「お前ら、クエストに集中しろよ? 特に俺以外のやつら」
「カズマさんってば何言ってるのかしら? 私たちはエネルギーチャージしたし、しっかり休憩を取って準備万端よ! 少なくともカズマさん以上に集中できるはずなんですけどー」
「目をこすってるヤツに言われたくないんだが」
シートの上で心地よい風に吹かれながら、青空の下スヤスヤと眠りこけていた青いやつに言ってるんだが、俺の言葉を意に介さずあくびをする。
時刻は午後三時過ぎ。
ゆんゆんがアクアとめぐみんが寝ていたシートを片付けて、ようやくこれからクエストだ。
本当ならもうカエルを全部倒して依頼達成の報告をギルドにしに行くことを予定だったんだけどなぁ……
そんなことを思いつつクエストを達成するため、ジャイアントトードのいる場所へ足を進め、ようやく目的地へ着いた。
「街から1時間もかからないはずなのにずいぶん遠回りした気がする」
「何言ってるのカズマ、私たち、街から真っ直ぐ歩いたはずよ?」
「そういう距離的なこと言ってるんじゃないんだわ。ここに来るまで3時間近くかかったって言ってるんだ、どこかの誰かさんが道草を食ったせいでな」
「私が食べたのはゆんゆんのサンドイッチですのでそのどこかの誰かさんには当てはまらなそうですね」
「そうね、めぐみんもそうだけど私も道草は食べてないもの。私たちじゃなさそうね!」
コ、コイツら……はぁぁ……体を使った訳じゃないのに体力を消耗した気がする。
それもこれも自由すぎる行動をするコイツラのせいだ。
とりあえず何かあったらこいつら二人はジャイアントトードから逃げるための囮にしてやろう。
そんなことを思いながら目的のカエルを探していると……
「おっ、早速いたな!」
ズシンズシンと飛び跳ねる緑色のカエル。
まだ距離があるせいか大きさが定かではないが、俺たちを丸呑みできる程度にはデカい。
俺に続きカエルに気づいたアクアは前回の記憶を思い出したのかぶるりと身震いする。
安心しろアクア、一先ず今回の目的は魔女っ子二人の実力を見ることだ、まだ囮にはしないでおいてやる。
「めぐみん、ゆんゆん。とりあえずどっちか先にあのジャイアントトードに攻撃してみてくれないか?」
「先陣は任されよ! 我が爆裂魔法は最強魔法、威力も射程も問題なく……しかし、最強ゆえに詠唱に時間がかかります。それまでカエルの足止めをお願いしたいのですが」
「なるほど、それじゃあ……ゆんゆん、魔法であの蛙を足止めすることはできるか?」
「あ、足止めですか? わ、私の魔法では難しいですけど……ちょっと待ってくださいね」
そう言ってゆんゆんはマジックバッグに手を突っ込み、某猫型ロボットのように中をいじり始め……
何かを取り、出……し……なっななななっなんだあの腐ったバナナみたいな色してるポーション!?
まずそうっていうか、体内に入れちゃいけない色してらっしゃるんですが!?
「な、なあゆんゆん? それって催涙スプレーみたいなやつだろ? 飲むんじゃないよな?」
「え、えっと、これは、使用すれば一定時間上級魔法の一つである泥沼魔法を使えるポーションで、この前アクセルの街の魔道具店で見つけまして……」
「使用するって……まさか飲むのか!?」
「だ、大丈夫です、か、カズマさんの期待に応えなきゃ……!」
「いや、無理すんなよ! 別に時間稼ぎ担当なら別にいるし、ゆんゆんは別の魔法の方が得意なんだろ? ならそっちを見せてほしいっていうか……」
「大丈夫です、覚悟は……決めました! 私、いけます!」
「いやいや、覚悟決めな――!?」
い、いったぁあああああぁあっ!?
