我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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執筆時間が作れず、サキュバスパートがなかなか終わらず撃沈しました。


8-4 灼熱の…赫蟹(サキュバスサービス)

夕日が沈み、澄んだ夜空が現れる。

外に行けば白い息が空気に溶け込むだろう。

かつて馬小屋生活をしていた時代であれば寒さを憎んだが、屋敷を持った今、俺の心はかく言うように豊かだ。

しかし人間は欲の塊、煩悩に支配された状態で風情のみを純粋に楽しめようか。

窓についた滴……これが床に零れる時間すら長く感じてしまう。

 

「ちょっとカズマ、窓にお絵かきしてないで早く掃除しなさいな! お風呂入る前に一仕事してくれるんでしょ!」

「ん……ああ、今やる……」

「……? どうしちゃったのよカズマ、そんなぼけっとた返事しちゃって。ねえ、シャッキリなさいな、ねえってば」

「おう、今やるって」

「……ねえゆんゆん、なんか今日カズマさん様子がおかしいんですけど」

「カズマさんはいつもこんな感じですよ」

「それもそうね。カズマがおかしいのはいつものことよね!」

「おい、今とんでもなく失礼な会話が聞こえてきた気がするんだが! ちょっとこっち来きて話しようか!」

「いや、どうして怒ってるんですか!? わ、私はカズマさんが面倒くさがり屋というか怠惰というか、そう言いたかっただけで……」

 

な、なんのフォローにもなってねぇ……

ゆんゆんは俺のことをどう思ってたのか問い詰めてやる、アクア諸共。

そう思っているとアクアが逃げるようにドアを開けた。

 

「私、このままこの部屋にいたら長い説教をされる予感がするから、そうなる前に一番風呂入ってくるわね! ゆんゆんも行きましょ、背中流してあげるわ!」

「えっ、わ、私もですか! う、嬉し――」

「ちょっ、俺が沸かしたんだぞ! 観念してゆんゆんと一緒に説教されろ!」

「ええっ、私もですか!?」

「ほら、逃げるわよゆんゆん!」

「えっ? ええっ!? えぇ……」

「逃げるな卑怯者共!」

 

ゆんゆんの手を掴んで風呂場に駆け込むアクア。

そんな二人の罪状に逃亡罪をつけ加え、俺はその背中を追いかける。

しかしいくら走れどその距離が詰まることはなく、俺の息は上がっていく。

そしてついには脱衣所のドアの閉じる音が聞こえてしまった。

 

「はぁ……はぁ……くそっ! どうしてお前らそんな早いんだよ、後衛職のくせに! アクアに関してはステータスの伸びしろないくせに!! 今出てくるんだったら短く済ませてやるから出てこい!」

「プークスクス、負け犬の遠吠えね! 屋敷のアンデッドを浄化しまくったおかげで私のレベルは21、そして主要アタッカーのゆんゆんは13よ。まあ、レベル1桁のひよっこ冒険者にしてはよく頑張った方なんじゃないかしら……ぷっ!」

 

こんのっ……コイツは後で絶対泣かす!

説教だけじゃ物足りない。

終わったらアクアの秘蔵高級シュワシュワ全部目の前で飲み干してやる!

 

「風呂から上がったら覚えてろ! 長風呂した分だけ説教長くして、さらにプラスアルファしてやる!」

「ア、アクアさん、今のうちに出て行った方がいいんじゃ……」

「ゆんゆん、これは罠よ罠。早く出て行ったら食事の時間まで説教するに決まってるわ!」

「で、でも制限時間があるんだったらそっちの方が……」

「そう思考を誘導するのがカズマの巧妙な罠よ。いいかしら、私たちが天岩戸作戦を続ければ、いずれダクネスとめぐみんがご飯を用意してくれるの。そうすればカズマは『食べ物を無駄にしちゃいけない』って言って説教を断念する可能性があって……」

 

安心しろ、その場合二人分の食べ物が俺とめぐみんの腹に収まるだけだ。

今日はダクネスの実家から送られてきた祝いの品だ、きっと絶品に違いない。

……よし、ご飯の時間になっても三人で食べようとめぐみんとダクネスに伝えよう。

それで説教はチャラにしてやる。

 

