冬陽コウの逃避行   作:有機栽培茶

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執筆リハビリ作品につきガバガバ設定です。既プレイ勢ですがニワカよりもニワカしているかもしれません。どうかゆるーく読んでください。そして私のガラスの心を労るように原作設定とか原作キャラのキャラクター性とかアドバイスをいただけると作者が喜びの舞を踊ります。


辛い現実から逃げ出したい
人生は運ゲーである


 

 多分、こうなってしまったことにはなんの悪意も善意も関与していない。何が悪かったとか、何がよかったとか。原因、そんなものは何もない。

 

 単なる偶然。ただただ運が悪かっただけ。

 

 ただそれだけだったんだ。

 ただそれだけで、私の順風満帆な人生は崩れ去った。

 

 

 彼女とか恋愛的な関係こそなかったものの、少なくはない友人と比較的恵まれていると言える家族。かなりホワイトと言えるバイト先。金銭面でも困窮していたということはなく、むしろ恵まれていた方であったと言える。

 勉学においても、自分自身が努力したという前提があるものの、その上でそこそこ評判のいい塾にも通わせてもらえ、そこそこ良い成績を取り、そこそこ評判のいい大学に合格した。

 健康面でも特に不満と言えるものはなかった。病弱というわけでもなく、むしろかかりにくい方であったと自負している。体格だって悪くない。ほどほどの筋肉にそこそこの身長。顔だって、自慢だが悪いものではなかったはずだ。

 

 勝ち組、とまではいかなくても中堅。もしくは中の上から上の下ほどの人生を約束されている。そのはずだった。

 

 

 本当に……ただただ運がなかったのだろう。

 納得?そんなものはできるわけがない。原因さえもわからないのだから。黒幕だとか、神様だとか、そういうはっきりとした理由があった方はまだマシだった。まだ理解できた。

 

 だけど何もない。どれだけ探そうと何もないのだ。

 そうなってしまった。ただその現実だけがそこにあった。

 

 

 

 

「さっさと走れガキィ!死にたいのか!?」

「む……っ!む、り……っ!」

「無駄口を叩くから走れんのだ!黙って走れ!」

 

 

 何度転んだかもわからず、全身が泥まみれになりながらも飛んでくる怒声と銃弾から逃げるように震える足を押さえて走り続ける。先輩や歳の近い同期はすでにノルマを達成したのか隅で私に激励を送ってくる。それすらも鬱陶しく感じてしまうものだから、自分も随分と捻くれてしまったものだなと自己嫌悪が加速する。

 

 

 冬陽コウ。

 

 それが今世での私の名前だ。

 随分と明るい、ひん曲がってしまった私の性格には似合わない名前だという自覚はある。

 長々と小難しいことを話していたが、おそらく私は転生者というものに該当するのだと思う。

 前世では前述した通りの順風満帆な人生を歩み、しかし突然なんの脈絡もなくこの世界で目を覚ました。

 

 初めは混乱した。

 性別も身長も年齢も名前も何もかもが変わって。常識さえも変わってしまった。自分自身を含む子供達は頭の上に天使の輪のようなものが浮いているし、大人を名乗るロボットや二足歩行の動物。銃火器をおもちゃのように扱う子供たち。めちゃくちゃだ。当然夢なんじゃないかと疑った。

 

 だってあまりにも馬鹿馬鹿しくて、非現実的で、それを現実だと見つめたくなかったから。けれども次第にそれが現実だとわかって、もう2度とあの日々には戻れないとわかって。

 

 私が十八年。そう、十八年かけて積み上げてきたその全てが崩れ去ってしまったことを悟って。

 

 悲しみ。怒り。もはやそんな言葉で形容できないほどの感情が押し寄せてきて、心がぐちゃぐちゃになって。

 

 

 けれどすぐにそんなことを考えている余裕なんて無くなった。

 徴兵されたのだ。前世では馴染みのないことだったが、どうやらこの世界……いや、学園では内戦が起きているらしく、戦力として扱える年齢に達した私は強制的に従軍させられた。

 

 厳しい訓練に精神年齢の違うものたちとの交流。慣れない体での生活でさえ辛いのに、その日々は地獄同然だった。けれどもそのおかげで今もこうして自分が生きているのだと思うと悪いことばかりではないのかもしれない。きっとあのままだったら私は首でもくくってしまっていそうだったから。

 

 

「蛆虫が!この程度で根を上げるとは!貴様ここに何しにきた!」

「すきで……きたわけじゃ…ッ!」

「口答えをするな!」

「っ!」

 

 

 まあ、感謝など絶対にしてやらないのだが。

 

 

「おつかれさん」

「……ども」

 

 

 同期から投げ渡されたペットボトルに入った冷たい水を一気に飲み干す。突き刺すような冷たさが乾き切った喉奥に流れ込んでいく。その感触から生きている実感を得て、これが現実であると深く認識し私はさらに───………なんて、すぐ鬱になる段階はもう通り過ぎた。いや、正確に言うのならそんなことをしている余裕などなくなってしまったと言う方が正しいのだろう。

 

 

「んきゅ、んきゅ、んきゅ」

 

 

 水うめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

 喉を水が通り過ぎていくほどに生を実感する。乾き切った、疲れ切った体に染み渡っていく。生きている。私は生きている!うっひょ〜〜!水を啜るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!

