我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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3-2 墳墓の…不死王(オーバーロード)

月が昇り、時刻は深夜を回った頃。

さっきまでバーベキューを楽しんでいたが、そろそろゾンビメーカーの目撃情報があった時間だ。

俺たちは緩んでいた気持ちを引き締めてクエストに挑もうと――

 

「ねえめぐみん、墓地よ墓地!」

「何ですか騒々しいですね。さっきからボッチボッチと自己紹介をしてどうしたというのですか」

「誰がひとりぼっちよ! そうじゃなくて、みんなで今まさに墓地にいるのよ? しかも深夜に! これってなんだか肝試ししてるみたいで、青春って感じしない?」

 

肝試しっていうか、悪霊を退治しようとしてるんだが?

めぐみんも同じことを思っていたのか。

 

「油断大敵ですよ。万が一私の出番となればどうなるかわかっているでしょう? そうならないためにもゆんゆん、今日はあなたがしっかりしていないと」

「……めぐみんって意外に周囲の物事見てるんだな。てっきり何も構わないで爆裂魔法使って墓地をぶっ飛ばすものかと思ってた」

「私のことを何だと思っているのですか! 私は節度を持って、しっかり人的被害なども考えた上で爆裂するのです。そんなところ構わず本能のままに生きる獣のように言うのはやめていただきたいのですが!」

 

いや、昼頃に爆裂魔法を使ってきたから賢者タイムなだけだろ。

きっと魔力が全快し次第、めぐみんはところ構わず爆裂魔法をぶっぱする獣になる。

まあ今はクエストの最中だし、大声で突っ込んでる余裕はないので華麗にスルーすることにする。

 

「よし、それじゃあ墓地の中に入るぞ。今日はゾンビメーカー一体と取り巻きのゾンビを討伐だ。それが終わったらさっさと帰って寝る。俺が先頭で敵感知スキルを使いながら進むから、後ろからついてきてくれ。攻撃は――」

「もちろん私よね! アンデッドに私の浄化魔法をお見舞いしてやるわ!」

「……任せてもいいんだよな? 今まで何の役にも立ってないから心配しかないんだが」

「ちょっと失礼ね! 私、これでも死者の魂を導く仕事してたんですけど! 今まで活躍の機会に恵まれなかっただけで、ちゃんとアークプリーストなんですけど! というか世界中探しても私以上はいないんだからね!」

 

だったらいいんだけどなぁ……

正直、今までの活躍を振り返ると、カエルに丸呑みされ、キャベツの鮮度を保ち、すごい宴会芸を披露したくらいなもんだ。

アークプリーストとしての実力を見たことがないから不安でしかない。

 

「とりあえず、万が一に備えてゆんゆんは攻撃魔法の準備をしておいてくれ。もしゾンビメーカーにアクアの浄化が効かなかった場合は――」

「は、はい! 私が魔法攻撃で敵を突破、もしくは炎系や光系の魔法で道を照らしながら撤退ですね」

「そのときには私を盾代わりにしてくれ。いくら鎧がないとは言え、防御力はこの中の誰よりも高い。ゾンビやゾンビメーカーの攻撃はまだ食らったことはないが……ああっ、私はどうなってしまうのだろうか///」

 

コイツ、ジャイアントトードでもキャベツでも興奮してたが、ゾンビでもいいってことはもう何でもいいのか!?

体を震わせているダクネスだったが、何を勘違いしたのかアクアが。

 

「震えなくても大丈夫よダクネス! 私のすごい浄化魔法でゾンビメーカーごとき蹴散らしてくれるわ! まあ、たとえ相手がゾンビメーカーなんて小物じゃなくても、アンデッドだったら何だって浄化できるしね! 安心して任せてちょうだい!」

「おい、そう言うこと言うのやめろよ、フラグになったらどうすんだ」

「プークスクス! なったところで大丈夫だっていったでしょ? 私の任せておきなさいな!」

「本当に頼みましたよ、アクア。ついでにゆんゆん。私の魔法を解き放てば墓地全体が窪地となるのですから」

「ついでって言わなくてもいいじゃない……でも、もし本当にどうしようもないときは……めぐみん、お願いね」

 

もし本当にゾンビメーカーじゃなくて大物アンデッドだった場合、アクアのことだけおいて逃げ帰ってやろうか。

そう思いながらも俺は敵感知スキルを使用して墓地の中にある敵の気配を探りながら進む。

 

 

 

しばらくすると、ピリピリと刺激するような感覚……敵感知スキルに引っかかった合図だ。

 

