我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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日常回です。


4-3 這い寄りし…標的(ターゲット)

今日からアクアのバイトが始まるそうな。

お金に困っていない俺は暇なので他の仲間と喋ったり遊んだりしようかと思っていたのだが、残念なことにそううまくはいかないもので。

ダクネスは実家に帰って筋トレをすると言っていたのでしばらく会えないだろうし、めぐみんとゆんゆんは友達と遊ぶと言っていた。

ほかのパーティーの冒険者も日中は基本的に日銭を稼ぐためにバイトやクエストを頑張っている。

 

そんなわけで誰も相手してくれない状況なので遊び相手が誰もいなくて詰まらない。

というわけで今日からアクアの観察をしてみることにした。

アイツを尾行してればどういうミスをするかとかいろいろ対策が立てられるかもしれないしな。

 

と言うわけでアクアのバイト生活偵察1日目。

俺は陰に隠れてアクアを陰から観察して見ると、今日はどうやらこっちの世界に来て一番お世話になったバイト先での仕事をするらしい。

おっちゃんとともに土木工事のお仕事だ。

屈強なおっさんに紛れてアクアは壁塗りの作業を始めている。

よしよし、ちゃんと働いてるな。

 

あの頃は俺も一緒にバイトしてたが、引き籠もりの弊害と現代っ子持ち前の非力さで大変だったなぁ。

それでも今となっちゃ随分充実した毎日だったように感じる。

思い出補正が入っているからだろうか。

苦労して手に入れた日銭、大して美味しくもない飯、快適とは縁遠い寝床。

辛いことだらけだったが、生きてるって素晴らしいと感じる日々だった。

 

そんな過去を振り返るが、今の俺はレベルが上がり筋力、持久力、器用さどれを取っても強化されている。

それに前回のバイトの経験も体が覚えているだろう。

もし今から仕事に参加してもこの俺に死角はない!

……そう思ったのがフラグだったのだろう。

 

「ようカズマ! ひっさしぶりだな!」

「げ、げぇ! お、おっす、親方! ご無沙汰してます!」

「げぇとは随分な挨拶だな? 今日はアクアの姉ちゃんが参加してくれるっていってたがお前はどうなんだ、しないのか?」

「ええっと、俺はアクアがヘマやらかさないか監視してるっていうか、お金は結構あるんで遠慮したいっていうか……」

「そんな遠慮なんてするなよな! むしろ暇してるんだったらやってけ!」

「ちょ、そんな急に言われてもうわぁ!?」

 

そんなこんなで俺は親方から逃げられず、アクアとともに労働する羽目になってしまった。

潜伏スキルを使わなかったことが徒になったか……

まあ、久しぶりの土木作業も悪くないかと思って若干面倒くさく思いながらも今日だけやることにした。

 

「カズマさん! なになに? もしかして私のこと追いかけてきちゃったの? あれだけ労働しなくてすむんだぞーって休暇を満喫する宣言してたのに、もしかしてツンデレってやつなの?」

「誰がツンデレだ! 今日はたまたま暇だったからお前の冷やかし氏にいこうかと思ってて……そうしたら親方に捕まっちまったんだよ」

「そんなこと言っちゃってぇ、本当は私と一緒に働きたかったんでしょ? 言わなくてもいいわ、私はわかってる、わかってるから♪」

 

ちっともわかってないと思う。

だがこうなったら仕方がない、俺の本気、見せてやらぁ……いったぁぁァァ!?

何ですか親方いきなり! えっ、腰が入ってない?

すみません、すみません! もっとしっかりやるんで!

……え、久しぶりだから相当腕が鈍ってるんじゃないかって?

いやだなー親方ったら、そんなわけないでしょ!

だからそんな耐久仕込みコース12時間するような顔しないで!

ケツに力入れろって叩かないで!!

 

 

 

 

「今日も一日お疲れ様! 頑張った私にかんぱ~い!」

「うう……酷い目に遭った……」

 

アクアのバイト生活偵察とか言ったが、もう疲れてそれどころじゃない。

というか俺の知らないところでアクアは実力を買われてバイトリーダーになったらしい。

悔しくない。

だって明日から俺はバイトしないし。

何なら人間働いた方が負けだと思ってる。

労働者なアクアより非労働者な俺の方が精神的に優位だし!

悔しくないって言ったら悔しくないんだからな!!

