我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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29-4 深夜の…告白(コンフェッション)

とある日の深夜。

俺は今日は深酒もせず、軽いストレッチをして熟睡の準備をしていた。

そんな屋敷中が寝静まり、窓の外からは微かな虫の音だけが聞こえてくる時間帯。

そんな時間帯にコンコンとドアを叩くの音が響いた。

 

「ん……? 誰だ、こんな夜中に」

 

アクアが夜食でもねだりに来るならもっとやかましいだろうし、他の誰かだろうと思いつつ身を起こすと、ドアの向こうから微かに声が聞こえた。

 

「……カズマくん。起きているかしら。私、ウォルバクよ」

「えっ」

 

思わず変な声が出た。

深夜、美人でナイスバディなお姉さんが、自分の部屋に訪ねてきた。

かつての俺だったら童貞のように、考えなしにドアを開けていただろう。

しかし悲しいかな、この屋敷に住み始めてからそんな経験の一つもないし、そんなご都合主義な展開なんて……そう思いながらも心のどこかで期待している俺がいるが、あり得ない。

だとしたら、これが意味するところは一つしかない。

 

「うん、夢か。サキュバスのお姉さんがサービスに来てくれたんだな」

 

今日は例の店でサービスを頼んでいたのだ。

俺は気づかぬ間に眠りに落ちてしまったのだろう。

それにしても流石はサキュバス、俺の願望を忠実に再現してくれるなんて。

 

しかしいくら夢だろうと、俺の心臓は夜の静かさに反して激しく響き、寝静まるどころか冴え渡ってきた。

……落ち着けサトウカズマ。

ここは俺の夢の中、俺のイメージ次第で展開なんてどうとでもなる。

そう思って俺はドアを開け――

 

「起きてますよ。どうぞ、入ってくださ……い…………」

 

当たり前だが、ウォルバクさんの姿は普段のローブ姿ではなく、少し薄手のナイトガウンを羽織っていた。

そんな扇情的な姿とは裏腹に、ウォルバクさんは真剣な表情をしていた。

 

「……なるほど、告白から入るシチュエーションか。わかってるな、あのお姉さん」

「えっ、どういうこと?」

「何でもないです」

 

おっといけない、思わず思ってることを口に出してしまった。

 

「それよりどうしました、ウォルバクさん。こんな夜更けに」

「夜分遅くにごめんなさいね。どうしても、今夜のうちにあなたと話しておきたいことがあったの」

「話、ですか」

「ええ。……驚かないで聞いてちょうだい」

 

……少し展開が早すぎる気もする。

いや、これはこれでいいんだが、もう少しリアルに寄せてムードを重んじるのもまた乙なものじゃないかと思うんだが。

そんなことを思っていると、ウォルバクさんは俺のベッドの脇まで歩み寄り、真剣な、射抜くような瞳で俺を見下ろした。

ゴクリと息を呑む俺に対し、ウォルバクさんは静かに、しかしはっきりとした口調で告げた。

 

「実は私……魔王軍の幹部なの」

「うん知ってた」

「だから、これ以上魔王軍に手を出さないでほしいって説得に……って、今なんて言ったかしら?」

「うん、それだけじゃないだろ?」

「あ、あれ? カズマくん? 私の言葉、聞こえてたかしら。私、魔王軍の幹部なのよ? 人類の敵なのよ?」

「そんなことよりもっと重要な告白があるんじゃないか、ウォルバクさん。あまり俺のことを焦らさないでくれよ」

「そんなことってどういうこと!? これ以上ない衝撃的な告白だと思うんだけど!? もしかして、いきなりすぎて混乱させちゃったかしら!?」

「してないです。ウォルバクさんが魔王軍の幹部だってのは前から気づいてました」

「本当にどういうことなの!? や、やっぱりこの子、なんだかんだいって切れ者なのかしら……!?」

 

いや、ウォルバクさんが隠し事苦手なだけだと思う。

衝撃の事実を突きつけられ、戦慄する主人公がする反応を期待していたのだろうが、ウォルバクさんの方が逆に戸惑ったように目を瞬かせた。

 

