我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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第二特異点
6-1 極寒の…独占欲(リヴァイアサン)


前回、魔王軍幹部のベルディアとの一戦において主力であった俺たちのパーティはギルドのお姉さんに呼ばれて追加報酬を受け取った。

その金額なんと三億エリス……パーティで分けたとしても一人あたり六千万。

それを聞いて俺以外は目を狂喜乱舞していた。

……そう、俺以外は。

 

「カズマカズマ!」

「カズマだよ?」

「今回の報酬の取り分はどうしましょうか。実は私、実家にいる妹のために仕送りを増やしたいと思っていまして、私の爆裂魔法がなければベルディアを討伐することはできなかったでしょうし、ここは気持ちばかりの感謝の気持ちとして配分を少し多めにしてもらうことなんて……」

 

確かにめぐみんの爆裂魔法は戦いに決着をつけた、感謝の気持ちもないことはない。

だが、だからといって一人だけ優遇する理由にはならない。

そもそも今回の報酬とは名ばかりでその実は――

そう言おうとしたとき、めぐみんを叱りつけるようにゆんゆんが。

 

「駄目よ、今回の報酬はみんなの力があってこその勝利だったんだから均等に分けるに決まってるでしょ! あ、でも……カズマさんカズマさん」

「カズマだぞ?」

「その、今回の報酬は6等分ですかね? ほら、一応ミツルギさんも一緒に戦ってたじゃないですか」

「いや、アイツは報酬受け取るの辞退したぞ。実力不足を感じたとかなんとかで修行の旅に行くことにしたらしい。俺としては報酬を受け取ってほしかったんだが……」

「受け取ってほしかったって……あのカズマさんが?」

「あのって何だよ。俺をどう思ってたのか正直に話してみろ」

「ご、ごめんなさいごめんなさい、これは言葉の綾で! その、カズマさんは倹約家だなーって印象だっただけで! だからだからそのウネウネ指を動かすのやめてください!」

 

今日のところはその達者な口に免じて見逃してやる、と、俺が手を引っ込めると安堵の息をつくゆんゆん。

どうして俺のスティールは女性の下着を高確率で奪い取るのかと疑問に思うがこういうときには重宝するな……

自分の必殺技が人様に教えるのを憚れるような性能をしていることに何とも言えない気持ちになっていると。

 

「ということは今回の報酬は5等分ということで良いのだな。お前が理不尽に報酬を横取りしたりする訳がない」

「お、おう。なんか信頼が厚い感じがこそばゆいがそう言うこと…………おい、なんであからさまに残念そうな顔するんだよ」

「いや、逆に私の報酬だけ横取りされるのはいいのだ。そして『そのいやらしい体を使って稼いでこい』と命令されたい。そういう、人生だったのだ……」

 

最後の余計すぎる一言で全部台無しだ……

ほんと、そういうところなきゃ理想の騎士なのに、どうしてダクネスはこんなんになってしまったのだろうか。

 

「ま、そういうわけで今日の報酬は5人で分けるから一人あたり6千万――」

「ねえねえカズマさんカズマさん!」

「はいはいカズマ」

「今回の報酬なんだけど、魔剣の人が自分の報酬を女神様に~って言ってたの聞いたんですけど。ということは今回の報酬を6分割したとして、私は二人分をもらえる権利があったと思うんですけど……」

 

……昨日は酔っ払ってたし聞いてないと思ってたのに。

どうしてコイツはこう都合のいいことだけ聞き取ることが得意なんだろうか。

そもそも記憶失うほど飲んでたろうにどうしてそこは覚えているのか……俺は思わずため息をつこうとしたのだが、アクアがそれを止めて。

 

「まあ、今回はみんなの力があったから討伐できたんだしね。魔剣の人の分は私以外のみんなで分けちゃいなさいな、私は聖職者らしく欲張らないから」

「今まで報酬を独り占めするだの言うようなやつだったのに……お前、成長したんだな」

 

俺は猛烈に感動している!

