「では、アクアさんの魔法で結界を解除。その後、めぐみんさんとウィズさんの爆裂魔法で攻撃。万が一足を破壊し尽くせなかったときはゆんゆんさんの攻撃魔法をメインに冒険者全員で足を破壊しましょう。その後、アーチャーたちが紐付きの矢でデストロイヤーの中に突入する経路を確保。要塞内部にいると思われる研究者が何かをしでかす前に無力化してください!」
そうやって、ギルドのお姉さんが作戦の指示を出している頃だろう。
そう思いながら俺はと言うと……
「なあカズマ」
「はいカズマさんです」
「その、適材適所とは言うが、爆発するポーションを全部私に任せ、挙げ句の果てにカズマまで荷車に乗り込むというのは如何なものかと思うのだが……」
「しょうがないだろ。俺は遅いしこんな大量の荷物運べないし荷車の上の振動なんとかしなきゃ暴発のリスクもあるし、これが一番効率いいんだよ。それにお前、こういうの好きだろ」
「き、貴様! 流石に私でも状況が状況だ、そう言うプレイを楽しんでる暇はっ……ン……クッ///」
最後の妙な声のせいで全部台無しだ。
というわけで悦んでいるダクネスを尻目に俺は爆発するポーションを街の外に運んでいた。
アクアが結界を破壊する前にダメージを与えられれば動きが鈍くなるだろうし、もしかしたら機体修復のために結界を張る魔力が減るかもしれない。
まあ、あくまで「そうなったらいいなぁ」って程度のもんだが、やれることはやるべきだ。
そう思いながら荷車の上でポーションが誤爆しないように抱えていると……俺たちの進行方向に人影が二人、手を振っていた。
「カズマ、向こうの方にいるのは……」
「きっとデストロイヤーの進行方向を監視してくれてた冒険者だ。ギルド職員の方が偵察班に俺たちを案内するようにって連絡したって言ってたろ?」
「ああ、確かに言ってはいたが……偵察部隊と聞いていたから片方がローブ姿だとは思わなかった」
「そうか? 盗賊職って結構戦闘力自体はないって聞くし、魔法使いがその護衛とかしてるんだろ?」
「そういうものなのか? 私の知る盗賊は一人でも上位悪魔に立ち向かうし、私と二人でそれを撃退するし……」
「クリスのことか? 盗賊なのにお前っていう荷物を連れておきながらヤバい相手を撃退するとか人外すぎだろ」
「まあ、私の親友だ。かなりの手練れなのは違いな……おい、今私のことをお荷物と言ったか!?」
ダクネスは俺に抗議の言葉を投げ掛けながら手を振る影の方へと走っていく。
近づいていくとその影の片方が銀髪の軽装をしており、自分の知り合いだと気づく。
「クリスではないか! 街で姿を見かけなかったと思ったら偵察に出てたとは……」
「やあ、ダクネス。それからカズマくんも。私のことを随分と言ってくれちゃって」
「ク、クリス、もしかしなくてもあの位置から私たちの言葉が聞こえてたり……」
「盗賊の耳をなめてもらっちゃ困るよ。まあ、聞く限り私のことを高く買ってくれてるみたいだし、人外とか言ってたのは聞かなかったことにしてあげるよ」
クリスはそう笑い飛ばしてみせた。
いや、むしろどこか喜んでいるようにも見える。
そして喜んでいるのはクリスだけではなくもう片方の魔法使い風の冒険者もだ。
めぐみんリスペクトで眼帯をしてる珍妙な装い……そう言えば掲示板であったことがあった気がする。
よく見ると巨乳だが、幼さが抜けない顔で、ゆんゆんやめぐみんと同年代くらいだ。
そんな少女が不敵な笑みを浮かべながら。
「なるほど。尋常ならざる気配を感じていたけどあの上位悪魔を撃退する腕っ節、知る人ぞ知る陰の実力者と言ったところかな。悪くないね、うん、悪くないよ!」
「えっと……」
「ああ、君は前にあったことが……名前はサトウカズマさんだっけ? それからクルセイダーのダクネスさん」
どうして俺の名前を知ってるんだ!
……なんて台詞は言わない。
俺はこれでも魔王軍の幹部を討伐した実績があるパーティーのリーダー。
アクセルの街は名が通ってる期待の新人冒険者なのだ。
というかこの子はきっとめぐみんのファンだろうし、俺たちのことを知らない方がおかしいか。
「ふっ、俺の名前も大分アクセルに轟いてるみたいだな、ダクネス」
「そ、そうみたいだな。うん、私としても何というか、名声のために冒険者をしているわけではないのだが……なんだかこそばゆいな」
「いろいろな意味で有名人だからね。噂は知ってるけどクリスさんから聞かせてもらったよ、いろいろとね」
「うんうん、そうかそうか! …………ちなみにいろいろって?」
いや、別に興味があるわけじゃないんだけどな?
