【習作】恋人以上で友達未満な二人 作:言語嫌い
どれだけ、周りの関係が変わろうと、二人は今を良しとする。
だけど、彼は変わることを望んだ。少女も変わりたいと思い始めた。
すこしずつ、運命の歯車は回る。
日常のおわりは少しずつ近づいている。
俺と少女の関係は変わっていない。だが、変わったものがある。
「あ……」
「うん? どうかしたのか?」
「……ううん、なんでもない」
「そうか……」
俺と少女の日々は変わらない。今日もまた、こうして静かに一日が過ぎていく。俺とこの少女は互いに深く干渉しない。それでも、少女の言いたいことはわかった。おそらく、少女も俺の変化に気づいているのだろう。そう、少女と同じように、俺もまた学校に行くようになった。そのことを、どこかうれしそうに少女は受け止めている。でも、どこか寂しそうだった。
「……大丈夫だ」
だから、俺はあのときのように少女に告げる。何が大丈夫なのか、どう大丈夫かなどという必要はない。これだけできっと伝わるから。そして、少女は少しの期待を込めて聞き返してきた。
「これからも――――」
「ああ、ここで」
「……うん」
少女は帽子を深くかぶると、続く言葉を飲み込んだ。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
俺はいつか、その言葉が少女の口から聞けることを願っている。
でも、
「……これで」
それは――――
「…………そう、これで……」
できれば、叶わないでほしい願いでもあった。
だから、俺はこんな日々がいつまでも続くことを願っている。そんなこと、絶対にかなわないと知りながらも、こんな日々を俺は望んでいた。
***
――彼は変わった。
少しだけ、変わった。
以前に比べて、明るくなった。笑うようになった。幸せそうになった。
そして、以前にもまして――――
「……どうすれば、いいのかな?」
ぽつりとつぶやいた。前からこちらに向かって走ってくる幸せそうに笑う彼を見て、私はそう思った。
「あの時、私は助けられた。そして、1年前にも助けてもらった。だから、彼はカズやトモに認めてもらえたし、私も彼と友達になれた。お礼も言えた。だから、きっと、これでよかったよね」
1年前に起きた事件。その事件はそんなに大きなものでもない。でも、ここで暮らす私たちにとってはとても大きなもので、当事者であった私はとても怖かったことを覚えている。
「それでも、彼は助けてくれた」
それは、本当に運が良かっただけだったと思う。ほんの少しでも、どこか違っていれば、きっと私は助かってなかった。そして、彼も助かりはしなかったと思う。そんな危険に彼は飛び込んだ。
「私は……そのことを感謝してる。だからこそ、言わないといけないこともあるの」
いつものようにバカ騒ぎをしている彼とふたりの幼馴染は速度をほとんど緩めずにこちらへと突撃してくる。そんな3人の姿に呆れながら、私はつぶやいた。
「……朝から、何をしてるの?」
でも、こんな何気ない毎日を壊したくない。だから、この言葉はきっと彼に届くことはない。
***
俺の日常は変化し続ける。小学校を卒業し、中学に上がり、学校に行き勉強をするようになる。だが、相変わらず、俺の周りは騒々しく、俺に絡んでくる奴らには変化が見られない。朝の通学路は静かにならず、必ずにぎやかになる定めにあった。その一人が、先ほど合流した二人のうちの細い方……訂正、相方がでかすぎるだけであって、背格好は俺と変わらない。少し意識の高そうな平均的な男子。意識が高い平均って何だ……
「まさか、お前が学校に来るようになるとは……」
俺にしょっちゅう突っ掛かってきていたバカ――
「出てきてるんだから文句はないだろうが……てか、それ何度目だよ」
「13回目だな。まあ、こちらとしても、お前がまじめに出てきているのなら文句はない。むしろ、これであいつの邪魔をしなくてよくなったのだから、良いこと尽くしだ」
「お前はどっちの味方なんだよ」
「ふ、聞きたいのか?」
「いや、い―――」
「俺は彩花の味方であって、お前たちの味方ではない!」
バックにザッパーーーン!! と打ち寄せてくる波が見えそうなくらい潔く、漢らしくこのデカブツの阿呆は答える。無駄にでかく、無駄に勢いがあり、無駄なくらいデカイ声で叫んでいるため、無駄に暑苦しい。朝の静かな時間だというのに、無駄に元気な馬鹿に当てられたくないのか、多くの通学中の生徒がこいつを避ける。否、俺たちを避ける。付け加えると、彩花とは松原のことだ。
「数えてたのかよ……」
「適当だとも!!!!」
いちいち暑苦しくこいつは答える。以前のような少しドライで冷たい態度の方がつきあいやすく感じなくもない。まあ、佐藤に関してはあまり変化がなかったのだが。
「……なあ、佐藤」
「なんだよ、倉橋」
