俺は確信した。
転生したのだと確信した。
だって――
世界は紅だったのだから
1-1 邂逅の…邪王真眼
残念だが告白しよう。
俺こと、佐藤和真は中学の時、中二病だった。
だが、そんな黒歴史も中学とともに卒業して、順風満帆な高校ライフを満喫中というわけだ。
このまま黒歴史も忘れていけるはずだったんだ。
しかし何の因果か、俺は運命に導かれ、女神と共に異世界で魔王を討伐することに。
剣と魔法の異世界で仲間と共に死戦を潜り抜け、俺の中に秘められし力が世界を平和に……
「なーんて、ある訳ないですよねー」
昨日、異世界生活初戦闘。
今まで悠々自適に自宅警備員として活動してた俺がいきなり大活躍なんてある訳もなく結果は散々。
合計5匹のジャイアントトードを討伐すればよかったのだが、俺たちが倒したのは命からがらたったの2体。
しかもアクアは2回も丸呑みされ、穢されたと泣きながら帰宅。
……いや、やれる事はやったはずなんだ。
引きこもりのハンディキャップは1ヶ月に及ぶ土木工事のアルバイトで帳消しになったはず……なのだが、一体何がいけなかったというのだろうか。
「どうしたのカズマさん、そんな失望した顔しちゃって。諦めムードを漂わせるにはまだ早いわ……私たちの冒険はこれからよ!」
「まだ始まってすらないのに終わったから絶望してるんだよ」
「何言ってるの?」
「いや、昨日を思い出せよ。初心者の街で詰みかけたんだぞ」
「だからパーティーメンバーを募集してるんじゃない。私は上級職だし1人でもやってけるけど、カズマは最弱職なのよ、レベルを上げるにも仲間が必要よ」
偉そうに腕を組んで説教たれてるのはアクア。
俺の転生特典として異世界に着いてきた女神なのだが……
「じゃあお前1人だけでカエル討伐してこいよ。俺が仲間くるの待ってるから。じゃ、いってら!」
「ごめんなさい、見捨てないでくれると助かります……」
俺の言葉を聞くや否や土下座をかますアクア。
女神としてのプライドはどこへ行った。
……やっぱり自称女神を転生特典に選んだことこそ間違いだったのではないかと思う今日この頃。
俺の死に様を椅子から転げるほど盛大に笑いやがった腹いせに、短絡的に駄女神を転生特典指定してしまったせいで、憧れの異世界生活がこんな事になってしまったのだ。
しかも、1ヶ月程の付き合いで知るところ、コイツは日中は土木作業に明け暮れて、労働後は酒でおっさんと意気投合し、そして極めつけは、
「私は女神だから触れた物はもれなく浄化されてしまうの。だから今吐き出してるのは神聖でありがたい女神のオロロロ……」
と、水の女神としての威厳を見せつけるが如く、口から聖水を吐き出す宴会芸を披露して1日を締めくくる、そんな残念なヤツだ。
おっさん達は「話のわかる別嬪な嬢ちゃんと呑む酒は最高だな!」ご機嫌だが、毎度毎度背中を摩ってる俺の身にもなってほしい。
後悔先に立たずとはこのことか。
粗大ゴミとして返品したいが、異世界にクーリングオフ制度はないそうで、現実は残酷だ。
「どうしたのカズマさん、そんなに私のことじっと見つめて。女神の美しさに首っ丈ってわけ? でも、ごめんなさい。私、カズマさんの事はそこはかとなく良さげだとは思うんだけれど、異性としては見れないって言うか……」
「いや、カエルの討伐クエストをどう攻略するか考えてただけだわ。お前が囮になれば俺が安全にレベル上げられるなーって……」
「わあぁぁぁあカズマさんの人でなし! よくも女神を囮に使おうだなんて鬼畜な考え思いつくわね! 絶対やめてね!? もう暗くて狭いの怖いよ! ベトベトになるのいやなのよ! それともナニ!? この美しくも麗しい女神がベトベトになるのを見たいわけ!? 女神に欲情する気持ちはわかるけどそんなんだったら天罰をーー」
「今度、鏡買ってやろうか」
「物をチラつかせて大事な話をはぐらかそうとしないで頂戴! ……まあでも、貰えるなら貰っておくわ」
少し嬉しそうに顔を綻ばせているアクア。
鏡を覗いてくれれば、きっと自惚れが激しい駄女神でも、戦闘力も知力も幸運値も残念な自称女神が映っている事に気がついてくれることだろう。
そんなことを考えながら、まだ見ない優秀な仲間に思いを馳せた。
このすば
「カ~ズマさ~ん……この女神である私が書いた『あぁ、アクア様! この素晴らしいパーティに私も入れてください!』って思わず頭を下げに来るほどの出来の募集になぜか誰も来ないんですけど……」
「あんな文章書けるのはある意味才能だと思う」
俺の記憶が確かなら、募集の張り紙は
『急募!!