でも実際に俺たちの噂が間違ってるものだったら訂正しなくちゃだし、大体あってたとしても誇張して話してやらないといけないだろう。
ちやほやされたいわけじゃないが、若き冒険者の卵には夢のある話をしないとな!
「えっと、クリスさんがパンツ脱がせ魔の師匠っていう不名誉な名前がついて困っちゃってるって話とか……」
「クリス、新人の子に変なこと吹き込むんじゃない! 先輩冒険者としての自覚を持てよ!」
「あ、あたしなにか悪いことした!?」
「いや、ベテラン冒険者からパンツの相談って! 初心者に何変なこと相談してんだ!」
「そ、その子は後輩かもしれないけど全然新人じゃないから! テレポートの魔法とかサーチの魔法が使えるからって調査に協力してくれた優秀な子なんだよ!」
確か中級魔法とは別にスキルポイントが必要な転移魔法だったはずだ。
加えてサーチも攻撃魔法じゃない補助魔法。
普通魔法使いは中級魔法を最初に覚えるはずだし……
「なるほどな、素手で悪魔を追っ払ったっていうクリスが優秀って言うだけはある」
「ちょっとカズマくん!? いつ私が悪魔を素手でボコボコにしたって言ったのさ! そんなことしてないからね、ナイフでグサグサしただけだから! まあ、数発しかできずに仕留められなかったけど……」
「いや、でもあの時のクリスは無表情で、何というか、ゴミ虫を見ているような目をしていて……その、私的にはよかっ――」
「ちょっとダクネスは黙ってよっか!! 親友のそんな話は聞きたくない!」
親友の性癖に付き合わされて、何というかご愁傷様だな。
ダクネスにそこまで言わせるってことは悪魔もその圧に屈して逃げたんじゃ……
って、そんなどうでもいいこと考えてる暇はないだろ!
「とにかく! あの噂はダストに移ったんだから黙っておけばバレずにすんだだろ! あれはお前の自業自得だし、ダストは被害者だが、俺はちょっとしか悪くないだろ! なのに何で仲良く死なば諸共精神で暴露してんだよ!?」
「いや、まあ、それはそうなんだけど……何というかこの子の口に乗せられちゃってさ」
頬をかきながら困ったように笑みを浮かべるクリス。
せっかく全部ダストに噂を押しつけたのに、このままじゃ俺がパンツ強奪犯になっちまうじゃないか!
そうなる前になんとかしないと……と、俺は焦ったように魔法使い風の少女を見る。
「な、なあちょっと、ええっと……そういえばアンタ、名前は……」
「我が名は……いや、今はまだ名乗るときじゃないからね。名前は次に会えたら教えるよ」
「いや、でも……」
「安心してよ、カズマさんの懸念は理解してるつもり。さっきの話を黙っておいてほしいんでしょ?」
「だ、黙っててくれる、のか……?」
「まあね、お客様の個人情報は丁重に扱うように心がけてるし、こう見えても私、口は堅い方だよ」
彼女はそう言うと人差し指を立てて自分の口に当てた。
正直、この言葉を信用できるほどの間柄じゃない……名前も知らないくらいだし。
だが今喋った感じ悪いやつじゃなさそうではあるのだが、俺ができることと言えばその言葉が本当だと願うことくらいか。
「お願いだから喋らないでくれよ? さもないと俺が社会的に抹殺されるはめになる」
「脅しかと思ったら全然違った!? ま、まあそうだね、あるえの小説の材料になればいいなって程度だったし、しょうがないからそっちの方も黙っておいてあげるよ」
「……もしかしてあたし、口を滑らしちゃいけない人に秘密しゃべっちゃった?」
「クリス! お前ってやつは! お前ってやつは!」
「本当にごめんってカズマくん! 謝るからその指の動きはやめてぇ!」
「まあまあ、カズマもクリスも、あの時の件は黙ってくれると言ってくれたことだし、今は……」
ダクネスがそう言って人差し指で示す先。
徐々に近づいてくる土煙。
「とりあえずギルドのお姉さんから話は聞いてるから。ポーション埋める場所に案内するからついてきて!」
「埋めたら私のテレポートでアクセルの街に転移でいいよね? 急いでやっちゃおう!」
しばらくして、俺たちはアクセルの街に転移するために魔法陣の中に飛び込んだ。
初めての転移魔法はエレベーターの中にいるときに感じるフワリというような感覚だった。
一瞬にして目の前の景色が一変すると、そこは街の近く。
防壁の外で突貫作戦でバリケードを作っている冒険者たちが目に入ってきた。
それと土木工事のバイトをしていたときの親方の姿も。
もちろんこの程度のバリケード、無駄だとはわかっているのだが誰もがじっとしてられないのだ。
そんな状況で、俺たちはギルドのお姉さんに報告しに走ろうとしたのだが……
「ああ、報告? さっきこの魔道具でやっておいたよ」
「手際良っ!?」
「それから私はちょっと戦力になれないからここで住人の避難の手伝いしておくよ。三人はこれ、防壁の上で指示してる職員の人に返しておいて! 防壁の近くにいる人に聞けばわかると思うから……それじゃ!」
「あ、ちょ、待てよ!」
魔法使いの彼女はクリスの手にぽんと通信用の魔道具を置くと、俺が止める間もなく去って行ってしまった。