「いるぞ。敵の数は…………ちょっと待て……多くないか?」

「どうした、向こうに敵がいるのだろう? 取り巻きのゾンビの数が気になるというのであれば私が先頭になって突っ込もうか」

 

ダクネスがそう提案してくるがそうじゃない。

ゾンビメーカーというのは自分以外に取り巻きのゾンビを従えているのだが、その数は3体程度と聞く。

なのに向こうから感じる気配の数は、それを遙かに上回っていた。

イレギュラーな状況に少し汗をかいて歩を止めていると、そこにめぐみんが。

 

「カズマ、向こうから微弱ながら魔力の気配を感じます……ゾンビメーカーじゃなさそうですよ。ここからでも感じ取れる魔力の気配ということは相当な怪物に違いありません。何ですか、アレは……」

「わからない……が、敵感知スキルに引っかかったのは5匹以上の団体様だ」

「……魔力は回復済みです。爆裂魔法の準備はどうしますか」

 

敵との距離はかなり開いている。

俺の敵感知スキルでようやくその位置や気配を感じられる程度だったのにも関わらず、めぐみんは魔力を感じ取ったのか、俺が静止の合図を送った直後から緊迫した声、冷や汗を流していた。

その言葉を聞いて一人を除いて表情が険しく変わる。

アクアは俺の言葉の意味がよくわかっていないのかきょとんとしていたが、つまりは大物がこの先にいるってことだ。

 

「今は撤退優先だ。ゆんゆん、敵に俺たちを気取ったそぶりはない。明かりをつけないで撤退の準備だ」

「は、はい!」

「ダクネス」

「ああ、殿は任せろ」

 

冒険者は冒険してはいけないとは誰の言葉だったか。

命と体があってこその冒険者家業、無謀と勇敢をはき違えるルーキーを戒めるための格言だ。

いくら街に危機が迫っているからと言って、ここで立ち向かうのは無謀だ。

街に持ち帰って情報共有を図り、作戦を立てる必要があると判断する冷静さが冒険者には求められる。

……のだが。

 

「あーーーーーーーーーーっっ!!」

「ちょ、アクアっ!? 撤退を――!」

 

突如叫んだアクアは俺の制止を無視して敵がいる方に飛び出していった。

さっきはアクアだけ置いて帰ろうかと思ったが、流石にそれはできなくてアクアを連れ戻そうと追いかける。

 

「ああっもう! せっかく静かに行動してたのに台無しだ! もうどうせ敵に俺たちの存在はバレただろうし、こうなったら派手にいくぞ! ゆんゆん! 魔法の準備だ! めぐみんは墓地の外に出て爆裂魔法の詠唱! ダクネスは戦闘になったら俺たちのことを守ってくれ!」

 

そう指示を出しながら俺は墓地を走り出す。

月明かりはわずかにあるが、整備されていない石畳が足に引っかかりそうで慎重に走らざるを得ない。

なのにアクアと言ったら……夜なのにどうして足下気にしないで走れるんだよ!

 

そんなことを思いながら追いかけていると、目の前に青白い光が見える。

大きな魔法陣が描かれて、それが妖しくも幻想的に発光しているようだ。

そして、その魔法陣の中心には黒いローブの人影、周囲にはゾンビはもちろん、ユラユラと蠢く非実態の影が見える。

そんな明らかにやばい儀式が行われている現場だったが……

 

「『ターンアンデッド』――ッッ!!」

 

一人突貫していたアクアが浄化魔法で中心にいた黒いローブ以外を土に還した。

普段は女神としてのなりを潜めていたアクアだが、意外にもこういう女神っぽいことを本気を出してやろうとすればちゃんとできる子になるらしい。

アクアの神聖な魔法がちゃんと作用していることにちょっとだけ感心していると、アクアに邪魔された黒いローブの人影が悲鳴を上げる。

 

「ほ、ほぇぇーーっ!? いきなりやってきて極悪な浄化魔法をなんなんですか!?」

「なんなんですかってのはコッチの台詞よ! リッチーがノコノコこんなとこに現れるとはいい度胸ねっ! 成敗してあげるわっ!」

「や、やめやめ、やめてええぇぇェェーー!? 誰なんですか、いきなり現れて! どうして私の魔法陣を壊そうとするんですかぁぁっ!?」

「黙りなさいアンデッド風情が! この怪しげな魔法陣で何をしようとしてたかわからないけど、どうせ自分で神の理に叛逆した存在よ、ロクでもない儀式をしてたに決まってるわ! こんなものっ、こんなものっ!!」

「ああっ!! 私の魔法陣がぁあっ!!」

 