「おまえ、こいつの幼なじみやってて疲れないか?」
「……言うな」
どうやら、こいつも同様に思っていたらしい。後ろの暑苦しいのを見て、俺たちは同時にため息をついた。それを見てもデカブツ――
「なるほど、なるほど。これが、ちまたで噂のツンで……」
「違うからな……トモ」
「それは絶対に無いからな、前野」
「ふ、素直になれよ。さあ、友よ! カモン!!」
俺と佐藤は互いに顔を見合わせると、同時に頷いた。ああ、わかっているとも。お前のやりたいことは……
俺たちは静かに拳を握ると、無駄にいい笑顔で両手を広げている阿呆に狙いを定める。身長差があるため、放つ拳はどうしてもアッパー気味になるが、そこは下半身のバネを用いて殴れると考えれば、威力を上げる要因になる。
「おお! ようやく、すなおにな……ぶべら!」
同時に振り抜いた拳は見事にド阿呆の顔に炸裂する。正確には下から殴ったので顎なのだが、まあ、普通はこれでノックアウトだ。
「やったか……」
「ああ、やっただろ」
仰向けに倒れた阿呆を見て、俺たちはとりあえず当分の脅威が去ったと認識した。さすがに、一度意識を飛ばせば、少しくらいは冷静になっているだろうと思っての行動だったので、罪悪感などは無い。そう、これは
だが、こいつの耐久は俺たちの予想の遥か上をいっていた。虚ろだった目に光が戻るやいなや、動画を巻き戻すように人体の構造、物理法則を無視しているのではなかろうかという勢いで立ち上がる阿呆。その阿呆は立ち上がったあとに急に両手を広げて空を仰ぐ。
「壊れたか?」
「壊れたんだろうな」
どことなく嫌な予感がするが、これを放置するのもまずい。逃げたくなる体を必死に抑え、とりあえず、目の前の阿呆の反応を待つ。
「なるほど……これが、愛っ!!!」
「逃げるぞ」
「ああ、逃げるか」
倒れた拍子にどこかのねじが吹っ飛んだのか、頭の回路が壊れたのか、安全装置が外れたのか、それとも、もともと壊れていたのか……おかしなことを叫び始めた暑苦しい馬鹿が一名。俺たちは再び顔を見合わせるとそそくさと逃げ出した。
「ふむ、これが青春の1ページとしてよく描かれる『まてー』『あははーつかまえてごらんー』とか言う状況か!! よかろう! ならば、この前野智一! 全霊を持って」
「「違うからな!!」」
ものすごい解釈が出てきた。てか、それは少年漫画というよりは、少女漫画のたぐいなのでは? いや、そもそも、そのような場面が描かれることがあるのだろうか? と思ったが、某フルメタルなアルケミストの漫画で主人公とヒロインがやっていたのを思い出した。あれに影響されたのだろうか? だとしたら、俺たちに待ち受けている結末は……
「倉橋、お前もその結論に至ったか」
「と、いうことは、お前も……」
とりあえず、掴まるわけにはいかない理由が増えてしまった。こうして、クラスで名物になりかけている馬鹿三人の騒ぎは朝っぱらから絶好調だった。
途中、松原がいつもの待ち合わせ場所でこちらを不思議そうに見ていた。自宅の玄関前で鞄を持ちながら時計を気にしていたが、こちらに気づくと首を小さく傾げた。
「……朝から、何をしてるの?」
「いいから、お前も走れ。倉橋、頼むぞ」
「任されたくないのだが……」
「え、きゃあ!」
松原を俺が回収してあの馬鹿から逃げながら学校へと急いだ。当然、彼女はこの状況についていけず、理解もできない。いや、出来たらすごいのだが。
「あ、あの、いったい、どういう状況……?」
「ほう、彩花に手を出すとは……やるな」
「どういう意味なの……?」
困惑気味な松原の声は後ろからの暑苦しい声にかき消される。
「その挑戦、受けるっ!!!」
「受けるな、ド阿呆!」
「挑戦って、なんだよ! 暑苦しいから、来るな!」
「あの……はぁ…………もう、いいです」
残念ながら、彼女の声は届かず、どこか必死でありながらも笑っている俺たちを見て何かを納得したのか、おとなしく俺に掴まっていた。
余談ではあるが、そのときの状況を他のクラスメイトにも見られたため、その日はいろいろと大変だった。何が大変だったのかは、聞かれても、話したくはない。できれば、このときの俺の行動を止めれるのなら止めたい。そう思ったくらいには大変だった。
「あなたが楽しそうだから、きっと、これでいい……そうよね?」
「ん? 何か言ったか?」
「いいえ、何でもないです」
そんな、誰かが望んだ日常が俺たちの前には広がっていた。
***
放課後……騒がしいのと別れて、俺はここに来ていた。
「あ……? ……??」
少女は俺に気づくと顔を上げる。そして、こてんと首を小さく傾げるとこちらに尋ねてくる。
「……休む?」
「……そうさせてもらう」
一目見ただけでも疲れているということがわかるくらいに疲れているのか。そして、特に考える間もなく、俺はほぼ即答していた。