 

 

 ……失礼。少し取り乱しました。

 

 ともかく、こんな運の悪すぎる私だがこれでも運のいい方らしい。この学園──アリウスというらしい──では私のように職につくことすらできず、養ってくれるような大人もおらず飢えに苦しむ子供が大多数らしい。それもただの噂ではなく、私自身がこの目で何人も見てきた事実だ。日本人の感性を持つ私としては、それを見捨てるのは心苦しいのだがそんな余裕も私にはない。配給される食料だけで数百人の孤児を養うのは不可能なのだ。そもそも、私自身が子供も子供。学生と呼べるか定かではない年齢なのだからそんな余裕はない。

 

 それに、何より運がいいことが私の所属。

 先述したようにこのアリウスでは内戦が行われている。圧倒的下っぱ兼捨て駒の私ではこの内戦の原因を知る由もないしそも興味すらないのだが、そんなことはどうでもいい。

 

 重要なのはこの内戦で生き残れるかどうか……いや、この世界ではどうやら銃弾を喰らっても怪我をする程度らしく死ぬリスクは前世ほどではない。

 

 ──つまり、どれだけ楽をして安全に出世し安定した生活を手に入れられるかが重要だ。

 

 そして私の所属は予備隊と呼ばれる部隊。必要とあれば第一線に投入されるものの普段は戦線の後方に位置される。

 つまり最前線組の、滅多なことでは怪我すらしないこの世界の、しかもちゃんとした訓練を積んだ兵士達が使い物になる限り前線に出されることがない。さらに実戦に出なくても訓練をするだけで食事にありつける。

 

 圧倒的!圧倒的役得部隊!

 

 無論、前線に出ることができない故に手柄などを立てることは難しい。だがエリート街道を歩む以前に死んでしまったら元も子もないのだ。内戦だって永遠には続かないだろう。故に前線に出ることのない後方でのびのびと勉強し、内戦後にまともな職につけるようにする。エリート街道を歩んで戦後ぬくぬく暮らすなんて夢は見ない。地道に知識を蓄え、食糧など価値のあるものを蓄え、自ら仲間、手駒となってくれるものを集める。安全な道を歩み、確実にそこそこの生活を手に入れる。それが私のやり方だ。これが正解であると私は知っている。

 

 ……勿論、突然別世界に飛ばされるなんてイレギュラーは考えないものとするが。

 

 

「ふ……ふひひ……」

 

 

 かんっぺき!完璧すぎる!やはり神は私を見放していなかった!私には“運”がある!努力さえすれば、“普通”を手にすることができるだけの“運”が!転移だか転生だか走らないが、あんな理不尽な目に遭っただけの“運”がきっとこれから帰ってくるに違いない!だが、無論高望みはしないさ。“そこそこ”だ。“そこそこ”がちょうどいい。“普通”こそが至高なのだ!

 

 

「貴様ら!休憩の時間は終わりだ!さっさと整列しろ!」

 

 

 空っぽになったペットボトルをくしゃりと握り潰し、怒声の発生源へと顔を向ける。まあいいさ。その傲慢な態度も。私が“普通”を手に入れるための必要経費だとして受け入れよう。

 

 

「喜べ蛆虫ども!今日は貴様らに良い知らせを持ってきてやった!耳の穴をかっぽじってよく聞け!」

 

 

 なぜなら私は寛容だから。それ故に“運”は私の味方をする。私には”運“があるのだ。

 

 

「貴様らはこれより最前線でヘマをした馬鹿者どもの穴埋めとして最前線行きだ!蛆虫も蛆虫なりに役に立つことを示してこい!以上!」

 

 

 

 

 

 

 ───前言撤回。私はどうやら運がないらしい。




冬陽コウ
(原作開始時)18歳
身長159cm
学園:アリウス分校
部活:(元)アリウス(旧)生徒会治安維持部隊
  :(現)無所属
灰色がかった茶髪が特徴的なアリウス生徒。幼い時より徴兵されたため戦闘経験は豊富。内戦末期に戦場に駆り出され、その際のトラウマか、元からか、その性格は捻くれている。
前世では目立たないもののそれなりの好青年だったらしい。
関東平野と比べて富士山くらいある。それは言い過ぎかもしれない。
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