の担当バディのポケモンだった。

 

 リンがあくびの勢いで潤んだ瞳を声のする方にむけると、そこにはじんらいポケモンのゼラオラが怪訝(けげん)そうな顔をしていた。

 

 彼は俗に言う幻のポケモンと呼ばれる希少な存在なのだが、彼も複雑な事情があってユニオンに身を寄せているようであった。

 

「だってぇ〜、人間どころか野生の野良ポケモンも1匹も見つからないなんて退屈すぎるでしょ〜」

 

 リンは不満気な口調でゼラオラに言った。

 

「退屈って……おいおい……ユニオンの周りに誰も寄りつかないってことは、つまり俺たちにとってトラブルの種がないってことになるんだから喜ばしいことだろ? 一体何を期待してるんだよ……」

 

 ゼラオラが呆れ気味に首を横に振りながら答えると、その様子が(しゃく)に障ったのか、(まく)し立てるようにリンが言葉を並べ始めた。

 

「それは、もちろん! 血気盛んなポケモントレーナーや縄張り意識の強い野良ポケモンとの熱い本物のバトルでしょ〜! やっぱりポケモンとして生きているからには燃え上がるバトルを繰り広げてこそ、生きてるって実感がより強くなるっていうか〜……う〜ん、ゼロくんにわかるかな〜私のこの気持ち〜」

 

 ゼロと呼ばれたゼラオラは崩れ落ちそうな頭を右手で抱えながら、先ほどよりもさらに呆れた様子で声を返した。

 

「いや、わからね〜し……どんだけバトルがしたいんだよあんたは。そもそも昨日ユニオンの中でバトル大会を開いたばっかりだろ。それに、ガーディアンの訓練で毎日のように組み手とか模擬戦とかもしてるんだからそれで我慢しろよ……」

 

 ゼロのその発言を聞くと、次はリンがやれやれと呆れた様子になった。

 

「やっぱり、本当にわかってないなぁ……私が言ってるのは、燃え上がるような『本物の』バトルがしたいってことなの。ユニオンのバトル大会は威力が低い技しか使っちゃいけない規則だし、ガーディアンの訓練も決められた技を決められた通りに繰り出したり避けたりするだけ……そんなことしても、私の気持ちは抑えられないの!」

 

 すると、次はゼロの方が深いため息を吐いてしまった。そして投げやりな言葉をリンに投げかける。

 

「あっそ……ほら、くだらない話してないで、さっさと戻るぞ。このままだと完全に日が暮れて夜になっちまう」

 

 そう言ってゼロが再び前を向いて歩を進めると、リンが立ち止まったままゼロに声をあげた。

 

「ねぇ……久しぶりに本気で()り合わない?」

 

 自分の言葉を無視して話を続けようとするリンに嫌気が差したゼロは、歩みを止めてリンの方を振り返り不満気な口調で返答した。

 

「だから、くだらない話はやめろって言って……」

「もしかして、ビビってるのかなぁ〜?」

 

 ゼロの声に間髪を入れず、リンが悪趣味な声で言葉を口にした。それを聞いた途端、ゼロの口元から生えている髭に僅かながら電流が走った。

 

「……あ?」

「いや、ごめんごめん。本気で私と戦って勝つ自信がないんだよね、ゼロくん。わかる……わかるよ〜。自分の弱さは見せたくないものだよね〜。うんうん。さっきの私の発言は忘れてくれていいから、早く帰ろっ♡」

 

 そう無邪気な笑みを浮かべながら、リンが再び歩みを進めゼロの横を通り過ぎようとしたその時、ゼロの手がリンの肩をグイッと引き留めた。その掌の肉球からは、彼の表情に共鳴するかのように痺れるような電気が脈打っているのが、リンにはっきりと伝わっていた。

 

 リンは少々驚いた様子でゼロの方に顔を向けながらも、内心では喜びの声を上げたくなるほど浮き立っていた。

 

「……こっちが黙ってれば言いたい放題言いやがって……いいぜ、お望み通り本気で相手してやるよ……ただし、どうなっても知らね〜からな……!」

「ホント!? ありがとうゼロくん! お手柔らかにお願いね♡」

 

