【習作】恋人以上で友達未満な二人 作:言語嫌い
すこしでも楽しんでいただけたら嬉しいです
前回から、間が空きすぎて申し訳ないです
あなたは、ひとりじゃない……きっと、だれかが、あなたを見ててくれるから
だから、泣かないで……大丈夫だから、
*****
(これは……)
/ 少し前のこと。少年がまだ、幸せを感じていたころ。少年が一人じゃなかった頃。
――た……す……
今にも消えてしまいそうな声で、彼は求めた。
『声が……聞こえる…………懐かしい、声が』
(夢だ……)
/ ある時、一人の少年は奇跡を願った。
――助けて、くれ……
奇跡を欲した。そんなことが都合よく起きることなんてない。そう、どこかで思っていても、それでも奇跡を待つ。
『なら、行かないと……私は、そのために……』
(……これは、夢だ。そう、俺は認識した。)
/ その少年は、今にも倒れそうな体を奮い立たせて、目の前のソレに立ち向かう。逃げることなどで出来ない。まして、負けることもできなかった。だからこそ、奇跡を願った。
――サ…………タ……召か……じ…………た。
『きっと、これは奇跡だと思う』
(これは過ぎ去った過去。だから、これは、夢だ。)
/ そして、奇跡は起きた。
――……ま……な…………ス………………か?
『たとえ、にせものだとしても……それでも』
(だからこそ、俺はこれを忘れたかった。)
/ 奇跡が起きたからこそ、絶望が生れた。
『私は……願ってしまったのだから』
(これは、そんな俺の忘れられない……いや、
忘れることのできない――
『だから、もう、戻れない』
「あなたが強くなる――その時まで、そばであなたをお守りします」
「どうして? どうして、俺にそこまで……」
「……それは、あなたが――――」
そこで、俺の意識は一気に覚醒した。これ以上、見たくない……そう、拒絶した。
――――どうか、あなたのそばにいさせてください
それが、私の最初の願いだった。
***
――目覚めは最悪だった。
忘れたはずの / 忘れられない記憶が今になって再び思い出された。
それは過去の思い出。まだ、幸せだった頃の思い出。学校には友達がいた。よく遊ぶ友人がいて、休みの日には一緒に出掛けたりもしていた。家には父さんと母さんがいて。優しく、時に厳しい、そんないい両親だった。あたたかな場所だった。そして、あいつがいた――そんな過ぎ去ってしまった思い出。幸せだったと言える、そんな忘れたい記憶。
そして、そんな記憶の中でも思い出したくないある出会いについての夢だ。そう、あいつと初めて出会った時の夢。俺にとって姉のような存在であって、師匠であって、俺を守る――――で、――――だった。そして、俺が起こしてしまった罪の証でもある。
だからこそ、忘れていたかった。思い出したくなかった。
「…………」
そうして、気が付けば机の中にしまったあるであろうある霊媒の場所を見ていた。無意識の行動だった。だからこそ、意識した俺は急いで顔をそらし、その場所から視線を外した。あれは捨てるに捨てることのできないもの。持っていても苦しいだけなのに、どうしても捨てられなかったもの。だから、普段から目につかない場所に置いていた。でも、たまに目が行ってしまう。その場所に――――もしかしたらというそんな淡い期待とともに目を向けてしまう。
でも、現実はそんなに優しくはない。
「くそ」
忘れていたかった記憶、捨てることのできない想いを払拭するために俺は学校へと走り出した。本来なら行くことすらしたくない場所だが、たまには机の中に溜まったプリントを取りに行かないとさらにめんどうくさいことになる。具体的にはめんどくさいのが家に来ることになる。だから、たまにだがこうやって学校に荷物を取りに行っている。
というより、今日あいつと会うことだけは絶対に避けたい。こんな最悪な日に、最悪なことが重なるなど、あまりにうれしくない。
だから、それは避けたい。可能な限りあれとは関わりたくない。それに、この時間なら俺以外の生徒はほとんどいないはずだ。いたとしても、自主的に早めに来ている体育会系の奴らくらいだから、俺の目的を果たす上では問題ないだろう。
そう思って、俺は校舎へと足を踏み入れた。しかし、俺の目論見は完全に外れてしまい、最悪なやつが待ち構えていた。人でも待っていたのか、昇降口の壁に体をあずけていたそいつは俺に気づいてしまった。ああ、本当に最悪なことに、俺はそいつに見つかってしまった。
「ん? おまえは……」
「…………」
ああ、本当にめんどうくさいのに見つかった。泣きっ面に蜂とはこのことだろうか。いや、使い方が微妙に違うな。だが、嫌なこととは重なるものらしい。最悪な夢を見て、最悪な場所に来て、会いたくもない奴に会っている。
「どういう風の吹き回しだ? いきなり学校に来るなんて」
「……俺も学生だ。学校に来ちゃいけない理由なんてない」
