グリフォンとマンティコア。
本来、アクセルのような初心者向けの街近郊には見つかわしくない、そんな大物がこの近くの山岳地帯に住み着いたのは、今から2年ほど前のことだ。
マンティコアと呼ばれるモンスターは、自然の生態系から発生することはない。
創成魔法で生み出された魔法生物の一種だ。
どこかのいかれた魔法使いが面白半分に解き放ったのか、それとも近くの遺跡やダンジョンから逃げ出してきたのかはわからない。だが、どこからともなく現れたそのマンティコアは、アクセルの近くの山岳地帯にある日突然住み着いた。
やがてその後を追うように、その山岳地帯でグリフォンの姿が目撃されるようになった。
グリフォンが初めて発見された当初は、翼に大きな傷を負い、全身がボロボロになっていたのだという。
既に満身創痍の姿を見た冒険者ギルドは、あの山岳地帯を立ち入り禁止区域に指定した。手負いのグリフォンに不用意に近づくことを禁じ、重症のグリフォンがそのまま力尽きるのを待つ……という消極的な方針をとったのだ。
また、うまくすれば、そこを縄張りに住み着いたマンティコアと戦い、共倒れになってくれるのではと期待したのだ。
ところが、グリフォンはそんなギルドの甘い期待を大きく裏切り、しぶとく生き残った。
それどころか、縄張りを同じくしたマンティコアと毎日のように争い続け、その余波が近隣まで危害を及ぼすようになった。
1匹だけでも厄介なモンスターが2匹になったことで、ギルドとしては今の今まで、形だけでも依頼は出したものの、万が一にも誰かが引き受けないようにワザと報酬を下げ、今まで棚上げにしていたらしい。
そんな曰く付きの危険地帯、アクセルの街から山岳地帯へと向かう道中。
俺は歩きながら、今回の標的についてギルドの資料や噂で聞いた情報を、頭の中で整理していた。
空からの強襲を得意とする大空の覇者と、地を這い猛毒の尾を振りかざす凶悪なキメラ。どちらも一筋縄ではいかない相手だ。
春の陽気でポカポカと暖かい気候のなか、木漏れ日が降り注ぐ山道はどこかのどかな雰囲気を漂わせており、俺たちはまるでピクニックのような空気感で山道を進んでいた。
「ねえカズマ、まだ着かないの? 私の繊細な足が泥で汚れてきちゃったんですけど。疲れたしめぐみんみたいにおぶってくれてもいいのよ?」
「誰がおぶるか! こっちだって歩いて疲れてんだよ、最弱職なめんなよ! あと、本当に神聖なオーラ出てるんだったら泥くらい浄化できるだろ。それに、めぐみんは疲れたんじゃなくて、魔力溜まりすぎて動けないからホーストに背負ってもらってるだけだ」
「どっちでもおんぶしてもらってるのには変わらないでしょ。私だって楽したいんですけど」
「これ以上駄々こねるならお前の夕飯のおかずはモヤシ炒めだけな。俺たちがグリフォンの肉焼いて食うの黙って見てろ」
「わっ、悪魔! カズマの悪魔! あの悪魔たちよりよっぽど悪魔よ!」
背後からギャーギャーと騒ぎ立てるアクアの喚き声を無視しながら、俺は呆れ顔で前を歩く連中を眺めた。
先頭を行くのは、顔を真っ赤に紅潮させ、荒い息を吐きながらズンズンと山道を突き進んでいるダクネス。
鎧がガシャガシャと鳴るたびに、口から漏れる吐息が荒くなっていく。
「はぁ、はぁ……。空からの鋭い嘴による啄み、そして地上からの猛毒の尾による刺突……。それが同時に襲いかかってくるのだな……! くっ、想像しただけで鎧の下が熱くなってくる……。安楽王女にはいらない子扱いされたが、この私がどれほど強靭な肉体を持っているか、あの猛獣どもに思い知らせてやる!」
興奮しているのはいつも通りだが、今日に関しては性癖だけじゃなさそうだ。
安楽王女の言葉がよほど堪えていたのだろう、その言葉にはクルセイダーとしての意地が混じっていた。