 ゼロは額のトサカと頬のヒゲから肉眼でも分かるぐらいの勢いで青白いプラズマをバチバチと鳴らしながら威嚇していたが、リンは動じずに飄々(ひょうひょう)と受け流しているようだった。

 

 

 幻のポケモンと呼ばれる存在の一員であったゼロの強さは、その肩書きが持つ気高さと厳格さの通り、並大抵のポケモンでは全く歯が立たないほど他を圧倒していた。

 

 事実、彼はこのユニオンに加入してまもない頃にガーディアンの筆頭ポケモンとして選ばれ、ユニオンのポケモン達から畏怖(いふ)と尊敬を集める存在になっていた。

 

 それ故に、彼は自らの力に誇りと自信を持っていた一方、それをユニオンのポケモン達の前でひけらかすことに、えもいわれぬ忌避(きひ)を感じていた。

 

 それは、ガーディアンの筆頭としてユニオンのポケモン達の手本となり続けるべく、例えユニオンの外敵であっても戦闘行為は極力避け、最低限の行動で場を鎮めなければならないという、彼の立場による責任感からくるものであった。

 

 彼は一言でいうと、どうしようもなく生真面目なポケモンだったのだ。そんな彼に湧き上がる内なる葛藤(かっとう)を、リンは見事に見抜いていたのだった。

 

 

「……距離をとったらカウントダウンするぞ」

「はいはい、お構いなく〜」

 

 ゼロが言い終わる前に既にリンは彼から5メートルほど離れた場所まで移動し終えていた。彼女は軽口を叩きながら、両腕を軽くストレッチさせて立ち止まっていた。

 

「……なぁ、本当にいいのか?」

「え、何が〜?」

 

 戦意を高める中でゼロから投げかけられた唐突な質問に、リンは思わずきょとんとした表情で聞き返した。

 

「ユイちゃんのことだよ……もし、あんたが大怪我でもしたら、あの娘が悲しむだろ?」

 

 ゼロは顔を爪でポリポリと掻きながら(うつむ)き気味に言った。呆気にとられるリンを見ると、そのまま言葉を続ける。

 

「さっきは……その……勢いで受けちまったけど、やっぱり止めておいた方が……」

「プッ……アハハハハッ!!」

 

 唐突に響き渡る甲高い声に驚き、ゼロが俯きかけた顔を上げると、リンはお腹を抱えながら盛大に笑いを爆発させていた。

 

 その様子を目の当たりにして今度は、ゼロの方がきょとんとした表情で呆気に取られてしまった。

 

 思わず目に(にじ)み出てしまった涙を指で(こす)りながら、リンが笑い混じりに言葉を絞り出す。

 

「……いや……ごめんごめん……ゼロくんってホント〜に優しいんだね……私の娘のことまで気にかけてくれてるなんて……」

 

 そこまで言い終わると、リンは大きく深呼吸して表情を整え、改めて口を開いた。

 

「……でも、そのことなら大丈夫だよ。あの娘は強いから、ちょっとやそっとのことじゃ挫けたりしないわ。それに……」

 

 そして、彼女はいつもの可憐で無邪気な微笑みを湛えながら、静かに、しかし力強く空気を震わせた。

 

「知ってるでしょ? 私がそんな簡単にやられるようなポケモンじゃないって……」

 

 その言葉を聞いたゼロは、鋭い眼差しを向けているリンの姿を見ながら、どこかホッとしたような表情を浮かべた。

 

 ゼロがリンとのバトルに乗ったのは、単に彼が彼女の挑発に乗せられただけという訳ではなかった。

 

 もちろん、リンの小馬鹿にするような発言にゼロは多少の(いきどお)りを覚えていたのは確かだったが、それ以上に彼はリンの実力を認めていたのだ。

 

 ミミロップは本来、バトルポケモンとしての能力で言えば、幻のポケモンと呼ばれるゼラオラにはとても及ばないはずである。

 

 