 

それにしてもアクアのヤツ、冒険に関係しないこととなったら無駄に器用になりやがって。

もう冒険者やめてこの道で食っていった方がいいだろ。

いつも通り花鳥風月で宴会の場を盛り上げている宴会芸兼土木業の神様を見ながら机に突っ伏していると一つの陰がやってくる。

 

「お疲れですね」

「……ああ、めぐみんか。今日は何してたんだ」

「午前中は日課の散歩ですね。散歩の後はお腹が減ったのでおやつの唐揚げ定食を食べました。その後は喫茶やギルドなどで……」

「ゆんゆんの金で食ったのか」

「失礼な! 私だってたまには自分で支払うことくらいあります!」

「ツッコミ待ちなら今日は悪いが無理だぞ。疲れのせいで気力がない」

「そもそも何も突っ込まれるようなことは言っていないのですが!」

 

マジかコイツ……

唐揚げ定食を食うのもそうだが、喫茶店とかギルドでも何かしら食って、しかもそれらをおやつと称して今の体型なんて。

 

「あの、私の体が魅力的なので仕方ないのでしょうが、せめて厭らしい視線を隠そうとしてはくれませんか」

「……フッ」

「えっ、鼻で笑われた!? 一体どうして今失笑したのですか!?」

「大した理由じゃない。ただ、そんだけ食べてよく体型維持できるなーって」

「そんなことで笑うとは……疲れて情緒狂ってしまったのでしょうか」

 

ボソっと呟いたつもりかもしれないが本人の前でだいぶ失礼だぞ。

まあ、俺は大人の余裕があるカズマさんだし?

そもそも疲れて反論する体力がないので華麗にスルーしておいてやる。

 

「そんなことよりゆんゆんはどうした?」

「……別に私とゆんゆんはセットと言うわけじゃないんですがね。まあ、一応向こうの席にいるのですが……それにすら気づかないということは相当ですね。今日は早く寝てください」

 

心配そうな顔をしているめぐみんに促されて顔を上げてみると、確かにギルドの隅の方にゆんゆんがいた。

いた、というか、どうして今の今まで気づけなかったのかというほど異様な存在感を放っていた。

何が異様かといえば……

 

「……お前ら、ギルドの隅で何やってんの?」

「何って……見ればわかるでしょう?」

「いや、わかってるよ? でも何でギルドでドミノやってんの?」

「暇つぶしです」

「いや、暇つぶしでやっていい規模感じゃないんだが。というかギルドでやるもんじゃないだろ」

 

俺の前に広がっていたのは床、テーブル、椅子に等間隔に並べられているトランプとドミノ。

シーソーのような何かや立体交差など、様々な仕掛けに加えて、今はトランプタワーを積み上げている。

騒がしいからなんかの振動があったら一気に連鎖するだろうに……ただでさえ難しいのになんて苦行をしているんだ。

見ろよ、ゆんゆんのガン決まった目を。

あれは集中の極致に達しているスポーツ選手とかに見られる、ゾーンに入ってる目だ。

 

「ゆんゆんは一人遊びのプロなのでなかなかの手技です。見てるだけでも面白いのですよ」

「これ、何時間かかったんだ?」

「おやつの時間からですので……2時間程度でしょうか」

「プロだ……プロがいる……!」

 

たった2時間でこれだけの大作を!?

驚きすぎて疲れもふっ飛ぶレベルだわ!

驚愕の表情を浮かべていると、何故か自分事のように自慢げな様子のめぐみんが。

 

「伊達にボッチを長らくやっていませんからね。ポーカーなど複数人で行うゲームも彼女の手にかかれば一人五役で遊べます」

「それはすごい! すごい……かわいそうだ」

「でしょう? できれば明日、あのかわいそうな子と遊んでやってはくれませんか。午後からならギルドにいるので。……カズマの仕事の予定は大丈夫そうですか?」

「明日から働かないからな、問題ない」

「大問題じゃないですか!?」

「お金なら有り余ってるし大丈夫大丈夫! そう言えば明日ゆんゆんの遊び相手になるのはいいんだが、午前からじゃ駄目なのか? 俺は午前から開いてる……というか暇だ。できれば午前からがいい」

「ええと、午前中は散歩すると決めているのですが……ついて来ます?」

 

散歩、散歩か……

正直筋肉痛の予感がすでにあるので遠慮したい気分である。

そう言えば今日も午前中に散歩をしてきたって言ってたな。

 

「いや、遠慮しておくよ。すでに体がやばい」

「だと思いましたよ。ちなみに、筋肉痛は回復魔法で治せると思うのですが……アクアに癒やしてもらっては?」

「いや、なんかアクアは筋肉痛のきの字もないほどピンピンしてるし、回復魔法頼んだらなんか負けた気がするし、頑張って自力で治す」

「そ、そうですか。変なところで張り合いますね……」

 

事あるごとに勝負してるお前らほどじゃない。

というか、そんなこと言うってことはもしかして自覚なしで張り合ってたりするのか?