……めぐみんとゆんゆんに似た雰囲気を感じたからだろうか、嫌でもまたどこかで関わるような気がしてならない。
「はぁ……」
「どうしたか?」
「いや、厄介な知り合いがまたできたなーって……」
「私たちがいるのだ、今更トラブルメーカーの一人や二人、誤差のようなものだろう」
「いや、お前、それ、自覚あって言ってる?」
「ああ」
「……なら少しくらい直してもいいと思うんだが?」
「それは無理な話だな」
「ひん剥いてやろうか! 俺のスティールで!」
その言葉を聞いて思わず条件反射で手を突き出してダクネスに向けるが、そのダクネスの方を見るとどうにも表情がふざけているようではない。
何か真剣な眼差しで……
「どうしたんだよ、そんな顔してもスティール免除してやんないぞ?」
「カズマ、そんなに私が欲望に忠実な女だと思うか」
「思うよ、当たり前じゃん」
俺の言葉にクリスも深く同意するように頷く。
その様子を見てダクネスは頬を赤らめながらも咳払いをした。
「私は……この街が大好きだ。生まれ育った場所であり、大事な……いや、これはいずれ時が来たら話そう」
「なんだよ、さっきの中二病魔法使いの言葉に感化されたのか?」
「ダクネス、こういうのは思春期真っ盛りのあのくらいの年代がやるからかわいいんであって、私たちくらいの年齢だと流石に……」
「ち、ちがー! 2人はどうしてそんなに私に対して真っ直ぐな目でそういうことを言うのだ! 私は騎士として皆を守護する盾になろうと……」
「だって性癖が性癖だしぃ?」
「毎度性癖に付き合わされてるしねぇ?」
「くっ、私が悪いのかもしれないがこの件が終わったら覚悟しておけ! 私に対する認識を改めるまでええっと、その、あれだ、あれしてやる!!」
怒りなれてないのだろう、ダクネスは顔を真っ赤にしながら剣を抜き放った。
が、その剣は俺たちに向かってくることなく地面に突き刺さる。
「この至近距離で空振った……!?」
「まさかここまで不器用だなんて……」
「本当に貴様らというやつは! これは私の意思表示だ! 私はここを動かない、騎士として、そして貴族としての己を貫くための我が儘だ! わかったらさっさと二人はギルドの職員の方に行け!」
「あの、ダクネスさん? 今さらっと自分が貴族だって暴露したような気が……?」
「言ってない!」
「ダクネスが貴族なのは間違いないよカズマくん」
「ああ、やっぱり? どこかの世間知らずのお嬢様だっては思ってたんだけどな?」
「……驚かないのか」
ダクネスがきょとんとした様子で俺の方を見るが、今更そんなこと言われてもなぁ。
変態はダクネスだし、何だかんだ言ってこの町が大好きで仲間思いなのも知っている。
貴族だったとしてもそこんとこは変わらないだろ。
「でも、さっき紅魔族みたいにかっこつけて『いずれ時が来たら話そう』とか言ってたのにもう時が来ちゃったのかと……」
「ああっ! もう五月蠅いぞ! 早く行ってくれ!」
ダクネスがそう言ってる間にも土煙は近づいていた。
補足(原作設定からの考察と本小説における設定)
ここでは原作設定に基づいてスキル取得に必要なスキルポイントを考えます。
まずカズマが取得している「初級魔法スキル」について、必要スキルポイントは1とのことですが、これは属性ごとに1ポイントではなく四属性全部まとめて1ポイントです。
また、カズマさんはレベル1のとき0ポイントで、スキルアップポーションを買うお金もないはずです。
カズマさんがレベル6の時に習得していたスキルは敵感知、潜伏、窃盗、片手剣、初級魔法で、各1ポイント消費で習得していたので、カズマに限らずレベルアップで得られるスキルポイントはレベル1つにつき1ポイントとしてもいいのかなと。(原作書籍第1巻の87、104-106ページより)
しかし、どうしてカズマが氷結属性のフリーズも同時に習得しているのかはわかりませんでした。
どこかで内緒でレベルアップしていることも考えましたが、多分キャベツからベルディア討伐までの期間ではレベルアップしてないと仮定して、他属性に関しても習得できるとしました。
また、中級魔法や上級魔法についても同様の解釈で進めますが、この二つは攻撃魔法であると記述があったので攻撃力のない魔法については除外する形とします。(公式メモリアルファンブック79ページ)
そのため、四属性系魔法に含まれないライトオブセイバー(光)やライトニングストライク(雷)などのような攻撃魔法は上級魔法を覚えた時点で習得、ライトオブリフレクションやテレポート、エネミー・サーチなどに関しても攻撃魔法ではないためそれぞれ習得という設定です。
最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…
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第7章
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