普段から駄女神とかトイレの女神とか宴会芸の神様だとか言ってきたが、今日のお前はそんな欠片もなく光り輝いて見え…………

いや、ちょっとよく考えてみたらアクアは俺とミツルギの話を聞いてたんだよな?

ってことはもしかしなくてもギルドのお姉さんが言っていた賠償金の話も知ってて……

 

「いつものお前らしくないじゃないかアクア。少なくても俺よりは活躍してたんだから、その分報酬増やしてやるよ」

「確かに今までは醜態をさらしていたかもしれないけど、私は謙虚に生きることを覚えたの。だから一日暮らしていけるだけのお金があればそれ以上は望まないわ」

「いいっていいって! 俺とミツルギの分を上乗せしてやるから、いらないなら教会にでも寄付して来くればいいさ」

「あ、あの、本当にお気遣いな……お、押しつけないでって! ほんと、お気遣いなく!!」

「おらっ、さっさと俺の分受け取れよ! というか昨日の今日でそんな人の性格変わるもんか! 昨日の話全部聞いてたんだろ、正直に白状するなら許してやるからお前の魂胆自白しやがれ! じゃないと今回の報酬全部お前の取り分にしてやる!」

「あああっ! 借金背負うことになるって聞いて押しつけようとしてましたごめんなさい!」

 

ほんと、俺の感動を返してほしい。

 

 

 

 

というわけで。

結局何かの間違いが起きるわけもなく、俺たちには4億エリスが請求された。

もちろん、これだと1億エリスの借金になってしまうので抗議したのだが……

何でもミツルギは王都でも有名な冒険者らしく、かなりの資産を有しているそうで、もう少し負担してくれないかとのこと。

いや、肝心のミツルギの姿が見えないんですがね?

まあ、なんやかんやあって当初の請求金額である3億4千エリスに6千エリスを加えることでキリがいい数字にしたそうだ。

俺は机にジョッキを勢いよくたたきつけた。

 

「酒、飲まずにいられねえ!」

「カ、カズマ、そうしょぼくれるな。……ぎゃ、逆に考えるのだ、4億エリスくらいあげてやってもいいさと」

「……そうだな、4億エリスなんてくれてやってもいい……ってなるわけないだろっ! てかマジふっざけんなよ!? 何がキリがいい数字だ、そんなんだったら3億にしとけよ!」

「確かにカズマの怒りはもっともなのだが……しかし、本当のところは5億エリスの請求をされるはずだったのだ。借金が1億で済んでよかったと考えるべきだろう?」

「えっ、そうなのか?」

 

ということはもしかして俺たち借金2億エリス抱える予定だったのか!?

昨日お姉さんからは請求金額4億って言われてたのに、本当はもっと上になる可能性があったってことか!?

お、おそろしい……この異世界に破産届みたいなことできる法律って……ないよなぁ……

 

「ってか、なんでダクネスがそんな裏の事情みたいなの知ってんだよ」

「あ、えっと……ク、クリスがそういう裏情報を仕入れたと聞いてな! なんでも、アクセルの領主の貴族が魔剣の勇者がいたと聞くなり『5億にするえ~』と」

「人をなんだと思ってるんだ! 今度ソイツに遭遇したら特権階級だからって安全な暮らしは保証されないってことを身をもって教えてやる!」

「不敬な発言はやめておけ、場合によっては極刑もあり得るのだ。……まあ、とある貴族のおかげで4億エリスに請求を下げてもらえただけよしとしようではないか」

「うーん……納得できないけどなぁ…………ちなみにその貴族の名前は?」

「な、なんだったかなぁ……ダ、ダスティネスと言っていた気がしなくもない……かなぁ……?」

「何でそこんところはあやふやなんだよ。まあ、そのダスティネスという家の人に会ったらお礼を言いたもんだ…………ってどした? 顔がにやついてるぞ?」

「にゃ、にゃんでもない」

 