アットホームで和気あいあいとしたパーティーです!!
美しき気高きアークプリーストアクア様とともに旅をしたい冒険者はこちらまで!!→裏取り※番宿の屋
このパーティーに入ってから毎日がハッピーですよ。宝くじにも当たりました!!
アクア様のパーティーに入ったおかげで病気が治ってモテモテになりました!!!!!!
(採用条件:上級職冒険者)』
だった気がする。
あんな募集見て仲間になりたいと思う奇天烈はそうそう居ない。
「芥川賞物の傑作なのにどうして誰もこないのかしら? ねえ、カズマさんもそう思うわよね?」
「拗ねて俺の足をゲシゲシするなよ、地味に痛いんだが」
「私の文才に時代が追いついてないだけで、別に拗ねてないんですけど。私はただ足をプラプラさせてるだけなんですけどー」
頬杖つきながら俺の脛を蹴る残念な女神。
期待とときめきに胸を膨らませ異世界に来たのに、なんだ、なんなんだ、この仕打ち!
いざ冒険に出るかと思いきや、冒険者じゃなくて商人の方がいいだ、馬小屋で臭い中寝泊まりする羽目になるわ、癪ではあるが唯一の頼みの綱である駄女神は案の定ダメダメで逆に負担になるわ……
「ハァ……」
「ため息ばかりだと幸運が逃げるそうよ。今度後輩の幸運を司ってるエリスになんでそんな意地悪仕様にしたのか問いただしてあげるから、それまではため息をつかないでちょうだいな。じゃないとアットホームな環境って書いたのが詐欺に見えるじゃない」
「どっちにしろ詐欺だろあんなの! 何だよ宝くじって、異世界にあんのか!?」
「でもでも! あれくらいしないと上級職の人が入ってこないし……!」
「そもそも上級職のみってのが理想高すぎだろ。俺なんて上級職の真逆、最弱職ですわ。パーティー追放物の主人公みたいな不当な扱いで追放じゃなくて正当に追放される未来が容易に想像できたわ!」
「ううっ、だってだってぇ……」
「だってじゃない。とにかく、張り紙、回収してくるから――」
「私の傑作なのよ! 剥がさないでぇ!」
そう言って張り紙を剥がそうとして席を立とうとし、それを阻止しようとアクアが俺のジャージを掴んだときだった。
俺の後ろから足音が近づいてくるのに気づく。
えっ!?
ま、まさか募集の人か!?
そう思い、期待に胸を高鳴らせゆっくりと首を動かし……
「何かご注文は――」
「結構です」
「……お決まりになりましたらお声がけください」
ちくしょう!
やっぱり元の世界に帰らせろ!!
このすば!
「ハアァァ……」
「今日一酷いため息ね。もしかして冒険者として不安になっちゃったのかしら? 大丈夫よ! 私がついてるもの!」
「俺、思うんだ。真の敵は味方なんじゃないかって」
「そうね。カズマさんは中二病だもんね、そう言う思考になるのはわかるわ」
「ち、中二病じゃねーし!? ただ俺は一度も冒険者として役に立っていない誰かさんの事言ってるだけだし!」
「図星だったからって女神に八つ当たりするのはどうかと思うんですけど!」
なんかギャーギャー言っているアクアと騒いでいるとまた、後ろから足音が聞こえてきた。
どうせまた、いつまでも注文もせずに騒いでる迷惑客に対しての注意だろうとたかを括り、頭を下げる準備をしながら振り向いて……
「上級職の募集を見たのですがここで良いのでしょうか?」
首を後ろに回すと、そこには黒髪の少女が、二人いた。
片方は赤目で眼帯をしており、艶やかな黒髪で黒のマントに黒いローブ、黒いブーツに黒いとんがり帽、とにかく黒い。
典型的な魔女を彷彿とさせる佇まいであった……がどう見てもロリっ子である。
もう片方はロリっ子と比較してかなり発育がよく黒髪黒目で、装備は黒が基調、どことなく隣のロリっ子に連なるものを感じる。
「くっくっく、これは世界が選択せし運命。我はこの邂逅を待ち望んでいた!」
「や、やめてよめぐみん、人様の前で恥ずかしい……!」
「うるさいですよ、私の名乗りを邪魔しないでください。紅魔族としての自覚がないゆんゆんは黙って手本を見ているといいのです!」
発育が良くてしっかりしてる方がゆんゆん、ロリっ子がめぐみんと言うらしい。
あだ名だろうけど。
そんなめぐみんは、ローブの裾を掴んで止めようとしているゆんゆんの手を振り払い、マントをバサッと翻した。
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最高の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者!」
「ちょっめぐ」
「クックック……我が強大故に疎まれし禁断の力を汝は欲するか?」
「ちょっとめぐみ」
「ならば共に深淵を覗く覚悟をせ」
「めぐみんってば!」
「……なんですか。せっかく人が里に伝わるカッコいい挨拶を披露しているというのに邪魔しないでください。シッシッ」
「そうじゃなくて、ほらめぐみん見てよ二人の呆けた顔を。紅魔族の挨拶に困っちゃって……今までもそうだったけど、名乗りに拘ってるせいで避けられてるのよ」
「しかし学園で習ったでしょう、紅魔族に重要なのはかっこいい名乗りだと! もじもじしてると冒険者に舐められるのだと!」
「確かにね、確かに先生も言ってたし、名乗りをすれば舐められなくなるとは思うよ? でもヤバいやつ認定されて食に困ってるのよ私たち」
