我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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6-4 狡猾なる…牙狼(ルーキースレイヤー)

「い、インフェルノ!! はぁ……はぁ……こ、これで最後……よね? も、もう限界……!」

 

目の前に何十匹といた標的がいないことを確認して安心してほっと息を吐き出す。

そして、へたりと地面に崩れ落ちたのはちゃんとした魔法使いのゆんゆん。

俺たちの目の前にはゴブリンだった肉塊が炭化し、跡形もなく崩れ去る地獄絵図な光景が広がっていた。

 

「お疲れさん、どこぞのへっぽこウィザードとは違って頼りになるな!」

「おい、そのへっぽことは一体誰のことを指しているのか聞こうじゃないか」

 

ちゃんとしてない方の魔法使いが何か騒いでいるが無視を決め込む。

どうせ魔力切れで何もできやしないし、実際に爆裂魔法を一発適当に撃って何の役にも立たずに撃沈したんだ、発言を訂正する気はない。

 

対してできる方のアークウィザードはやっぱり違った。

未だに黒い煙がプスプスと燻っている中、その中にいる影は頭をアフロにしたクルセイダーだけだった。

ゆんゆんは先ほどまで俺たちのことを襲おうと画策していたゴブリンたちをものの見事に一匹残らず殲滅したのだ、開いた口が塞がらない。

正直、爆裂魔法をさっきみたばっかりだから威力には欠ける気がするが、それでもさすがは上級魔法といったところか。

 

「ハァ、ハァ……/// ゴブリンに襲われ損ねたのは痛手だったが、ゆんゆんの魔法の嵐の中……これはこれで悪くないな」

「ダクネス、こっちにいらっしゃいな。回復魔法でキューティクル直してあげるから」

「すまないなアクア。本当はもう少しこの熱感を味わっていたいところだが、皆に大きな迷惑をかけるわけにもいかない、よろしく頼む」

「……なんで上級魔法の嵐の中このクルセイダーは髪の毛チリチリになってるだけですんでんだよ。マジわっけわかんね」

 

鎧も剣もないのにゴブリンの群れに襲いかかっていくし、それを見たゴブリンたちはその勢いのせいでかなりたじろいでたし……まさかそれが狙いか?

――いや、んなわけねえよな。

だってめちゃくちゃ喜んでる風に見えるし、……あれだ、こいつはただの変態だ。

 

そんな変態の髪の毛はアークプリーストの回復魔法によってサラサラに戻っていく。

回復魔法に詳しくない俺はそんな髪の毛を回復魔法でサラサラにできるだなんて聞いたことないし、きっとやってることはかなり高度な技術なような気がするんだが、過去一番無駄な回復魔法の使用用途に見えてならない。

 

「はぁ……もの凄い上級職と組めたと思ったらとんだ欠陥品を押しつけられたもんだぜ」

「おい、欠陥品とは誰のことか詳しく聞こうじゃないか!」

「いやお前のことだわ! 爆裂魔法をところ構わずぶちかますネタ魔法使いが! お前のせいでゴブリンたちが来たんだぞ!」

「いや、それは違いますね」

「何も違わねえよ!」

「いえ、ジャイアントトードのような知能のないモンスターたちはその音に反応して襲いかかってくることでしょうが、今回爆裂魔法でおびき寄せられたのは知能あるゴブリンです。畏怖の対象を見せつけられて襲いかかってくるほど考えなしではないはずで――」

「適当に言い訳すんじゃねえよ! 大体、お前の魔法がどれだけすごかろうと魔力切れで倒れてたらそりゃそれを見たモンスターは寄ってくるだろ! なんせもう爆裂魔法は撃てないんでな、ゴブリンでもそれくらいのことわかんだろうが!」

 

まったく、本当に頭のおかしい魔法使いめ。

俺の脳内で開催されているやばいやつランキング投票でトップワンツーはお前とそこでよがってるクルセイダーだからな、お前らはこのクエストが終わったら返品だ返品!

