冬陽コウの逃避行   作:有機栽培茶

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お久しぶりです。ぼちぼち更新するよと言いながら一ヶ月弱放置していた作者です。許して……。
今回の回はなんか修羅場ってるしキャラ崩壊注意ですが、挟まないとと思って……多分次回からは後日談らしく日常回になって行くと思いますので。

ようやくできた冬陽コウちゃんの挿絵でございます。イメージと違ったらごめんなさいね。ご自由に妄想いただいて結構です。

【挿絵表示】



逃亡生活日記
飛び出してゆけ人間関係(逃走)


 

「コウ姉さん!」

 

 

 すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……

 これは断じて抱きついてきたヒヨリのSmellをできる限り堪能しようと深呼吸しているわけではない。落ち着け、落ち着け私と冷静になるための行為だ。その証拠に私の顔は青ざめ、目はあらぬ方向へ向き、体は微かに震えている。これは断じてヒヨリのあまり風呂に入れていないであろう体臭を嗅いだ結果ではない。

 

 

「わ、私は…!コウさんが死んじゃったんじゃないかって…!うわああん!!!」

 

 

 この感情の荒ぶりは、そう。数年ぶりに会うことのできた家族への喜びだけではない。罪悪感と、それによる恐怖。

 

 

「おかえり……よかった、生きててくれて」

 

 

 絶賛抱きついて私を締め殺そうとしているヒヨリは昔からこんな感じであったが、当時は警戒されていたのか少し距離を感じていたミサキまでも目の恥に涙を浮かべて……笑ってる!?君そんな可愛い笑顔できたっけ?いやーみんな美人に成長したね。うん。特にヒヨリなんかすごいのなんのって。どことは言わないけど。ははは。

 

 あー。うん。

 

 

「あ、あの……ご、ごめんね?そろそろ、放して欲しいんだけど……ここレストランだし……人の目とかさ?ヒヨリちゃんと……サオリちゃんも」

「む……このままで良くないか?」

「ダメ……じゃないかな」

 

 

 いいわけがないだろう、と前から締め殺そうとしてきていたヒヨリを外し、後ろから私を抱えていたサオリの上から横に退く。流石にファミレスで高校生がすることじゃないと思うのだ。

 

 さて、ふざけるのはそろそろやめにしましょうか。

 お久しぶりです。みなさま。

 

 あの世紀の大脱獄劇を繰り広げた後、私、冬陽コウは元気にやっております。情報屋をぶちのめしてしまったせいで依頼がなかなか入らなくなって借金が返せなくなる!なんて恐れもあったけれど、一緒に脱獄した八手シエちゃんが助けてくれたおかげで借金も無事返済でき、依頼の方もヒバナちゃんが今回お世話になったツテこと“お友達”からいくつか依頼を分けてもらってなんとか稼げている。

 

 シエちゃんの店で働かせてもらっている団員が稼いでくる額が私たちの本業の利益を超えることが多々あるのが懸念点であるが。このままでは私たちはバチバチヘルメット団ではなくバチバチアルバイターズになってしまう。

 

 ……とまあ、こんな感じで私は、私たちバチバチヘルメット団はまあまあな生活を送っている。

 

 

 いや、送っていた。そう、今日までは。

 

 

「……本当に、生きていてくれてよかった。コウ」

「あ……うん。私も、そう、思うます」

 

 

 再度サオリに抱きしめられながら私は窓の外を見る。ああ、いい天気。

 

 どうしてこうなったのか。話すと長くなる……わけではないので簡単に説明すれば、脱獄の後サオリに詰められて本当に私が冬陽コウなのか確かめられて脈まで測られて大号泣されて、そんでもって後日他のメンバーにも会ってほしいと言われたわけだ。断れるわけがない。断ったらダメだと私の本能が警報を鳴らしていた。流石に私たちヘルメット団についてきて私の私生活全てにストーキングしようと言い出した時は断ったが。

 