覚悟を決めたような顔つきで腰に手を当てイッキしたゆんゆんは喉を鳴らしながらすべてを飲み干――
流石に飲み干せなかったようだ、ゆんゆんは口に瓶をつけた状態でフリーズし、しばらくしてゆんゆんの手から空になったポーションの瓶が落ちる。
「ゆ、ゆんゆん? その、だ、大丈夫……なのか? もしかして以外に平気なのか?」
「うっ、おえっ……は、はい、だ、だいじょ、うぷっ、大丈夫です! ちょっと……っ、不味くて、過去の記憶が、駆け巡っ…………ハァ…ハァ……ただけで」
「それ走馬灯じゃん! ゲロ不味すぎて涙目じゃん! 嘔吐きまくってるし絶対大丈夫なやつじゃないじゃん!」
「それじゃいきます! 『ボトムレス・スワンプ』――ッ!! あ、後のことは、頼みました……カズマ、さん……」
「ゆ、ゆんゆん……無茶しやがって……ッッ!!」
倒れた、ゆんゆんが泡を吹きながら倒れた。
一体どれだけ不味かったというのだろうか、ゆんゆんの脳は苦痛から逃れるため意識を強制シャットダウンさせたのだった。
だがその代償の分、強力な足止め魔法が発動したようで、その魔法は辺り一帯を泥の沼に変えた。
その泥のせいでカエルも飛び跳ねることが難しいようで、全くこちらに近づけない。
「なあアクア」
「なぁにカズマさん」
「俺、異世界に来て初めて魔法ってやつを見てものすごく感動してるんだ」
「あら、それはよかったじゃない」
「うん。でもさ、カエルの足止めできたのはよかったんだけどさ……」
俺たちまで沼に嵌まって動けないんだが。
……今現在の俺とアクアの状況はジャイアントトードと全く一緒、地面の底なし沼に足を取られて動こうにも動けない。
いやいやいや、せっかく本物の魔法を目の当たりにして感動してたのにこんなのってないと思うんだ……
まあ、足止めしているから俺からもカエルからも近づけないし、すぐに問題になるわけでもないけどさ。
――こんな考えをしてしまったのがフラグというやつだったのかもしれない。
魔法がかかっている地面からもう一匹、カエルが湧き出したのだ。
めぐみんとカエルの一対一な状況だったら俺たちは戦わずに済むから良かったんだが、カエルが増えるのは問題だ。
こうなってしまえばめぐみんの魔法が一体しか倒せなかった場合アクアが囮になるほかない。
「さすが紅魔族よね、まさかこの辺り全部を泥沼にしちゃうだなんてね。でもまさかもう一体出てくるなんてね、驚いちゃったわ」
「そうだな、どうするよこの状況。俺の唯一の策はアクアを生け贄に差し出しこの祟りを鎮めることくらいしか思いつかないんだが」
「……い、いやぁ、カズマさんってば冗談好きなんだから」
「いや本気だよ? 知ってるだろ、俺はやるときはやる男だって」
「いやぁぁああ! 私、食べてもおいしくないんですけど! きっとカズマさんの方がおいしいわよ! そもそも生け贄って人間から差し出すものなんでしょう!? 私よりカズマの方が生け贄に向いてるわよ、どうせ一回死んでるんだし、もし死んだとしても私が蘇生魔法で生き返らせてあげるから!」
「おまっ、人の命をなんだと思ってんだ自称何たらめ!!」
「自称じゃなくて現在進行形で女神なんですけど!」
こんの、本当に女神ならもっと慈愛の心を以て身代わりしてくれてもいいだろ!
