我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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6-2 氷雪の…終焉(アブソリュートゼロ)

現在、俺たちは雪山にきていた。

先頭をゆくのは誰よりもお金を欲している貧乏神ことアクア。

その手には虫取り網を持ち、肩からは鞄の代わりに虫かごが下がっていた。

 

「いや、虫取り少年か。季節外れにもほどがあるだろ……」

「ちっちっち、これにはちゃんとした理由があるのよカズマ」

「どうせ雪精を捕獲してかき氷みたいにして食べるとかそんなんだろ」

「惜っしい! 正解は雪精を捕まえてしゅわしゅわを冷やしてもらうでした! 確かにカズマの言うとおり氷菓子みたいにして食べるのも考えてたけど、それだとたった一回しか楽しめないじゃない? 冷蔵庫代わりにして、シュワシュワをキンキンにする方が何度でも楽しめるでしょ? どうどう驚いた? すごいでしょ!」

 

そんなことより適当に言った予想が惜しかったことへの驚きの方がすごい。

俺とアクアの思考が似通ってきている……もしかして俺もバカになってきたんじゃないかと心配になってしまう。

しかし狸の皮算用しているアクアは、俺の方を見るそぶりもなく、無邪気に虫取り網をブンブンと振り回す。

 

「一匹ごとに10万エリスならかなりのお金になるじゃない! 百匹倒せば1億エリスの借金も完済よ!」

「いや、でもこんだけ討伐報酬が高いんだ。もしかしなくてもジャイアントトードよりもかなり強いモンスターなんじゃないのか? それかメタスラとかみたいな珍しいモンスターか」

「バカね、確かに雪精はふわふわ空を飛んでるせいでちょっと倒すのにコツがいるけど、攻撃力もないし、雪山に行けば簡単に見つかるのよ。ダクネスじゃないんなら」

「お、おい! 確かに私は不器用だし攻撃を雪精に当てるのは難しいかもしれないが、雪精を探すくらいのことはできるはずだぞ! きっと……いや、たぶん、おそらくは……」

 

どんどん不安になってんじゃねえか。

というかそんな自信ないんだったら両手剣スキルくらいはとっておけよ。

ダクネスの徐々に尻窄んでゆく言葉に心の中で突っ込んでいると、俺の後方からめぐみんが。

 

「雪精をそんなに倒した人は聞いたことがありませんが……確かに精霊は雪山に大量にいますし、1億どころか2億エリスも目じゃないかもしれませんね」

「マジか! 今回の討伐クエスト、ほんといい仕事見つけたんじゃないか?」

 

めぐみんの言葉、借金返済の可能性。

それを聞いて、アクアに負けないくらいウキウキな気分になっていた……のだが。

そんな俺とは対照的にゆんゆんは微妙そうな声と顔をしていた。

 

「どうしたんだ? 出発前からそわそわしてたが、もしかして花摘みか? 俺は目を瞑ってるからそこらで出して……あ、大のほ」

「カズマさん最低! デリカシー大事にしてくださいよ! というかそもそも私はトイレ行きたいわけじゃないですから!」

「何だそうなのか。もじもじしてるからてっきり我慢してるのかと思ったが……」

「いえ、あの、もし勘違いだったらあれなんですけど、カズマさんってベルディアを討伐したから次は冬将軍を討伐しようと思ってるのかなーって……思ったりして」

「うん? 冬将軍って…………あの冬将軍のことか?」

 

よくよく考えればその言葉には聞き覚えがある。

天気予報のお姉さんが冬の寒波を冬将軍の到来だとかなんとか言って紹介してたような気がするが……

 

「えっと、どの冬将軍のことかはわからないんですけど、冬将軍は雪精を倒しすぎると現れる親玉で、冬の大精霊と言われている懸賞金がかかっているモンスターです」

「なにそれ、俺の知らない冬将軍なんだが……。というか今懸賞金がかかってるっつったか?」

「はい、ちょうど2億エリスで……もしかして冬将軍討伐で借金返済しようとしてるのかなって思――」

「アクアー、帰るぞー」

 

