宵闇IS草紙   作:湯豆腐殿下

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片隅にて(反省中)

―アリーナの片隅―

 

「でもさぁ、やっぱり理不尽だと思うわけよ」

 

「ん、どうしたジュニア?」

 

「ジュニアはやめれって、いや、こっちは出せる機体性能フルに使って奮闘したわけだろ?」

 

「ふむふむ、確かに1次移行もしてない機体で良くぞアタシの猛攻を凌いだね。 で?」

 

「褒められこそすれ、コノ扱いは無いんじゃねぇかなって」

 

「あははは、まぁ細かいこと気にすんなって。 悩みすぎると禿げちゃうぞ♪」

 

「……ほぉ貴様ら、私の説教の最中にズイブンと楽しそうじゃないか?」

 

「「あ」」

 

           ゴシャ!

 

 明らかに人体を殴打したときに出てはいけない圧壊音がアリーナに響き渡る。 現在アリーナのピット前では竜兵とミシェル教諭が正座させられ、織斑千冬の説教を受けている真っ最中である。

 

 正座をする二人の腿の上には拷問よろしく一抱え近いコンクリートブロックが乗せられている。

 

「まったく、本気を出していいとは言ったが、たかが模擬戦でアリーナを崩壊させるつもりか貴様らはっ!」

 

「あはは、ごめんね~千冬♪」

 

「あはは、ごめんね~千冬♪」

 

       

 ゴパパン!

 

「いっ痛~っ、ゴメンてば! ホント反省してます!」

 

「うおぉ、のっ脳みそが崩れるっ!脳がクラッシュタイプのこんにゃくゼリーにっ!!」

 

「ふぅ、……まったく始業式前で近くに生徒がいなかったから良かったものの」

          

 見上げればアリーナの天井部分、本来ならば屋根があるべき場所が何かに抉り取られたようにポッカリと幾つもの大穴を空け、その反対側の屋根の一部分は薄く幅の広い穴が無数に空き、中に通っている特殊合金の鉄骨ごと賽の目に切断している。

 

 

 

― 40分前 ―

 

 マシンガン、アサルトライフル、ショットガン、ハンドカノンと目まぐるしく武器を切り替え、高速機動による単機での立体十字砲火を形成するミシェルの猛攻にシールドを削られつつも、最低限のブーストのみで回避する竜兵の姿があった。

 

 1次移行前という制限が掛かり武器を呼び出せず、数メートル単位でしかダッシュが掛けれない竜兵はギリギリの見切りをもっての回避しか許されず、正しくその絵面は絶賛嬲り殺し中の様相を呈している。

 一方のミシェルも、被弾しつつも一向にシールドエネルギーが減る気配を見せない烏天狗と竜兵に苛立ちが隠せない。 しかもラピッドスイッチのタイミングがコンマ1秒でも遅れた瞬間に、竜兵は足装甲と、明らかに打撃目的で装着されてる手甲部で打撃戦を仕掛けてくるので手も抜けない。

  しかしながら試合そのものは高水準の空中機動戦であり銃撃戦であり近接戦であった。 

 

 ちなみにこの間、管制室で織斑千尋は普段見せない満面の笑みで試合を観戦しているが、背後に湧き出たドス黒いオーラによって真耶が涙目で震え上がっていたのは完全に余談である。

 

 13度目の竜兵の打撃。

 

 左肘打ちを囮にした竜兵の右貫き手を、アサルトライフルで受け止めたミシェルはハイライトの消えた目でポツリとつぶやく。 本来この女性、さぼど気が長い方ではないのである。

 

「……あぁ鬱陶しい。 いい加減消し飛べ」

 

 フルスイングのアサルトライフルで烏天狗を殴り飛ばす暴挙に出ると、腰に差していた二挺の大型

リボルバーを引き抜く。

 

「げっ、そいつ使うのかよっ!」

 

「むっ!いかん!!」

 

 竜兵と千冬が顔を青ざめさせた拳銃の名前は「ザ・サンダラー・レプリカ」 IS用にグリップのみ大型化されてはいるが、れっきとした対人武装である。 と、言うよりも対人武装でありながら明らかに異様な大きさを誇るその銃身が何を物語るのか?