「どうぞ……」
「…………」
「大丈夫だから」
「そうか」
俺はいろいろと疲れていたのか、少女の提案を受け止めると少女の隣で横になって休んだ。俺が横になる前に少女は自身の膝をポンポンと叩いていたが、その意味が分からない訳ではないし、理解していたが……その優しさに甘えることにした。
「すこしだけ、休む……」
「うん……」
眼をつむる前に帽子の下から見た少女の顔はどこかうれしそうだったが、それでも、少しだけ……
そう、少しだけ…………
「おやすみなさい」
すこしだけ、寂しそうだった。夢見はきっとあまり良くはないだろう。そうどこかで思いながら、俺の意識は沈んでいった。
***
『やっぱり……あなたは、やさしいですね』
『なにを……言って……』
夢を見ている。
俺の目の前には剣を持った薄い桃色の髪の少女。その少女は白い騎士風の服に身を包み、所々に銀色の鎧を身につけている。俺はそんな少女に敵意を持って相対していた。少女もまた、そうだった。だが、今の俺にはどうしようもない後悔が、対する少女の感情はよくわからないが、どこか安堵しているようではあった。
『以前、私が言ったことですよ……覚えておられましたか?』
『でも……俺は……おれは……』
夢の中のあいつはやっぱりやさしく俺に微笑んでいる。そして、夢の中の俺はみっともなく泣いていた。突き出した槍をそのままに泣きながら、そいつを見ていた。
『それで、いいんですよ。あなたはその優しさを忘れないでください』
『でも、おれが……おれが、しっかりとしていれば……こんなことには』
少女は俺の言葉に答えなかった。ただ、どこか困ったように微笑む。
『……どうか、忘れないでください。あなたに必要なのは、孤独からくる強さではなく、優しさから得られる温もりなのですから』
そのことを、あなたに伝えたかった――――目の前の少女はそう続けた。そして、震える手で槍を握り締めていた俺の手をそっと包み込むとやさしく微笑み、
『あ……』
『ごめんね……本当は、あなたが強くなる……そのときまで、一緒にいたかった。あなたが、前を向いて進むことができるその日まで、あなたを支えたかった』
少女の顔は見えない。そして、声も遠のいていく。ああ、ここで、終わりか。俺はそう理解した。
「 」
夢から覚める。意識が覚醒しはじめる。だれかの声が聞こえる。どこか、必死そうで、悲しげで、つらそうな、だれかの声が聞こえる。
『 !! 』
『 』
少女は消えて、青い美しい結晶が砕け散る。砕けたかけらは飛び散り消えた。そして、そのかけらの一つが手元に残る。
「『ごめんね』」
そんな声とともに俺の夢は終わりを告げた。
***
「ごめんなさい。その、大丈夫ですか?」
「…………ああ、大丈夫」
目を開ければ、少女が心配そうにこちらを覗き込んでいた。あたりを見れば日も沈みかけており、公園で遊ぶ子供たちも次々と帰路に着いていた。俺は少女にお礼を言うと、立ち上がる。
そして、少女も俺もいつものように背を向ける。
「また……」
「ああ、また明日」
そして、いつものように俺たちは別れる。
***
「ごめん……ステラ」
苦しそうに、彼はつぶやく。
「また、あの夢を……見てるのかな?」
あなたはわたしに居場所をくれた。わたしが悪い子になってもいい、自分勝手になってもいい場所をくれた。
だから、わたしもあなたにあげる。あなたが、苦しまなくてもいい場所を。あなたが泣くことのできる場所を。あなたが、無理に笑う必要のない場所を。
わたしはあなたにあげる。わたしは、あなたにあげたい。
「だから、せめて、わたしの前ではむりしないで……」
――そんな、少女の想い。
夢見が悪いのか、涙を流しながら眠る彼に心を痛めながら、少女はつぶやく。
「私は弱いよ。でもね、あなたが思うほど、わたしは弱くない。あなた一人の涙を受け止めるくらいなら、きっとできるよ。だから、もっと頼ってもいいんだよ」
少女は救われている。彼という存在に。
彼は救われている。少女という存在に。
だが、その事実を二人とも知らない。だからこそ、求める。少女は求める。求めてしまう。より強いつながりを。
でも、少女は求めることができない。これ以上の
少女は知らない。
彼は知っている。
だからこそ、彼らは求めない。この先を……
ステラーーーーーーーー!!!!!!(爆発)
ではないです。いえ、その、ね。自爆技は持ち合わせておりませんので、ご了承ください。
次か、その次あたりで、序章(原作前)を終えて、無印に進みます。その予定です。原作に出ないオリキャラについてはあと1話か2話でできる限り触れていく予定です。
そして、予定は未定です。
できるだけ早い投稿ができるように頑張ります。それでは、次の投稿で会いましょう
*もうひとつの方も頑張ります。水面下で頑張ってます……