冬陽コウの逃避行   作:有機栽培茶

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申し訳程度の原作キャラとの関わり


別れと初の戦場と

 

 最悪だ。

 

 

「えへへ……美味しい、美味しいです。私はこうやって餌付けされていくんですね……食べ物で釣られて、逃げられなくして、追い詰めて…」

「そう、よかった」

「……あの、もう一つもらっていいですか?」

「……」

 

 

 計画外だ。そんなこと想定していなかった。確かに私たち予備隊はそういう時……前線を張る部隊がダメになったときに代わりに使われるってのは事前に知らされていた。だが、そんな。本当にそんなことが起こるなんて想定しているわけないだろ!?

 

 この世界の人間、キヴォトス人は頑丈だ。特に子供……頭の上に光輪(ヘイローというらしい)が浮かんでいる生徒は滅多なことでは傷つかない。それこそ個人差はあるものの銃弾をその身に受けて「痛ッ」で済ませる程度には。

 

 それが、使い物にならなくなった?勿論うちの上層部のことだ。ただの怪我如きでそんな判断はしない。良くて欠損、悪くて………死。栄養失調だってあり得るが、上だって人員が少ないことは把握しているはずだ。こんな、私のようなガキが駆り出されるくらいには。だからこそ前線を張れるような兵士を少ない食料で使い捨てにはしないはず。実際予備隊の私たちにも十分な食事が配られているのだからその辺りの問題ではないはずだ。

 

 くっそ。なんで。銃弾程度で死ぬわけがないんじゃないのか?前線で何が起こっている?

 

 

「……ヒヨリ、無茶言っちゃ…」

「んーん、大丈夫。今日はたくさん持ってきたから」

 

 

 なぜだ。本当に。私が積み上げたものはなぜこうも容易く壊される。これまで隠れ家に溜め込んだ貴重品の数々も、保存食も、それらを使って集めた手ごm……仲間たちも。全てが無にきした。

 

 あー!死ぬんだ!私は前線にぶち込まれて殺されるんだ!生徒なら銃弾に耐えられる?ふざけんな耐えられるわけないだろ私が!くっっっっそいったいんだぞあれ!あんなん何発も食らったら死んじゃうって!あー終わりです。あーあー。私の旅はここで終わりです。デーデーデー。ゲームオーバー。

 

 

「む……来てたのか」

「サオリ。すまない、お邪魔してるよ」

「いや、構わない。むしろ私たちがお前の家に居候させてもらっているようなものだ」

「そんなことはないんだけど…」

 

 

 外面は取り繕いながらも内心で頭を抱えていたらトタン製の扉が開かれ紺色の髪をしたキリッとした顔立ちの少女が姿を現す。

 

 

「少し間が空いてごめん。何か変わったことはあった?」

「特別困ったことはない。だが……やはり内戦の影響か最近あたりが騒がしい」

「そうだね……結構激化してるみたいだ。みんなも気をつけてね。君たちはまだ小さいんだから無茶しちゃダメ」

「そう年齢は変わらないだろ…」

 

 

 錠前サオリ。そしてもっきゅもっきゅと私の持ってきた非常食を頬張る水色の髪を持つ少女、槌永ヒヨリ。遠慮がちに彼女に続く傷があるのか巻かれた包帯が特徴的な幸の薄そうな少女、戒野ミサキ。

 彼女らは私が餌付け……それは言い方が悪いな。私が交流を持つ仲間達だ。内戦が続くにしろ終わるにしろ、治安の終わっているアリウスじゃ、一人でいるのは危険だ。こうして複数人で集まってグループを作った方が生存できる確率は上がる。だからこそこうして食事を持ってきたり棲家を提供したりしていたのだが………ま、それも無駄になってしまった。

 

 

「サオリ。少しいいかな」

「どうし………何かあったのか?」

「うん」

 

 

 だから残念だがお別れだ。寂しいが、流石に前線付近の激戦区には連れて行けない。訓練もしたこともない彼女らを連れていったってせいぜい盾にしかならない。身体的な年齢が変わらない程度だとしても、精神的に自分より幼い子供たちが、それも交流を持った子たちが傷付くのは流石に心にくるものだ。

 

 

「前線行きになった」

「…!」

「多分、明日には出発」

「ついていくことは…」

「……」

「……そうか」

 

 

 流石に年長者の自分が抜けるのは不安なのだろう。食料の確保などは半分以上私が行っていたから。だが彼女らなら問題はないだろう。溜め込んでいた分の資源は渡しておくし、彼女らならこの環境でも生き延びる能力があると見ている。

 

 まー問題なのは私なんだよなー。君はこの戦場で生き残れるか。無理です対戦ありがとうございました。ほんとどうしよう。

 

 

「食料とか、使えそうなものを隠してる場所は地図にして机に置いておいたから。後で見てね」

「……」

「……大丈夫。君たちなら大丈夫。3人で協力すれば私がいなくてもやっていけるよ」

「そんなこと……っ!」

「大丈夫。私は君たちなら大丈夫だって確信してる」

「だが…」

「君は私を信じれない?」

「……それは、ずるい」

 

 

 大人はずるいのさ!!

 ……ズルいから軍から脱走していいかな。ダメだよね。そも無理だよね。こんなクソみたいな環境で脱走兵になってまで生き延びられる気がしない。

 

 

「うん。二人を頼んだよ」

「……わかった」

 

 

 手に持って立ち上がるのは支給された装備だけ。悲しいね。積み上げたもの全部なくなってしまった。これが人生ってやつかクソ喰らえ。

 

 

「……また」

「うん。またね」

 

 

 トタン製の歪んだ扉を無理やりこじ開ける。きっともう帰ってくることはないだろう。

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