俺のことを馬鹿にはしたが、おいしい食事を奢ってくれる二人。

俺は風呂場に立て籠もる二人に感謝の合掌しながら部屋に戻るのだった。

 

 

 

このすば

 

 

 

「めぐみーん、ダクネース! 夕食の準備おっ始めるぞー」

「了解です。ダクネス、中断していきましょうか」

「あっ、めぐみん、まだ勝負はこれから――」

「エクスプロージョン! 私の勝ちッ!」

「あああああっっ!?」

「ふっふっふ、今宵の宴の生け贄を調理する時をどれほど待ち望んだか! 今迎えに行きますからね我が血肉の糧たるカニよ!」

「ちょ、勝ち逃げしないでもう一戦だけでも……!」

 

廊下に出して置いた箱をキッチンの方に運びながら俺は手の空いてる二人を呼びつける。

俺が食材が入った箱を置くと、チェスを終わらせて軽やかな足取りでやってきためぐみんが早速と箱の蓋に手を伸ばす。

さっきはカニとか言っていたが本当だろうか。

ダクネスがトボトボとこちらにやってくる間にめぐみんによって箱が開けられると――

 

「さあ、出でよ!」

「うおっ、マジでカニじゃないか! しかも生きてる……!?」

「しかもこれは超高級品の霜降り赤ガニではないですか! まさか生きているうちにこんな高級品に相見えるとは! じゅるり……!」

「おお、これは私でもなかなか食べられない上物だ……。父上も奮発したものだ」

「普通のカニなら食べたことあるが……そんなに高級品なのか?」

 

ダクネスとめぐみんの話を聞く限り相当高級品らしいが、異世界の物価やブランドを知らない俺は正直どれだけ価値があるものかのかいまいちぱっとしない。

日本でも結構高級品のイメージはあったが、そんな人生で一度も食べられないほどの高級品なのだろうか。

カニをツンツンしながら尋ねると驚愕の声が聞こえる。

 

「当たり前ですよ! どれくらい凄いかと言えば、カニを食べる代わりに爆裂魔法を撃つのを我慢しろと言われたら気合いで我慢して食べた後に爆裂魔法をぶっ放します。それくらいの高級品です!」

「おおっ、そりゃ凄……あれ? 今お前なんて――」

「カズマはお湯の準備をお願いします。臭み消しの酒と、あと出汁を取っておいてくれると助かります」

「お、おう、わかったけど――」

「ふっふっふ、我が里で培われた甲殻類下処理術を受けるがいい!」

 

そう言いながらめぐみんはカニを捌きだした。

里で培われたというのは本当らしく、実に鮮やかな手さばきだ。

一瞬変な言葉を聞いた気がしたが職人の技に俺の意識は飛んでしまった。

 

「随分と手際がいいな……。もしかして実家はカニ農家だったのか?」

「いえ、父は魔道具職人ですし母も魔道具販売の手伝いで。しかし近所の沢に小型ロブスターが生息していましたので妹のためによく足を運んでいたのです。まさかその技法がここで生かされようとは思ってもみませんでしたよ」

 

カニ農家とか小型ロブスターとか、いろいろ突っ込みたいところはあるがまあいいだろう。

先ほどめぐみんに指示された通り、俺は鍋を持って水を温め始めた。

 

 

 

 

下準備を終え、俺たちはいよいよカニパーティーに興じようとしていた。

しかし案の定というか計画通りというか、アクアとゆんゆんは風呂から上がってこない。

俺はここぞとばかりに着席し、手を合わせて食材とそのすべてに感謝を伝えた。

 

「っし。いただきます!」

「おや、二人のことは待たないのですか?」

「俺のことを馬鹿にして一番風呂の権利をかすめ取った非道人だぞ。待つわけないだろ」

「まあまあ、そう言ってやるなカズマ。食事は皆で囲んで食べた方がおいしいだろう。もうすでに準備はできているが、ここはしばらく待とうではないか」

「いや、アイツらは今日の晩は食べないぞ」

「うん? それは一体どういう……」

「アクアがな、風呂場に引き籠もり続ければ俺が説教を断念する可能性がある~とか言い出してゆんゆんと共に風呂場に立てこもり中なんだよ。つまり、今日のご飯はいらない、あの二人にはゆっくりと風呂を楽しんでもらうから。お前らも二人がお楽しみ中なのに余計なちょっかい入れてやるなよ」

