我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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9-2 蹂躙せし…天災(カタストロフ)

機動要塞デストロイヤー。

元々対魔王軍用兵器として魔道技術大国ノイズで造られた超大型のゴーレムである。

国家予算から巨額を投じて作られたこの兵器は蜘蛛のような外見をしており、小さな城ほどの大きさ。

魔法金属がふんだんに使用されており、八本足を駆使して驚異的な速度で巨体を動かす。

人、モンスター、そのすべてを見境なしに蹂躙する……それが機動要塞デストロイヤーだ。

 

もちろん今までにデストロイヤーを止めようとしていたものは幾人もいた。

様々な策略を練り、それを実行してきたが、現在まで例外なく攻略することができなかった。

 

特筆すべきは機動力、巨大な質量。

足で踏まれたら大型の魔物ですら挽肉と化すのは想像に難くない。

近接攻撃をしようものなら踏み潰されて瞬時にミンチになる。

 

しかしそんな説明すらも生ぬるい……

このデストロイヤー、深い穴を生成しても瞬時にジャンプして脱出することができるほどの瞬発力を兼ね備えている。

つまり、しようと思えば瞬間的に街一つを壊滅させることすら容易なのだ。

速さ × 質量 = 破壊力……誰かがそんなことを言っていた気がするが、デストロイヤーはそれを体現している。

 

さらには防御力も並々外れている。

近距離が無理であるため、遠距離攻撃をしようとしても外装が魔法金属であるため上級魔法を当てたとしても完全に破壊することは難しく、瞬く間に接近されて挽き潰される。

さらにはデストロイヤーの胴体部分には空からのモンスターの攻撃に備えるために自立型の中型ゴーレムが飛来する物体を小型バリスタなどを用いて撃ち落とし、侵入者を撃退するために配備されている。

そもそも常時強力な魔力結界が張られているせいで魔法攻撃は無効化されるのだ、遠距離攻撃も近距離攻撃も意味をなさない……完全無欠の天災だ。

 

 

 

 

そんな説明をされて、会議は難航していた。

デストロイヤーの進行方向は偵察班のおかげで正確な位置情報が魔道具を介して随時更新されており、正確に把握できているそうなのだが如何せん良い対処法が出ない。

俺たちも意見を出していたのだが……

 

「デストロイヤーにロープを投げつけて潜入するのはどうだろうか。私なら蹴飛ばされてもギリギリ生き残れるかもしれない」

「流石に無茶ですよダクネスさん! 不器用ですし、ロープを投げたところで自分自身に絡まっちゃうんじゃ……あっ、でも中に乗り込めればいいですもんね! そうしたらテレポートで……いや、でも魔力障壁があるし、転移するにしても地点登録には実際にその場所に行かなきゃですし……」

 

ダクネスとゆんゆんが顔をしかめる。

ゆんゆんが出してくれたテレポートで飛び乗る案……仮にテレポートできたとしてもタイミングがシビアすぎる。

間違った瞬間、落下死かミンチか壁に埋まって窒息か。

間違わなくてもいきなり動く壁が体当たりしてくるんだ、交通事故どころの騒ぎじゃないだろうし、実行は困難だ。

 

「足を鈍らせればよじ登って内部に侵入できるだろうし、何とかして行動を阻害できないものか……」

「泥沼魔法を広範囲で展開するのはどうですか? 私、ウィズさんのお店から買ったポーションの中にそれがあったんですが……」

「それだと沈んだら抜け出せないか……いい案だね。でも一瞬で穴から抜け出す脚力があると聞くし、それに、その結界が足の方もカバーしている可能性もある。結界がなんとかできればいいがどうするべきか……」

「…………何シレッといんだよ、ミツルギ」

「いや、僕も何か役に立てないかと思ってね」

「あぁ、そう……」

 

今までアクアのことを盲進して魔剣一本で頑張ってきたミツルギ。

おかげさまでこちとら借金で日々の生活が苦しいってのに……

でもまあ、なんとなく苦手意識はあるが根は悪いやつじゃないんだよなぁ。

俺と同じ日本人だし、何かこの世界の人が思いつかないような妙案を持ってたりしないか……

俺はミツルギに声をかけ、肩をつかんで耳打ちをするように姿勢をかがめた。

 

「なあミツルギ」

「ミツルギだ」

「何かこの世界のヤツらが思いつかないような案とかないか? 何というか、戦術みたいなやつとか」

「戦術か……そうだ、この世界には地雷のようなものはないのかい? 結界があっても魔法じゃなく、高威力の物理攻撃手段があれば足止めできるんじゃ」

「なるほど……進行方向はわかってるし、そこに設置すればいいのか! でも異世界にそんなダイナマイトみたいなものあぁ…………った……」

「あるのかい!」

「いや、でも正直どれだけの威力かもわからないし、そんな量もなかったような……」

 

