俺はめぐみんに対するクレームを受け、めぐみんが何をしているのかを調査することにした。
そしてその現場を押さえるべく俺はめぐみんを尾行することにしたのだが……
「目的地、到着です! 昨日も下見に来ましたけどなかなか壮大な景色ですね」
「天気もいいし、風も気持ちいい……まるでピクニックに来てる気分ね!」
「まるでというか半分くらいピクニックでしょうに。……流石に時刻も時刻でお腹がすいてきましたね」
時刻は12時を少し回った頃、めぐみんたちがそう言いながら立ち止まった。
そこは街を出てからもしばらく歩いたところにある小高い丘。
俺も隠れつつそこに行くと、見晴らしのよい絶景スポットで、前方に古さびた砦があった。
上を見上げれば快晴の青空、景観も最高、今日は絶好のピクニック日和に違いない。
何なら魔王軍幹部がこの近辺にいる影響で弱い魔物は隠れてるしな、本当にピクニックには最高のコンディションだ。
と、そんなことを思う中、ゆんゆんは先ほどめぐみんを待っていた時に買った物を取り出した。
「めぐみん、今日もお昼持ってきたんだけど……何持ってきたかわかる?」
「おっと、その自慢げな表情……いつもおいしいですが今日はさらに期待してもいいのですね?」
「もちろん! なんと今日はあの人気喫茶サンジェルメンのサンドイッチよ!」
「ほほう、朝一に並ばないと売り切れているという幻の! 実物を見るのは初めてですがこれはまた随分とおいしそうですね!」
「でしょ! 本当はめぐみんと一緒に行こうかとも思ったんだけど、お店に並ぶのは5時だし、めぐみんはぐっすりだったし……起こすのも悪いからサプライズにしてみようと思って……どう? 驚いた?」
「ええ! ありがとうございます! あのお店はカツサンドのカツが揚げたてでサクサク、パンは焼きたてでふわふわしてると評判ですから、一度は食べてみたかったのです!」
……めぐみんは気づいているのかいないのかわからないが、俺は衝撃の事実を知ってしまった。
俺がゆんゆんを発見したのは9時頃。
そして今の話で明らかになったのは5時には行動を開始してたということ。
ここから考えられる可能性として、5時から9時の計4時間も広場でめぐみんのことを待っていたという……
ゆんゆんの拗らせ具合を見るにその可能性を否定しきれない。
い、いやでも、さすがにご飯とか食べる時間もあるし、ずっと一人で遊んで暇を潰してたわけじゃない……と思いたい。
そう思っていると、嬉しそうに顔を綻ばせているめぐみんが。
「ふふふ、ではいつも通り、お腹を空かせるためにも食前に一発済ませるとしましょうか! 昨日とは違って今日は破壊しがいがありそうです!」
「意気込んでるところ悪いけど、早く食べたいから早くやってね?」
「……仕方ありませんね。ですが妥協はしませんよ!」
一発済ませるって……食べる前に一体何する気だ?
食事の前の「いただきます」みたいなことでもするのか?
今まで二人と一緒にご飯を食べてきたが、別にそういった風習や宗教的なあれは見たことがなかったけど、紅魔族だけの時には何か儀式でもしなきゃいけないルールがあるとか?
よくわからないまま二人のことを見つめていると、めぐみんが杖を構えて。
「それでは……参ります……!」
その瞬間、魔力の奔流がめぐみんの周囲を駆け巡る。
ビリビリと大気を揺るがすその力のうねり……
俺はこれから何が起こるか悟った。
「紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ! 『エクスプロージョン』――ッ!!」
放たれた光、爆裂魔法はかなりの距離離れた砦に直撃して爆ぜ、紅炎と黒煙が砦を覆い尽くした。
そしてその光景の後を追うように、熱い爆風が肌に吹き付けた。
しばらくして煙が晴れると、砦は今の一撃で一部が崩れ落ちていた。
……流石に一撃で全破壊は無理か
「燃え尽きろ、紅蓮の中に……! ふわぁ……最高、デス……」
「今日のはなかなかだったわね。威力もいい感じかも。ただ欲を言えばもう少し爽やかな風がいいわね。期待を込めて85点でどうかしら」
「それはまた厳しいことを言いますね……邪神の力が上乗せされれば制御するので一苦労だというのに」
「そう言いながらちょっとずつできるようになってるじゃない。今日の魔法なんて爆発範囲を小さくして威力あげてたでしょ? 確実に進歩してるじゃない!」
「確かにそれはその通りなのですが……」
「私、信じてるわ、いつかきっとめぐみんならできるって」
「そうですかね……」
めぐみんの中二病発言を華麗にスルーしながら爆裂魔法の評価をするゆんゆん。
しかしめぐみんは珍しく弱気だ。
正直、爆裂魔法は元々の攻撃範囲も広く威力もオーバーキルもいいところなのに、今更攻撃範囲を狭くするとか工夫して威力上げようとしても誤差みたいなもんだと思う。
仮に制御が完璧にできるようになったとしても、爆裂魔法による森林破壊、温暖化、環境破壊活動、騒音の被害のクレームは止められないんだ、嘆いてもどのみち意味ないだろ。
そう思いながら俺はその光景を見て立ち上がり、息を思いっきり吸い込んで……
「騒音事件の犯人ども現行犯逮捕ォ!!」
「「ええぇぇェェーーっっ!?!?」」
このすばッ
「カズマっ!?!? 昨日行き先を言い損ねたのにどうしてここに――まさかレベルが上がって冒険者から変態になり、さらにその上位職である変質ストーカーになったんですか!?」
「ちがわい! お前が昨日魔法を撃ったせいで俺のところにクレーム来たから実態調査するために後つけただけだわ! そしたら案の定正体現したなこんの騒音生成器どもめ!」
「『ども』って私もですか!? 騒音生成してるのはめぐみんだけで私は無関係ですよ!?」
「私が騒音生成器だってことへの否定は!? 私はあくまで爆裂魔法という人類の叡智を顕現させていたのであって、騒音を出してるわけじゃ――」
「黙らっしゃいッ!!」
いや、あれは街の人たちからしたら
いくら弁明しようと街の人に実害を与えている、大人しく自粛してもらうか逮捕するしかない!