しかし、一人で勝手に興奮状態に陥っているダクネスを見ていると何故か落ち着く俺は、いよいよ末期なのかもしれない。
「ダクネスさんは本当にブレないですね……。なんだか私、少し安心しました」
「俺もだよ。ダクネスは少し変態なくらいな方が調子が狂わなくなってきた」
「ゆんゆんもカズマもそこは安心するところじゃないんじゃない……? 戦いを前にして高ぶるのはわかるけど、正常な判断ができなそうな興奮具合だし……」
ねりまきが的確なツッコミを入れてくるが、俺たちのパーティーにとってはこれこそがいつも通りなのだ。
むしろダクネスが清楚で大人しかったら、明日は槍でも降ってくるんじゃないかと本気で心配になる。
そんなことを思う中、俺たちの後ろでは、上位悪魔であるホーストがめぐみんとこめっこを頭の上に乗せて歩いていた。
魔王軍幹部クラスの実力を持つ悪魔が、人間の子供二人の乗り物と化している光景は、もはやアクセルの日常に溶け込んだと言っても過言ではない。
「こめっこ、私はリーサルウェポンなので来るときまで力を消費しないようにしているだけなのです。ですのでホーストにおんぶされているのは歩けないわけではなく、作戦の一環なのですよ」
「へー」
こめっこは興味なさげに、手にした木の実をかじりながらホーストの頭の上で揺られていた。
その隣にいるめぐみんは、胸を張って虚勢を張っているが、杖を持つ手は微かに震えていた。
たった数日前にアイデンティティを全否定されたばかりなのだ、無理もない。
それに加えて最近は落ち込んでたせいで、日課である爆裂散歩に行けていない。
めぐみんの体質上、魔力を溜めすぎるとよくないのに、今まで溜めに溜めていた膨大な魔力……それを抱えながら強敵のいる山を登っているのだから、そのプレッシャーと身体的負担は相当なものだろう。
途中で爆発しないといいのだが。
そう思いながらしばらく歩くと、周囲の空気が露骨に変わった。
鳥のさえずりが消え、木々のざわめきすらも息を潜めている。
俺たちは有名な2匹のモンスターの縄張り、その深部へと足を踏み入れたのだ。
山の中腹でアクセルの街を見下ろせば、遠くに見える小さな絶景が広がっている。
しかし、今の俺たちにその景色を楽しむ余裕はなかった。
「お前ら、作戦はわかってるな。ダクネスのスキルでグリフォンかマンティコアをおびき寄せたら……」
「はい! 近いモンスターの方を私とねりまきで倒せばいいんですよね」
「もし近づかれすぎても、囮スキルで私の方に引きつける。足止めしてる隙に二人が仕留めてくれる算段でよかったな」
「私は爆裂魔法で遠くの方の敵を狙えばいいのですね。本当は二匹同時に討伐したいところでしたが仕方がありません。我が爆裂魔法であれば遠くの敵であっても一発で仕留められるでしょう。もし万が一のことがあれば支援を頼みますよ、アーネスにホースト」
「承知いたしました」
「おう、ガキの安全は俺が絶対守ってやるよ」
今は俺らは潜伏スキルで気配を絶って隠れている。
しかし、戦闘が始まったらこんな確認をしてる余裕はない。
何より強敵同士が縄張り争いをしている危険地帯だ。
もし争いの余波に当てられたらひとたまりもないだろうが、逆をいえば、そのおこぼれを貰うために身を潜めている別のモンスターだっているはずだ。
今のうちに入念に再確認をしておかないとならない……そう思ってたのだが。
「ねえねえ、私は? 私は一体何をすればいいの?」
「……お前、何にも話聞いてなかっただろ」
「だって小難しいことばっかりいうんだもの。誰にでもわかるようにちゃんとプレゼンしないと駄目よカズマ」
「何も難しいこといってないだろ! 支援魔法と回復魔法だって。敵意を向けさせれば俺のスキルに反応するから、逆に対処しやすいって話をして――」
「ああ、なるほどね! 『フォルスファイア』!」