2億……その言葉を聞いた瞬間、俺は家路を急いだ。

ここは異世界、漫画やゲームの世界じゃない。

ベルディアが3億エリスだったが……それと同等の億超え懸賞首と戦うリスクなんて回避するに決まって――

 

「ちょっとカズマさん待ってよ! 雪精で借金チャラにするんじゃなかったの!? 一人あたり20匹も討伐すれば終わりなのよ!」

「今の話聞いてなかったのか! 倒しすぎると懸賞金が2億の大物が出るんだぞ! 百匹なんて倒したら確実に出るだろ!」

「でもでも、冬将軍は寛大なの! 土下座すれば見逃してくれるのよ! だから雪精の討伐して借金返済にあてましょうよ!」

 

できることならそうしたい。

とういかそもそもそれを目指してきたんだからな。

でも土下座すれば見逃してくれるって言ったって、俺たちが百匹も討伐したら激おこだろ!

そもそもどうして冬将軍のこと知ったような――

 

「お前、冬将軍が出ること知ってた口だろ! というかそもそもどうして見逃してもらう前提なんだよ! 見逃してもらえない可能性だってあるのにどうして恐怖の象徴と対面しなきゃいけないんだよ!」

「じゃ、じゃあそのときは討伐しましょうよ! あの魔王軍幹部のクソアンデッドだって勝ったんだし、1億エリスも格下の相手なら余裕じゃない! ねえめぐみん! 爆裂魔法に不可能はないんでしょ!」

「ええ、我が爆裂魔法の威力は神や悪魔、非実体の存在すらダメージを与えられる究極の攻撃魔法! 大精霊の防御力さえも意味をなさないのです!」

「話がややこしくなる! バカどもは黙ってろ!」

 

アクアめ、早く借金生活から抜け出したいからってめぐみんを自分サイドに引きずり込みやがって!

俺だって早く借金返済したい……

でも、命をかけるレベルで危険を冒したくはない、そうだろ!

 

「バカって言った! 私女神なのにバカって言――い、いひゃい! ほおを引っりゃらないでぇ!」

「ふっ、馬鹿と天才は紙一重……きっとカズマなりのツンデレなあああ! パンツ返してください!」

「つべこべ言わずに帰るぞ!」

 

金は命より重い。

そんな名言が霞んで見えるくらい、俺には命を賭けてギャンブルをする才能はなかった。

 

 

 

このすば

 

 

 

雪山から無事帰還した数日後のこと。

ギルドで今日も今日とて仕事を探していたのだが――

 

「おい、もう一度言ってみろ」

「何度だって言ってやるよ、お前がパーティーのお荷物だってな! 上級職が揃ったパーティーで荷物持ちの仕事を選ぶあたり、足引っ張ってるの自覚ねえのか、最弱職さんよ?」

 

目の前のくすんだ金髪の冒険者が俺のことをあざ笑う。

……我慢だ。

正直今すぐにでも顔面にドロップキックをたたき込んでやりたい衝動に駆られているが、俺はこいつとは違って大人な対応ができる男だ。

確かに俺たちのことをよく知らないヤツからしたら、上級職揃いのエリート集団が荷物持ちの仕事を選ぶだなんておかしなことだと思うだろうし、最弱職な俺が足を引っ張っていると勘違いするのは当たり前だ。

客観的に物事を捉えて怒りを抑える努力をしていると、それを見た金髪の冒険者は、俺がぐうの音も出ないでいるのだと思ったのだろう。

 

「おいおい、何か言い返せよ最弱職。美人な女4人もつれて、ハーレム気取ってるだけかよ。ったく、簡単なクエストを手取り足取り教えてもらえて羨ましい限りだぜ」

 

思い切り殴って折りたいその鼻を。

ハーレム? 手取り足取り教えてもらう?

馬鹿は休み休み言ってほしい。

このパーティー中でまともな思考回路の美女美少女がどこにいるって?