 

 彼女の父親がかつて持っていたオリジナルのサンダラーの基本コンセプトはこうである。

 

”多少的が外れようとも一撃必殺”

 

 なればレプリカと言えどそのコンセプトに差異は無く。

 

 管制室の強化ガラスにヒビを入れるほどの轟音が響き渡る。

 

 オリジナルの「オリハルコン製」シリンダーをコピーしたIS装甲用の特殊鋼で鍛造されたシリンダー内に込められた、HMX(High Melting-point Explosive)の増薬弾(マグナム)が火を噴き、その莫大な運動エネルギーを得た人外の魔弾が轟音と共に射出される。

 直径1・5cm、ISにとっては豆鉄砲程度のはずの弾頭はその運動エネルギーによって周囲2m程に防御不可能の衝撃波という名のメタルジャケットを纏う。

 

 結果

 

「ぐっ、うおおおおおっ!」

 

紙一重で衝撃波ごと避けたはずの竜兵は、弾丸が巻き込んだ空気に弾き飛ばされてアリーナ天井に激突する。

 

「はっ、よくかわしたと言いたいが……トドメだよ!」

 

 左右のサンダラーを構えたミシェルから銃声が1発、されど神速のクイックドロウによる弾丸は左右

から3発づつ発射される。 高速機動からの防御不可攻撃、これが彼女ミシェル・マーディガンの真骨頂。

 

 かつて第2回モンドグロッソ決勝まで進出し、決勝で棄権した織斑千冬による不戦勝を善しとせず、自身も決勝を辞退した「世界で一番戦女神(ブリュンヒルデ)に近い戦乙女(ヴァルキリー)」と言われた女性の実力の一旦である。

 

 ……まぁ既婚者かつ子持ちで乙女ってのも如何な物かって世論はここでは割愛する。 誰だって命は惜しいのです。

 

 烏天狗が叩き付けられたアリーナ天井に6つの大穴が穿たれ、舞い上がる爆炎と粉塵。 滞空しながらホルスターにサンダラーを納めるファルコンⅡ。

 

「ん~、ちょっとオーバーキルだったかな♪ ……ん?」

 

 粉塵が風に飛ばされ視界の晴れてきたアリーナ天井を見下ろし勝利を確信したミシェルの眉間に

皺が寄る。

 そこには屋根に突き立ったボロボロの日本刀に引っかかった烏天狗の腕部装甲と、柄部分に貼り付けられた小さな紙製の人型=知る人が見れば身代わりの符=が一つ。

 

「むっ、ヤッバぃ……!」

 

 とっさに身の危険を感じて飛びのいたその空間に殺到する十数本の銀閃は向かい側の屋根を易々と突き抜けて観客席を防護するシールドに衝突して砕け散る。 砕け散った破片から、刀身と推測される銀閃の出所に視線を移すミシェル。

 

そこには

 

「やってくれるじゃねぇかミシェル。 よぉ~く分かった、ココからはガチだ……」

 

 所々ヒビの入った装甲を纏った竜兵が獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 その隻眼の瞳は獣のように縦に裂け、怒りを孕んだ殺気によって周囲の大気は紫電を帯びながら渦巻き始める。

 

 ミシェル同様、元来この男も気が長い方ではないのである。 

 

「ははは、本気にさせちまったかい? ならこっちもガチで行かないとか、……前もって言っとくけど怪我させたらごめんよ?」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、銃弾を再装填したサンダラーを構えなおすミシェル。 紫電を纏いながら前傾の姿勢をとり、無手で居合いの構え取る竜兵。

 

 両者の殺気が頂点に達し、刹那の後に解き放たれようとしたその瞬間。

 

『やめんかぁっ!、このボンクラ共がっ!!!』

 

 

 鬼(おりむらちふゆ)の咆哮がアリーナに響き渡った。

 

 

― 時間は進み ―

 

「で」

 

「今に至る・と」

 

「やかましい!」

 

 すぱぱぱあん!

 




 書き直しても変わらないグダグダ感に少々反省;
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