【習作】恋人以上で友達未満な二人 作:言語嫌い
私の目の前にいる少女の話をしたいと思う。
その少女はまさに奇跡といえる存在だった。
間違いなく少女は望まれて生まれてきた。
人の身では出来ないとされていた禁忌の先で出会えた、
ある女性にとっての希望だった。
でも、その程度の奇跡では足りなかった。
彼女の望みのためにはまだ足りないものがあった。
いや、その足りないものこそが、彼女が何よりも求めたものだった。
そして、それは生まれてきた少女ではどう頑張っても、
どれだけ努力しても解決できないものだった。
でも、少女はそれを知らない。
知らないから、頑張れる。頑張れてしまう。
ほんとに、馬鹿だと思う。
頑張り続ける少女も、手を差し伸べることをせず、
少女を地獄へと突き落とそうとしている私も、
ほんとに、馬鹿だと思う。
「お見事」
顔を隠していなければ、きっと私は少女とまともに話せないだろう。
自分のすべきことを彼から示されていなければ、私はきっと少女の前に立つことすらできない。
「これを君にあげよう」
警戒する少女へとジュエルシードを見せる。
少女は安易に近寄らず、武器は構えたままだ。
武器を向ける少女の目には確かな敵意が見えた。
何度も、何度もむけられたその敵意に、私はいつまでたっても慣れることができない。
「ふふ。まあ、君の考える通り、ただあげるなんてことはしないよ」
振るえる手は、長く大きなローブのおかげで彼女に見えることはない。
だから、彼に与えられたストーリーに沿って、私は演じる。
ジュエルシードを暴走させ、彼女へと危害を加える存在になるために。
彼女は私たちの……最後の希望だから。
「さあ、起きろ」
「……!?」
だから、どうしても自分で会いたかった。
彼には無理を言った。
でも、この状況を私に用意してくれた。
だから、私情は捨てて役に徹しなければならない。
「今の君は一人だ。さて、この脅威にどう立ち向かう?」
渡された箱の封印を解き、ジュエルシードへと触れさせた。
聞いていた通りのことが起こる。
封じられていた魔物にジュエルシードが反応し、凶悪な姿をとる。
「さあ、君はどうする?」
私は少女の前から消える。
でも、どうしても、伝えたくて。
言わなくてもいいことを、言ってはいけない言葉を少女へと伝えた。
「光は……きっと近くにあるわ」
日が沈む。
昼と夜が入れ替わるわずかな時。
桜色の少女へと奇跡が訪れたとき――
金色の少女へ絶望が襲い掛かる。
「あなたは奇跡を求めてもいいのよ」
少女にその言葉が届いたかはわからない。
でも、小さくうなずいた気がした。
そんな風に私には見えて欲しかった。
***
男はそんな一部始終を静かに見ていた。
ただ、ただ、見ていた。
何をするでもなく、ただ、見ていた。
「ひどいことをするのね」
クスクスと笑いながら少女は現れた。
何もできない男を嗤うために彼女は現れ、
運命に翻弄され、神に呪われた男をただ嘲笑う。
「あいつが望んだことだ。俺はそれを叶えただけに過ぎない」
「ふふふ、そういうことにしてあげるわ」
男は何も答えない。
少女もただ笑うだけ。
そして、物語が動き出した。
「動いたな」
「ええ、桜色の少女は緑色の魔法使いに出会ったわ」
「そうだな。この調子ならあいつも間に合うだろうさ」
「ふふ、予定通りになりそうね」
少女はクスクスと笑う。
男はそんな少女から目をそらした。
そんな男を少女は後ろからそっと抱きしめる。
耳のそばまで、顔を寄せても男は何の反応も示さない。
それでも、少女は笑う。
ただ、嬉しそうに笑う。
「しばらく、一人にしてあげる」
空を漂う少女は、空気に溶けるように夕暮れの中へと消えた。
現れた時と同じように、音もなく、気配もなく、少女はいなくなった。
「……礼は言わないからな」
男の握りしめられた手は、最後まで開かれることはなかった。
***
少女は……一人だった。
一人になってしまった。
本来いるはずの使い魔は、少女に与えられなかった。
少女は一人でも十分すぎるほど戦えると、少女の母は判断した。
だから、少女の母は、少女へと使命を与えて遠ざけた。
これは、ほんのちょっとした物語のずれ。
だけど、その少しのずれが、彼女の勝敗を分けたのは明らかだった。
もしも、その使い魔がいたのなら、彼女はここで負けることはなかった。
だから、迫りくる脅威に対して、少女は逃げるために敵の攻撃を防ぎ続ける。
だが、金色の魔法使いにできることはもうほとんど残されていない。
――放った魔法は化け物にほとんど効果がなかった。
少女は理解していた。
あの化け物に勝てないことを。
一人であるがゆえに、
あの化け物を倒すための魔法を少女は唱えることができない。
――魔法で作り上げた盾が砕け散る。
少女は理解していた。
もう逃げることもできないことを。
魔力は時期に尽きる。
いずれ、化け物の攻撃で倒される。
――化け物の攻撃が少女へと届いた。
――少女の手から武器が落ちる。
少女は理解していた。
もう母の願いを叶えることができないことを。
少女は理解してしまった。
もう自分の望みが叶うことがないことを。
「おわり……」
少女は終わりを知る。
少女は終わりを理解した。
だが。
でも。
「プロテクション」
少女は化け物の攻撃を防いだ。
当然、盾は砕け、少女の体は宙を舞う。
「どうして……」
少女は疑問を持った。
叶わない願いをどうしても捨てきれないことに。
「……ても、いい」
耳に残るかすかな言葉が、少女の背中を押す。
だから、少女は諦めるたくないと思った。
「ねえ」
少女は願った。
意識したわけではない。
でも、こうだったらいいのにと……
終わりを前にすこしだけ、意識した。
「もし……本当に奇跡が起こるなら」
昔のように、優しく名前を呼んでほしかった……と。
そんな、透明な願いを願望気が叶えた。
ただ、叶えた。
ありとあらゆる次元。
無数に広がる並行世界。
様々な過去と未来と現在。
すべての縁の中から、あり得ない可能性の中から。
本人すら意識してない、知らないはずの縁をたどり、
いつか起こり得たかもしれない未来、過去を今へとつなげて、
本来なら結ばれるはずのない縁を拾い上げた。
――その強く純粋な願い。****が叶えましょう。
そして、奇跡が起きた。
「無事だな」
ぶっきらぼうだけど、どこか暖かい声だった。
そっと、壊れ物を扱うように優しく少女を抱きかかえた。
「あなたは?」
少女は尋ねる。
「先に、あれを封印してくれ」
「あ……」
男が拾い上げた杖に少女はそっと手を添える。
少女は残る力を振り絞って、ジュエルシードを封印する。
そして、抱きかかえられたままジュエルシードへ近づき、杖へと収納した。
「よく頑張ったな、フェイト」
男は告げていない少女の名前を呼ぶ。
少女の記憶におぼろげに残る、優しくて暖かな声で。
「セイバー」
安心したからなのか、少女の瞼がゆっくりと落ちる。
そんな少女を安心させるために、優しく抱きかかえ直しながら。
「お前を守るために、ここに来た」
黒い青年はそう告げた。
***
「どうして、助けたの?」
「約束だからだ」
短いがはっきりとした言葉。
「……なら、フェイトをお願いね」
それだけを残し、女性はその場を後にする。
……書けないよ?
まったく、書けないよ??
以上、愚痴でした。
Supercellの「告白」を聞きながら小説を書くのはあまりよくないですね。
涙腺が緩んでよろしくない。
うむ、よろしくない。