比較的まともそうなアークプリーストとできのいい方の紅魔族は残っててくれても構わんが……

 

と、そんなことを思っていたときのことだった。

ゴブリンが消失した方の奥の奥。

黒煙に紛れてノソリノソリ足音も立てずに現れた影が一つ。

漆黒の毛皮に覆われた体躯、鋭くも巨大な牙が二本の四足歩行獣。

 

――初心者殺しのお出ましだ。

 

「げぇ!? なんでこんなところにコイツがいるんだよ!」

「言ったではないですか、私の爆裂魔法に怯えず姿を現したゴブリンが異常だと。ゴブリン討伐に初心者殺しはつきものですね」

「呑気なこといってる場合かよ! ほら、ヤツとの距離はまだ十分にある! 早く立ち上がれ、さっさとずらかるぞ!」

 

俺が呼びかけると、ロリ魔法使いはマナタイト製の杖を支えにしてヨロヨロとなんとか自ら地面から起き上がる。

……こんな状態で逃げ切れるわけがない。

たとえ俺がこいつを背負ったとしても、初心者殺しに追いつかれて頭からムシャムシャいかれるのがオチだ。

武器も鎧も持っていないクルセイダーに魔法を使えない魔法使い、攻撃役には向かない回復担当。

残る戦力は俺だけ……って、待てよ?

 

「そうだ、うちのパーティーにはできる方の魔法使いがいるじゃないか! おいゆんゆん! 魔法であの初心者殺しをぶっ倒せ!」

「ご、ごめんなさい、さ、さっきゴブリン相手に魔法使いすぎて、もうほとんどガス欠状態で……」

「何でこんな時にどいつもこいつも役立たずなんだよ! 逃げるのも無理だし戦えないし……えっ、もしかして俺の冒険の書終わっちまったか!?」

 

俺、こんなとこで死にたくねえよ!

死ぬときはムチムチのねえちゃんたちに囲まれて窒息するとか、そういう幸せな死に方をするって決めてんだ!

どうしようかと思って頭を悩ませていると、俺の前に変態が出る。

 

「であれば私が前に出て囮になるしかないだろう」

「はあ? 何を言って……」

「安心しろ、時間稼ぎは私の得意分野だ。というわけで……いってくりゅ!」

「お、おい! マジでやめろ! 初心者殺しに鎧もなしで挑むだなんて無謀にもほどが――!」

 

それが制止をかける前に変態は獣の方へ走っていった。

変態を見た初心者殺しは一瞬ひるむも、防具も何もないのを把握して噛みつきにかかる。

その肌に初心者殺しの牙が突き刺さり、致命的な傷を与えようとしたその瞬間。

俺の耳に……ガキィィン……そんな金属同士がぶつかり合う音が耳に入ってきた。

その音の方を見ると、クルセイダーの肌にわずかだけ牙を食い込ませ、それ以上牙を進められないでいる初心者殺しが目を見開いていた。

 

「貴様、そんな甘噛みのようにぬるい攻撃をするんじゃない! こちらを仕留める気ならもっと本気で噛みつけ! 涎を垂れ流し、もっと激しく噛め! それでも獣なのか、もっと、もっとだ!」

「おい、初心者殺しが戸惑ってるだろ、あと俺も」

「ダストさん、これもいつものことですので慣れてもらえればなぁと」

「これといい爆裂魔法といい、どれも慣れたくもねえ!」

「はあぁぁああんっ……た、たまりゃぁああんっ!」

 

そう言ってダクネスは白目をむき出しにして倒れた。

正直、ダクネスの奇声と奇行にドン引きなんだが、俺も初心者殺しも。

なんというか、本能的に距離をとりたくなって後ずさりしてしまった。

 

