カズマは疾走した。
必ず、かの邪智暴虐の中二病から逃げ切らねばばならぬと決意した。
ぶるんと両腕を大きく振って矢の如く走り出た。
俺は安眠する……その部屋を死守する為に走るのだ。
めぐみんの奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。
走らなければならぬ、若い時から名誉を守れ!
カズマはつらかった。幾度か立ち止まりそうになった。
だが、付きまとう足音が鼓動の煩わしさを際立たせ、焦燥を駆り立てる。
もはや誰の足音かさえ判断できぬが、俺は一心不乱に路を駆ける。
家を出て、記憶を頼りに風を切り、憑いて離れぬ暗闇の根源を振り払わんと、入り組んだ路地に惑わされながらも約束の地へと駆け続ける。
初めて訪れる地、いよいよカズマは自分を見失うも、もう後には返せない。
日の当たらぬ路地を走り抜け、肩は浮き沈みする。
路行く人を押しのけ跳ねとばし、カズマは黒い風のように走り――
「ここ、か……!」
ついに魔道具店の看板を見つけ出す。
カズマは後ろを確認するも、そこには影一つ見えず、激しく動く躯はそこでようやく落ち着きを取り戻す。
呼吸の荒々しさがなくなると、カズマは襟を正し、扉に手をかけようとし――
「遅かったではないですかカズ――」
親切にもこの魔道具店の店員が開けてくれた扉を、その店員の顔を見て、俺は過ちを悟りそっと閉じた。
戸から覗いた顔はウィズの顔ではなかったのだ。
それはつまり俺が勘違いをして別の店の扉を叩いてしまったということを意味し――
「ちょっと、なぜに扉を閉めるのですか!」
「……店の住所を間違えたみたいです、お騒がせしました」
「いや、ここはあなたの目的地であるウィズ魔道具店ですから! ささ、積もる話もありますし中に入ってください!」
「俺の知ってるウィズ魔道具店は頭のおかしな子をバイトとして採用してないんで、ほんと、お騒がせしました!」
「私はバイトじゃ……って、今、私のことを頭のおかしいバイトといいましたか!? 積もる話が一個増えましたね! さぁ、こっちに来るがいい!」
「やめっ、やめろーっ! 暴力反対! ロリっ子に悪戯されああああああぁぁぁ…………!」
扉が閉じられた。
「見ましたか! これが友情の力! 友情の勝利です!」
「い、いや、カズマさんをあんな目に遭わせるのは私の本意じゃなかったんだけど……」
「しかしゆんゆんがこの場所を案内してくれたではないですか。カズマとの絆より私との絆が上回った……ただそれだけのこと」
「違うから! 魔道具店に連れて行かないと幽霊が出たときに爆裂魔法我慢できなくなるかもしれないって脅したのはどこの誰だったかしら!?」
俯いたまま涙を流す俺。
対してほくほく顔のめぐみん。
勝負の結果は見て明らかである。
いや、勝負っていうか、俺が折れてあげただけなんだけどな?
