我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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4-1 紅魔の…孤高娘(ロンリーマスター)

ウィズの件から数日後。

俺はギルドで今日もご飯を食べながら駄弁っていた。

もちろんただ遊んでるわけじゃない。

ギルドで話してると様々な情報を聞くことができる。

ゲーム風にいうと、この情報収集はフラグを回収する作業だろうか。

情報を制するものこそが戦いを制するのだ、ギルドに入り浸るのも大事な冒険者の仕事といえるだろう。

というわけで俺は他のパーティーの冒険者たちと話していた。

 

「そういえばこの前聞いたんだが、キースのところのダストがまたやらかしたらしいぞ。何でも女性の下着を盗んだとか」

「またか……どうせ借金まみれで首が回らなくなって、ただ飯にありつきたくてしたんだろけどなぁ。ま、しばらく独房孤独飯を満喫して帰ってくるだろ」

「あれ? 俺が聞いた話じゃダストは冤罪だって叫んでたって聞いたぞ? 証拠も見つからなかったし、そのまま釈放されるかと思いきや、警察官に謝罪求める代わりにセクハラして捕まったとか」

「どっちにしろアイツはやるときはやる男だ。今のうちに捕まっておいた方が街も平和になるってもんだぜ」

 

何だろう、俺の噂が誰か他の人の噂になってる気がするんだが。

そのダストってやつは結構悪いことしてるらしいし、俺としては意図的じゃないとはいえ少し申し訳ない気がするが……

ま、俺の悪い噂を全部吸収してくれたんだ、俺の身代わりになってくれて感謝しておこう。

 

「そう言えば知ってるか? なんでも魔王軍の幹部の一人が、この街から少し離れたところの丘にある古い城を乗っ取ったらしいぜ」

「最近モンスターの討伐クエストを受けようとしてもロクなのがいないと思ったらソイツの仕業か! なんてはた迷惑な……!」

「魔王軍幹部? 初心者の街に?」

「まったく物騒な世の中になったもんだぜ……迷惑なのはダストと爆裂魔法の騒音だけで十分だってのに! 今度そいつの姿見たら威嚇してやる!」

「おいおい、そんなこと言って、実際に出会ったら速攻で土下座するんだろ?」

「ったりめーよ! 魔王軍幹部にチンピラみたいに絡んで命散らした男として歴史に名を残したくないしな」

「ま、俺たちには縁のない話だよな!」

「ははは、違いねえ! ってカズマ、全然ジョッキの中身減ってないじゃないか、ほら遠慮せず飲め飲め!」

 

目の前の男が、俺のやる気のない無責任な言葉に笑いながら同意しつつも、俺に奢ってくれたシャワシャワというよくわからない飲み物を勧める。

俺はネロイドのシャワシャワを喉に入れ……

なんだこれ……炭酸みたいなシュワシュワじゃなくて、なんというか、シャワシャワする。

そんなことを思いながら一気に飲み干す。

 

「おおっ、いい飲みっぷりだな!」

「ぷはーっ! 初めて飲んだけど案外マズくはないな、何というか不思議な感じがする」

「最初はそんなもんだ、クリムゾンビアだってそうだろ? でもこいつをいろいろな酒に入れて割るとうまいんだよ!」

「へえーっ、そりゃいいこと聞いた!」

「おいおい、今日一番の反応じゃねえか。ま、飲みたくなったら道端の草むらとか路地裏を探してみな」

「いや、ちゃんと金は払って飲むから! 俺のこと乞食かなんかだと思ってないよな!?」

「……? 別に思ってないが急にどうした?」

「い、いや、何でも……」

 

いや、確かに俺は日雇いのバイトで食いつないでるような生活してるけど、流石に誰かの飲みかけてポイ捨てしたヤツを飲むほど困ってないから!

そう思ったのだが、何か話しにズレた感覚があってツッコミは不発に終わる。

違和感に首をひねるも、俺は男たちに礼を言って席を立ち、俺は自分たちのパーティーのテーブルへ向かうと。

 

「……アクア? ゆんゆん? どうしたんだ俺のこと変な目で見つめて……もしかして惚れたとかか?」

「そんなことあるわけないじゃない。現実と二次元の区別はついててほしいんですけど」

「冗談で言っただけだから! ……ってか本当にどうした? なんかふてくされてないか?」

「いえ、その、カズマさんが他のパーティーの人と一緒に話してるの見て、他のパーティーに目移りしないか心配なんて……」

 

そう言いながら俺のことをチラチラ見るアクアとゆんゆん。

ゆんゆんはともかく、アクアは心配してたんだったらもう少し問題を起こさないように気をつけてほしいんだが。

 