……ダクネスのことだ、どうせ変態的な妄想して喜んでるだけだろ。

しっかしさすが中世の異世界、法律も何もない……が、今回はそんな世にわずかにある良心に助けられたな。

これも俺の幸運値が高いおかげなのだろうか。

 

「とにもかくにもクエストを受けないとな……おい、お前ら! 準備はできて――」

「ちょっと何よ! 領主だかなんだか知らないけどケチケチするんじゃないわよ! 私がこの街を救ったと言っても過言じゃないのよ! 請求じゃなくて恩賞とかくれてもいいと思うんですけど」

「ふっふっふ。我が爆裂魔法の威力が凄まじさをこれで世界に知らしめることができるのに工事してしまうとは……実にもったいない。将来魔王を討伐する伝説のパーティが残した跡として観光名所にでもするべきです!」

「ええっ、土木系の魔法スキルを覚えて工事にも参加すると1千万エリスが戻ってくるんですか!? で、でも、スキルポイントが足りないしクエストでレベル上げてから習得し……」

「やっぱりお前の報酬はなしだと言われ、貴族に体を売ってこいと言われ……あぁ///」

 

……あー、俺は何も見なかった。

何も見なかった俺は誓いを胸に、俺は今日もクエストを受けるために掲示板へ向かって歩き出した。

大事なのでもう一度いっておく。

俺は、受付のお姉さんにごねてる駄女神とか、そもそもの元凶なのに頭のおかしいことをほざく爆裂狂とか、冒険に必要のない魔法を習得しようとしているボッチとか、妄想の中で辱めを受けて喜んでる変態とかはいっっさい見てない。

 

 

 

このすば

 

 

 

「金がほしい!!」

 

あれから結構日にちが経った今、俺は血を吐くように切実に呻いた。

ちなみに今までこつこつと5人で働いて借金を返済しているものの、未だ1億の壁は遠い。

冒険者ギルドの酒場にて両手で頭を抱えながらテーブルに顔を伏せていると。

 

「そんなの誰だってほしいに決まってるじゃないの、もちろん私だって。毎日毎日馬小屋生活……慣れてるけど慣れちゃいけない気がしてるの」

「それはお前だけじゃなく俺もだ。あーあ、手っ取り早く大金稼げるクエスト転がってないかなあ」

「そんなのがあったら私たち苦労してないわ」

 

現在の季節は冬。

冬になると弱いモンスターは冬眠し、強いモンスターは活発化する。

報酬がいいクエストはかなりあるのになぁ。

 

「ハイリスクハイリターン。報酬がいいだけでどれも俺たちの手に負えるクエストじゃない……」

「ちょっと弱気になんないでよ、やる気出して頑張ってよカズマさん! ほかの冒険者は冬場に動かないってことは競争相手がいないのよ! 今がクエスト独占のチャンスなの!」

 

確かにアクアの言う通りだ。

先日の魔王軍の幹部を撃退した報酬で他の冒険者は懐が潤っている状況――

つまりほかの冒険者はわざわざ冒険をする意味もないので休業しているので俺たちはクエストを選び放題なのだが……

 

「そのクエストが俺たちの身の丈に合ってないつってんだろ」

「大丈夫! 私たちのパーティーはカズマ以外全員が上級職なんだし、なんなら私は女神……どんなクエストでもちょちょいのちょいに決まってるわ!」

「ちょちょいのちょい、ねぇ……。カエルで全滅しかけるのに何言ってんだか」

「あ、あれはダクネスがいなかったし、カエルは金属を嫌うって言うけどカズマ以外は持ってなかったし……。ほら、このままじゃいつまでたっても贅沢できないじゃない! 仮にも女神なのよ私は! カズマは早く借金返済してもっと私のことを敬って甘やかすべきよ!」

「じゃあお前が一人で行ってこいよ、女神なんだろ? 俺は街の外に出て死にたくないし、バイトでなんとか細々やってくから。じゃ」

「わああああ待ってっ! 私だけじゃ攻撃役がいないし一緒に行ききましょうよお願いお願い!」

 