無意識か? 無意識でゆんゆんをいじめてんのか?

まあ本人も満更じゃなさそうだしいいんだけども。

 

「まあ、無理はしないようにしてくださいね。体調よくなったら途中参加でも大丈夫ですから」

 

そう言ってめぐみんはゆんゆんの方へ戻っていった。

……集合場所とか時間とかいろいろ聞き忘れたが、まあ、きっと全身筋肉痛で動けなって参加できないだろうからよしとしよう。

 

 

 

 

翌朝。

俺は敗北感に打ちのめされていた。

 

それは、昨日の夜に遡る。

ギルドから寝床に帰ろうと席を立った際、俺は筋肉痛に襲われていた。

まさかこんなに早く、しかもこんなに酷くなるとは思っておらず、生まれたての子鹿のように足を震わせながらテーブルを伝って歩かなければいけないレベルだった。

そんな無様をアクアに目撃され、

 

「プークスクス! カズマさんってばちょープルプルしてるんですけど! ところてんスライムよりプルップルなんですけど!」

「うっせえ! 借金女神は黙っとけ!!」

 

そのところてんスライムってのはよくわからないが、非常に屈辱的な感じがした。

意地でもアクアの回復魔法に頼ってやるか!

と思っていたのだが……

 

「ねえねえカズマさんカズマさん? もう痛みは取れたわよね? じゃあ私に何か言うことがあるんじゃない? 善意で回復魔法をかけてあげたんだから、何か感謝の言葉とか言ってくれてもいいのよ?」

「ぐっ……あ、ありがとう……ございます…………ッ」

「ふふん! そうよねそうよね! まあ、それほどでもないけど!」

 

誰がかけてくれって言った!

中途半端に回復してくれたらいちゃもんつけられたのに、それはもう完全完璧に痛みもないし、なんなら体調がすこぶるいいし!

こんな文句のつけられないような回復すんなよ……ああ、何だろうこのなんとも言えない敗北感……

 

 

というのを思い出して、寝起きの気分は最悪である。

 

ちなみに横を見るとすでにアクアはおらず、バイトに行ったようだ。

……もしかして、アクアは借金ある方がいろいろとまともになるんじゃなかろうか。

怠けないで労働するし早起きするし節約して借金返済しようとするし、お金使うとしても夜の宴会だけだし。

まあ、そんなことを思てみながら俺は空腹を満たすためにギルドへ足を運ぶのだった。

 

 

 

食事が終わり、時刻は9時。

まさか筋肉痛がなくなるとは思っていなくて、午前中の暇つぶしはどうしようかと考える。

昨日みたいにアクアを監視しに行こうか考えたが、親方に見つかってそのまま強制労働させられる未来が見えたのでやめておく。

本当はめぐみんたちと散歩に行ければよかったんだが、結局集合場所も何もわからないし、聞こうにもめぐみんたちの姿は見えないし……

だからと言って一人で暇な時間を過ごすのもなんだか。

 

「やっぱ散歩しにいくか。冒険者に聞けば紅魔族の目撃情報でも何でもあるだろ」

 

そう思って俺はあの2人の所在について心当たりを聞き込むことにした。

聞くと、「情報をよこせって言うんだったら対価が必要だぜ。最近小金持ちになったって聞いたしちょっとくらい奢ってくれよ」とか「今日は見てないが昨日は喫茶店にいたな。普段見ない子もいたが仲よさそうだったぞ」とか「あんたがあの頭のおかしい紅魔族の飼い主か! 魔法のせいで昼間寝たいのに起こされるんだよ!」とか……

 

なんで誰一人まともな情報くれないんだよ!

いや、そんなことよりちょっと別件でもっと聞き込まないといけない話とかあった気がする。

ゆんゆんがいるから大問題に発展するような事はしてないだろうと思ってたのに、なんだか不安になってきた。

 

思えば、ゆんゆんは何だかんだでめぐみんに甘いし、友達だからと言えばチョロい子だ。

なし崩しに共犯で何かやらかしてる可能性は否定できない。

……これは由々しき問題だ。

さっきまでは一緒に散歩しようと思っていたが、今は違う。

あの二人を見つけ出して後をつけ、何やってるか突き止めて現行犯逮捕だ!

