腹も満たされ授業を受けました。どうもモブウマ娘です。トレセン学園はレースを走るウマ娘のために存在する学園ですが、それとは別に、アスリートでありながら学生でもある私たちウマ娘に知識を授ける授業があります。国語、数学、理科に社会。普通の高等学校に比べると程度が落ちるかもしれませんがそれはそれ。それら授業を終え、放課後になった時、私たちは学生の顔を脱ぎ捨て、アスリートの顔へと変貌するのです。まあ私はそこそこ走れるだけなのですが。
トレーナーがいないのでとりあえず前もって伝えられた分だけトレーニングのお時間です。確か手足に重りをつけて坂路トレーニングでしたね。6往復ほどした所でいい汗もかいて終了です。手足につけた重りをドン、ドンと地面に落としてクールダウンのストレッチ。
「ふぅ……」
周りを見ればまだ各々トレーニングをしている子が結構います。私はこれで終わりですが、トレーナー曰く量をこなすやり方は向いていないらしいです。流石トレーナー、トレーナーしか勝たん。
そんなわけで軽く設備につけられたシャワーで汗を流して制服へ。その足で向かうのは生徒会室です。別に役員というわけではありませんが、そこにいるであろう人物に用事……用事ですかね?
ノックすることなく生徒会室の扉を開ければ、こちらを迎えるように置かれた重厚な事務机に鎮座するウマ娘が1人。開かれた扉に反応して顔をあげこちらを見た。どうやら書類仕事をしていたようで、普段はしない眼鏡をしている。前に年寄りくさいと言ったらしょんぼりしていた記憶がある。
「ノックするべきだったかな」
「いいさ、君と私の仲だ」
気安いやり取りを終え私は応接用のソファに身を沈め、書類仕事を再開する目の前のウマ娘をじっと見ていた。うーん、顔がいい。カリカリと書類にペンで書き込む音だけが響く室内で私が暫くそうしていると、その音が止まった。
「終わった?」
「ああ、今日やらなきゃいけないものはこれで終わりだ。これ以上やると君の目が怖い」
「分かってるなら普段からしないでほしいね」
私がこうして生徒会室へ訪れるのは、生徒会の1人に頼まれたからです。このウマ娘、生徒会長は見ていないといつまでも仕事を辞めようとしないので見張ってほしい、と。身内でなく第三者からの目があれば応対しようと手が止まるから、らしい。
「そっちはまたかな?」
肩に手を当てぐるぐると回す生徒会長は流し目でこちらを見やる。また理事長達に言われた事を言ってるのだろう。前に相談したこともありますし。
「どーやっても無理だよぉ、恥ずかしいんだって」
実際に歌って踊る自分の姿を想像して悶絶。ソファに寝そべりバタバタと足を暴れさせる。
「そうは言ってもだね……そもそもライブは来てくれているファンへの感謝を示すものだ。本人の感情は抜きにして、やらなきゃならない事だと私は思うよ」
そうは言っても恥ずかしいものは恥ずかしいんです。その言葉一つで切り替えられるなら私は今もこうして苦労はしていない。
「そうは言ってもトレーナーの一言、『やってほしい』でもあれば君はやるだろう?」
やります。一も二もなくやります。そう言われたら断れないので。でも多分その後死ぬほど悶絶します。
「めんどくさいな、君は」
その一言が私の心に刺さった。
モブウマ娘の秘密その4
最近重りの重量が増えた。70を超えてから数えてない
続いてしまった私の小説パート2──続きませんよ??