爆裂散歩が日課となり一週間とちょっと。
俺たち3人は毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちに城へ足を運んだ。
氷雨が降る日も、風の日も、欠かさず。
そして頑丈な城の一部が崩壊し始める頃には、元々めぐみんと一緒にいるゆんゆんと同じレベルまで爆裂魔法の善し悪しを評価できるまでになっていた。
そんな俺たちはめぐみんから爆裂ソムリエの称号を貰ったのだが……爆裂ソムリエって何だよ。
ゆんゆんも微妙そうな顔をしていたし。
とまあ、そんな感じの毎日で、今日も今日とて散歩の準備をしていたのだが……
『緊急、緊急! アクセルの街にいる冒険者各員は至急武装を整えて正門の前に集まってください!!』
けたたましいサイレントとともに緊迫した声がただ事ではない事態を伝えた。
パーティメンバーを集め正門に到着すると、そこにいたのは禍々しい威圧のオーラを放つモンスター。
モンスターは漆黒の鎧に巨大な剣、そして漆黒の馬に騎乗し、胴体から外れた首を脇に抱えていた。
そのモンスターの種族をデュラハンという。
リッチーやヴァンパイアに並ぶ、最強格のアンデッドが一体だ。
しかしその体を覆う鎧はボロボロで、アンデッドなのに心なしかやつれているように見えた。
街の正門に呼び出された冒険者たちが激しい緊張に飲まれている中、デュラハンは騎乗したまま一歩前に出て――
「俺はつい最近この近辺にある廃城に越してきた魔王軍幹部のベルディアという者だが……ままままま、毎日毎日毎日毎日っ!! おお、俺の城にポンポンポンポンポンポンポンポン爆裂魔法を打ち込んでく、あ、頭のおかしい大馬鹿者は誰だああぁぁァァ!!」
魔王軍の幹部様は大変お怒りだった。
もしかしたら……とは思ってたんだが、まさか本当にあの砦に魔王軍幹部がいるだなんて……
もしこれから爆裂魔法を撃ち込まないって言ったら許してくれないかなぁ。
「めぐみんさんめぐみんさん」
「めぐみんです」
「ヤバくないか?」
「ええ、ヤバいですね。まさかとは思っていましたが先日倒したアンデッドが魔王軍の手先だったとは……そのことがバレて報復に来るだなんて思ってもみませんでした」
「いや違うだろ、どっちかって言うと俺たちがこの一週間毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込みに行ってたのがバレたんだよ!」
この感じ……もしかしなくても俺たちのことを殺す気満々なんじゃ……!?
そう不安になっていると、ザッザッと土を踏みつけて前に出る音が聞こえる。
デュラハンがこちらにやってきたのかと思わず恐怖で目を固く閉じていると、隣からも足音が。
その音の方を見るとめぐみんがわずかに震えながらも魔王軍幹部の前に進む姿があった。
それを止めようと思って手を掴もうとしたが時すでに遅し。
自分の城を爆裂してきた犯人が目の前に現れると、魔王軍幹部はワナワナと震えだし……
「キッキキキ、貴様が! 貴様が毎日毎日俺の城に爆裂魔法を打ち込んでくる大馬鹿者かッ! ねェ、何なの? 何で人の城にポンポンポンポン爆裂魔法を撃ち込むの!? 俺が魔王軍幹部だって知ってやってんだったらもっと正々堂々攻めてこいよ! じゃなかったら街の中で大人しく恐怖で震えていればいいものを! ねえ、なんでそんな陰湿なことするの!?」