 リンが数ヶ月前にユイを連れてユニオンに転がり込んできた際も、ゼロは彼女の力を当然のように低く見積もっていた。なのでリンがユニオンに加入して早々に、ガーディアンのもとへ赴き、その筆頭である自分に決闘を挑んできた際、彼は心底度肝を抜かれた。

 

 その時彼はガーディアンはあくまで治安維持および防衛を行うのが目的で、決闘など引き受けられないと説得し、その無謀に思える果たし合いを断固拒否した。しかし彼はその直後、リンの思惑通りの行動に移さざるを得なくなった。

 

 彼女は、あろうことかゼロにいきなり先制攻撃を仕掛けてきたのだ。足技を使った唐突な不意打ちは、彼の急所を突き、その勢いで幻のポケモンの身体を仰向けに倒れ込ませた。

 

 周囲でその様子を見ていたガーディアンの他のポケモン達が一斉にリンを捕まえようとするが、彼女の舞い踊るかのような動きから繰り出される多彩な攻撃に翻弄され、(ことごと)く倒されてしまった。

 

 その状況を目の当たりにしたゼロは倒れ込んだ姿勢から起き上がると、リンの力を過小評価していたことに初めて気づき、彼女の暴走を何としても止めることを決めたのだった。

 

 それから、ユニオンの『リーダー』がユイを連れてリンを止めにくるまでの約10分間、2匹は激しくぶつかり合い続けた。流れるようなステップから襲いかかるリンの強烈な技と、稲妻の如き迅速の動きから雷撃を操るゼロの勇姿は、倒れながらも僅かに意識が残っていたガーディアンのポケモン達を釘付けにするのに十分だった。

 

 その中で、ゼロは久しく忘れていたポケモンとして自らの全力を発揮する感覚を思い出し、いつのまにか口角を上げてしまっていたのだった。

 

 結局、リンとゼロはお互い軽傷のまま勝負は中断され、リンはユニオンの『反省部屋』……要するに独房へと1週間投獄されるのであった。

 

 リンがいない間、残された娘のユイのことを不憫(ふびん)に思ったゼロは、母が『反省』するまで、娘の面倒を見てあげていたのだった。そのことがあってから、ゼロはユイに兄のように慕われるようになったのであった。

 

 ともあれ、その1週間後リンが全く反省した素振りのない様子で『反省部屋』から出てきた時はさすがのゼロも強い憤りの衝動を覚えたが、小言を言う程度まで自身の感情をなんとか抑え込み、リンの能力を評価しガーディアンへ勧誘するのであった。

 

 彼女はその申し出に対して、待ってましたと言わんばかりに快諾した。だが、リンのしでかした行為に対して、やはりと言うべきか当初はガーディアンに所属するポケモン達をはじめとして、ユニオン内におけるリンへの評判はそれはひどいものだった。

 

 中には1週間の『反省』では物足りず、母娘共々ユニオンから追放するべきと声を上げる者もいた。しかし、その悪評も(たちま)ち消え失せた。

 

 彼女はガーディアンに加入してから、弱きには優しく強きには厳しくというスタンスで真っ直ぐに任務をこなしていった。

 そして、ユニオンの治安を脅かす不届者(ふとどきもの)には、相手がたとえどんなポケモンであろうとも堂々と立ち振る舞い、勇猛果敢(ゆうもうかかん)に立ち向かっていたのだった。

 

 それに加えて、彼女の持ち味である天真爛漫(てんしんらんまん)な性格と可憐(かれん)な姿はユニオンのポケモン達を老若男女問わずに魅了していった。

 

 こうして、彼女はユニオンに混乱をもたらした傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な暴れ兎から、ガーディアンのNo.2としての立場と人気を得るまでに評価を覆していったのだった。

 

 ゼロ自身も、リンの実力をしっかりと認めつつ、内心ではもう一度本気で戦い、あの時の決着をつけたいという感情を僅かに揺らめかせていたのだった。

 

 

「……おーい、ゼロくーん! ボーッとしてないで早くやろうよー!」

 

 いつの間にか目を閉じて逡巡(しゅんじゅん)してしまっていたゼロの意識を、リンの元気な声が引き戻した。

 

「あ……ああ、すまない。すぐに準備するよ」

 