ウィズのところにあった爆発するポーション。

シリーズ物として棚に置いてあったが、陳列されてた数は少なかった。

売れちゃいないだろうが、そんな小型の城並の大きさの敵の足止めをするには心許ないか。

 

「もういっその事討伐は諦めて、迂回するようにバリケードを作ればいいんじゃないか? 迂回してくれたらきっと……」

「カズマ、以前実行した街もあったそうですが、そのバリケードを迂回したり飛び越えたり……結局デストロイヤーは街を破壊して行ったようですよ」

「やっぱり駄目か…………」

「一つ例外があるとすれば魔王城の結界でしょうか。その結界のおかげで魔王城は一度もデストロイヤーに踏み荒らされたことがないのですよ」

「なるほどな……」

 

そう言いながら俺は肩を落としつつもめぐみんの方を見る。

珍しく眼帯を外しているが、先ほどから気分悪そうにその眼帯があった箇所を抑えていた。

考えすぎて頭が痛くなったのだろうか。

 

「なあ、大丈夫か? もしかして腹が痛いのか? 我慢しないでトイレに……」

「ち、ちがわい! 流石にこんな緊急事態に変な冗談はよしてください! 怒りますよ!」

「いやさ、あんまり根詰めんなよ。正直、俺の案としてはめぐみんの爆裂魔法で一発逆転くらいしかないんだ、今体調崩されると……」

「ええ、わかってます、わかっていますとも。だから私だって必死になってるのですよ」

「……な、なあ、体調悪いんだったら先に避難――」

 

俺の言葉にめぐみんは黙りながらも顔を上げて視線を送る。

その瞳を見ると、体調が優れないせいかいつものような真っ赤な紅ではないものの、夕焼けのような眩しさ。

避難など微塵も考えていない闘志の炎が焼き付いていた。

 

「お前、ゆんゆんに家を捨てるように言っておきながら一番やる気じゃねえか……」

「やる気でも乗り気でもなかったのですがね、まあ、ゆんゆんの言うことにも一理あると思いまして、解放してるのですよ、邪王真眼の真の力をね」

「あー、ハイハイ。それだけ口が回るんだったら大丈夫だな」

「おい、どうしてニヤニヤしながら私の方を見るのか聞こうじゃないか」

「別にぃ? 案外元気そうでよかったなーって」

 

どこかの親友思いの誰かさんがな。

帽子のつばで顔を隠すツンデレの頬は目の色のせいか赤く見えるのだが……言わないでおいてやろう。

そう思いながら俺はめぐみんの言葉をヒントに何か案が立てられないか、再び考えを巡らせ始める。

 

「うーん……デストロイヤーと魔王城……結界には結界か…………なあアクア、強力な結界の一つでも張れないか? そしたら迂回か何かすると思うんだが……」

「結界を張ること自体はできるけど、対物理結界は得意じゃないし維持も大変だし強力なのはちょっと……。壊しちゃう方が簡単なんだけど……」

「うーん……じゃあ結界壊せたりなんて……できないよなぁ」

「どうかしら……やってみないとわからないし確約はできないけど……」

「さ、流石は女神様! まさかデストロイヤーの結界を簡単に破壊できるなんて!!」

 

ミツルギがそんなことをいった瞬間、冒険者とギルド職員、この場にいる全員の視線がミツルギとアクアに集中する。

いや、できるだなんて言ってないのに……ミツルギ、お前ってやつはどうしてそんなに余計なことしかしないんだよ……

皆から期待が混じる視線を受けてアクアはしどろもどろになりながら。

 

「い、いや、できるかもしれないただけで……」

「か、可能性があるだけでもやっていただけませんか! それができれば魔法による攻撃ができま……いえ、しかし機動要塞相手には下手な魔法では効果がありませんし、駆け出し冒険者ばかりのアクセルの街の魔法使いでは火力が……」

「いや、いるだろ、ウチの火力担当が」

 

職員さんの沈むような声にギルド内が一瞬静まりかける。

しかし俺の声を聞いて、めぐみんが立ち上がった。

 

「フッフッフ、せっかく我が邪眼の力を増幅して魔力を練っていたと言うのに、この私の存在を忘れてもらっては困りますよ」

「そ、そうだ! この街には紅魔族の上級魔法使い、ゆんゆんさんがいるじゃないか! あと頭のおかしい子も」

「そうですそうです! この街には紅魔族の爆裂魔法使……い…………あれ?」

「わ、私ですか……!?」

 

おまけ扱いされるなんて思ってもみなかったのか、めぐみんの口から素っ頓狂な声が漏れ出る。

同時にゆんゆんからもめぐみんの名前が来ると思っていたのか驚きの声が。

 