「あ、あれはあなたの城ではないではないですか! 人の敷地に不法侵入する方が如何なものかと思うのです。魔王軍幹部とて、流石に不法侵入及び不法占拠を行うというのはよろしくないのでは!?」
「えっ、そ、その、ごめんなさ…………って、そんなこと言うんだったら城に爆裂魔法を撃ち込む方が頭どうかしてるだろ! というか、生前の記憶がある俺は他の魔王軍の者と比べてかなり良識ある方だと思うぞ! なのに何んだこの仕打ちは! あったまおかしいんじゃないか!? 近所迷惑考えろよ!」
「近所迷惑というのならこちらの台詞です! あなたが派遣されたせいでモンスター討伐のクエストが激減して迷惑しているのですよ! それに、爆裂魔法を街の近くで撃つと近所迷惑だと怒られるのは私なんです!」
「だから俺も怒ってるんじゃん!」
ごもっともだと思います。
敵の正論に俺は思わず視線をそらせた。
ゆんゆんも同じく。
そんな中、デュラハンの気を逆なでするようにめぐみんはニヤリと不敵に笑い……
「自己紹介が遅くなりましたね。我が名はめぐみん、アークウィザードにして最強の攻撃手段爆裂魔法を操りし者!」
「なんだめぐみんって。馬鹿にしてんのか」
「ち、ちがわい! 我は紅魔族にしてこの街随一の魔法の使い手。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは魔王軍幹部をこの街に誘導するための作戦なのです」
幹部相手に大見得を張っているめぐみん。
作戦だったと知って顔をしかめるベルディア、どよめく冒険者たち。
そんな中俺たちは――
「確かに城に爆裂してたけどなぁ……爆裂魔法を撃つ理由とか何もないだろ」
「しかも今しれっとこの街一の魔法使いって言ってたな」
「カズマもダクネスも、しぃー! 今は後ろに街中の冒険者がいるから強気なのよ。優しく見守ってあげましょう」
「すみませんすみません、うちのめぐみんが爆裂狂いですみません……!」
4人でこそこそと喋っているとめぐみんが黙ってほしいと言うようにジト目を向けてきた。
そんなめぐみんは気を取り直すために咳払いをして。
「最近の魔王軍幹部の目撃証言、我が爆裂魔法でもなかなか崩れない城があったので怪しいと思っていましたが大当たりでしたね。幹部を疲弊させ、のこのこと一人で街にやってきたところを私たちが叩く……クックック、全て目論み通り、見事に嵌まってくれて感謝しますよ。そうでしょう、カズマ?」
「「なにっ!?」」
何で唐突に俺にふってくるんだよ!?
思わずデュラハンの人と台詞がかぶってしまったじゃないか!
大体、そんな作戦、ぼろが出て見破られるに決まって……いや、よく考えるとめぐみんの後付け作戦がちゃんとした作戦として成立してるんだが……
だってうちには最強の魔法である爆裂魔法を使うめぐみんだけじゃなく、アンデッドの王であるリッチーですらただのターンアンデッドで昇天させられる実力があるアクアもいる。
まあ、それでも危険なことには変わりないし、回避できるんだったら回避しか選択しないが。
そう思っているとアクアが心配そうな声で。
「か、カズマさん、私、そんな作戦あったなんて知らなかったんですけど!」
「おいカズマ、私もその作戦について何も知らないんだが! お前は知ってたのか!?」
「カズマさん、次から仲間外れしないようにしてくださいね。すごく寂しいんですから……」
「いや、俺も知らないから!」
めぐみんは無事帰れたら何かしらの刑罰を科してやる!
