「まったく、どうしてダクネスはララティーナなのかしら。めぐみんもどうしてめぐみんなのかしら。おかげでこんなに遅くなっちゃったじゃない」
夕日が沈み、目の前に見える中継地点の施設から光が漏れ出ている。
予定より遅くの到着に、アクアが白い目で二人の問題児を見やった。
このパーティー随一のトラブルメーカーに言われちゃ世話ないが、さっきの山賊の件はそれほどまでに酷かった。
「お、おい! それだとまるで私の名が悪口のように使われているようで癪なのだが! 私は民に徒なす無法者を放置できないと思ってだな……!」
と、言い訳を述べているのは変態クルセイダー。
山賊を追っかけ回して、自分のことを辱めさせようとしていた本人だが、どうももじもじしながら顔を赤らめているし、自分が変態である自覚はあるようだ。
「全く遺憾ですよ。ダクネスはともかく、どうして私まで問題児扱いされなければ……しかもよりによってアクアに」
と、自覚のじの字もなさそうなのは爆裂狂の紅魔族。
爆裂魔法後、俺の背中で「私の、私の経験値が……」と残念そうな声を漏らしていたのを確認している。
どうやら、山賊に向けて爆裂魔法をぶっ放したことに関しては一切負い目も感じていないらしい。
「めぐみんは一番反省してよね! いくらアクアさんが蘇生魔法を使えるからって、犯罪者相手でも流石に殺人は見過ごせないんだから!」
「別にいいじゃないですか、残念なことに山賊は一体も討伐できなかったんですし……。しかし逃げ足が速いモンスターですね。まさか加減したとは言え我が爆裂魔法から逃れるとは」
本当に加減したのか……?
絶対そんなことないのに、爆裂魔法の誇りを守るためにそう言うことにしてるだけだろ。
俺とゆんゆんは頬をひくつかせていた。
「ったく、考えなしに爆裂魔法を撃つなよ。どうしてお前らはそんなに欲望に忠実なんだ」
「カズマさんには言われたくないよね」
「おい、今すぐスティってやってもいいんだぞ、お前ら」
ゆんゆんに同調するように俺に呆れた視線を送ってくるパーティーメンバー。
今回何もしてないのに変態扱いされるとは飛んだとばっちり。
変態はダクネスだけだ。
「はぁ……なんか疲れた」
「まあまあ、中継地点にたどり着けたのでよかったじゃないですか」
「誰のせいで疲れたかわかってるか? 誰かさんをおんぶしてたせいなんだが」
「私という美少女をおぶれるなんてむしろご褒美でしょう? それに、あそこで爆裂してなかったらダクネスが一生山賊のことを追いかけまししてましたよ」
「お、おいめぐみん! 流石に私もそこまではしにゃいと、思うぞ……」
尻すぼみになっていくダクネス。自信なさげじゃねえか。
というか、これ以上遅くなってたらここに来るまでに一回野営挟まないといけないところだった。
めぐみんの爆裂魔法のクレーターを迂回するのと、ダクネスを引き留める労力を考えれば、確かにめぐみんの選択がよかったのかもしれない。
まあ、めぐみんはいかにも作戦のように喋っているが、後付けの結果論な点はおいておこう。
「だからってかなりお前のことおぶったよな。流石に足が棒なんだが」
「別に途中で下ろしてくれたらよかったのに。というか、そんなこと言うんでしたらドレインタッチで魔力をちょっと分けてくれれば……って、カズマならこれくらいすぐ気づきそうなものですが――」
「よーし、この話はおいといて、早く中入ろうぜ!」
別に、めぐみんの胸の感触を堪能したいと思ってたわけじゃない。
だがこのままだとめぐみんの勘違いで都合が悪くなりそうなので、俺は急いで今夜の宿泊施設の敷居をまたぐことにした。
「おおー! なかなかいいところじゃんか!」
中継地点というからには最低限の設備だけかと思ったが、予想に反して部屋は個室だし、温泉もついている。
貴族の屋敷ほどの規模感の温泉宿に、俺は旅の疲れも相まって感嘆の声を上げた。
部屋に着いて、荷物を下ろしていると。
「ねえカズマ」「カズマです」「わかってるでしょうね?」「わかってるよ?」「こんな辺鄙なところの温泉は混浴よ」「うん」「いくら私の美ボディを拝みたいからって不埒なまねは女神の名にかけて許さないんだからね」
「……プッ。誰がお前の裸なんて。男にだって覗くやつを選ぶ権利くらいはあるんだからな」
「なんかそういう反応されるとそれはそれで不服なんですけど」
俺とアクアがガッチリ手を組み合って喧嘩を始めていると、ダクネスとめぐみんが。
「アクア、どうせ天邪鬼なこの男のことだ。見るなと言われたら見ないといいつつこっそり見に来るに決まっている」
「そうですよ。カズマはツンデレですから。一緒に裸の付き合いをしましょうと誘うと逃げるへたれでもありますが」
「おい、喧嘩なら買うぞ! というか本当に一緒に入ってやろうか!」
「ええ、いいですよ。本当にカズマにその気があるのなら一緒に入りましょうか。ねえ、ダクネス」
「そうだな、カズマのことは信頼しているし、誘っても問題ないだろう」
あ、あるぇ~~??