 彼はそう言うと、リンの反対側へ振り向き、数歩離れていった。そして、立ち止まってゆっくりと深呼吸すると、そのまま10メートルほど離れたリンの方へと再び振り向き、やや大声を出すように口を開いた。

 

「こっちも準備OKだ! 5秒カウントダウンしてから始めるぞ! いいな!」

「うん! いいよ〜!」

 

 リンもゼロに負けないほどの声を上げて答えた。

 

「よし、それじゃ……」

 

「「5……4……3……2……1……0!!」」

 

 2匹のポケモンのカウントダウンが終わると同時に、彼らは力強く地面を蹴ってお互いの(ふところ)に飛び込み始める。

 

 やがて彼らの身体肉薄(にくはく)し、リンの()ぜるような蹴撃(しゅうげき)とゼロの轟くような雷拳(らいけん)がお互いの急所を目掛けて交差しようとしたその時、突如彼らの間に大きな黒い影が割り込んできた。そして、その影は2匹の攻撃を見事に受け止めた。

 

「……何をしているんだ、お前たち!!」

「「!?」」

 予想外の展開に見舞われたリンとゼロは、刹那の後、咄嗟(とっさ)にその黒い影から飛び退くように距離をとった。そして、その黒い影の正体を改めて視認すると、彼らはほぼ同時に顔をしかめ、頭を抱えてしまった。

 

 リンとゼロのバトルに割り込んだ声の主は、彼らにとっての総大将……つまりユニオンのリーダーを務めるポケモンだった。

 

 ばけぎつねポケモン、ゾロアーク。ユニオンのポケモン達からは『ゾロ』という名前で呼ばれていた。

 

 彼こそが、このユニオンの創設者であり、そこに所属するポケモン達にとっての絶対的なリーダーであった。

 

 生まれながらにして名前を持たず、孤独にカロスを放浪していたゼラオラを迎え入れ、『ゼロ』と名付けたのも、娘とともにユニオンへと身を寄せたリン達の身を案じ、彼女の暴走に対する批判を(かば)い続けたのも、全て彼によるものだった。

 

 それ故に、ゼロとリンはゾロに対して完全に頭が上がらなかったのである。

 

「ゾロ……なんでこんなところに……」

 

 最初に声を上げたのは、ゼロだった。間髪(かんぱつ)を入れずに、いつのまにかゼロの横まで移動していたリンが続ける。

 

「え……もしかしてゾロくん、私たちのこと迎えに来てくれたの!? 何それ〜! (チョ〜)やさし〜♡」

 

 2匹の反応に心底呆れ返った様子で、ゾロは口を開いた。

 

「まったく、お前たちときたら……いいか、もうとっくにパトロールの終了予定時間は過ぎているんだ。なのに、お前たちはこんなところで油を売って、しかもユニオンで禁止されている『決闘』まで始めるとは……わかってるのか? ユイちゃんはお前たちの帰りを待ち()びて寂しく心配していたんだぞ!」

 

 普段冷静なゾロが珍しく憤りを(あら)わにしているのを見て、ゼロは少し首を下げて申し訳なさそうに謝罪を始めた。

 

「すまない、ゾロ……俺の責任だ。ガーディアンの筆頭として俺がしっかりすべきだったのに、ついリンの悪ふざけに乗ってしまった。責めるなら俺を責めてくれ……」

 

 その言葉を聞いたリンは、驚きと焦りと罪悪感の混じったような様子で声を上げた。

 

「ち……ちょっと待ってよ! ゼロくんが謝ることないって! 元はと言えば、私がゼロくんをからかったのが良くなかったんでしょ? ユイのことはともかくとして、ゾロくんを心配させてここまで来させちゃったのは、全部私のせいよ……」

 

「……そこまでだ。言い分なら帰ってから聞かせてくれ。ともかく、ユイちゃんがお前たちの帰りを待っているから、早く帰ってあげるんだ。いいな?」

 

 ゾロの真っ当な発言に対し、リンとゼロはただ頷いて応えるしかなかった。

 

 気づけば、まるで2匹の帰りを急かすかのように、辺りはすっかり漆黒の闇に覆われてしまっていた──





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