「あああああっ!? 何勝手に使ってんだぁあっ!? まだめぐみんとゆんゆんの魔法の準備終わってないだろうが!」
「な、何よ! カズマが使えっていうから使ってあげただけじゃない!」
「使えなんて一言も言ってないだろうが! 囮はダクネスがやるし、タイミングもまだだったのに!」
「そ、そんなに怒んないでよ、私だって役に立とうと思ってたのよ! それにまだ縄張りに入ったばっかり何でしょ? だったら私たちの方にモンスターが来るまで時間があるはずよ!」
折角の隠密行動が完全に台無しだ。
多分すぐにでも来るモンスターに備えて剣を抜き構えていると。
俺の敵感知スキルに、恐ろしい速度でどんどん接近してくる強大な敵の反応があった。
「来たぞお前ら!」
俺が叫ぶのと同時だった。
ふと、頭上に何かの巨大な影がさす。
ハッとしてそちらを見上げると、そこには巨大な羽を傾かせ、鋭いくちばしを持った猛禽類の頭。
鷲の頭と獅子の胴体を持った巨大生物――グリフォンが、空を裂くような速度で俺たちに向かって急降下して迫ってきた。
風を切る鋭い音が、死の宣告のように鼓膜を叩く。
「来い、グリフォン! 私をその嘴で攻めてみろ! 『デコイ』!」
「え、援護するわ! 『ライトニング』!」
「『パワード』! 『プロテクション』! ダクネスさん、これから上級魔法の詠唱するから耐えて!」
「ああ、任せろ! 耐えるのは大得意だ!」
「待てお前ら! まだ敵が――」
俺の制止の言葉は、戦闘の喧騒にかき消された。
ダクネスが待ってたとばかりに、大剣を構えてグリフォン目掛けて一直線に突っ込んだ。
本来の「近寄ってきた方を魔法使い組で叩く」という計画と違う指示だったが、次の瞬間、ダクネスたちはぜ俺が止めたのか、その理由を理解する。
ダクネスが突っ込んでいくタイミングを計ったように、反対側の茂みから、一つの巨大な影が飛び込んできたのだ。
「オットソリャアよくねえナァ。グリふぉんは嫌いだがヨ、アイツがいないとこの山に、お前らニンゲンが攻めてキチマウだロ」
巨体が地面を抉るように疾走する鈍い音。
土煙を上げて着地したその異形に、俺たちは息を呑んだ。
人間の頭がついた獅子の体に、サソリの尾と蝙蝠の羽がついた生物。
その低くてねっとりとした声は、耳の奥を這い回るような強烈な不快感があった。
そんなキメラみたいな、生理的嫌悪感を催す気味が悪い体を持つ凶悪な魔獣――マンティコアが俺たちを分断する形で姿を現したのだ。
「カズマ!!」
「だ、大丈夫だ、ダクネス! そっちでグリフォンを先にやっつけてくれ!」
「オット、そうハさせねェゾ?」
ニタリと笑うマンティコア。
だが、事態はそれだけでは終わらなかった。
俺たちの背後、ちょうど退路を塞ぐような形で、木々をなぎ倒しながらもう一体の巨大な影が姿を現したのだ。
「ニイチャン、ええやんケ! ナア、ええやんケ!」
全く同じ異形……二体目のマンティコアがやってきたのだ。
冷や汗が背筋を伝う。
縄張り争いをしてるから別々に戦えると思っていた。
そもそもクエストにはグリフォンとマンティコアが一体ずつとしか書かれてなかった。
しかし、現れたマンティコアは二体……つがいだったのだ。
しかも、頭がいいから俺が指示役だとわかっているのか、マンティコアは両方とも、その不気味な瞳でまっすぐに俺の方を見つめてきた。
「シャァァァァッ!!」
耳をつんざくような咆哮と共に、二体のマンティコアが同時に俺へと殺意を向けてきた。
前門のキメラ、後門のキメラ。
俺は完全にサンドイッチ状態だ。
「下がってろ。『カースド・ライトニング』」
アーネスが前に踊り出て、漆黒の雷を放つ。
激しい閃光が森を照らし出すが、マンティコアたちはその巨体に似合わない俊敏さで左右の木々へと跳躍し、縦横無尽に空を駆けてこれを回避してみせた。
魔法生物ゆえの高い魔法耐性と異常な機動力。