めぐみんが男らしいのはいつものことだが、あのダクネスでさえ俺のことを誘ってる、だと……!?
ふっ、俺も見くびられたもんだ。
こうして混浴という名目があり、仲間の同意も得られている状況で逃げ腰になる俺では――
「カズマさん、覗かないでくださいね?」
「わかってるって。それはフリってや――」
「…………」
「……うす」
ゆんゆんが無言で圧をかけてきたが、あの子に限ってそんなひどいことするわけない。
俺はやるといったらやる男だ。
この状況で逃げ腰になる俺では――
「ふへぇ……いい湯だったわねぇ……」
「それには同意しますが情けないほど間の抜けた声を出さないでくださいよ」
「だってぇ、みんなで洗いっこして、楽しくって」
「まあ、アクアの浄化体質と花鳥風月には参ったが、概ねゆっくりできたしな。露天風呂で飲む酒もなかなかによかった」
「ふふん、もっと私に感謝してくれてもいいのよ! 何せ、ゆんゆんの鞄にシュワシュワを入れたのは私なんですから!」
そう言って満足そうに湯から上がってきた四人。
布団の中で姦しい声を聞いていた俺。
…………なんだよ。
覗きにも混浴しにも行かなかったよ。
ふて寝したんだよ!
ただ疲れてただけだから!
笑いたきゃ笑え!!
「……んあ? …………ねてた……」
マジでふて寝して早数時間。
時刻は深夜0時近く、明かりもなければ物音の一つも聞こえてこない。
子供の紅魔族も大人の変態も飲んだくれの駄女神でさえ寝静まっていた。
俺は変な時間に目を覚まして、旅の疲れと肌のべたつき……つまりは不快感まみれの現状。
さすがに耐えられず寝起きながら風呂場に直行した。
「ちくしょう……どうして混浴しなかったんだ、俺のばかやろう……」
今になって後悔がこみ上げてきた。
アルカンレティアなら他の客もいただろうが、ここでは宿泊客は俺たちのほかにはおらず、期待している展開が怒る可能性はゼロ。
本当にアイツら、俺の良心につけこみやがって……別にヘタレじゃねえし!
今度混浴の機会があったら絶対わからせてやる!
そう思って俺は明かりがついている風呂場の暖簾をくぐった。
すると、俺たち以外に宿泊客はいないと聞いていたのにもかかわらず聞こえてきたのは機嫌の良さそうな鼻歌。しかも察するに女性だ。
そのことがわかった瞬間に、俺の心の中にあった後悔はすっと消えてなくなった。
そうだとも、あんなじゃじゃ馬娘たちとなんかより他の女性と混浴すべきじゃないか。
心が軽やかになり、俺はその足取りのままに服を脱ぎ捨てて風呂場の引き戸に手をかけた。
「……あ」
「…………」
「え、えーっと、これは――」
「魔王軍の幹部、確保ォォオオオオーー!!」
「きゃぁああーー!?」
俺は見知った顔で、赤髪で、邪な巨乳を湯船に浮かべていたお姉さんに飛びかかった。
最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…
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第6章(現在の章)
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第7章
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第8章
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リメイクしてテンポよく進める