「というかゆんゆんは騒音生成魔法使いを止められたはずだぞ! なんせ魔法を使うって知ってるんだからな! 使わせたら騒音クレームが来るってわかってたはずだし、めぐみんに付き添わなければ回避できたはずなんだ! 主犯はめぐみんだがゆんゆんは共犯者、犯罪助長は同罪……いや、場合によってはそれ以上の罪だ!」
「で、でも、仕方なかったんです! 考えてみてくださいカズマさん、あのめぐみんですよ! もし騒音魔法を自制できたとして、そのストレスが蓄積されたらボンッです!! 騒音魔法が殺人魔法になっちゃうのを止めた私はむしろ褒められるべき行いをしたと思いませんか!」
「お、おい! 二人とも私の魔法を変な名前で呼ぶのはやめてもらおうか! そもそも私は短気で堪え性じゃないという理由で爆裂魔法を我慢できない訳じゃないのですよ! 私は邪眼の影響で毎日爆裂魔法を撃たないと死んでしま――あうっ、た、叩かないでください……っ」
問答無用とチョップを食らわせると涙目になるめぐみん。
邪眼の影響とかよくわからないこと抜かしたせいだ。
大体、その邪眼とやらは着脱可能だろ。
撃たないと死ぬって言うんだったら俺が強制的に邪眼剥奪してやる。
そう思っていると、頭をさすりながらめぐみんが。
「その、昨日はたまたま爆裂魔法を撃つのにちょうどいい標的が街の近くにありまして……。というより爆裂魔法じゃないと対処できない相手でして」
「爆裂魔法じゃないと駄目って…………何だよその相手って」
「ゾンビナイトで……あ、ちょっ、何ですかその目は! 嘘じゃないんです信じてください!」
いや、だってさっき邪眼の影響とか言われたばっかりだし。
信じてもらいたいんだったらもっと現実的なことを言うべきだと思うんだ。
アンデッドが昼間に活発に活動するわけないんだし、ゾンビの上位互換のゾンビナイトとはいえ中級魔法でも十分対処可能って聞いたことあるし。
「いや、言いたいことはわかります、私だって目を疑いましたし……でも本当なんです! ゆんゆんも証人なので!」
「そうなんですよ! 昨日三人で遊んでたら急に『ボンボン魔法の音がうるさいぞ! もっと近所迷惑を考えないか!』と言われまして……。私の魔法で蹴散らそうと思ったんですがあまり効果がなくて……」
「そこで私が一撃、見事アンデッドを葬り去ったというわけです」
「……マジで?」
「「マジです」」
この街の近辺に異様に強い特殊個体のアンデッドが住んでいた可能性。
ついこの間魔王軍幹部が引っ越してきたとか聞いたが……まさかな!
