ミアレシティの大通りを
どうやら彼女たちは、
なぜ、彼はすべてを忘れてしまったのか……どうすれば、彼の記憶を取り戻せるのか……そもそも彼は……
「よし……着いたよ〜!」
しばらく歩いた後、弾むように朗らかな声が前方から聞こえてきた。そこは、街の大通りから外れた路地に面した建物だった。
「着いた着いた〜」
「ふぅ、ようやく休めますね」
と、マチエールに続きゼロにぃとニャオニクスが建物の中へと入っていった。
私は、意を決して彼らの後に続いてその建物に突入した。
建物の内装は、全くもってシンプルなものだった。入口近くには、来客用のものと思われるテーブルとソファ。
部屋の中央付近には、整然と
そして、部屋のそれぞれの両隅にはキッチンや冷蔵庫、本棚が並べられていた。
私にとって、このような人間の居住スペースは生まれて初めて目にするものだったため、目を丸くしてその光景を見回していた。
「ようこそ!」
私に向けてと思われる、マチエールの声が不意に聞こえてきた。彼女の方を見ると、何だか誇らしげな表情を浮かべているのが見えた。
「『ハンサムハウス』へ!!」
ハンサムハウス……おそらく、それがこの建物の名前なのだろう。
しかし、『ハンサム』とは一体、何のことなのだろう?
興味と疑念に
「マチエール様! お帰りになられたのですわね! あら、そちらは……」
部屋の奥から聞こえてきた、上品で
彼女は、ため息が出るほど見事な輝きを
その美しさたるや、間違いなく私が今まで出会ったどのポケモンも圧倒するほどまでに、私の心を打った。
私は
「あ、ディア! 起きてたんだね! この
そう言うと、マチエールは『ディア』と呼ぶポケモンに向かって、私の状況を伝えた。そうしている間も、私はそのポケモンの美しさにただただ
マチエールの話を聞くうちに、ディアは同情的な
「あら……まぁ……そんなことが……」
「それで、とりあえずこの娘をここに連れてきたのよ」
マチエールの説明が一通り終わると、ディアは私の近くまで近寄り、私の頭を優しく
「それはお
ディアがそう言うと、マチエールの
「……あら、いけない。そんなことよりも、自己紹介がまだでしたわね。はじめまして、わたくしの名は……」
そう言いながら、ディアという名のポケモンはまるでドレスのような胴体に両手を添えながら、軽く頭を下げてみせた。
その
そして、彼女は名乗る。
「ディアンシーと申します。皆様からは『ディア』と呼ばれておりますわ」
彼女の言葉が私の鼓膜を震わせても、私はしばらく動けなかった。
……完全に負けた
……美しすぎる
……彼女は格が違いすぎる
……たとえ、ここでいきなり私が『進化』してどっちの方が格上か挑んでも、全く
……私はその時、今までに感じたことのない謎の敗北感を味わっていたのだ。
「あっ……! えっ……と! は……はじめまして! ディア……さん! わ……わたしは、ユイっていいます! よ……よろしく……です!」
ディアに負けないようにキュートに自己紹介をして、彼女に立ち向かってみせようとした私だったが、結果は
私は恥ずかしさのあまり、顔を
そんな私の内心を知ってか知らずか、ディアはさらに
「まぁ……♡何てキュートなお嬢様なのでしょう。ウフッ……♡まるでお人形さんみたいですわ」
その甘く透き通ったようなセリフは、私を
……ダメだ、これ以上彼女と話していては、悔しさと
そんな絶体絶命の私を救い出してくれたのは、お兄ちゃんだった。
「おい、ディア。悪かったな、気遣いのできないポケモンでよ」
ゼロにぃはディアのすぐ隣に来ると、不機嫌そうな声で話しかけた。
少し離れた場所で、ニャオニクスが必死に笑いを
すると、ディアはゼロにぃに
「あら……お気にされていたのですね。それは失礼いたしましたわ。でも、そんなところもゼラオラ様らしくて素敵だと、わたくしは思いますわよ?」
「ハァ……そういうお前は、本当に口が
ため息混じりに言葉を返すゼロにぃを見て、私はふと疑問に思っていたことを2匹に聞いてみた。
「あの……ディアさんとゼロにぃ……ゼラオラにいちゃんは、どういうであいを……?」
すると、ゼロにぃが
「あぁ……こいつとは、今から1年前に……な。色々あったんだよ」
続けて、ディアが目を閉じて
「えぇ……とある事情で、わたくしが
「へぇ……そうだったんだ……」
今の会話から、私はいくつかの情報を得ることができた。
──まず、ゼロにぃとマチエールは、少なくとも1年前には出会っていたということ。
──ゼロにぃは昔のユニオン……ガーディアンにいた頃のように、ディアを助けるために勇敢に戦っていたこと。
──そして……そのディアンシーという非の打ち所がない完璧なポケモンと『私の』ゼロにぃが、1年の間親交を深めていたということ……
最初は、ディアがユニオンの一件に関係しているのではないかと思ってカマをかけてみたが、それは違ったようだ。
だが、それとは別に、私の中に何か別の感情が湧き出していることを感じ取った……私の知らないところで……私が大好きなゼロにぃと……
「ディアさん! ねぇ……『ディアねぇ』って呼んでいい?」
「あらあら……もちろん、いいですわよ。では、わたくしも『ユイちゃん』と呼ばせてもらいますわね」
一方のディアは、私とは
それが、私の
「うん! いいよ! これから、よろしくね!」
(もしも、ゼロにぃに変なことをするようであれば、容赦なくこいつの顔面を蹴り飛ばしてやる!)
ミミロルの姿から発するキュートな言葉とは裏腹に、ミミロップとして今すぐ『進化』して、とびひざげりをくらわせてやりたい衝動を何とか抑えながら、私はその場をやり過ごした。
ウフフッ……と善と悪の微笑み合戦を繰り広げるディアと私を横目に、ゼロにぃが盛大なあくびを