そんなことを思っていると、俺たちの後ろへ風が吹き抜ける。
……いや、これは空気の流れというより、もっと本質的には別の流れ。
その流れに導かれて首を向けると、そこにはビリビリと待機を震えさせているめぐみんの姿。
一目見ただけでわかる魔法の気配。
俺の冷や汗をよそにめぐみんは眼帯を瞳から外し、詠唱を開始した。
黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう。
覚醒の時来たれり。無謬の境界に落ちし理。無業の歪みとなりて現出せよ。
踊れ、踊れ、踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり、並ぶ者なき崩壊なり。
万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ。
「これが人類最大威力の攻撃手段。これこそが究極の攻撃魔法! 『エクスプロージョン』――ッッ!!」
真紅色と黄昏色の瞳は共鳴する。
両目は吹き出す爆発の炎に染まり、轟音が敵を穿つ。
たった1つの魔法は、離れていたジャイアントトード2体を同時に消滅させた。
「だ、大丈夫か……」
「大丈夫じゃないわよぉ、痛いだけじゃなくて顔がジャリジャリなんですけどぉ……」
アクアは顔面から地面にダイブしたようで、鼻の先は汚れており、目からは涙が滲んでいた。
そう、あの魔法の爆風で俺たちは吹き飛ばされたのだ。
そのおかげで底なし沼からは抜け出せたのだが、俺の場合、着地に失敗したせいで尻が痛い……
そんなことを思っていると、アクアとは別の方から声が。
「ううっ……口の中が気持ち悪い……」
「おっ、ゆんゆんも生き返ったか」
「さっきエリス様らしき人に追い返されてなんとか……。そ、そう言えばクエストはどうなったんですか? 私、途中で気絶しちゃって迷惑かけたんじゃ……」
「いや、指示出したとおりにやってくれたおかげで一先ずこんな感じだ。ほら、あっち見てみろよ。流石紅魔族って言えばいいのか? まさかこんなすごい威力の魔法を使えるだなんてな」
爆発が起きたその場所を見ると、泥沼も地面もすべてが抉れ、カエルがいた痕跡すらなく……隕石でも落ちてきたんじゃないかって思う程のクレーターだ。
火力とか範囲とかが凄いせいで扱いずらそうな感じだが、二人がいてくれたらどんな高難易度のクエストでもちょちょいのちょいだろう。
少なくとも今までより冒険は楽になるはずだ。
そんな明るい未来を幻視してニヤついていた……その時だった。
爆裂魔法の轟音で起きたのか、新たにカエルが地面から湧き出してきた。
「おいアクア、めぐみんとゆんゆんが頑張ってくれたんだ、お前も元何とかならカエルの足止めくらいしてみろよ。そうしたら俺がトドメをさせるから」
「元じゃなくて現在進行形で女神なんですけど! カズマの助けなんていらないんだから……見てなさいッ!」
「あっ、一人で突っ走るなよ! 攻撃通じないお前が一人で行っても――」
「震えながら眠るがいい……『ゴットレクイエム』ッ!! ゴットレクイエムとは、女神の愛と悲しみの鎮魂歌、相手は死ぬぅッ!! ヘプッ」
カエルの口からはみ出した足が、ぷらぷらと青空に映えた。
身を挺しての時間稼ぎとは、流石は女神、やることが違う。
「よーし、残りは2匹だな」
「いや、アクアさん食べられちゃいましたけど!? カ、カズマさんはどうしてそんなに冷静なの!?」
「何というか予想できてたっていうか……ま、とりあえず俺はアクアのことを助けにいくわ」
「よ、予想できてたならそうなる前に助けてあげた方がよかったんじゃ……」
「……アクアは幸運値と頭がかわいそうなほど悪い。それこそ自分のことを女神と自称するくらいには。つまり、予想できたとしてもそれを回避できるかどうかは別問題なんだ」
「えぇ……」
「とにかく、ゆんゆんとめぐみんは残りのカエル二体を頼んだ」
「は、はい! 頑張ります! ……あっ、でもめぐみんは……」
「……そう言えばめぐみんはどこだ? さっきから声も聞こえないし、姿も……」
ゆんゆんが何かを思い出したように俺から目をそらせる。
声をかけたのにも関わらず返答がないめぐみんを探しているのかと思って俺も辺りを見渡すと……
二体のカエルが巨体をズシンズシンと鳴らしながらとある一点へと進み出していた。
その二体が目指す先を見ると、そこには、うつ伏せで寝転がっているロリっ子がいた。
「フッ、我が爆裂魔法は最強魔法……それ故消費魔力も絶大。つまり力を使い果たし、もう一歩も動けません」
「えぇ……」
「近くからモンスターが出てくるとか予想外です。ヤバいです。喰われます。助け――」
先ほどまでめぐみんが倒れた場所には誰もいない。
カエルの口からはみ出した足が、ぷらぷらと青空に映えた。
「お前ら、喰われてんじゃねェェ!」
ストーリー進行の早さどうですか?
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もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
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ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
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今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
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もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)