具体的には足がしびれるまで正座させて、完璧にしびれたら足を4人で突っつきまくってやるとかそんなやつをだ。
そんなことを思いつつ、作戦をことを知らないというか、めぐみんの強がりだと必死に否定していると。
「ふっふっふ、我がパーティは数多のスキルを使いこなすキャベツスレイヤーに我が同胞のアークウィザード、リッチーにすら通用する神聖魔法を扱うアークプリースト、そして鉄壁の防御で我々を守ってくれるクルセイダーがいます。さて、どっちが不利な状況か一目瞭然のはずで――」
「「キャベツスレイヤーって何だ、バカにしてるのか! …………あ、どうも」」
……意外と俺とこの魔王軍幹部の人は相性がいいのかもしれない。
思わず突っ込んでしまうタイミングといい、めぐみんに苦労させられてるから共感できる点といい……
キャベツスレイヤーと言われて微妙な気分になっていた俺だが、ほかの三人はちゃんとかっこよく紹介されたせいでやる気だ。
「あぁ……面倒くさいことになった……。お前ら、一応言っておくが俺たちに別に作戦なんてないし、デュラハンの人に早くごめんなさいして帰って――」
そう言っていると、俺の言葉を遮ってアクアが。
「カズマ。いっちょやってやりましょう。私、このアンデッド一発食らわせてやりたいの。悪魔やアンデッドって奴らはアクシズ教のみならず真っ当な神様なら嫌悪する存在なの、そのくせ体力や耐久力もある最悪の害虫、それはもう家の中で発見したゴキブリより最悪……だから、けっしてコロッケ売りのバイトで怒られた腹いせとか高難易度のクエストばかりで受けられなくってツケが払えなくてイライラしたからってわけじゃなくて、神の裁きを食らわせてやらなきゃ気が済まないわ!」
やはりアクア……討伐したい理由、特に後半の方が利いてるだろ。
ていうかまたツケ作ったのか!? 早くツケ代払え!
そんなことを思っていると今度はダクネスが前に歩み出る。
「アクアの言う通りだ。私はエリス教の信者でこれでも聖騎士。悪魔だろうと何だろうと私の仲間に手を出す輩には立ち向かうのが役目だ。しかも、しかもだ! 貴様の私の四肢を舐め回すかのような目つき、ハアハアと兜の中から聞こえる興奮したような呼吸音、もしも私が敢え無く敗北したらそのまま城に私を連れ去り、それはもうこの場では言えないほどの辱めをする気だろう!」
「お、おい、お前ら! デュラハンの人迷惑してるだろ! 滅多なことは言うんじゃない! 周りの女性冒険者の目がゴキブリと最低な変態を見る目に変わってるから!」
かわいそうに……あの目は俺がスティールでゆんゆんのパンツ盗ったときよりもヒドい。
しかもベルディアに聞こえる音量で悪口をヒソヒソと話している。
過去の俺よりひどい状況に同情し、強く生きるんだぞと目尻を熱くしていると、ゆんゆんが三人と同じように前に出る。
「デュラハンは生前立派な騎士で、原因はいろいろあるけど首を刎ねられて亡くなり、その時に果てしない恨みや嫉みが原因で復活した成れの果てだと本に書いてありました。そして歴史の本にベルディアという騎士団長が冤罪で騎士団諸共斬首とも」
「えっ! もしかして生前の俺のこと知って――」
「ということは今ベルディアさんがお一人でお仲間さんがいないのも死後の世界で待ってるんだと思います、今もなお。独りボッチは寂しいですよね」
「あ、いや、今は魔王軍に仲間がい――」
「だから、だから私っ、早くベルディアさんを殺さないと、殺してあげないと! 早くみんなのところに送ってあげないと……みんな一緒じゃないと……寂しいですからね」
そう言ってゆんゆんは涙を浮かべながら笑って見せた。
こわっ! 怖すぎんだろっ!
何がとは言わないが漏らしかけたわ!
最初はベルディアも哀れなヤツだったんだなって思っていたのに、話の結論がおっかなすぎるわ!
見ろよ、そのせいでアクアたちはおろかその場にいる一同ドン引きだわ!
なんならその対象であるベルディアが一番震え上がってるし……
「ヒィッ!? と、ととと、とにかくっ! もう二度と爆裂魔法を打ち込むな! 然もなくば、き、貴様らに死の宣告をするからな! 本当に打つなよ、本当お願いします!」
ベルディアはそう締まらない感じで去って行った。
まさかゆんゆんが思わぬ成果を出してくれるとは……
まあそんなこんなあって魔王軍幹部を討伐はしなかったがゆんゆんのおかげで撃退することができたし、あとでシュワシュワでも奢ってやろう。
ストーリー進行の早さどうですか?
-
もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
-
ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
-
今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
-
もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)