アーネスの強力な魔法でさえ、直撃させなければ致命傷を負わせることはできない。
「チィッ、すばしっこい真似を! ホースト!」
「無茶言うなアーネス! ガキと主を守るために両手が塞がってんの見えねえのか!」
ホーストの方を見れば、彼の巨躯の後ろには、杖を構えて魔力を練り続けているめぐみんと、「お肉まだー?」と無邪気に尋ねるこめっこがいる。
……この状況でグリフォンたちを肉としか認識していないこめっこは将来大物になるだろう。
「くそ……ダクネスたちが終わるまで、俺たちで持ちこたえるしかないのか……!?」
グリフォンの方では、三人が激しい戦闘を繰り広げていた。
『ライト・オブ・セイバー』や『ライトニング・ストライク』がグリフォンの巨体を掠め、その体には徐々に傷が増え、体力が削られているように見えた。
紅魔族二人の火力と、ダクネスの絶対的なヘイト稼ぎによる連携は完璧――かに見えた。
「なっ!? ダクネスさん!!」
「おおおおっ!? 空へと連れ去られ、巣で雛鳥の餌にされるというのか!? くっ、この私が生きたまま啄まれるなど……辛抱たまりゃんっ!」
「喜んでる場合じゃないわよ! どうしよう、このまま魔法を撃ったらダクネスさんに当たっちゃうし、魔法でグリフォンを倒しても、空から落ちてきちゃう!」
「あわわわ、どうすればいいのこれ!? ダクネスさん! 頑張って振りほどいて!」
ダクネスの変態的な挑発に業を煮やしたのか、グリフォンが強烈な羽ばたきと共に急降下し、その強靱な両足の爪でダクネスの鎧をガッチリと掴み上げた。
変態騎士は頬を赤らめて喜んでいるが、事態は最悪だ。
グリフォンはダクネスをぶら下げたまま、一気に数十メートルの上空へと舞い上がり……この高さから落ちればいくらダクネスでもタダでは済まない。
何より味方に当たるかもしれない状況で、ゆんゆんとねりまきも完全に魔法を撃てない。
空にはダクネスを人質に取ったグリフォン。
地上には、俺の尻を虎視眈々と狙う二体のマンティコア。
まさに絶体絶命の危機だ。
(どうする!? このままじゃパーティー全滅か……!?)
冷や汗をかきながら視界の端で、アクアが半泣きになりながらダクネスに向けて魔法を使ってるのが見えた。
そうだ、アクアの『フォルスファイア』があれば、グリフォンは知性があるとはいえ本能が丸出しの獣だ。
そして、目の前のマンティコア二体は、なぜか執拗に俺を標的にしている。
「……やるしか、ねえのか……!」
「や、やるって何をするの!? カズマさんのいつもの小賢しい知恵で何か打開策ができたの!?」
「小賢しいとかいうなよ。……けどまあ、そういうことだ!」
腹を括った俺は、大声で叫んだ。
「アクア! あの囮の魔法って俺にかけることはできるよな!」
「う、うん! フォルスファイアは青い炎があるところを標的にする魔法だからいけるわ!」
「じゃあ俺にかけられるだけの支援魔法を頼む! 特に速度と回避だ! それが終わったら囮魔法を使ってくれ」
「えっ、わ、わかったわ! 『スピード』『ブレッシング』『――」
俺はアクアの魔法を一身に受けながら、めぐみんの方を見る。
「な、何をする気ですか! まさかカズマが早贄になって私たちのことを逃がすつもりじゃないですよね! くっ、カズマのことは忘れませ――」
「ち、ちがわい! ちゃんと勝算はあるし、勝手に俺のことを殺すな!」
「本当ですか!? それは一体どんな作戦ですか!?」
「俺が彼奴らを引きつけながら逃げる。ねりまきかゆんゆんにテレポートの準備をするように言っておけ!」
「……なるほど。私に最高の舞台を用意してくれるというのですね! ええ、任せてください。我が最強の魔法で、塵一つ残さず消し去って見せます!」
俺の意図を察しためぐみんの瞳に、鋭い光が宿る。
「……しかしカズマは元のステータスが貧弱なのですぐに追いつかれて八つ裂きにされるのが目に見えてますよ」
