頭を抱え痛みに悶える竜兵とミシェルを睨み、千冬はこの日一番のため息をついた。
「まったくミシェル、模擬戦でサンダラーを抜いていいなんて誰が言った?」
「ううう、まったくもって申し訳無い」
「まぁ、気持ちは分からないでもないが施設に損害を出すなんて持っての他だぞ」
「おい待て、俺への被害は良いのかよ!」
「やかましい」
ゲシっ!
「ぬおああああっ!!」
抗議の声を上げる彼に対し、ヒザ上のコンクリートブロックを踏みつけて黙らせる千冬に絶叫を持って答える竜兵。
折りたたまれた足からポキポキと嫌な音が聞こえるが、まるっと無視して彼女は質問を投げ掛ける。
「にしてもだ、ここまで戦闘を行ってまだ1次移行せんのかお前のISは?」
「ぐぬぬぬぬっ、ヒザがっ! 靭帯がブチブチと嫌な音をっ!」
「わ・た・し・は質問してるのだぞ?」
ズンッ!
ぷちぷちごりごりめきめき
「~~っ! っと俺も不思議に思ってたんだけど、そこんトコロどうなんだ?」
痛みを堪えて質問に答える竜兵にふむ、と頷きしばらく思案した千冬は
「確かに気になるな。 お前のISのチェックコンソールを可視状態にして展開してみろ」
何だかんだと言いつつも、そこはIS学園教師。 思いのほか面倒見の良い千冬であったが、展開された画面を凝視しながらふとある一点に視線が止まる。
「おい、このメッセージは何だ?」
「ん?」
そこには赤く点滅する「コ○ミコマンドでFS」の文字、ご丁寧に隣にはペ○ちゃん顔にディフォルメされた美津里の似顔絵のアイコンが文字を指差している。
「どうやら展開直後からでも1次移行出来たみたいだな? これを見る限り……で?」
「FSって”First Shift”だよな?十中八九。 ……で?」
二人のセリフがシンクロする。
「「コナ○コマンドって何だ?」」
「「?????」」
ツッコミ所はどこにあるのか、世代が世代だけに○ナミコマンドを知らない竜兵と、生活環境が生活環境だっただけにゲームをしたことが無い千冬に突っ込みを入れるべきか、わざわざこんな小ネタを科学技術の最先端であるISの、よりによってファーストシフトプログラムに仕込んだ製作者を突っ込むべきなのか、そんなことを思いながら
「にしてもコイツら、結構気が合ってるんじゃないのか?」
意外とゲーム好きのミシェルは、仲良く首をかしげている二人を胡乱な目で見つめていた。
十数分後、「タッタラ~タッタタ~♪」という、8ビットの軽快な音楽と共に烏天狗のファーストシフトが完了するのだが、当の本人達が脱力しきってしまい学園上層部および国際IS委員会には初期のデータをソレっぽくでっち上げて報告することになった。
コードネーム:
「烏天狗(カラステング)」
所属:
「骨董・眩燈館」
製作者:
「眩燈館店主・朝倉美津里」
操縦者:
「長谷川竜兵」
状態:
1次移行状態
各種兵装及び機動制限解除
A装備換装中
総エネルギー:
100/100
シールドエネルギー:
40/40
バス・スロット:
512
イメージ・インターフェイス:
天狗の隠れ蓑(ローブ・オブ・ブラインド)・正常機動中
収納武装:
近接ブレード「子狐丸・改」
エネルギーブレード発生装置
信州産・杉の丸太×10
グランドジャマー射出機
オーロラビーム発振機
と言うファーストシフト後のデータが世に出るのはしばらく先になったのは言うまでも無い。
ソレはそれで後々物語に大きく関わってくるのだが、当の本人達に気付けるはずも無かった。
みんな知ってるよね?