「無断欠席を重ね、校内外で不祥事を重ねるお前が? むしろ、未だに、学校に来てるのが驚きだな」
こいつは……誰だったけ? とにかく、俺がまともに学校に行っていたときからやたらと突っかかってくる奴だ。なにかと理由をつけては、こちらへと接触してきている。正直、あの頃ならともかく、今となっては、それもうっとうしいだけ。いや、めんどくさいのは元からか。
とりあえず、未だ言い足りなさそうにしているそいつを無視して、教室へと向かう。誰にも会わないようにと早い時間に来たというのに、こいつに会ったのでは意味がない。
「……おまえ、全く聞いてないだろ」
「…………」
大正解。まあ、そんなこと言わなくてもさすがに理解しているだろうが。それに腹を立てたのか、さらにまくしたてるように話しかけてくるそいつを無視して、俺は自分の机からたまりにたまったプリントを回収する。それらを無造作に鞄に突っ込むと、俺は教室から出る。
「……帰るのか」
「…………」
「全く、何をしに来たのやら。おまえは、学校に来る意味なんてないよ。ここは、学び舎だ。ここにいる学生は何かを学びに来ている。何も学ぶ気のないお前の居場所はない」
「そうか。なら、このまま、卒業するさ」
「……っ!」
確実に怒っただろうその人物の次に起こす行動が想像できたため、俺は急いで扉を閉める。すると、閉めた扉に何かが当たり、直後に何やらすさまじい音がする。
「あ、やべっ!」
おそらくだが、手元にあったものを適当に投げたのだろう。俺の席は窓際。そして、悪ふざけで、机の上に窓際に飾ってある花瓶が置いてあることがあるのだが……今回犠牲になったのはそれだろう。もちろん、そんなものを投げればどうなるかなど、考えるまでもない。
そして――
「……なんだ、生きていたのか」
「悪かったな」
目の前には先ほどのやつとよく一緒にいるでかい野郎がいて、その後ろに隠れるようにいるのは、俺が一番めんどくさいと思っている少女だ。こいつらもあいつと同様にこちらへと何かと突っかかってくる奴らで、めんどくさいことこの上ない。
「ふん。そう思うのなら、もう少し取るべき態度を考えるべきじゃないか?」
「おまえこそ、俺にかまうより、あいつの手伝いをしなくていいのか?」
「言われなくても、そうする。そもそも、お前がもう少し……」
「知るか。言ってろ」
あからさまに舌打ちをしてから、俺の前に立ちふさがっていたそいつは箒とちりとりを手に教室へと入っていく。その後ろにいた少女が何か言いたそうにこちらを見ていたが、それを無視してその横を通り過ぎた。
「あの……」
そうして、通り過ぎた俺の背中にそいつは声をかける。いや、かけたが、その先は続かなかった。
「やめておけ、どうせあいつは反応なんてしない。話しかけるだけ無駄だ」
後ろから勇気を降り絞って出されたであろう声は、教室に入ったはずのやつの声に遮られて途切れた。いつまでも入らないそいつを不審に思って覗いたのだろう。そして、そして、そのまま俺に関わらないようにするために教室の中に入れたのだろうと想像できる。
「……帰ろう」
教員が来る前に急いで割ってしまった花瓶の処理をしているであろうそいつらに追いかけられる心配がないことにほっとしながら、俺はだれもいない校舎を歩いた。そして、朝練で学校に来て練習している奴らを横目に俺はいつもの場所を目指して歩く。
***
家を出たのも早ければ、学校を出たのも早かった。そのため、公園に着くのもいつもよりも早かった。だから、いつもいる少女はまだ来ていなかった。とりあえず、木の幹に体をあずけて座る。
「……一応、プリントには目を通してみるか」
どうせここでやることなどない。今まで遅れてしまっていた勉強を少しでもしておくべきだろう。それに、大学とまではいかないまでも、高校生くらいまでの知識はあったほうが便利なことが多いだろう。いや、そもそも中学を出て働くなどということをあの爺さんが許すはずがない。間違いなく高校には通う事になる。通信などではなく、普通の学校に。
高校まで行くことに納得はしてはいるけれど、やはり学校というものはめんどくさく、進んでいきたいとは思はない。勉強は大事だとは思うが、それよりも修行をしていたいと強く思う。だが、言ったところで無駄であるのは分かっているので、仕方なしに勉強を始めた。
はじめたのだが――
「……いや、よく考えれば俺に理解できるわけがなかったな」
勉強を開始してから5分も経たないうちに俺は手に持っていたプリントなどをカバンに戻していた。学校をサボるようになってから既に1年以上経っている。それだけ経てば、以前授業で受けたところなんて覚えている訳もなく、また以前の場所から明らかに進んでいる内容についていけるわけもなかった。
「卒業するまでには、小学校の内容くらいは頭に入れておくべきだよな」