アクアの地団駄に無理なものは無理だと突っぱねようとしたときだった。

朝食を食べに来たのか、ダクネスたちがギルドにやってきて、俺たちに声をかけてきた。

 

「二人とも朝早くに来ていて感心したと思ったら騒がしくして……一体どうしたのだ?」

「いや、このバカが考えなしに『クエストなんて楽勝よ』とかなんとかいうから……」

 

ダクネスは俺の言葉にくすりと笑い、そのまま席に着く。

いや、そもそも楽勝だったら俺たち今頃馬小屋生活から脱却してるはずなんだが?

朝早くからここにいる理由だって、馬小屋の中が寒すぎて凍えそうだったからギルドに避難しただけだ。

今更ながら転生特典にコイツを選んでしまったことを後悔している。

ため息をついていると、今度は紅魔族二人がやってきた。

 

「おはようございます、皆さん。今日はクエストにいく感じですか?」

「おはよゆんゆん。一応今日もクエスト探してみるが……今日も爆裂散歩になりそうな予感しかない」

「私はそれでも問題ないと思いますよ?」

「お前しか得してないから問題なんだよ…………なあ、めぐみん」

「はい、なんです?」

「……その食事量、なんとかならないのか?」

「なりませんね。私の特異体質の関係上日々のエネルギーの摂取を怠ると餓死しかねませんので」

「特異体質って言えばかっこよく聞こえると思うなよ、この大食らいめ」

 

めぐみんが運んできた山盛りの朝食。

正直、この量を飯をかき込むめぐみんには慣れたし、なんならこの食事量でめぐみんがふとみんにならない理由も考えるだけ無駄だと思っている。

しかし借金まみれの現状、食費を抑えてほしいのだがコイツは底なしの胃袋ですべてを喰らい尽くす。

今まで散々食べてきたんだから、その蓄えてきた栄養で冬眠でもしてくれないだろうか。

そう思いながらも俺はクエストを確認するため、重い腰を上げたのだった。

 

「ええっと、どれどれ…………うん、やっぱり今日も爆裂散歩かなぁ」

 

掲示板を見てみたがロクなのがない。

牧場を襲う白狼の群れの討伐 報酬:100万エリス

冬眠から目覚めてしまった一撃熊の討伐 報酬:200万エリス

機動要塞デストロイヤー接近中につき進路予想のための偵察募集 報酬――

 

と、そこまで読んでその張り紙は誰かに奪われる。

同時に、隣に貼られていたクエストが剥がれ落ちたので、俺はその紙を思わず掴み取った。

 

「おっ、ナイスキャッチ」

 

俺の様子を見ていたのかそんな声が聞こえた。

声の方を見ると、そこには黒髪で眼帯を着けた女の子が機動要塞ナンチャラのクエストの紙を持っていた。

 

……なんだろう、これと似たヤツがうちのパーティーにもいた気がするんだが。

一応あんなんでも魔王の幹部を討伐したし、見てくれだけはいいし、めぐみんに憧れて痛い格好してるのかもしれない。

そんな事を思っていたら、その子が頭をかきながら。

 

「ごめんね、もしかしなくても読んでたでしょ。私これ受けようと思ってたんだけど……」

「ああいえ、俺は別に受けようとは思ってなかったんでどうぞどうぞ」

「ああそう? じゃあこれは私がもらっていくね」

 

そう言ってその子は依頼の紙を受付の方に持っていった。

……めぐみんのファンなのもそうだが、こんな時期にクエストを受けるなんて珍しいヤツもいたもんだ。

普段見ない顔だし、最近この街にやってきた冒険者なのかもしれない。

そう思いつつ、俺は手に持っているクエストに視線を移した。

 

「……雪精の討伐?」

コロナタイトをテレポートしたら……

  • やっぱりアルダープの屋敷へ!!
  • 邪王真眼の影響で別の場所へ!?
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