 んで、今日。こうしてファミレスにて旧アリウス組のみんなに尋問されてるわけですね。それで私の葬式の日程なんですけど……。

 

 

「コウさんは今まで大丈夫だったんですか…?わ、私たちは先生が来るまで彼女……あ、ベアトリーチェって人をはじめとした大人にきつい訓練をさせられて……ミスしたらご飯抜きで……血まみれになるくらい殴られてる人もいて……私達が怒られそうになった時もあったんですけどサオリ姉さんが守ってくれて……あ、今ここにはいないんですけどアズサちゃんっていう子もいて…それで……ああで……こうなって……セイアっていう、トリニティの偉い人を暗殺することになって……エデン条約を襲撃して……失敗したら姫ちゃんを生贄に捧げられちゃうってなって……ヘイローを破壊する爆弾で………なんだかんだあってぇ……先生を撃っちゃって……でも助けてくれて……色々あって……かくかくしかじかでぇ……ああ!不幸自慢をしたいわけじゃないんですよ!?今私たちは幸せですし……死んじゃったかと思ったコウ姉さんにも会えて…えへへ。た、ただ、その……これだけ頑張ったということをですね……?」

 

「……ああ。よく、頑張ったね。ヒヨリ。そして、みんなも」

「えへへ」

 

 

 ふにゃぁと溶けるヒヨリの頭を撫でながら私は遠い目をする。なんか、その、すっごい頑張ってたなって。

 彼女の話を聞いてベアトリーチェとやらに怒りが湧く。しかし私にその怒りを抱く資格がないことは理解している。先生が助けに来たくだりを聞いて、私もその場にいれたらという気持ちも。しかし結局は過ぎ去ったことで、結果がわかっている出来事ゆえにだ。ハッピーエンドが確定している物語に憧れるのは簡単だ。だが、私は当時その先生…もしくはサオリに直接助けを求められてその声に即答できただろうか?いや、できないだろう。恐れ故に。私はそういう人間だから。故に彼女の話を聞いてそんな感情を抱いた私に……卑怯で臆病で矮小なクズ野郎に怒りが湧く。

 

 そして、友のために恐怖の対象とも取れる大人に立ち向かった、私の対極とも取れる彼女たちが目の前にいるという状況に恐怖を抱いた。

 

 

「……コウは、こっちに来て……どうだった?酷いこととか、されなかった?……大人とか生徒に酷いこととかされてない?」

 

 

 ミサキが少し心配そうに私を覗き込んでくる。確かに悪い大人もいたにはいたが、それ以上にいい人もいた。ヒバナちゃん達も見た目は怖いし、やってることは悪いことかもだけど……いい人たちだ。

 

 ああ、そう。だから。私は……

 

 

「いや、大丈夫だよ。私はなにも」

 

 

 そう。

 

 

「何も。なにも苦しまず、なにも辛い思いもせず、今日までのうのうと、生きてきた」

「……コウ?」

 

 

 逃げた先にあるのは苦しみだけだ。

 私は、この罪と向かい合わないといけない。許しを乞うためじゃない。ただ、事実として。私の罪を、彼女たちは知るべきだと思ったから。私の……ただ、何もせず、傍観していた……いや、傍観すらしていない。事実から目を背け、悲劇から目を背け続けてきた事実を。

 

 

「私は……アリウスを脱出して、ヒバナちゃんたちに拾われた。そこで得た生活はアリウスの時よりも満ち足りていて、そして、自由だった。映画を見ることも、カラオケに行くことも、本を読むことも……そして何より、その気になればアリウスに戻ることもできた」

 

「私は、君たちをアリウスから連れ出すことができたかもしれなかった」

 

「あの悲劇の地から、もっと早く、連れ出すことができたかもしれなかった」

 

「それをしなかったのは、私が手にした新しい生活に固執し、失うのを恐れたから。今の幸せに溺れ、救うべき人を見えないふりをしていた。ひたすら毎日言い訳をして。忙しいから。今はまだ時じゃないから。私の生活がいっぱいいっぱいだから。そう、嘘をついて」