もうじき、小学校も卒業する。そうすれば、中学校にあがるだろう。それまでの間に遅れた分の勉強をするべきか。幸い、数学と理科に関したはほかに比べても得意で、少しばかり予習していたので、そんなに苦労はしないだろう。問題はほかの科目だが……
「今、考えても仕方ない。明日からは教科書でも入れてこよう」
今後の方針は決まった。けど、やることはない。修行は……今は、する気になれない。それに、俺ひとりでできることも限られているし、あの爺さんがこちらの要望を聞くなどまずない。だから、いつものように俺は木の幹に体を預けて眠ることにした。
夢を見るかも知れないという気持ちはもちろんあった。だが――――
**
――あなたは、優しいですね
い、いきなり、なんだよ
――だから、どうかいつまでもその気持ちを忘れないでくださいね
……? 何が言いたいんだ
――いえ、なんでもないです。忘れてください
へんなやつ
――ええ、そうですね
そんな風に、あいつは言っていた。どうして、こんなものを今になって夢に見るのかはわからない。でも、どれだけ思い出したくない、忘れたいと願っていても、この出会いは、コイツとの思い出は消えてくれない。それだけは確かなことだと、どこかで気付いた。
そして、外からの刺激によって、俺の意識は浮上していく。
***
「……起きて、ください」
また、あいつの夢を見ていた。最近、よく見るようになった、あいつの夢だ。俺が見たくない、最悪な夢。
「ん……おまえは……」
そんな夢を終わらせて俺を起こしたのは目の前にいる小さな少女。少し前に出会って帽子を渡した少女。静かに、隠れるように泣いていた少女は、泣きそうな顔で、こちらを心配するように見ている。
「大丈夫……?」
「……うん、大丈夫だ」
俺はそう言って彼女に向けて笑顔を作る。でも、少女はさらに悲しそうに、泣きそうになってしまった。そして、一筋の涙が少女の頬をつたう。それから、どんどん少女の瞳からは涙が溢れ出す。
「無理、しないで」
「いや、無理をしているのは……」
お前じゃないのか――――そんな言葉は俺の口から出ることはなかった。少女は少し俺に近づくと、その小さな体で俺を抱きしめた。言葉は出なかった。思考は止まっていた。理解ができなかった。そんな中、少女は静かに泣いている。俺を抱きしめたまま、少女は涙を流す。
「そんな、苦しそうな顔で……」
彼女は言った。俺が、苦しそうだったと。
「無理に、笑わなくてもいいんだよ」
無理して笑っていたと、少女は告げた。自分よりも明らかに年下の小さな少女は俺を慰めるように、そう言ってくる。
「え……あ……おまえは、何を」
「あなたは帽子をくれた」
「? そうだな」
「だから、ここで、泣いていいよ」
少女はぎゅっと俺を抱きしめながら、泣きながら、俺にそんな事を言ってきた。
「わたしは見てないから。だから、あなたも、見ないで」
それ以上、言葉はなかった。少女のすすり泣く声が聞こえる。そして、その声が、少女のぬくもりが壊していく。俺の心を……弱くて、負けそうで、壊れそうな俺の心を少女は剥き出しにしていく。
「……ありがとう」
口から出たのは、そんなありきたりな言葉だった。それに少女は小さく頷いて、より一層その小さな体で俺のことを抱きしめる。そんな少女に縋り付くように、俺は涙を流す。
あの日から、一度も流すことがなかった涙……全てを失ってしまったあの日から枯れていた涙は一度こぼれると止まることはなかった。次々に瞳からこぼれ落ちていく。
そして、気が付けば俺たちはいつもの木の下で横になって寝ていた。少女は俺の頭を抱えるように、俺はそんな少女に抱きしめられながら。
少女を起こさないように体を起こすと、少女の小さな体を抱き抱えて座り直した。
「ありがとう」
俺はもう一度だけ、そう言った。
少女は俺の腕の中で静かに眠る。その頬には涙の跡が残り、その寝顔は穏やかではあっても、幸せそうではない。自身のことさえも解決できないというのに、この少女は俺のことを心配する。
「がんばるよ」
何に向けてなのか、誰に向けてなのかわからない。でも、そう思った。
…更新が遅くて申し訳ないです。できる限り早く投稿していきたいと思います。
さて、本編は少女と主人公の物語にプラスで少しだけ要素が増えました。登場人物が増えました。そして、書く人物も増えました。ふ……自分で自分を追い込むことになるとは。
あと、最初の方が絶対に読みにくいだろうと思います……書き直そうと思って、いろいろいじったのですが、思うようにいかず、本文の形になりました。()、『』、//、――等で区別をつけましたが、うーむ。力量不足で申し訳ありません。
それでは、次の投稿で会いましょう。次の投稿を気長に待ってもらえたら嬉しいです
**
それはそうと、主人公はあと数年後に同じことをするとまずいことになります。どうなるかと言うと、目撃者から「ロから始まってンで終わる今世紀最大の謎の生物」という、一部の人にとっては名誉ある称号を授かることになります。