なお、罪状は後から考える予定だ。

 

 

そんなところで聞き込みをさらに続けていると、なんと「ああ、見たぞ。と言ってもちゃんとした紅魔族の方だけだけどな。朝来る途中に広場で大道芸してたわ」という目撃情報が。

大道芸って……アクアじゃないんだしゆんゆんがそんなことしてるのか……?

そう疑問に思いながらも初めて出た有益な情報に俺は足を急がせる。

 

そこに着いてみると、噴水の縁に腰掛けている一つの影。

ゆんゆんだ。

思ったよりあっけなく見つけてしまったが、本番はここからだ。

俺は陰に隠れて潜伏スキルを使用して。

 

「……午前9時13分、ターゲットを視認。これより潜伏捜査を開始する」

 

そう呟いた。

……なにこれ、凄い楽しい!

この前めぐみんが墓地でなんかやってた時の気持ちがわかった気がする。

こんなに楽しいなら牛乳とかあんパンとか隠れ蓑の段ボールとか持ってきて雰囲気出せばよかったなあ。

異世界にトランシーバーとかあれば完璧なんだが……

って違う!

今の俺はマジで張り込んでいるのだ、気分とかそういう問題じゃないんだ!

俺は興奮した精神を落ち着け、息を殺してターゲットの監視を始めた。

 

 

 

このすば。

 

 

 

時間は進み、時刻は10時をまわったところ。

標的はずっとあやとりをしている。

そう、まるまる1時間、ずっとあやとりしかしていない。

 

蜘蛛のような何かを作って器用に足の部分を動かして「できた、機動要塞デストロイヤー!」とか言っていた。

何だかんだ言って架空の存在に強そうな名前をつけるあたりゆんゆんは紅魔族の一人なんだなと、俺は非常に微妙そうな顔をしていた。

 

「それにしても……いつまでこのまま居座る気だ?」

 

いつまで経ってもゆんゆんは動く気配がない。

めぐみんを待っているのかと思っていたが、本当に待っているのかと思うくらい遊びに熱中してたし、なんならめぐみんがくる気配もない。

もしかして今日は一人で遊ぶ日なのだろうか。

それならぼ今まで張り込んでた意味なかったんじゃ寺崎…

そう思って帰ろうとした時だった。

あやとりを終えたゆんゆんが立ちあがって蹴伸びをし……

 

「……めぐみんが来るまであと1時間ね! もう一回今日の準備できてるか確認しないと!」

 

あのボッチ、二時間も待つつもりでいたのか!?

いや、俺が見つける前からいたし、実は2時間どころじゃなくもっと……

 

うん、これは触れてはいけないゆんゆんの闇だな……

俺が目を閉じると潤んだ目から熱いモノがホロリと流れ、頬を伝っていった。

……これからはもっとゆんゆんには優しく接してあげよう。

 

 

 

また1時間ほど時間が過ぎ、今は11時ちょい前。

いよいよ待ち合わせの時間が来るのだが、ゆんゆんはそれまでの一時間、めぐみんを喫茶店へ誘う練習をしていた。

 

「めぐみん、今日は喫茶店の人気スイーツを賭けて勝負よ! ……うーん、なんか違うかなぁ……。めぐみんの事だしスイーツよりもランチメニューとかの方がいいわよね、食後のデザートも付いてくるし! で、でも、問題は勝負内容よね! 何だったら勝負してくれるかなぁ……」

 

時にはポーズを取りながら、時には頭を抱えながら。

そんな奇行を目の当たりにして俺はそっと距離を置いた。

見ていて飽きないが、だからと言ってお近づきになろうとは到底思えないレベルで挙動がおかしいからな。

そう思っていると、ようやく……と言うかゆんゆんが頭おかしいだけなんだが、めぐみんが来た。

 

「……流石ゆんゆん、ずいぶんと早かったですね」

「あっめぐみん! 私もちょうど来たところ……って流石って何!?」

「いつも私より早くいるじゃないですか。説得力無いですよ」

 

いや、本当に流石というしかないだろ。

ゆんゆんは知らないのかもしれないが、ボッチ関係なしに二時間前に到着してずっとそこにいるのはおかしいことなんだわ。

しかもめぐみんの話を聞くと毎度のことらしいし……

そう思っていると、紅魔娘二人はそんなやり取りをしつつアクセルの街から出る方向に歩いて行く。

俺は潜伏スキルを使用したまま追いかけることにした。




後半へ続く

ストーリー進行の早さどうですか?

  • もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
  • ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
  • 今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
  • もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)
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