だってめぐみんは俺より年下だし、世の中にはレディーファーストという言葉があるじゃない。
だから俺はただ勝ちを譲ってやっただけであって、惨敗したとか、そういうことじゃあない。
めぐみんが店に俺を引きずり込んで、俺が負けを認めなければそのままチョークスリーパーで俺のことを絞め落とすと脅されて屈した訳でも、ましてやロリで魔法使いのくせに俺より力が強くて為す術なかった訳でもない。
暴虐に染まるほどの意思の力強さを感じ取り、俺は大人なので、意地になっているロリに大人な対応をしてやっただけなのだ。
正直あの部屋を手放すことになったのは残念だが、そうなれば第二候補に移ればいいだけのこと。
むしろこのままめぐみんが家にいたら爆裂して更地と借金ができかねなかった。
そう考えれば悔しくなんてないさ、本当に。
「というかなんでゆんゆんはこの店の位置把握してるんだよ」
「えっと、その、私、このお店の常連でして……だ、大丈夫ですかカズマさん?」
「俺の努力は何だったのだと絶望に打ち拉がれてるだけだ。お構いなく」
「そ、その、カズマさん? もしよかったらお茶を淹れてみたんですが……」
「ありがとうウィズ、いただくよ」
ティーカップを持ち、そのまま傾けると温かさと華やかさが体内に入ってくる。
ウィズの労りの心が身に染みる……
思わずほろりと目から雫こぼれ落ちそうになるが俺は漢サトウカズマ、涙は見せない。
少ししょっぱい紅茶とともに悲しみを流し込んでいると。
「そ、そういえば今日はどのようなご用事で? めぐみんさんから逃げるための避難所として私のお店を選んだとか……」
「ああ、いや、実はもともとウィズのところに行く予定だったんだ。スキルポイントも貯まってきたし新しいスキルを覚えたいと思ってな。そんなときたまたまこいつらが執拗に追いかけてきて……」
「ちょ、カズマさんっ、コイツらってなんですか!? 私はめぐみんに脅されて……って、やっぱり自分の部屋を奪われて悲しくなっちゃったんですか?」
「なっちゃってない」
「やっぱり悲しいんでしょ! わ、私がめぐみんのことを穏便に説得して部屋を取り戻すんでカズマさん泣かないで!」
「泣いてない! ほんと、なんとも思ってないからお構いなく!」
ゆんゆんに気を遣われると、まるで自分がいじめっ子に物を奪われてしまった哀れな子に見えるじゃないか。
俺は大人なんだ。
あくまでめぐみんに部屋を譲ってやったって言うスタンスなんだ。
確かにちょっと残念で涙を流してたかもしれないが、そう慰められると本当に俺が哀れな感じになるからやめてほしい。
「そ、その、私がやりすぎてしまったのでしょうか……? ご、ごめんなさい、そこまで酷く落ち込むとは思わず……やっぱりあの部屋はカズマの部屋で大丈夫ですので」
「めぐみんに言われたら本当に俺が哀れになるだろ! いいから! あの部屋はめぐみんの部屋にしてもらっていいから!」
このすば!
俺がウィズと優美にお茶をたしなんでいる中、紅魔族の娘たちがやいのやいのと賑やかに聞こえてくる。
その声の方を見ると、二人は商品を手に取っては戻し、性能の善し悪しを話しているようだった。
「ねえねえめぐみん、これってめぐみんのお父さんのじゃない?」
「何を言っているのですか? 我が父の作品はすべて特級呪物、そんな人の手の届く場所においそれと置いてあるわけないでしょうに」
「いや、私も信じられないんだけど、これはどう見ても――」
「『目に入れても痛くないハードコンタクト』……? ふん、これは贋作ですね。呪縛も付けずにひょいざぶろー作を名乗ろうとは片腹痛いです」
「いや、でも一時期は呪いなしの作ってたじゃない。もしかしてまた再販……」
「ありえませんね。あれは試作品をお母さんが売りさばいていただけで本人は廃棄する予定でしたので。なんにせよ、重大な欠陥を持つ我が父の
「……めぐみんって意外と自分のお父さんに辛辣ね」
……どうやら今は廃れてしまったようだが、めぐみんの親父さんはコンタクトレンズ職人だったらしい。
が、呪いを付与しているようで……うん、紅魔族の感性はわからないな。
魔道具店の棚に収められている怪しげな物品の数々を手に取っては見定める紅魔族を尻目に、俺はカップをテーブルに戻す。