「はぁ……。まあ何でもいいか。そんなことより、お前らに聞きたいことがあるんだよ。次にレベルが上がったらどんなスキルをとろうか相談したいんだ」

「モグモグ……ゴクン! 爆裂魔法以外に覚える必要のあるスキルなどありましょうかいいえありませんとも! さあ、私と一緒に爆裂道を――」

「爆裂狂いは参考にならないから食事を続けててどうぞ?」

「何ですかその対応はせっかく人が案を出したというのに! その身に爆裂魔法の神髄を叩き込んでやりましょうか!」

「いや、はっきり言ってこのパーティーはバランス悪すぎだからな、潤滑剤みたいな役割が必要だろうと思って。もしめぐみんがなんかの手違いで他の魔法スキル覚えたりするんだったら――」

 

俺の言葉を全部聞く前に食事に戻りだしためぐみん。

残念なことに爆裂魔法以外を覚えるつもりはないらしい。

 

「はぁぁ、効率よくクエストをこなしていきたいのに……。そういやダクネスはどんなスキルとってるんだ?」

「私か? 私は物理耐性と魔法耐性、状態異常耐性だな。後はデコイという囮スキルくらいか」

「……両手剣スキルとかは?」

「もちろん覚えていない」

「もちろんの使いどころ間違ってる気がするんだが!? お前、仮にも聖騎士なんだろ? 武器の命中率やらあげようとは思わないのか!」

「微塵もない」

「おい」

 

キリリとした決め顔できっぱりはっきり断言するダクネスに思わずツッコミを入れる。

胸を張って宣言する内容じゃないだろうに。

そう思っているとダクネスは姿勢を正す。

そして、真剣な表情を作って――

 

「…………正直に言おう。私は前にも話したが不器用で攻撃が当たらないのだが、もし、もし仮に武器スキルを習得してしまえば守るという行動そのものに集中できず仲間の身代わりになれない可能性がある。不器用だからこそ脇を見ている余裕はない。そう言うわけで私は敢えて攻撃スキルを覚えていないし、これからも覚えるつもりはない」

「ダクネス……………………即興にしてはなかなか完成度が高い言い訳だったぞ。で、本当は?」

「体力と筋力がある私はこう思うのだ『攻撃が当たるようになってしまったら無傷でモンスターを倒せるようになってしまうのでは?』と。かと言って手加減しするというのは違うのだ。こう、必死に剣を振るうが当たらず、力及ばず圧倒されて組み伏され、そういう蹂躙されている感じが気持ちい――」

「それ以上は黙ってろよ? でないと俺のスティールが火を吹くことになる」

「むしろ望むところだ! 盾スキルも覚えていない私をなめてくれるなよ?」

 

駄目だ……俺の脅しも何もききやしない……

というか盾スキルも取ってないのかよ、せめて人を守るっていうんだったらそれはとっておけよ!

一発ぶん殴りたいが、そうしたところで俺の方がダメージ大きそうで、俺はワナワナと拳を振るわせていると。

 

「えっと、私は……」

「お前はいい」

「なんでよおおぉぉォォーーっ!!」

 

だって前に『宴会芸スキルを全部習得してからアークプリーストのスキルを覚えた』みたいなこと言ってたろ。

どうせ説明を聞いたところで宴会芸だとか回復魔法だとか宴会芸だとか……そんなんだろう。

 

ま、まあここまでは想定のうちだ。

この三人がこんなんだってのは最初から知っていたはずだ。

問題というか本題というか、最重要なのは――

 

「なあ、ゆんゆんのスキルは教えてもらってないんだが、教えてもらってもいいか?」

「あ、えっと、私は上級魔法スキルなんですけど……」

「ああ、それは一応知ってるんだが、具体的にどういう魔法があるだとか、な。あとできればほかのスキルもあるんだったら教えてほしいんだが……」

 

そう言いながらゆんゆんの方を見ると、ゆんゆんはどういうわけか俺の視線から逃げるように目をそらした。

まあ、何というか視線をそらすのは割といつものことなんだが、今日はなんとなく違和感が。

いつもは目を合わせると照れ恥ずかしくって外すような感じなんだが……何かが怪しい。

いつもオドオドしているゆんゆんだが、今はいつにも増して挙動不審だ。

俺は普段と違う様子に戸惑いながらも。

 

「その、なんて言うか、ほら、ゆんゆんってめぐみんほどじゃないけどよく魔力切れになるだろ? ジャイアントトードの時も…………いや、そん時はポーションの不味さのせいだったか?」