「さ、さすがに私の魔法じゃデストロイヤーの動きを止めるなんて……」

「いや、卑下することはないよ。街の皆から聞いたけれど貴方の魔法はそれはすごい威力だと聞いているよ」

「あの、で、でもミツグリさん、私、ぼ、ボトムレス・スワンプの魔法以外はからっきしと言いますか使えないと言いますか……」

「大丈夫だ、ならその魔法で足止めをしてくれればいい。足止めしている間に僕がなんとかして足を切り落とそう。あと僕の名前はミツルギだ」

「さ、さっすがミツルギさんだぜ! こりゃもしかしたらなんとかなるかもしれないぞ!」

「あ、あの、私、魔力溜めてて……その、頑張ろうと思ってたんですが……」

「頭のおかしい子は体調悪いだろ、ここは俺たちに任せな!」

「えぇっ……!?」

 

見栄を切ってマントをバサリとやりたかっただろうめぐみんの腕は空中で迷子になっていた。

ああ、お労しやめぐみん……

日頃の行いのせいで相手にされないとは。

とりあえずアクアが結界を破壊できたらゆんゆんには泥沼を作り出す魔法で足止めしてもらって、その隙にめぐみんには爆裂魔法使ってもらう算段で行けばいいのか。

そう思って今回の作戦を組み立てていると、突然ギルドの入り口の方から声が聞こえた。

 

「すみません、遅くなりました! ウィズ魔道具店の店主です! 一応現役は退きましたが冒険者でしたのでお手伝いに……あ、あの、ポーションとか如何ですか?」

 

入り口には見知った顔のリッチー……

慌てて店から飛び出してきたのか、黒のローブの上にエプロンを着けているウィズがいた。

その光景を見て、俺はすかさず敵意むき出しのアクアの背後に回り、羽交い締めにして行動を制する一手を打つ。

ウィズがリッチーってことは秘密だからな、アクアが何か変なことをやらかしたらデストロイヤーどころの騒ぎじゃない。

ジタバタと動くアクアを押さえながらそう思っていると、冒険者から途端に熱烈な歓声が上がった。

 

「店主さんだ!」

「貧乏店主さんが来たぞ! これで勝つる!」

「店主さん、いつも夢の中でお世話になってます!」

「ありがとうございます女神様! ウィズさんがくれば百人力……! なんたって爆裂魔法すら使えるんだ!」

「あ、あの、私も爆裂魔法使えるのですが……」

「騒音魔法使いは引っ込んでろー」

「な、なにをーっ! その噂を広げたのは誰か、今すぐに答えてもらおうか! さもないとデストロイヤーに撃つはずだった爆裂魔法がここで解放されることになる!」

 

めぐみんが左目を押さえていた手を外して冒険者につかみかかる。

そんなことより、貧乏店主はやめてやれよ、かわいそうだろ。

まあ、ひっそりとした立地で繁盛してなさそうな魔道具店なのは否定できないのだが……そんなに儲かってないのか?

というかどうしてみんなこんなにウィズのことを知ってるんだ?

そう思っていると近くにいたキースが。

 

「ああ、カズマは知らなかったのか? ウィズさんは名の知れた冒険者だったんだ。凄腕のアークウィザードとして名を馳せていたんだ。そんな有名人が引退後この街で魔道具店を営んでるだなんて驚きだろ?」

「へぇー。だからみんなウィズのこと知ってたのか」

「どうも店主のウィズです! どうぞウィズ魔道具店をよろしくお願いします! 最近はお店が赤字続きでして、そろそろ砂糖水オンリーの生活までのカウントダウンが始まってまして……どうかウィズ魔道具店、ウィズ魔道具店をどうぞよろしくお願いいたします!」

 

こ、今度何か買いに行ってや――

 

「ちょっと待て、ウィズ! 注文……ではないんだが、爆発するポーションシリーズあるか!」

「あ、カズマさん、今手元にあるのは回復や状態異常解除のポーションしかないのですが、店に戻れば大量にありますよ」

「それを設置してデストロイヤーにダメージを与えられたらと思ってるんだが……最悪の動きを鈍らせるだけでもいいんだ。できないか」

「…………流石にダメージを与えるにはポーションの量が足りませんが、爆発の衝撃で一瞬だけ鈍らせるだけであれば……できると思います!」

「よし、なら店のポーションシリーズを全部持ってきてくれないか! デストロイヤーの通過予定地に設置してくる!」

「た、ただいま持ってきます、時間は稼ぐだけ稼いだ方がいいですからね!」

 

そう言ってウィズは店に走り出した。

これはアクアの結界破り次第だが、それが成功すればもしかしなくても……!

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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