「話を戻すと、もしよかったらリッチーのスキルを教えてくれないかなって思ってさ。うちのパーティーって常時使える攻撃役がゆんゆんだけだし、そんなゆんゆんも十発も魔法を撃たないうちにガス欠するしで……」
「なるほど、それでカズマさんがバランスをとるためのスキルをと私のところに来たわけですね」
「そうなんだよ。それで、無理にとは言わないが、何か良さげなスキルあったら教えてほしいんだが……」
「もちろんいいですよ。冒険者カードを見せますので、好きなだけ覚えていってください」
「好きなだけって……そんな大盤振る舞いしてもらっていいのか?」
「ええ。以前、私のことを見逃してもらった恩もありますしね」
そう言って差し出された冒険者カードを受け取る。
冒険者カードは異世界特有の謎技術によって偽造防止されて……というか、偽造しようとしても技術的に不可能なのでかなりの信頼性と個人情報が含まれている。
職業名はアークウィザード、そして名前にウィズの文字が入っていることから、このカードはウィズので間違いないはずなのだが……
「あの、ウィズ?」
「はい、ウィズです」
「……その、カードで見えない部分があるというか、なんか年齢のところなんだが、文字化けして見えないんだが」
「あらあら。もしかしてしばらく見ないうちにカードが壊れちゃったんでしょうか? それともそのカードがリッチーに対応してないとか……あ、ちなみに私は20歳でリッチーになったので永遠の20歳です!」
「いやいや、不老でも年齢は重ねるもんだろ! というかこのカード、その年齢のところだけおかしくなってるから壊れたっていうより人為的に見えるっていうか……なあ、ウィズって今何歳な」
その言葉を発した瞬間、背筋にゾクゾクと悪寒が走る。
思わず開いたままの口でウィズの方を見ると、そこには温厚な彼女ではなく、ノーライフキングとしてのオーラを放つ氷の魔女がいた。
「カズマさん」
「ひゃ、ひゃい」
「世の中には触れては行けない禁忌というものがあるんですよ? 私の言いたいこと、わかりますよね?」
「わ、わかりますぅ……」
「うふふ。わかってくれたならよかったです」
ウィズの雰囲気がまた温厚なものに戻ったが、瞳に光がないアンデッドとしての彼女との落差で頬が引きつる。
さっきまでの凍てつく空気が緩和されて思わず腰から崩れ落ちかけるが、なんとか意地で耐え抜きながら……
もうウィズに年齢の話をするのはやめよう
……そう思った。
そんなことがあったもんで、ウィズの地雷を踏まないように、遠慮がちにカードを読んでみると……
「って、多っ!? ……一体何種類のスキルがあるんだ?」
「えっと、正直いくつ習得したか覚えてませんが……そうですね、大体オリジナルスペルを含めると百以上は……」
「「「ひゃ、百……!?」」」
ウィズの衝撃発言にめぐみんたちも商品棚越しに叫んだ。
えげつないほど膨大な種類の魔法スキルを見て圧倒されるも、これだけたくさんあればきっと便利かつ低コストなスキルが見つかるんじゃないかと顔を緩めた。
便利そうなスキルはないかと見ていくと『転移魔法』なんてものがあった。
持ってるだけで便利だろうなと思ったが、中級や上級魔法のように一つ覚えたら複数のスキルが習得できるタイプではないようだ。
しかも必要なポイントは10。
冒険者である俺が習得すると考えると、きっと10ポイントじゃすまないだろう。
俺が見つける便利そうなスキルはそんなポイントが必要なやつばかりで、名前で探してちゃきりがない。
仕方なしにスキルポイントの低いスキルを探していると、一つ、リッチーの固有スキルで習得ポイントが低そうなものを発見した。
「なあウィズ、このドレインタッチってのはどんな感じのスキルなんだ? 名前的に普通に相手の魔力を吸ったりするヤツか?」
「ええ、概ねそんな感じですよ。接触すれば魔力と体力を吸い取るスキルですね。あと自分の魔力を分け与えることもできますよ」
なるほど、吸い取るだけじゃなく分け与えられるんだったらかなり便利な感じがする。
なんならめぐみんの魔力を吸い取って、代わりにゆんゆんに……
そう考えていたら、何かに感づいためぐみんが背筋をゾワリと震わせる。
「あの、今ろくでもないスキルの使用方法を考えてませんでしたか? 具体的にはスティールのような」
「カンガエテナイヨ」
「なんだか私のアイデンティティーが危ぶまれそうなのでそのスキルを習得するのはやめていただきたいのですが……」