「あ、いえ、一応ポーションの効果による魔力枯渇で……まあ、めぐみんみたいに体力までは消費してないのでちょっとした立ちくらみみたいな感じなんですけど……」

「そうなのか? ……ちなみにキャベツの時も魔力不足になってたよな? あの時は魔道具使ってなかったけど……」

「その、魔道具は使わなかったんですけど、ちょっと張り切り過ぎちゃった……みたいな? その、ご迷惑を、すみません……」

 

別に謝るほどでもないと思う。

なんなら普段から問題を起こすアクアに比べたら可愛いもんだ。

というかアクアは迷惑かけてなんぼだって思ってるし、比較することすらおこがましいレベルだ。

そう思いながら少し肩を落とすゆんゆんに。

 

「ま、気にすんなよ。毎回倒れてたとしても魔法の種類とか威力の面でめぐみんの上位互換だから――」

「おい、その話は聞き捨てなりませんね! 爆裂魔法は威力もさることながら無属性魔法という、悪魔だろうと幽霊だろうと神だろうと、万物にダメージを与えることができる究極の魔法なのですよ!」

「あー、そうだねー、すごいよねー」(棒)

「そうでしょうそうでしょう! わかればよろしいのです、私こそがゆんゆんの上位互換なのですから!」

 

俺らの話の腰を折ってきたので軽く受け流すと、めぐみんは満足げに頷いて食事に戻っていった。

もしかしてめぐみんは爆裂魔法を褒めておけば上機嫌になるチョロい子なのではないか……?

めぐみんの扱い方を心得て何ともいえない気持ちになりながらも、俺は邪魔者がいなくなったので今度は小声で。

 

「まあ、倒れたときに怪我してないかは心配だけどな。もし怪我とかあったらアクアに言って治してもらえよ?」

「あ、す、すみません、今のところ大丈夫です」

「なら一安心だ。でもできれば倒れないように調節しながら戦ってほしいな。毎度冒険で倒れられても……ほら、爆裂娘がいるだろ? ゆんゆんが頼りなんだ」

「私が、頼り……!」

「そう、ダクネスはあんなんだ(攻撃が当たらない)し、アクアもこんなん(戦力外)だ。俺だって最弱職、攻撃に関しては期待しないでほしい……そんな状況で一番頼りになるのはゆんゆんしかいないんだ」

「私、頼りにされてる……!」

 

俺の言葉に目を輝かせているゆんゆん。

黒色のカラーコンタクトの奥が紅く灯っている気がするのは気のせいじゃない。

この子もこの子でちょっと……いや、かなりチョロすぎるんじゃなかろうか。

しかし、しばらくすると興奮していた様子から一転、ゆんゆんはしおらしい様子で。

 

「あの、その、カズマさん」

「お、おう。どうした?」

「その、私、カズマさんたちに頼りにされることはとっても嬉しいし、その期待に応えなきゃって思うんですけど、その……これからも多分、いえ、ほぼ確実に魔力枯渇すると思うんです」

「なんだ? もしかしてめぐみんが爆裂魔法に執着してるみたいにゆんゆんの魔法もそっち系なのか? それともゆんゆんの魔力量が少なくてすぐ枯渇しちゃうとか?」

「…………うう……そ、そのぉ……私……」

 

何かを言おうとして口を動かすゆんゆんだが、その言葉は聞こえてこない。

息が詰まって呼吸ができないようにただパクパクと口を動かすだけで。

何か込み入った事情でもあるのだろうか、今はまだ聞かないでおくべきだったかと思い始めたそのとき、めぐみんが。

 

「……正直に話してもいいのでは? どうせ冒険を共にするというのならいずれバレますよ?」

「で、でもめぐみん……」

「誰も幻滅したりはしませんよ。私がそうならなかった時点でわかりきってることです。大丈夫、短い付き合いですが皆悪い人たちではなさそうですしね」

 

そう言ってわずかに震えるゆんゆんの手をテーブルの下で握るめぐみん。

同じ里の出身だからか、ゆんゆんの抱えている事情を知っているらしい。

深呼吸をして少し落ち着きを取り戻したゆんゆんは言葉を続ける。

 

「あの実は、私……紅魔族なのに上級魔法使えないんです……」

「なんだ、そんなことか。ただ上級魔法を使えないだけ……か……? 使えない!?!?」

 

ちょーっと待ってくれ!?

この前のカエルの時も……キャベツ狩りの時だって上級魔法を使ってたはずだ!

なのに使えないってのはどういうことだ!?

突然の告白に理解が追いつかない中、ゆんゆんの説明は続く。

 

「今まで上級魔法って言ってましたけど違うんです。この前のボトムレス・スワンプは確かに上級魔法だったんですけど、あれはあくまでポーションの力で、私は上級魔法を習得してなくて……」

「えっ!? じゃ、じゃあキャベツの時の魔法は?」

「その、今回は中級魔法を……わ、私、中級魔法は覚えていて、それでその魔法に魔力を過剰に込めることで上級魔法ぽく見せてまし……た…………ご、ごめんなさい!」

 

ゆんゆんは上級魔法じゃなくて中級魔法使いだった……そういうことか?