俺がおんぶ抱っこしてる状況……断じてハーレムじゃない、ただの子守だ。

拳を握りしめ、それでもなんとか理性で衝動を抑えつけていたのだが――

 

「どうせ毎日このお姉ちゃんたち相手にいい思いしてるんだろ? 寄生して甘い蜜すすってるだけなんだろ? あーあ、羨ましい限りだぜ! どうせなら俺と代わってく――」

「大喜びで代わってやるよおおおぉおぉぉぉおおおッ!!」

「えっ!?」

 

誰の声かはわからない。

その金髪の男の声だったかもしれないし、アクアたちのうちの誰かだったのか、それとも他の冒険者だったのか、はたまたその全員だったのか。

だが、俺にとってはそんな些細なことはどうでもよかった。

 

「おい、今俺のパーティーのメンバーが美女揃いって言ったよな! はぁ!? どこにそんな仲間がいるんですかね!? 俺の目にはそんな幻想どこにも見えないんですが!? もしかしてお前の目ん玉ビー玉なのか!? ビー玉だから俺には見えない透き通った世界が見えてんのか!? だったら俺の濁った目玉と交換してくれよ!」

「あ、いや、その、酔っ払った勢いで言い過ぎたな、悪かった……。で、でもよ、俺から見たらお前さんの環境はやっぱ恵まれてるっていうか。さ、さっき交換してくれるっていったよな? い、一回だけ俺と交換してくれよ、な?」

 

さっきまでの威勢はどこへやら。

俺がぷっつんしたことが意外だったのか、俺の剣幕に押されるように金髪の男はそんな提案をしてきた。

言いたいことを言えて割とスッキリしている俺だが、どうやらこの男は俺のパーティーをちっとも理解していないらしい。

正直「やめておけ」と言おうかとも考えたが、わざわざ生け贄に自ら志願してくれたのだ。

止めてやる理由もない。

 

「ねえカズマ? なんか私たち抜きで話が進んでるんですけど……私たちに拒否権ってないのかしら」

「ない。というか別にいつも通りでいいんだよ。俺の代わりに代打で入ってくれるっていってるんだから、お前らはアイツを俺だって思って普段通りクエストいったりしてくれればいい」

 

パーティー交換を申し込んできた男を見ると、美女に囲まれてちやほやされることを想像しているのだろう、鼻の下を伸ばして目も当てられないような表情をしていた。

自分がどんな地獄に足を突っ込もうとしてるのか、まだ知らないんだろうが、まあ、俺にとっちゃそんなことはどうでもいい。

二度と嘗めた口利けないよう、俺の環境が劣悪であるかを体験させてやる。

 

「俺の名は佐藤和真。今日一日って話だが、よろしくっ!」

「「「は、はあ……」」」

 

俺は交換したパーティーのところへ行って自己紹介をした。

……心なしか体が軽い。

いや、今日はトラブルメーカーの世話をしなくて済むんだ、そりゃそうか。

元旦に新品のパンツをはいたかのような素晴らしく清々しい気分だ。

 

「まあ、なんかおかしなことになったが、今日はよろしく頼む。俺はテイラー、職業はクルセイダーで、このパーティーのリーダーみたいなことをしている。今回はゴブリンの討伐をする予定だ。一日限りだがパーティーなんだ、必要なことは聞いてもらうぞ?」

「あたしはリーン、見ての通りウィザードよ。魔法は中級魔法まで使えるわ。まあ、何というか、ダストにいちゃもんかけられて災難だったわね。ゴブリンくらい楽勝だし、あたしたちが守ってあげるわ、駆け出し君!」

「俺はキース、アーテャーだ。ダストとは悪友みたいなもんでさ、今回に関してもというかいつもアイツが悪いと思うが……まあ、大目に見てやってくれよ」

 

鎧を着込み、剣と盾を携えたテイラー。

俺を年下の後輩扱いしてくるリーン。

弓を背負った軽薄そうなキース。

俺のところのへんちくりんメンバーとは違い、ちゃんとベテランの冒険者。

もしかしなくても俺の求めていた冒険者生活はここにあったんじゃなかろうか。




次回 カズマさん、主人公の座を奪われる!?

???「最近調子乗ってる駆け出しにいちゃもんつけたらパーティーを交換することになった。ここまでは計画通り……上玉のメンバーといちゃいちゃハーレム生活が来週始まる! そんな俺の活躍、しっかり見とけよ!」

コロナタイトをテレポートしたら……

  • やっぱりアルダープの屋敷へ!!
  • 邪王真眼の影響で別の場所へ!?
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