「見て、ダクネスのおかげで怯んで退いてるわ! 今がチャンスよ!」

「お、おう! 俺はあいつを引っ張って逃げるから、お前らは――」

「わかってるわ! 攻撃して倒せばいいのね!」

「何もわかってねえ! 逃げるんだよ! 素手であんなやつを倒せっこないだろ!」

「馬鹿なこといわないで、初心者殺しを倒したらカズマが私たちを見直して土下座しながらシュワシュワ奢ってくれるはずよ! 女神の一撃を食らうがいい! 『ゴッドブロー』おぉぉヒプ!? ひぎゃぁあああっ、噛まれてる! モグモグされてるーっ!」

「当たり前の結果だろ!? 頭いかれてんのかあああぁああ!?!?」

 

とは叫んだものの、意外と余裕があるらしいアークプリースト。

頭をがっちり噛まれてるのに痛がってるだけだ。

普通、アイツにかみつかれたら骨ごと粉砕されるはずなんだが……

 

「ちょっと離しなさいよ! 女神をおいしくいただこうだなんて天罰を食らわせ――あああああっイタイ!? ちょ、本当にそれ以上はヤバい気がするんですけど! だからちょっと離し……た、助けてえぇ!」

 

……うん、あのバカプリーストは余裕そうだし当分放置でいいか。

しっかし本当にどうしようか。

鉄壁の肌を持つクルセイダーの防御力に初心者殺しは攻めあぐねているが、ここままだと食われるのは俺たちの方だ。

本気で戦えれば初心者殺しだろうと一撃熊だろうと倒せるが、今俺の得意な得物は手元にない……

応援を呼びに行くっつって、こいつらを見捨てて一人安全地帯に逃げ帰るしかないか!?

と、そう思ったときだった。

 

「『デコイ』ッ! デカブツ、こっちだ! そのプリーストを離してこっちに来いっ!」

 

その声は俺のよく知る男のもの。

思わずその声がした方に顔を向けると、そこにはちゃんと鎧を身に纏っているクルセイダーが。

そして、その男の後ろにも――

 

「もう、街の英雄を自称してるんだったらしっかりしなさいよね」

「お、お前ら……どうしてここに!?」

「どっかの誰かさんが俺たちのゴブリンを全部討伐しやがったせいだろ? はぁ……助けてやるから、ゴブリンの報酬半分くれよ?」

「キース、初心者殺し相手にしてそんな無駄話してる暇ないだろ! リーン、カズマの言う通りデコイだけじゃ離さなかったぞ! 計画通りにやってくれ!」

「わかったわ。離さないんだったらあたしの魔法を喰らわせるまでよ! 『ブレイド・オブ・ウィンド』――ッ!!」

 

初心者殺しの後ろ足に風の刃が刺さり、致命傷にはほど遠くも多少動きを鈍らせる程度の傷がからじわりと血が滲む。

風刃による痛みと体勢の変化で、アクアのことを噛んでいた顎が開く。

それと同時にアクアの事を引く腕が1本現れた。

 

「『クリエイト・アース』からの『ウインドブレス』!」

「ぐがぁっ!?」

「そして『クリエイト・ウォーター』アンド『フリーズ』!! おい、逃げるぞアクア!」

「か、かじゅまさああぁあんっ! うわあぁああんっ! ありがど、助けに来てくれてありがどねえ!」

「ほら、さっさと行くぞ! まったく、どうしてお前らは目を離すと人様に迷惑かけるんだヨダレ臭っ!?」

 

姿が見えないと思ったらあの最弱職、いつの間にあそこにいたんだ……

目潰しをした後、地面を凍らせて初心者殺しの動きを封じ込み、ヨダレまみれのプリーストを引っ張って救出した。

そして――

 

「カズマこっちだ! 俺の後ろに!」

「サンキューテイラー! そしたらあとは頼んだぞ、2人とも!」

「おうよ! 『狙撃』『狙撃』……ッ! よっしゃ、奴さんの目に刺さったぜ! これでもう俺たちに攻撃できるだけの余裕はないだろ! そしたら決めてくれ、リーン!」

「任せられたわ! 魔力上乗せはちょっとしたサービスよ、喰らいなさいっ『ライトニング』ッ!!」

 

