皆様ありがとうございます!
……なぜ完結後に……?
こんにちわこんばんわ。私だ。冬陽コウだ。
旧知の友と思わぬところで再開し、情報屋に嵌められとんでもない目にあったあの事件から少し経った今。私たちバチバチヘルメット団は絶頂期というものを迎えていた。
あの時から付き合いのある八手シエが経営するいくつかの店に噛ませてもらえたおかげで商売繁盛お金ジャブジャブ。ラブの野郎が率いるジャブジャブヘルメット団以上にジャブジャブしている。まあそのせいで他のヘルメット団やら不良連中に嫉妬やら何やらで目をつけられてバチバチしているのだが、そういう荒ごとは得意だ。むしろ本業だ。
うちの団長であるヒバナちゃんはヴァルキューレどころかあの風紀委員を、委員長が出てこない限りはという言葉がつくものの相手どれる実力。私含めたほかの団員が有象無象だとしても、ヘルメット団やら木端の連中に負けるわけがない。
というわけで私たちは最高に絶好調というわけだった。
それ故にだろう。
『コウさんやべぇ!トラック盗まれた!』
「へぁ…?」
油断というものが生まれたのは。
◇
「もっと飛ばして!追いつけない!」
「わかってますけど…!うちらのオンボロバイクじゃなかなか…!」
「なんで買い替えなかったの!?」
「ふははははは!!!このトラックの積荷は俺たちキヴォトス・トランスポーター連盟、略してブロロロ疾走連合がいただいた!テメェらの代わりに俺たちが届けて宅配代を頂いてやる!」
高速道路を疾走するのは私と団員の1人が二人乗りするオンボロバイクに、ブロロロ疾走連合を名乗る不良どもが奪った元々私たちのトラックであったものとそれを囲むように走る不良どもの乗った改造バイク。
くそが!ふざけた名前しやがって!ブロロロ疾走連合なんて聞いたことないぞ!そもそもキヴォトス・トランスポーター連盟をどう略せばブロロロ疾走連合なんて馬鹿みたいな名前になるんだ!しかも…くそ!運転荒いぞ!中身のこと考えやがれ!
『コ、コウさん!?大丈夫ですか!?』
「シエ……ごめんね、ちょっと面倒なことになってるかも」
『うぅ……このままじゃ午後の分が足りません……お客さんが困っちゃいます……』
「う……な、なんとかするよ!大丈夫!私たちに任せて!』
『っ!はい!お願いします!』
そう言って八手シエちゃんとの電話を切る。こちとら無理言って彼女の商売に一枚噛ませてもらってるんだ。その信頼を裏切るわけないはいかない。
「そう言えば元々トラックに乗ってた奴らと護衛の奴らは?」
「護衛は車ごと爆発四散。運転手たちは道路に放り出されたみたいっす。一応無事っぽいっすよ」
「ならいいけど……くそっ!そもそもなんでゲヘナ学園の敷地を通るルートにしたのさ!?こうなることくらいわかってたでしょ!?」
「だ、だってリーダーが『ゲヘナ学園?あー大丈夫大丈夫。不良いっぱいいるっつってもみんな雑魚だし!それにここ通った方が近道なんだろ?いけるいける!』っていうから……」
「あの脳筋バカ基準に物事進めんな!アホ!!!で!?その当の本人は!?」
「ラーメン食べに行くって言って……」
「F◯CK!!!!!」
あのバカが!
「そんなバイクで大丈夫か〜?」
「おいおいおせぇぞー?」
「ライダービビってるぅ!法定速度守っちゃってるぅ!」
「法定速度守んのは常識だろうがクソどもが!」
銃弾とともに煽りを飛ばしてくるあいつらにも、バカな判断をしたヒバナにも流石にキレた。いくら私が温厚で優しいことで有名だとしても流石に限度はある。
「ちょっと揺れるけど運転よろしく」
「え、ちょっと!?」
そういって私はそのままバイクの上で立ち上がり、銃を構える。前方から吹き付ける強風に揺れる不安定な足場。そして私たちを狙って飛び交う弾丸。
この怒りの前には、一切の問題なし。
「うげっ!?」
「なっ!?当てたのkっ!?」
「うそだr」
「やm」
計四回の銃声が響くとともに、頭を撃ち抜かれた不良どもは意識を一瞬で失い、制御を失ったバイクごと倒れ爆散してゆく。
「よし……!」
「うわわわわ!?ゆれ、あぶっ、早く座ってください!」
ざまぁみやがれ!!!