「くっ、は、反論できねえ……で、でもこうするしか方法はないだろ。大丈夫だ俺の幸運を甘く見るなよ? 何回かいい感じにあいつらの攻撃を奇跡的によけて――」
「そんなリスクを冒さなくてもいいですよ。アーネス! カズマのことを運んでください!」
「……承知しました。我が主様のご命令とあらば」
「アーネスはテレポートも使えますから、いいタイミングで離脱するのですよ、カズマ!」
マンティコアを牽制しながら、アーネスは渋々といった表情で俺の背後につく。
背中から漆黒の悪魔の翼を広げ、俺の脇腹を両腕でガッチリと抱え込んだ。
「カズマ! 準備できたわ! 囮魔法もいっちゃうわよ!」
「頼むアクア! アーネスは逃げる準備を!」
「行くぞ人間! 舌を噛まないようにしろよ!」
アクアの魔法がかかると、グリフォンがダクネスをぶら下げながら俺の方に急降下してくる。
地面が陥没するほどの踏み込みと共に、俺とアーネスは一気に地面すれすれの低空飛行を始める。
ものすごいGが体にかかる。
アーネスの速度は、俺の全力疾走など比較にならない。
背後を振り返れば、土煙を突き抜けて、激怒した二体のマンティコアと、ダクネスをぶら下げたグリフォンが、弾丸のような速度で俺たちを追走してくるのが見える。
「ちっ、ダクネスを放さないか! 食らえ……『狙撃』――ッ!!」
「ギギャァ!?!?」
俺の矢がグリフォンの目玉に刺さる。
その瞬間に趾の力が緩み、ダクネスは全力で殴りつけなんとか脱出した。
さっきまでとは違い、地面が近いからきっと無事だろう。
しかし俺たちの方が無事ではない。
「ウハッ! 男前な兄ちゃんじゃネーカ! おいお前、俺の太いものをチクッと一発ドウダイ」
「いいドキョウだなニイチャン。タイマンか! このオレとタイマン張る気カ! オットコマエダナ、ケツに一刺しクレてやんヨ」
「アーネスさん!! アーネスさん!! もっとスピード出してください!!」
「無茶言うな! これでも全速力だしお前より速いだろ!」
アーネスの全力よりもこいつらは速い。
じわじわと距離は詰まっていく恐怖。
俺の幸運で回避する?
支援魔法があればなんとか逃げられる?
貧弱なステータスの俺の足では、いくらバフを重ねても無理だろ!
大体、人間が野生動物相手に総力勝負で勝てるわけないんだわ!
「く、くそったれが! 『クリエイト・アース』! からの『ウィンド・ブレス』!!」
「グギャァッ!?」
「目ガッ! 目ガァアア」
目くらましでモンスターたちが一瞬怯んだ隙に、少し距離を離す。
俺が情けない悲鳴を上げながら逃げていると、森全体の空気がビリビリと振動するのを感じた。
それは、めぐみんが魔力を完全に練り上げて、いつでも魔法が放てることを意味している。
「アーネス! テレポートだ! めぐみん、やれぇぇぇっ!!」
グリフォンたちは命の危機を感じたのか、散り散りになって逃走を始める。
しかし、もう遅い。
めぐみんの爆裂魔法の範囲はそれはもうえげつない。
いくら足が速かろうと、すでに逃げることはできないのだ。
山岳地帯全体を震わせるような、深く、重い詠唱の声が響き渡った。
限界まで魔力をため込み、高めきっためぐみんの、渾身の魔法。
「これが私の存在証明なのです!! とくと見よ! ――『エクスプロージョン』!!」
俺とアーネスがアクセルの街から見えたのは、森のど真ん中に聳え立つ巨大な火炎。
太陽が地上に墜ちたかのような圧倒的な閃光と、鼓膜を破らんばかりの轟音と共に、超特大の爆発が山を丸ごと削り取るように膨張したところだった。
最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…
-
第6章(現在の章)
-
第7章
-
第8章
-
リメイクしてテンポよく進める