「駄目よ!!」
思わず俺の視線は大きな声を出したゆんゆんの方へ向かう。
めぐみんもウィズもゆんゆんの反応に驚いた様子で、一気に注目されてしまったゆんゆんは少し顔を赤らめながら。
「いや、あの、元々カズマさんにはドレインタッチを習得してもらいたいなって思ってて……」
「それにしてはかなりの剣幕だったが? というか元々って?」
「その、カズマさんがウィズさんのところにスキルを学びにいくって聞いて、できればドレインタッチを習得してくれないかなー……なんて。ど、ドレインタッチは強力なので戦力の底上げになりますから!」
怪しい。
随分と慌てたように言葉を連ねるゆんゆんを見て訝しむも、別に習得してデメリットになることはなさそうだし、めぐみんに何か言われたところで普通に覚えるつもりだ。
正直、ゆんゆんの言い分に間違えはなさそうなのだが、他にも強力なスキルがある中どうしてドレインタッチなのか。
言葉に裏があるようで眉を顰めながら。
「……本当にそれだけか?」
「あ、の……」
「本当は別に理由があるんじゃないか? まあ、嫌なら話さなくてもかまわないが」
「…………その、めぐみんのことなんですけど」
「めぐみんのこと……? あっ、もしかして爆裂魔法が暴発しそうなときに吸収してやれば強制的に爆裂魔法を撃たずに済むってことか!」
「ええ、そういう感じ、です……」
歯切れの悪いゆんゆんに引っかかりを覚えながらも一応の納得を得た俺はその引っかかりを気にもとめずウィズに。
「じゃあとりあえず、このドレインタッチを教えてくれないか?」
「ええ、いいですよ。ただ、私のスキルは相手がいないと使えないものばかりで……その、誰かにスキルを試さないといけないのですが、多少不快感を覚えるといいますか……」
「なるほどなぁ……ダクネスを連れてくるべきだったか」
アクアは絶対ウィズに噛みついて話が進まないだろうし、ダクネスだったらなんだかんだ喜んでドレインされるだろう。
どうしようかと思っているとめぐみんが。
「それでは私でよければ吸っていただけませんか?」
「めぐみんさん、よろしいのですか!?」
「ええ、構いませんとも。むしろ我が溢れ出る無尽蔵の魔力を吸い尽くせるか、そのスキルを試してみますか?」
「いや何が無尽蔵の魔力だよ。お前爆裂魔法を一発撃ったらフラフラで、しばらくは肩貸さないと歩けないだろ」
「しかしものの十数分で回復するでしょう? 天才魔法使いであっても普通魔力というものは一日かけて回復させるものなので、私のようにはいきませんよ」
……確かにめぐみんの魔力回復速度はかなりのもんだと思う。
最弱職の俺と比べるまでもないことわかっているが、もし俺が魔力を使い切ったら立つことすらままならないだろう。
それをめぐみんはギリギリ立ち上がることができるという…………
なんだろう、あんまりめぐみんの凄さがわからなくなってきた。
「まあいいや。ウィズ、めぐみんもこう言ってることだし、思いっきり吸って見せてくれよ」
「ええっ!? い、いいんですか? で、では失礼します……!」
「さあ、思いっきりすってごらんなさああああぁぁあああぁぁあぁああっ……!」
めぐみんは力なく崩れ落ち……るかに思えたが、なんとかその場で踏みとどまる。
「ぎ、ぐっ……! ウィズ! 体力まで吸うのは反則ですよ!」
「す、すみませんめぐみんさん! めぐみんさんの魔力が少しピリピリすることに驚いて思わず……って、あれ? あの、意外に平気なんですね? 普通は魔力の乱れでちょっと吸っただけでも立つことすらままならないものなのですが」
「言ったでしょう、私の魔力は無尽蔵だと。体力の方は結構ごっそりいかれましたが、魔力はすでに回復してきましたよ」
「で、では体力だけでもお返ししますね」
……なんかコイツの場合は毎日爆裂魔法撃ってぶっ倒れてるおかげで、誰も予想しないようなところが鍛えられてるだけだと思う。
そう思っているとウィズは再びめぐみんに手首を掴んで、今度はめぐみんの体にエネルギーを分け与えた。
なるほど、こういう風に使えばめぐみんが爆裂魔法でぶっ倒れた後も介助もしなくてすむって訳か。
毎度体力が戻るまで待つか、おんぶするかしないといけなかったのがラクになる。
こりゃ習得するしかないな!