そう言ってアクアは魔法陣を足で踏み荒らし始めた。

黒ローブのリッチー(?)は涙目でアクアの腰にしがみつき止めようとしている。

……さっきちゃんと女神っぽいことできるんだなーって感心してたのに、なんだかアクアの方が悪役に見えてきたんだが。

具体的には因縁をつけてイジメられっ子をいじめるチンピラのような。

 

「なあカズマ」

「カズマです」

「今、アクアがあの黒いローブの人をリッチーって呼んだ気がしたんだが。リッチーと言えば、ヴァンパイアと並ぶアンデッドの最高峰だと記憶してるのだが……」

「うん、俺も」

 

でもなぁ……

アクアがリッチーって呼んでる人は、俺が想像してるよりずいぶん若々しいっていうか、ミイラみたいに干からびてないっていうか、血が通ってないような白い肌をしているが、それ以外は見た感じ全くもって普通の人だ。

仮にあの人がそんなアンデッドの最高峰だとして、そんな超大物モンスターが、グリグリと魔法陣を踏みにじるアクアの腰に泣きながらしがみつくって……

と、そう思っていたときにゆんゆんが声を上げた。

 

「あれ、そこにいるのはもしかしてウィズ魔道具店の店主さん?」

「ああっ、ゆんゆんさん! ゆんゆんさんじゃないですか! あの、彷徨える魂を天へ導くために設置した魔法陣をこの方が壊そうとするんです! お知り合いなら助けてくださいませんか!?」

「えっ、今なんて?」

 

 

 

 

俺はアクアを羽交い締めにして飛びかかれないようにしてからゆんゆんに。

 

「もしかしなくても知り合いだよな?」

「は、はい。この人、よくお世話になってる魔道具店の店主をしてるウィズさんで……その、リッチーだってことは今日初めて知ったんですけど、いつも親切に接していただいてて」

 

どうやらゆんゆんとこのリッチーのお姉さん――名前をウィズと言うらしいが――は知り合いらしい。

ウィズは魔道具店を営んでいると言ってるが……。

 

「実は、この前のポーションもウィズさんのところから買った物なんですよ」

「この前のポーション? ……もしかしてジャイアントトードのときに使ったヤバい色をしてて、飲んだら失神したアレか!?」

「商品棚を見てたら偶然見つけて、じっと見てたら値引きしてくれたので買っちゃったんですよね。まあ、あんなにおいしくないなんては思いませんでしたけど……」

「いや、あの禍々しい見た目、どう見てもおいしいわけないだろ」

「他にも上級悪魔にも通用する超高性能パラライズ威力向上ポーションとか……あっ、でもあれはバインドの範囲が広すぎて自分も動けなくなっちゃったんですけどね、あはは……はぁ、忘れたい…………」

 

何があったのかはわからないが、ゆんゆんからひどくやさぐれた雰囲気を感じる。

……ゆんゆんは親切にしてもらってるって言ってたが、本当は欠陥商品を売りつけられてるだけなんじゃなかろうか。

目の前のリッチーこと、ウィズは薄幸そうな見た目だし、そんな悪いことをしないように見えるが、人は見かけによらない。

アクアとかがまさしく。

と、そう思っているとダクネスが険しい顔で。

 

「まさかノーライフキングが人に紛れ込んで生活していようとは……神に仕える聖騎士としては見逃せない事案のはずなんだが……二人の関係を見るに、特に人類を害する意志はなさそうだし、どうしたものか……」

「ちょっと、何躊躇してるのよダクネス!! リッチーは神に叛逆したアンデッドなのよ! アクシズ教のの教義には『悪魔殺すべし、アンデッド祓うべし、魔王しばくべし』ってあるのよ! さあ、拘束されて動けない私に代わってお仕置きよ! そのナメクジの親戚を浄化し――イタイッ!!」

「おいやめてやれよ、お姉さん涙目だろ」

 

俺はウィズをいじめるチンピラの頭に鉄拳を落とす。

蹲って頭を押さえるアクアだが、しばらくして痛みが引くと涙目のまま顔を上げて。

 

「納得できないわ! どうしてアンデッドの方じゃなくて私の方が悪い風になってるのよ! 謝って! 私、今回に限ってはしっかり活躍してたし悪いことしてないのにぶったこと謝って!」

「いや、叩いてでも止めないとあのままリッチーの人浄化してただろ? あの人は悪い人じゃなさそうだし、そんないじめるなよ。ほら、さっきの魔法陣だって、変な儀式用じゃなくて墓地の魂を供養するためのものだったんだしさ」

「でもでもアンデッドなのよこの子! 神の理に背いたってのなら私の敵よ! 死者の魂を導く者として絶対輪廻の輪に戻してや――イタイッ!? またぶった! 二度もぶった!」

 

いや、本当にリッチーの人が涙目だからやめて差し上げろ。

さっき浄化されかけたトラウマでゆんゆんとダクネスの陰に隠れる始末だから!