俺はそんなことあるわけないと頭を横に振っているとめぐみんが。
「しかし私は街の危機を救い平和をもたらしたのにクレームが来るなんて、不当な扱いを受けてると思うのですが……」
「オオカミ少年って知ってるか? めぐみんはそれに近い」
「ああ、羊飼いの少年が危機意識を高めるための頻繁に訓練をしていたのに、その村の人は最初こそ参加していたものの途中から参加しなくなり、その結果、いざオオカミが出てきたときに誰もまともに動けなかったという、子供の言うことを信じない大人の愚かさと防災訓練の重要性を説いた話ですね」
「うん、なんか俺の知ってる話と微妙に違う」
「そうなんですか? 一般的な内容だと思うのですが……。まあ何にせよ、私のことを信じないクレーマーは愚かで、私は正しい行いをしたということですね!」
そう言ってめぐみんは嬉しそうに胸を張った。
いや、なんかよくない方向に解釈されたんだが……俺はただ普段の行いが大事だって言いたかっただけなのに。
そう言えばここって異世界だし俺の知ってる違う風に伝わってるんだろうけど、だからってこれは酷すぎる。
絶対転生者が話を面白半分で盛った結果変に伝わってるだけだろ。
そんな状況に俺はため息をつきながら。
「まあ、緊急事態ならしょうがないか。でも普段はちゃんとこれくらい離れたところでやってくれよ?」
「もちろんです! というかあの砦を見ましたか、とてつもなく大きくて堅くて、破壊しがいがありそうなことこの上なしです。明日からはアレにうちにいきましょう!」
「…………もしかして俺に言ってる?」
「もちろんですよ。そもそも昨日、カズマが暇だから誘ってくれと言いましたよね」
「いや、言ってない」
「いや、言いましたよ! というかそんなこと言っていいのですか? ほら、あの子を見てください。今日から新しいお散歩仲間が増えると狂喜乱舞しているあの子を。断ったら泣きますよ?」
めぐみんが指した方を見ると、そこにはパァッと瞳を輝かせ、顔に喜びを滲ませているゆんゆんがいた。
……正直毎日爆裂魔法をするためだけにここまで歩くの面倒くさいんだが。
でも特にやることも決まってないし、ゆんゆんを泣かせたら変なあだ名が広がりかねない。
「わかったよ……行けばいいんだろ行けば」
「あ、あとついでに歩くのが難しいので帰りに負ぶってくれると……」
「……」
もしかして、これ、毎日することになるのか……?
とりあえず俺はゆんゆんから渡されたサンドイッチを頬張った。
「……何これうまっ!?」
「そういってくれると朝一で買いに行った甲斐がありました! そういえば何ですけど、カズマさんっていつから私たちのこと尾行してたんですか? まさかこれ買うときからではないですよね? 全然気づかなかったんですけど……」
「5時は流石に起きてないな。あと、ゆんゆんが気づけなかったのは俺が潜伏スキル使ってたからだな」
「が、ガチのストーカーよりガチですよこの男!! ぶっころりー以上です!!」
「さ、流石にあのぶっころりーと一緒にするのはカズマさんに失礼だと思うんだけど……」
そのぶっころりーってヤツはかなりの猛者らしい。
一体何をやらかしたのかわからないが、そもそも俺は正当な理由があっての追跡行動な訳だしストーカー扱いされること自体遺憾なのだが。
「いやさ、言っただろ? 騒音のクレーム入ったから現行犯で取り押さえるために後つけてたんだって。まあ、本物の探偵とか警官並に気合い入れて偵察したらそれが思いのほか面白くて……楽しくなかったと言ったら嘘になるけどな」
「まあ、偵察が楽しくなってくる気持ちはわかりますが……それで、いつ頃から尾行してたのです?」
「いつから尾行してたのかと言えば、まあ、9時頃からか?」
「3時間近くも潜伏スキルで隠れていたのですか!? あれですか、本当に変態からストーカーにジョブチェンジしたんですか!?」
「違うっつったろ、取り消せよ今の言葉ッ! でないと俺のスティールをもう一度試すことになる!」
「私が怖じ気づくとでも思いましたか! やってみるがいいのです、もし今回のスティールでまた変なのを取ったら今度こそパンツ脱がせ魔の二つ名をアクセルの街に広げてあげましょう!」
めぐみんのオオアリクイのような威嚇ポーズに対して、俺もスティールの構えをして対抗する。
俺のことを貶めようとしたらどうなるか、身をもって味合わせてくれる!
そう思ってスキルを発動させようとしたのだが、それを中断するように声がかかる。
「あ、あの、カズマさん? それって私たち集合する前だったと思うんですけど……」
「うん? まあ、そうだな……ただ、ゆんゆんを見かけたからそこから見失わないように監視をしてたんだ。どうせゆんゆんいるところにめぐみんあり、逆も然りだからな。でもまあ、ずっと待ち合わせ場所にいたのは驚いた」
「カズマさんストップ! ストーップ!! だ、だとすると私が一人でいるときずっといたんですか!? 私、誰もいないと思って変なこと言ったりしてませんでしたかね!? …………って、めぐみん? なんでカズマさんじゃなくて私を見てそんな引いてるの? そして何でどんどん呆れ顔になってくの? ねえ、ねえってば!」
ゆんゆん、お前は知らないかもしれないけどな、3時間以上も前に待ち合わせ場所にいるのは異常なんだ。
次回予告 例のあの人が登場か!?
???「まままま、毎日毎日毎日毎日っ!! おお、俺の城にポンポンポンポンポンポンポンポン爆裂魔法を打ち込んでく、あ、頭のおかしい大馬鹿者は誰だああぁぁァァ!!!!」
ストーリー進行の早さどうですか?
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もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
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ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
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今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
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もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)