そう思って俺は冒険者カードに追加されたドレインタッチの項目をなぞるのだった。
サトウカズマ は ドレインタッチ を おぼえた。
ウィズに挨拶をして店を出ると、辺りはすっかり夕日色に染まっていた。
そろそろアクアが屋敷の浄化を終わらせた頃合いじゃなかろうか。
終わってなかったとしても俺の部屋の引っ越し作業をしなきゃならないのでそろそろ帰らないといけない。
「カズマ、帰る前に今日はまだ一日一爆裂が終わってませんので」
「えー、さっさと帰ろうぜー? そろそろ暗くなるしどうしてもいきたいっていうんだったら行くが……」
「どうしてもです! 我が爆裂道は一日にしてならず、それで一日を無駄にできようか! まあ、今日はカズマがドレインタッチを覚えましたし、ウィズに魔力も吸われましたし、渋々ですが我慢してもいいのですよ」
おっ、なんだ珍しい……
爆裂魔法が絡んだらこのメンバーの中の誰よりも馬鹿になるのにまさか我慢するだなんて。
「今日は爆裂魔法を撃たなくても死なないんだな」
「カズマがドレインタッチを覚えましたので」
「……? どういうことだ? 俺がドレインタッチ覚えたのと一体どんな理由…………ッ!? ま、まさか、俺のドレインタッチ使って一日に二回以上爆裂魔法を撃つつもりか!?」
「いえ、そういうつもりではなかったのですが……それでもいい気がしてきましたね」
「ああっ、ちょっとカズマさん! 何余計なこといってるのよ!」
「ええっ、俺のせいか!? だってめぐみんがドレインタッチで得られるメリットなんてそれしかないだろ!?」
「いや、めぐみんの魔力をドレインタッチで吸えば無理して爆裂魔法を撃たなくてもしばらくは持つ…………あっ」
何か言っちゃいけないことを言ったことに気づき、はっとした様子のゆんゆん。
ゆんゆんは怖ず怖ずとめぐみんに目配せした。
それ受けためぐみんはため息をつきながら。
「そんなにビクビクしないでください。私が悪者みたいでしょう?」
「で、でも、めぐみん」
「……そろそろ明かすべきだとは思っていたので気にしないでください。それに、元々皆には明言してきたでしょう?」
なんだ、このシリアスな空気。
いつぞや、ゆんゆんが中級魔法しか使えないことを暴露した時みたいな……
そう思っていると杖を強く握りしめためぐみんが少し深く息を吸い込む。
そして、俺の方を見て真剣なまなざしで。
「私、爆裂魔法を撃たないと死ぬんですよ」
そう言い放った。
なんて……?
そんな言葉さえも声にならず、俺は目を見開くことしかできなかった。
そんな様子の俺を見てめぐみんは少し寂しそうに、けれどニヤリと笑って。
「……なんて。引っかかりましたね」
「えっ!?」
「この世に爆裂魔法を撃たないと死ぬだなんて奇病、あるわけないじゃないですか」
「こ、この! 変なこというんじゃねえよ! やっぱ俺と部屋交換してやんないからな!」
「紅魔族のノリでついやってしまいました。しかしゆんゆんもなかなか紅魔族として立派になってきたではないですか、今日はお祝いですね」
「ちょっと! 祝ってくれるのは嬉しいんだけどそんな恥ずかしいことで祝わないでよ!」
そう言ってゆんゆんはめぐみんに掴みかかる。
俺はその二人の様子を後ろから静かに見ていた。
――爆裂魔法を撃たないと死ぬ。
嘘だと信じたいが、あの真面目な顔つきは嘘だったのだろうか。
そんな俺をおいて屋敷に走り出すめぐみん。
さっきまでのやりとりは忘れてほしいと言うような話題を変え方に、俺は触れてはいけない何かを感じて、めぐみんの話題に乗っかってしまった。
違和感がない方がおかしいのだが、そのことについてそれ以上何も言うことができなかった。
ただ――
「カズマ、早くしないと置いて帰りますよ」
輝く瞳は夕焼け以上に紅かった。
最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…
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第6章(現在の章)
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第7章
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第8章
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リメイクしてテンポよく進める