 

「私は、やろうと思えばいつでも戻れるはずだった。にもかかわらず戻らなかった。私は、私は……我が身可愛さに君たちを、見捨てた」

 

「君たちのこれまでの不幸は、全て私の怠惰故だ」

 

 

 そう言って、私は目を瞑る。とても、周りの彼女たちの目を、顔を見ていられなかったから。

 震える。恐ろしい。皆が、私をどう見ているのかが恐ろしい。かつて感じた死の恐怖。ある意味でそれ以上に恐怖を感じる。

 

 

「……ゆ、許してほしいとは言わない。ただ、これだけは……つ、伝えなければならないと思ったから」

「コウ」

「っ」

 

 

 しばらくの静寂。実際には一瞬だったのかもしれないが、私にとっては長く感じられたそれに耐えられなくなって、言い訳のようなことを口にした瞬間。サオリの私の名を呼ぶ声が耳に届く。

 

 今の私の心情は、死刑宣告を待つ罪人のようだった。

 

 

「無理に嘘をつかなくていい」

「……へ?」

 

 

 予想とは違った、優しい声に思わず顔を上げる。

 

 

「ヒバナから聞いた。お前は、彼女と出会った日から毎朝カタコンベの入り口に来ていたって」

「っな、なんで……」

「コウがアリウスから脱出したあの日、何があったのかも私は知っている。調べたからな」

「……どうして、そこまで」

「怖かったんだろう。仲間が死んでいったアリウスに戻るのが」

「……」

「それでもお前は、コウは毎日来ていた。恐怖の対象であるそこへ。私達を助けに行こうとして。違うか?」

 

 

 彼女の表情は、とても柔らかかった。私を責めるようなものじゃなかった。

 

 

「…………そう、だよ。でも。それでも。だからと言って私が君たちを助けに行かなかったのは事実だ!私は、過去を恐れて、君たちを見捨てた!」

「違う。お前は私達を見捨ててなんかいなかった。その証拠に、毎日欠かさず来ていたんだろう」

「……で、でも」

「それで十分なんだ。コウが、私達を忘れないでいてくれた。見捨てないでいてくれた。そして何より、こうして生きていてくれた。それで十分すぎるんだ」

 

 

 そう言って彼女は私を優しく抱擁する。

 結果だけだ全てだと考えていた。結局私は彼女達を助けられず、ただあのカタコンベの暗闇を見ていただけだった。それは紛れもない事実であり、彼女たちはそんな私を恨むだろうと考えていた。

 

 だが、そんな心配も、優しい彼女の声と、温かい体温に崩れ落ちていく。

 

 

「う、うわああああああああああああああああん!」

 

 

 一度決壊した涙は止まらない。私はみっともなく、年下であるサオリの胸の中で泣き喚いたのだった。お疲れ様。そしてありがとう。泣きじゃくる私の背中に投げかけられた言葉に、積み重なった心の重荷が、涙と共に流れ出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……みっともない姿を晒してしまい、誠に申し訳ありませんでした」

 

 

 冒頭で彼女たちに注意したにもかかわらず、私が1番ファミレスに迷惑をかけてしまった気がする。とても恥ずかしい。おらもう生きていけんばい。

 

 

「あと……その、ずっと気になってたんだけどさ」

「なんだ?」

「そこの可愛らしいお嬢さんはどこのお方で……?」

「ああ、コウは知らなかったな」

 

「姫………秤アツコだ」

「久しぶり。これからよろしくね。コウちゃん」

 

「…………姫様???」

 

 

 なんか家族と再開したら昔の上司である生徒会長様がいた。先ほどの号泣と1番を争うほど、感情が荒ぶった瞬間であった。




投稿していない間に登録数600超えて評価も40超えてました。赤バーにも戻ってました。あの、本当にありがとうございます。そしてマジですみませんでした。不定期ですが、あまり開きすぎないように更新頑張ります。

更新していくので……もちょ〜っと応援をね、いただけるとね()
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