とはいえ相手もただやられてばっかじゃないようで、残った一台のトラックの天井が開き敵の不良が姿を現した。
───黒光する機関銃と共に。
「なんであんなものがただの輸送車に!?」
「り、リーダーが派手に改造しようって!」
「おバカ!!!」
「これでも食らえや!!!!」
100倍返しと言わんばかりに機関銃が私たち目掛け乱射される。打ち出されるは大量の弾丸。元々機関銃にセットされていたものだろう。律儀に強盗犯がその機関銃にあった弾丸を持ってきていない限り。詰まるところ私たちの金である。
「無駄遣いすんなゴラァ!!!」
「うわわわわわ!?!?当たる当たる当たるぅぅぅ!!!」
道路のアスファルトを抉りながら私たちを狙い続ける弾丸の雨。このままじゃ蜂の巣にされかねないし、何より金の無駄だ。だから。
「ヘッドショット!」
「マジで狙撃だけは一流っすよね」
「“だけは”ってなんだ“だけは”って」
頭に一発。銃座が空になったことで機銃は動きを止めた。
アリウス時代から狙撃だけは自信があったんだ。いや、あの時は私にできることが狙撃くらいしかなかったってだけなのもあるんだが、狙撃の腕ならバチバチヘルメット団の誰にも負けない自信がある。
「よし!無力化できた!乗り込むよ!」
「い、いや……確かまだ……」
「まだ何かあるの!?」
護衛も自衛用の兵器も潰した。さああとは乗り込んで強盗犯を叩きのめすだけ、と意気込んだところで団員ちゃんから不穏な一言が。
私は知っていた、人はそれをフラグと呼ぶのだと。
「あ、ああ……」
予想通りだった。
フラグは即座に、迅速に回収された。
「な、なんだ……これ……」
重厚な駆動音と共にその影は高く聳え立ち、私たちを照らしていた太陽をも覆い隠す。原型などどうでもいいかの如く捨て去り、それは大地に立ち上がった。
白き巨体を、反射する太陽光で輝かせ巨人は我々を見下した。
「正義の怒りをぶつけろガン◯ダム!」
「そこはトランスフ◯ーマーだろ!」
「なんでトラックが変形するのさ!!!」
私は怒った。ブチギレた。
「なんかボタンがあったから押したら……こう……」
「り、リーダーが『やっぱロマンだよな』って…」
「無駄金……!!!!!!!」
必ずやかの邪智暴虐なバカを取り除かねばならないと。
「未だバイクがオンボロなのあれが原因じゃないのか!?」
「ろ、ロマンは全てに勝ります!」
「君もそっち側か!!!!」
「ふはははは!!!怯えろすくめ!ジ◯ン脅威のメカニズムに恐怖するがいい!」
「お前らが作ったわけじゃないだろ!」
とはいえ状況は圧倒的不利だ。白い巨人相手に戦う方法なんて知ってるわけがない。ロープでもかけて転ばせられるんじゃないか、なんて発想も出てくるがまずそのロープはどっから持ってくるんだって話だ。パイロットを狙い撃つか?無理無理。どこにコックピットがあるかなんてわからない。そもそもあれ積荷はどーなってんだ。無事なのか?
「もらったぁ!!!」
走馬灯のようにあらゆる考えが頭の中を巡るもどれも実現不可能。私にはこの状況を打開する策がない。そう思っていたその時だった。
「っなぁ!?」
頭上を突き抜ける紫の閃光。そして、胸部に巨大な穴を開け、私たちを見下ろしていた巨人は膝から崩れ落ちた。
「な、なにが………」
助かった。理由はわからないが結果だけ見れば助かった。そう判断しかけた。しかし依然として私の本能は警報を鳴らし続けている。危険であると、今すぐこの場から逃げろと。
その理由は、すぐにわかった。
「大人しくしてもらえると助かるのだけど」
ゲヘナの最高戦力。戦略兵器。破壊の化身。ふわふわ白モップ。
ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ。その人であった。