「は、はぁ、なるほど……? それならまあ、先に食べますか?」

 

めぐみんはなんとなく俺の意図を察したのか、それとも察するのを諦めたのか、首をひねりながらも手を合わせ始める。

そうだ、あの長風呂を極めし二人を待ってたらカニの鮮度が落ちる。

こんな高級な頂き物、できたてほやほやのに食べなきゃ損するってもんだ。

そう思っていると、ダクネスが物申したげな目で俺のことを見ていた。

 

「お前はまた何というか……」

「何だよダクネス、言いたいことがあるんだったらはっきり言えよ」

「いや、その……どうせお預けするんだったらあの二人じゃなくて私にしてほしかった訳ではないのだが……羨ま……かわいそうかなぁなんて」

「今羨ましいって言いかけたろ」

「い、言いかけてない」

 

アクアとゆんゆんを脱衣所に隔離したと伝えたら、何故か遠慮がちに体をソワつかせながら俺をチラチラ見てくるダクネス。

まったく、この変態は本当に……

 

「しょーがねえなぁ、お前も風呂行ってこいよ」

「そ、そんな言い方をされるとまるで私が自ら進んでお預けプレイを望んでいるようではないか!」

「いや、プレイとか言ってる時点で望んでるだろ」

「違う、違うぞ、私はただ苦楽をともに分かち合う仲間として私も我慢してやろうかと……。しかし二人がお風呂を楽しんでいる中に乱入するのは気が引けるというか、私の分の夕飯が余るのはもったいないというか……」

「心配すんな、めぐみんがいるから」

 

確かに俺としては自分とアクアの分があれば十分すぎると思う。

しかし、ダクネスとゆんゆんの分はめぐみんに任せれば何も問題はないだろう。

何せこの大食い娘の食欲は我が家の財政を圧迫してくる最大の原因だからな。

そう思っていると、キッチンにて袖をまくり、然もフードファイトに向けてやる気十分といった様子のめぐみんだったが。

 

「あの、私がダクネスの分を食べる前提で話を進めないでもらいたいのですが」

「でもやぶさかじゃ……」

「ないです」

「だろ? ついでにゆんゆんの分も食べてくれよ。俺はアクアの分を担当するから」

「いや、ですからダクネスのは食べないと言っているでしょう! ゆんゆんの分は別として。流石にもらい物を独占するのは少し罪悪感があるのですよ。…………なんですか、二人そろって意外そうな顔してるのですか!?」

 

ダクネスの方を見ると俺と同じような顔をしていた。

それは「あの毎度ゆんゆんの食事を強奪しているめぐみんがそんなこと言うだなんて……」という顔で。

 

「あのですね、私は食欲に支配されている獣ではないのですよ」

「しかしいつもゆんゆんの分のご飯を賭けた勝負をして強奪――」

「強奪じゃないです! あれはそもそもあの勝負はゆんゆんから仕掛けて……」

「めぐみんから勝負を仕掛けるときもあるじゃないか」

「いや、何と言いますか、どうせ勝負を仕掛けてくるんだったら私からいっても変わらないだろうと……学園時代からの手癖みたいなもので」

「お前んとこの学園の風紀乱れまくってんなぁ」

「平常運転です。紅魔族は誰もが闘争本能の塊ですので」

 

もう紅魔族について驚くのはやめた。

でもまさか紅魔族らしからぬゆんゆんも戦いを求めて勝負を仕掛ける戦闘民族だとは……

 

「とにかく、私はダクネスの分は食べませんよ。これでも淑女として食い意地が張っていると思われるのは心外なのですよ」

「……そう言うんだったら普段の行いを顧みてほしいんだが」

「私は過去を振り返らないので。ほら、ダクネスはアクアたちのことを呼びに行ってください。私がゆんゆんの分を食べ尽くす前にですね!」

 

そう言いながらめぐみんはカニの殻を器用に剥き鍋の中にくぐらせ始めた。

そんなめぐみんを見て、たぶん俺とダクネスの心は一つになっていた。




次話こそはサキュバス登場させて、そろそろデストロイヤー編に……

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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