いや、でもわからない。

どうして上級魔法を使えないのにわざわざ上級魔法だと嘘をつく必要があったのか。

魔道具を使ってまで上級魔法にこだわる何かがあるのか……?

 

「どうして今まで隠してたんだ? 別に俺はゆんゆんが中級魔法使いでも気にしないんだが……」

「その、紅魔族は上級魔法を使えてこそ一人前なんです。でも私は中級魔法使いで……カズマさんたちと、それから里のみんなの期待を裏切りたくないって思いもあったんですけど、それ以上にもし私が中級魔法しか使えないって里の人にばれると……」

「彼女は族長の娘で、将来は里の未来を背負おうとしているのです。ゆんゆんが中級魔法使いであるとばれると、上級魔法も使えない半人前であると見なされて族長候補から外されてしまいかねません。まあ、それを言ったら私も上級魔法を覚えていないので、爆裂魔法のことは里の皆には隠しているのですけどね」

 

なるほどなぁ……

つまりは知り合いに使ってる魔法が上級魔法じゃないってバレると問題になるわけか。

しかしめぐみんはあんまりそんなことは気にせずバンバン爆裂してるが……

 

「まあ、私としてはもしそんな事態になってしまったらそのときはそのとき、紅魔の異端児というかっこいい異名を世界中に轟かせようかと。むしろ私がゆんゆんだったら『これはクリスタルプリズンじゃない、フリーズだ!』的なかっこいい魔王の台詞を堂々と言ってやるところです」

「お前はいつも通り平常運転なの、なんか安心するわ」

「まあそう言うわけでして、私はどうでもいいんですがゆんゆんは中級魔法しか使えないとバレる訳にはいかないんですよ。普通紅魔族は中級魔法を覚えません。ゆんゆんが中級魔法しか使わないなどと噂されれば、里から冒険者カードを確認させてほしいと連絡が来るかもしれない……それを恐れているのです」

「レベルが14になったらちょうどスキルポイントが30溜まるので、その時に上級魔法を覚えれば中級魔法でもなんでもバンバン使えるんですけど……その、もし私が邪魔だったらパーティーから……」

 

外してくれと言いたいのか、その唇は小さく震えていた。

……正直、俺たちなんかと一緒に行動しないで一人でレベル上げをしてた方が早く成長すると思うんだ。

一人で行動した方がモンスターの討伐数も増えるだろうし、低レベルな俺たちを守らなくて済むから高レベルクエストを受けやすいだろうし……

ゆんゆんのためを思うんだったら、むしろこのパーティーから追放した方がいい気がしてきた……が。

 

「馬鹿だなぁ、俺たちがゆんゆんのことを邪魔だなんて言うわけないだろ?」

「カズマさん……」

「そうよ! むしろ私のことを女神だって信じてくれてるのゆんゆんしかいないのに、それを邪魔だなんて、私の名にかけて誰にも言わせないわ!」

「もし中級魔法しか使えなくてもそれでいいのではないか? 一人ではできないことを支え合うのがパーティーだ。私なんて攻撃が当たらないしな」

「アクアさん、ダクネスさん……!」

「言ったでしょう、大丈夫だと」

 

水の女神であるアークプリースト。

どんな攻撃も受け付けない鉄壁の守りを持つクルセイダー。

最強の魔法を使用するアークウィザード。

そして……

 

「今まで黙っててごめんなさい。その、上級魔法を習得できたら燃費もよくなると思うんですけど、そ、その、ふ、不束者ですがこれからもよろしくお願いします!」

「そうと決まればクエストよ! ばんばんゆんゆんのレベル上げして、上級魔法を覚えちゃいましょう!」

 

中級魔法を上級魔法の威力で放出するアークウィザード。

いつも黒いその瞳は紅く輝いていた。

……なんだろう、ゆんゆんは美少女でこんなにも素晴らしい仲間なはずなのに。

 

「不安だぁ……」

 

思わずそんな言葉が漏れた。




補足
アニメ「爆焔」の最終話、ゆんゆんはめぐみんと別れて修行の旅に出て上級魔法を覚えました。
しかし今回の話ではゆんゆんはなぜか修行に行かずめぐみんとパーティーを組んだままで……つまりは中級魔法使いのままです。

どうしてゆんゆんとめぐみんは修行せずに一緒にいるのでしょう……

ストーリー進行の早さどうですか?

  • もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
  • ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
  • 今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
  • もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)
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