「ち、ちなみにいつからかしら……?」

「違和感でいえば最初からか? 変だなって思ってただけで魔王軍の幹部とかなんては思わなかったんですけど、そんな気はしてたんだよな」

「そ、そんなにあっさり受け入れるの……? もっとこう、剣を抜いて警戒するとか……」

「いやいや、俺は元々、魔王軍の幹部を倒そうだなんてこれっぽっちも思ってないですよ。今までのも全部、不運な事故というか、マジでただの成り行きですってば。俺は安全に平穏に暮らしたいだけなんです」

 

いや、だってアンデッドと同僚だって時点で怪しさ満点だし、温泉街でのハンスとの一件でも明らかに裏事情を知ってそうな動きをしてたし。

驚愕もせず、あまりにもあっさりと受け入れた俺に、ウォルバクさんは目を丸くして固まってしまった。

 

「それよりもウォルバクさん、もっと重要なことがあるでしょう? ほれ、早う! 告白を早う! いくら俺がそういうシチュエーションにしてほしいって思ったとはいえ、流石にリアル指向が過ぎるぞお姉さん!」

「え!? 本当にどういうことなの!? まさかこれからしようとしてることまでばれてるだなんて……! やっぱり魔王が警戒して然るべき存在ね……」

「そう言うのいいから! ほら、早く告白して次の展開に進もうぜ! どうせ、これから『そんな私でも愛してほしい』とかそういうこという展開だろ?」

「え? 違うのだけど……」

「……え? じゃあどういう展開なんだ?」

「えっと、これからカズマくんが魔王軍と敵対しないように、権能を使おうと思っていたのだけれど……」

 

俺は、月明かりがさす窓を眺めた。

その先に見えるのは、あわあわした様子で中には入れないでいるロリサキュバス。

夢なのにサキュバスがいて、ウォルバクさんは俺の予想に反した反応ばかりする。

……気づきたくなかったが、認めるしかないみたいだ。

完全にやらかしたのだと。

 

「は、恥ずかしっ……!!」

「そ、その、私はカズマくんのこと嫌いじゃないわよ? 例えば、その、変わった言動とか、私は面白いと思うわよ?」

「やめてっ! これ以上優しくして俺の心の傷口を抉らないでくれ! あとそれ慰めてるようで慰めになってないから!」

 

どうしてダクネスの風呂場事件といい、この屋敷でサキュバスサービスを受けようとするとことごとく失敗に終わるんだ!

たまには宿を取らずに、家でサービス受けさせてほしいんだが!

恥ずかしさでウォルバクさんのことを見れないで顔を赤くしていると。

 

「えっと、それじゃあ落ち込んでいるところ申し訳ないのだけど……『ロック』『サイレント』」

「いや、待って、待ってくださいウォルバクさん! そこは俺のことをもう少し慰めたりしてくださいよ! というか、別に俺は魔王軍と敵対しようとなんて思ってないですから! 大体、ウォルバクさんもアルカンレティアでの騒動は見てたでしょ! 俺は巻き込まれただけなんだよ!」

「カズマくん……。仮にあなたが魔王軍と敵対しようとしなくても、今までの功績を見ると放置しておけないの。それに、たとえ多少推測の読み違いがあったけれど、その勘の鋭さは異常だわ。私の正体をつかんでいるとなると尚更ね」

「お願いだからもう俺の勘違いについて触れないでくれ!」

 

部屋の鍵を閉められた俺は、部屋の隅に追い詰められつつ必死に弁明するも、その言葉を聞いたウォルバクさんの瞳はスッと細められた。

どうしてこの人は、俺の実力をこうも過大評価するのだろうか。

俺のステータスの低さを見せてやりたい!

