宵闇IS草紙   作:湯豆腐殿下

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余裕があったので2話連続


片隅にて(試験終了)

―アリーナ―

 

「そ、それではこれで本日のデータ取りを終了しましゅ~っ」

 

 模擬戦の衝撃で今だ目を回しかけてる真耶のアナウンスと共に、スタッフが機材の片付けを開始

する。 竜兵・ミシェル・千冬の3人を残して周囲は俄かに慌しく動き始めたが、施設修復スタッフは破壊されつくしたアリーナ天井を見上げ、「今日は残業かぁ」と少し涙目だ。 

 

 

 

「ふむ、多少のアクシデントもあったが無事に終了か」

 

「あ~あはは~、あれを『無事』で済ましちゃうのね~」

 

「ふん、コイツがキレてこの程度の被害なら恩の字だろう? 詳しいことは言えないが、4年前に

コイツがキレた時にはドイツ軍の基地施設が半壊したんだぞ? 人的被害はほとんど無かったがな」

 

「いっ、あれを全部俺のせいにするのか!? 切っ掛けはお前じゃねぇかよ」

 

「知らんなぁ? 最終的に私に面倒を押し付けてトンズラした男のせいと言う事で片は付いてるよ」

 

「ぐぎぎぎぎ」

 

 何はともあれ面倒な試験は終わったとばかりに3人がそれぞれに肩の力を抜いて、軽い雑談を

している中、ふと思い出したように千冬が口を開く。

 

「ああそうだ長谷川、国からの通達でな、お前今日から学生寮の方に寝泊りしろ。 寮はアリーナの

入り口から向かって左に400m程だ。 ほれ、ルームキーだ、無くすなよ?」

 

「はぁ? ズイブンといきなりな話だなおい。 部屋の都合がつくまでホテルから通いじゃなかったか?」

 

 投げられたキーを受け取りながら竜兵は質問する。 

 

「あれか? 世界で二人きりの男性適応者だけに攫われてモルモットになるのを国が危惧してると」

 

「ああ、もう一人の適応者の方はな。 お前の場合は返り討ちにした人攫い達の対応に追われる

国家機関の人間の心労を私が慮っただけだ」

 

「あはは~、長谷川君だったら良くて半殺しですものね~」

 

「む、確かに言い返せないがな……しかしミシェル、アンタなんで口調が変わってるんだ?」

 

「え~と、学校ではこのキャラクターで通してるんでヨロシクね~、ミシェル・マーディガン26歳です~」

 

「はぁ!? アンタ確か四十ろ『口が軽いヤツは早死にすんぞ?』……イエス・マム」

 

 額に撃鉄を起こしたサンダラーを突きつけられ顔を青くしてコクコクうなずく竜兵と、春風のような微笑を浮かべながら黒いオーラを振りまくミシェルに苦笑しながら千冬は続ける。

 

「まぁ、そういうわけで必要な生活用品はお前の所属企業に連絡して配送してもらえ」

 

「了解です織斑先生」

 

「くっ。 その口調、似合わんな」

 

「放っとけよ!」

 

 二人に背を向けてアリーナの出口に向かう竜兵の背後から千冬の声が掛かる

 

「長谷川、今夜9時に寮長室へ出頭しろ。 寮長が話したいことがあるそうだ」

 

 返事は無く、振り返る事無くヒラヒラと右手を振る竜兵を見送りながら、千冬はミシェルに話しかける。

 

 

 

「で、どうだった?」

 

「無理ですね~、千冬の一喝がもう少し遅れたら、堕ちていたのは私でしたよ」

 

「その銃(サンダラー)を2丁持って、尚お前が負けたと言うのか?」

 

「……、最後の6連射の時な、直撃確定の3発の内1発にわざとぶつかって残り2発の衝撃波圏内から離脱しつつ、爆煙に紛れてダミーと入れ替わりやがった。 あの1発でもシールドを削りきれなかったんだ、長引けば負けてたさ。 しかもお前が怒鳴る直前ヤツは『撃つ』つもりだったぞ? 今思い出しても震えが来らぁ、んっん!……怖かったですよ~」

 

「……やれやれ、本当ギリギリだったか」

 

 今日何度目かのため息をつく千冬に、ミシェルはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら質問する。

 

「でもぉ~、うれしかったでしょ? もちろん合格よね~」

 

「はぁっ!? なっ、何のことだ!」

 

 突然の質問に動揺する千冬を見て、更にニャニヤしながらミシェルは続ける。

 

「ん~、さぁて何のことでしょう~? 千冬って私が彼の知り合いだって知ってから、良く彼のことを聞いて来たもんね~。 彼の事気にな『余計なことを言うのはこの口か?』ひタタタ、つねっちゃイヤ~!」

 

 キリキリキリと、ミシェルの頬を抓りあげる千冬。 右腕一本でミシェルの体を地上から3cm浮かす見た目から想像もつかない腕力は傍から見ると中々に怖いものがある。

 

 一方のミシェルもそんな状況で痛がりこそすれ取り乱した様子が無いのは、慣れのせいかはたまた。

 

「でもさ、彼なら弟君の事……少しは任せれるんじゃない?」

 

「……」

 

 右手から頬の皮でぶら下がるミシェルの一言を聞き、千冬は唐突に彼女から手を離し、アリーナの出口へ歩き始める。 そんな彼女を見送りながらミシェルはポツリとつぶやいた。

 

「……素直じゃないねぇ。 うぅん、青春してるね千冬せんせい」

 




ミシェルの口調が兎とダブるのは仕様ですw
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