どうやら俺たちはヤバいやつに絡まれたらしい。
いや、正しく言えば、ヤバいのはコイツらの学園の先生か。
生徒に何教えてんだ……そう思っていると、何かに気づいたアクアが。
「あなた、紅魔族って言ってたけど、もしかしてその赤い瞳……」
「いかにも! 我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん! 我に許されし一撃は山を崩し、岩をも穿つ! というわけで面接をしてほしいのですが……」
「なるほど、わかったわ! アークウィザードって言ってたけれど紅魔族なら納得ね!」
アクアが何か納得してめぐみんを席へと促す。
冷やかしじゃなかったのはわかったが、それでもこんな小さい子を危険が伴う冒険の仲間に入れてよいものか。
すんなり話をし出そうとしているアクアに俺は小声で。
「なあアクア、どうして早速面接しようとしてんだよ。まだ小学生かそこらだろこの子。冒険者にしては若すぎるっていうか冷やかしなんじゃ……」
「ああ、えっとねカズマ。この子が紅魔族って言ってたでしょ?」
「まあ……」
「紅魔族はその名の通り赤い瞳で、生まれつき高い知能と強い魔力を持ってて、大抵は攻撃魔法のエキスパートで……みんな変な名前を持ってるわ」
「つまり……めぐみんって本名だったのか!?」
「おい、私の名前に何か言いたいことがあるのなら聞こうじゃないか!」
小声でしゃべってたのに驚きのあまり大声を出してしまった。
いやさ「めぐみん」って言ってたけど普通「めぐみ」だとかのあだ名だと思うじゃん、日本人だもの。
そうなると、まさかこっちのゆんゆんって子も……!?
い、いや、確かアクアは「紅魔族は紅い瞳」だって言ってた……ということはつまり!
「えっと、ゆんゆんって呼ばれてたけど、アンタは紅魔族じゃないんだよな? その、目が紅くないし……」
「え、えっと……そ、そのぉ……」
「じれったいですねこの子は。こっちのも一応紅魔族ですよ。ほら、あなたも私に倣って自己紹介を」
「い、一応じゃなくて紅魔族……」
「一応を外してほしいのならさっさと名乗りを上げるのです! それが、紅魔族なのですから!」
「ううっ、は、恥ずかしい…………コホン、え、えぇっと、わが、私はゆんゆんです。めぐみんと同じでアークウィザードです。そ、その、よろしくお願いします」
「……へっぴり腰な自己紹介ですね。本来なら赤点ですが良しとしておきましょう」
うん、どうせそんなことだろうと思ってた。
何故か後方で腕を組み名乗りを評価しているめぐみんに呆れていると、アクアの声が聞こえてきた。
アクアを見ると想定外だったのか目を開いていた。
「えっ、紅魔族なのに目が黒いの? 私の知る限りだとそんな例は聞いたことないんだけど……」
「そうなのか? 確かに目が黒いのに紅魔族とはこれ如何にって状況だが、そういうこともあるんじゃないか?」
「そうなのかしら……?」
いつも脳天気で考え事とは無縁なアクアが考え込んでる……
普通に考えて両親から目の色が遺伝するわけだし、親の片方が紅魔族じゃなかったら目の色が紅くないことだってあるんじゃないのか?
そう思っているとめぐみんが静かに笑い出す。
一体何がおかしくて笑い始めたのかと怪訝な顔をしていると。
「ふっふっふ……邪眼を見るのは初めてのようですね」
「じゃ、邪眼……!?」
「あ、あの、私は別に……」
「そう、ゆんゆんの瞳は呪いによって変質した邪眼なのです!」
「め、めぐみん!? あの、私のはそんなんじゃないでs」
まさか予想だにしなかった微かに震える指先。
これが地球での話だったら鼻で笑って馬鹿にしていただろうが、ここは異世界。
現実じゃあり得ない神や魔王やドラゴンが存在する場所。
邪眼なんて物があっても……おかしくはないのだ。
俺は唾を飲み込み、指をめぐみんの眼帯へ差し……
「お、お前の、それも……いいやまさかそんな……」
「では、見てみます? 私の瞳」
そう言ってめぐみんは徐に眼帯に指をかける。
手は上へずれ、その隙間から色が漏れ出る。
その色は左目の紅ではなかった。
ゆんゆんがいる理由は…………触れないでくれるとありがたいです。
ストーリー進行の早さどうですか?
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もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
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ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
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今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
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もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)