俺はアクアのことをフィジカル担当のダクネスに渡して。

 

「そう言えば、ウィズさんでしたっけ?」

「は、はい! 私、ウィズ魔道具店の店主をやらせてもらってます、ウィズと申します! この度は、その、助けていただいてありがとうございます……?」

「いや、むしろこの狂犬を嗾けたようなもんだから、むしろ謝罪すべきは俺たちっていうか……。ところでさっきゆんゆんから、魔道具店で買ったポーションの効果はともかく副作用がひどいって話なんだが……欠陥品売りつけたんじゃないだろうな?」

「欠陥品だなんてヒドい! 私だったら使うなって思ったものしか仕入れてませんよ! お店に並べているのは胸を張っておすすめできる商品ばかりです」

 

……ああ、わかった、この人も残念タイプだ。

常識がないって訳でもなさそうだし悪い人じゃないんだろうけどなぁ。

 

「まあ、とにかくよかったよ、友好的なリッチーで」

「確かにもしウィズさんが本気で敵対したら、アクアさんの叫び声を聞いた時点で魔法攻撃を仕掛けていたはずですし、そうなればダクネスさんはともかく、私たちはどうなっていたか……ってあれ? アクアさんの魔法が効いてたけど、いくらアークプリーストだとしても駆け出し冒険者の魔法がどうして効いたんだろう?」

「……もしかして、めっちゃヤバい状況だった?」

「ヤバいなんてものじゃないですよ! リッチーは強力な魔法防御、魔法攻撃、そして物理攻撃の無効化。なんなら相手に触れるだけで状態異常を引き起こしたり生命力を吸い取れて……アンデッドの王の名を冠しているだけある恐るべき伝説級のモンスターですよ」

 

ちょっとちびった。

でもちょっと待てよ?

さっきの仕入れた商品の話……リッチーになったせいでポーションの副作用を克服してるから、欠陥を欠陥だって認識できなってしまったってことか?

 

「……どうしましたかカズマさん? その、ずっと視線を感じるのですが……」

「いや、なんかかわいそうだなって」

「かわいそうってなんですか!?」

「いや、気にしないでくれ。それよりさ、俺たち、ゾンビメーカーの討伐依頼を受けたからこうしてここに来たんだが……その、魂を成仏させてくれるのはありがたいんだがゾンビとか幽霊とかなんとかならないか?」

「えっと、その、私の魔力に反応して自然と起きちゃうみたいで……」

 

なるほど、でも誰もやらないからわざわざこうして足を運んで除霊してたのか。

アンデッドなのに聖職者みたいだ……どこぞの生臭駄女神とは違って。

 

「よし、わかった! そうしたらウィズはもう来なくてもいいぞ。この墓のことはアクアにやらせるから」

「ちょっとカズマ、何私の了承も得ないで勝手に話を進めてるのよ!」

「いや、どうせお前暇だろ。というか何ちゃらを自称するんだったら慈善活動の一つでもやってみろよ、そうしたらめぐみんとかダクネスも少しくらい信じると思うぞ」

「でもリッチーの言うことを聞いてる感じなのは癪なんですけど! というかなんでリッチーを見逃そうとしてるのよ! この子もアンデッドならさっき私が昇天させた魂と一緒にエリスの元へ送り飛ばしてやらないと!」

「えっ、じゃあ墓の浄化しないのか?」

「するけど! それはするけど! でもそれとこれとは問題で――」

 

そうアクアが文句を言っている間に、空に太陽が現れた。

もう夜明けか。

そう思いながら疲れた体を伸ばそうと腰をそらせようとして……爆音が耳に突き刺さった。

 

夜明けを教える雄鶏の声ではない。

仮にこれが雄鶏だとしたら、目覚まし時計なんて発明品はこの世になく、世界中の誰しもが朝日とともに跳ね起きるだろう。

そもそも太陽かと思っていたのは太陽ではなかった。

 

「……めぐみんに、爆裂魔法を、頼んだなぁ」

 

今回の討伐クエストは標的のゾンビメーカーがいなかったので報酬はナシである。

ただそれだけならよかったのに、爆裂魔法を朝からぶっ放したせいで警察に通報が入り……

 

……まあ、空に撃ったおかげで大きな被害はなかったし、罰金が少なく済んだけ良かったとしようか!

そう思わないとやってられない。




次回はアニメ第4話の冒頭からです

ストーリー進行の早さどうですか?

  • もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
  • ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
  • 今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
  • もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)
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