あの紅魔族の上級魔法やらには遙かに劣るが、致命傷を負わせるには十分、いつもより強い威力の魔法がリーンから放たれる。

その魔法は一直線に分厚い毛皮を貫き、その心臓に突き刺さった。

一瞬ビクリと体を震わせた初心者殺しだったが、数秒もたたないうちにその体躯は地面へと倒れた。

そして、最後にテイラーが脳天に一撃を決めて、明らかに死んだことを確認し――

 

「ふぅ、これで一件落着、か……。くっ……くっ、くっくっくっ……! 何で生きてるんだよ俺たち!」

「あはっ……あはははっ……。あはははははっ! ほんとあり得ないよー! この人あり得ないよ色々と! 初心者殺しを手玉にとっちゃうだなんて、一体どんな知力してんのさ!」

「いやそれは千里眼スキルでキースが状況を教えてくれたおかげで――」

「いやいやいや! 俺はただ『カズマのところのプリーストが初心者殺しに頭かじられてる』って言っただけだわ! あそこからすぐに作戦立てるとかマジ何なんだよ! 潜伏スキルと初級魔法スキルだけで初心者殺しを封じ込むのも意味わからないし、誰一人怪我してないの普通じゃない!」

 

あ、あれ?

なんだか俺のパーティーメンバーが最弱職のことをべた褒めしてるんだが?

ていうか、初心者殺しを倒せるようなメンバーじゃないのに、こんなあっさりと……

 

いや、よくよく考えればそうか。

俺と一緒にクエストを受けたこの4人はゴブリン相手にしただけで満身創痍だった。

そして、この最弱職はこのいかれたメンバーのリーダーをしている……

 

最弱職――いや、カズマは今までパーティーメンバーに恵まれなかったせいで才能を燻らせていただけだったんだ。

頭のおかしい奴らの面倒を見てたその頭を生かせば、今のちゃんとしたメンバーならそりゃこうもなるか。

今まで初心者用のクエストを請けたりしてたのは、こいつらを制御するために必要なことだったんだと今更ながらしみじみと体感したぜ。

 

「カズマ……お前、苦労してたんだな……」

「……! わかってくれるかダスト!」

「ああ。俺はもう二度とコイツらの面倒を見るだなんてごめんだ。ハーレム? 美少女? そんなのどうだっていい……大事なことに気づかされたぜ。ありがとな」

「ダスト…………じゃ、その調子で頑張ってくれ」

「えっ?」

「おいみんな! 初心者殺しを討伐できた祝いと新しいパーティーの結成祝いを兼ねてギルドで乾杯しようぜ!」

「「「おおおおっ!!」」」

 

カズマの言葉にテイラーとキース、リーンの三人が喜びの声を上げた。

まさか冗談だよな?

そう思って三人の顔を見るが、その顔は冗談ではなく、心からカズマの加入を喜んでいるようで……

 

「てわけで、俺はこのパーティーから抜けるつもりないから。こっちは楽しくやっていくから、そっちはそっちで頑張ってくれ。んじゃ」

「ちょ、待ってくれ! 俺たち苦労を分かち合った仲間だろ! お願いだ! 土下座でも何でもするから俺を元のパーティーに戻してくれぇっ!」




ダスト「やっぱ主役はカズマだよな、うん!」
カズマ「遠慮すんなよ。主役の座は譲ってやるからさ、次回からも続けて頼ん――」
ダスト「じ、次回! 主人公カズマ復活! お楽しみに!」
カズマ「あっ、おい! 無理矢理終わらせようとするんじゃ――」

コロナタイトをテレポートしたら……

  • やっぱりアルダープの屋敷へ!!
  • 邪王真眼の影響で別の場所へ!?
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