ウォルバクさんはふうっと小さく息を吐くと、どこか悲しげな瞳で俺を見た。

 

「私も、本当はあなたたちとは争いたくないの。でも、この数日でよくわかったから……万が一のための保険をかけさせてもらうわ」

 

ウォルバクさんがスッと右手を前に出した。

それと共に、その黒い靄のような何かが俺の体を包み込んだ。

べつに痛みや苦しみはない。

ただ、温かいお湯に浸かった時のような、ひどく心地よい脱力感が全身を駆け巡った。

 

「何だ、コレ……っ!?」

「大丈夫よ、安心して。別にこれはカズマくんのことを傷つけるような代物じゃないわ……体はね。少し可哀だけれど、あなたが魔王軍の脅威にならないための、これが最善の策なの。恨まないでちょうだい」

 

ウォルバクさんはそう言い残すと、俺に背を向け、静かに部屋から出て行った。

パタン、とドアが閉まる音が響く。

一人残された俺は、ベッドの上で自分の両手を見つめ、そのまま、バフッとベッドに倒れ込んだ。

そして、布団を頭まで被りながら小さく呟く。

 

「……何も変わらない気がするんだが。もしかしてウォルバクさんが演技して俺の恥ずかしさを紛らわせ……それはないか」

 

あの嘘が下手なウォルバクさんに演技ができるはずもない。

だがしかし本当に何も体に不調もない。

むしろ心地よい脱力感に包まれながら、さっきまでうるさかった心臓は静かになり、俺はあっという間に深い眠りに落ちていった。

 

 

 

 

翌日。

ウォルバクさんは、俺に何か変な魔法を使ったのが後ろめたいのか、それとも俺の勘違いに気まずさを感じたのか、今日は一度も会っていない。

そんな中、俺も部屋から出ることなく過ごしていた。

それは恥ずかしさや恥ずかしさ、恥ずかしさなどのせいではなく。

 

「おいめぐみん、そこの棚にある本取ってくれ。あと喉渇いたから、下に行って冷えたジュース持ってきてくれ」

「ちょっとカズマ、自分で取ってくださいよ! 今から気分よく爆裂散歩に行くところだったのですよ!」

「俺にコップ持ってきてから行ってどうぞ。俺は今重力に逆らえない病気にかかってるんだ」

 

ただただ怠い、それの一言に尽きる。

と言っても、昼過ぎでも俺はベッドから一歩も出ていないのは平常運転だ。

俺は完全に布団と一体化し、食事はアクアやめぐみんに運ばせ、ベッドの周囲には空のお菓子の袋が散乱している。

 

「あー、ついでにトイレ行くのもめんどくさいから、そこにある空の瓶取ってくれ……」

「なっ、なぁにを口走っているのですかこの男は! 流石に最低です!! 女子に一体何をやらせようとしてるのですか! 自分でトイレくらい行ってください!」

 

めぐみんは、俺に本やら飲み物を投げつけ部屋から出て行った。

部屋の扉を勢いよく開き放つと、ビクっと肩をふるわせる陰――ウォルバクさんがいた。

部屋の入り口からその様子を隠れて見ていたらしいウォルバクさんは、両手で口元を覆い、ドン引きしていた。

 

「め、めぐみん……その、カズマくんのことなんだけど……」

「ああ、あの人のことは気にしないでください。普段からああですので」

「ふ、普段から……? いえ、確かに普段からゴロゴロしているのはしているけれど……」

「確かに特に今日はいつにも増して面倒くさい気がしますが、トイレに行かないですべてを自分の部屋の中で完結させるのはしょっちゅうですし、大体こんなもんですよ。お姉さんも気にしないでとはいいませんが、慣れてください。クエストがない時のカズマなんて、基本こんな粗大ゴミ以下ですから」

「粗大ゴミ……」

「ええ。むしろ今日はまだ服を着ているだけマシな方です。ひどい時は一日中パンツ一丁でソファーを占拠してますからね」

「おいめぐみん、余計なこと言って俺のイメージを下げるな!」

 

めぐみんに文句を言う俺を見て、ウォルバクさんは完全にフリーズしていた。

めぐみんの口から出たあまりにも自然な言葉に、ウォルバクさんはポカンと口を開けた。

 

「これは……効いているのかし、ら……?」

「何ですかお姉さん?」

「い、いえ、何でもないわ。それよりこれから日課にいくのよね?」

「もちろんです! 今日も一緒についてきてくれますよね? 今日は昨日より素晴らしい爆裂魔法を放てそうですから、是非見てくださいよ!」

 

そう言って、めぐみんはウォルバクさんの手を引いて玄関に向かっていった。

ウォルバクさんの訝しげな顔が俺の部屋の隙間から見えた。




最近日程がタイトすぎて更新遅れてます……申し訳なく。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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