我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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9-3 最強の…最終兵器(リーサルウェポン)

機動要塞デストロイヤー。

 

それはどこかのチート持ち転生者が適当につけた名前らしい。

適当に名付けるなと言いたいところだが、その姿を見たものなら誰もが納得してしまう。

 

地面から伝わる振動。

それは動く城だった。

ハ○ルの動く城なんてファンタジー的なものではなく、近代的で、メタリックで、そしてなによりデカすぎた。

東○ドーム何個分だって感じだ。

普通敵に使う単位じゃないだろうが、それを相手取るだなんて絶望的に感じるほどには巨大であった。

実物を見た冒険者たちの指揮は下がる一方だと思われたが……

 

『ゴーレム部隊! 今だ、魔法を使え!』

 

ギルドから司令を任された俺はそんな不安を隠し、味方を鼓舞するように音声拡大の魔道具を使用して指示を飛ばす。

それとほぼ同時くらいにデストロイヤーの近くで土が蠢き巨大なゴーレムが生成された。

魔法使いのクリエイト・アースゴーレムの魔法である。

それはデストロイヤーには及ばないものの、互いに激突する。

その瞬間、互いに力が拮抗し合うかに思えたがそれも長くは続かず、デストロイヤーの力に押されてしまった。

 

しかしこれでいい。

ゴーレムの役目はデストロイヤーのスピードを弱めること。

そのためにゴーレムの持続時間を犠牲に高いステータスを持つ巨大ゴーレムを生成してもらったのだから。

そして、もう一つ、重大な役割が――

土に忍ばせた爆発するポーションをデストロイヤーに確実に絶対当てることだ。

 

さっきダクネスと埋めにいったポーションシリーズ。

デストロイヤーが接近した際に土の違和感を感じて避けて通る可能性を考えると機動要塞の進路予想経路に置くことに加えて、もう少し確実な手段をと思ったのだ。

その結果……激しい閃光と轟音がデストロイヤーの足関節を一つ破壊した。

 

「たーまやー! かーぎやー!」

「かなりの威力がありましたね! 売れ残っていましたし、使用期限も間近でしたので廃棄して新しいのを買おうと思ってたのですが、こうして利用されてよかったです! それにしても私の想像してた威力を上回っていましたが……」

「ゴーレムの表面からポーションを露出させたことで威力が下がらないようにしたんだ。あと、同時に爆発するようにゴーレム自壊のタイミングも合わせてもらった」

「なるほど……それならこの威力も納得です! ですが……」

 

見事に爆発してくれたポーションはデストロイヤーの関節部分を集中的に狙うことで一部を破壊することに成功したが、デストロイヤーの魔力結界は依然として無傷な状態を保っており、他の足が無事な状態では生身で乗り込むには難しい。

であれば先ほどの作戦が無駄に終わったかと思うかもしれないが、この作戦もまたデストロイヤーの速度を落とすことが目的であり、本命をぶちかますための準備段階に過ぎなかったのだ。

そして今、準備はつつがなく終了した。

 

『アクア! 今だ!』

「任されたわ! 『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!!」

 

俺の合図でアクアは魔法陣を展開する。

めぐみんの爆裂魔法の際に浮かび上がるそれと変わらないくらい巨大な幾何学模様が白く光り出すと、アクアは手を前にかざし……

移動速度が遅くなって狙いがつけやすくなったデストロイヤーに向けて魔法が炸裂した。

 

撃ち出された魔法は一瞬デストロイヤーの手前に展開されたバリアのような膜に阻まれたが、それでもアクアがダメ押しにもう一発、魔法を並列起動させるとその膜はガラスが粉々に砕け散るかのように破壊された。

 

「やったわ! カズマさん、デストロイヤーの結界を壊せたわ!」

『よくやったアクア! それじゃあ次はめぐみん! ウィズ! 頼んだぞ!』

 

俺の隣にいるめぐみんと隣の見張り台の上にいるウィズに呼びかける。

それに対してウィズはこくりと頷き爆裂魔法の準備を始めるが、めぐみんは頷きもせずに俯いているばかり。

俺はマイク型の魔道具をおいて気分が優れなそうなめぐみんをのぞき込んだ。

 

「おい、めぐみん、大丈夫か? 撃てそうか?」

「……」

「無理すんなよ? ただでさえ体調崩してんだ。もしめぐみんが駄目でもゆんゆんやほかの冒険者がフォローしてくれるはずだし難しそうなら……」

「ふっ……ふふはっ……ふーっはっははっ!」

「め、めぐみんが壊れた!?」

 

いきなり高らかに笑い出すめぐみんにギョッとしてしまう。

その表情を見ると、顔色は優れないままでありながら、口元は嬉しそうに歪んでいた。

しかもそれだけではない。

めぐみんの赤い瞳は夕日のように燃え、カラコンをつけている黄色い瞳は金色の太陽だった。

 

「ゆんゆんやほかの冒険者にフォローしてもらう? こんな巨大で堅牢で黒光りしている相手……千載一遇のチャンスを逃すだなんて愚考するわけがありません! それにここまで高めた魔力を放出せずにいられようか……否ッ! 私が力の奔流に飲み込まれる前に敵を討ちましょう!」

「なんだかよくわからんが撃てるんだな! ウィズは準備できたみたいだし、後はお前だけだからな! 任せたぞ!」

「ええ、見ていてくださいカズマ、人類の最高到達点を! さあ、共鳴せよ、我が邪王真眼! 我が深紅の血流に漆黒の混淆を望みたもう! 覚醒の時来たれり、無謬の境界に落ちし理、無業の歪みとなりて現出せよ!!」

 

かつては凄腕のアークウィザードの名をほしいままにした、現在は経営難に苦しむリッチー。

そして、頭のおかしい爆裂娘の名をほしいままにした、ただ一つの魔法に命をかけた紅魔族。

その二つの魔法使いの最大威力の攻撃魔法が、難攻不落の破壊者へと放たれた。

 

 

 

「『エクスプロージョン』――ッッ!!」

 

 

 

耳を劈く轟音、目と肌を焼く閃光、そしてデストロイヤーが地面に激突することで生じた強烈な地響き。

俺は恐る恐る隠れていた防壁から顔を出すと、そこには機動要塞デストロイヤーがバリケードの前、ダクネスの直前で止まっていた。

ウィズが撃った方の足はすべてが破壊され尽くされており、めぐみんの方はと言うと――

 

「ふーはっはっは! 見ましたか! これが我が爆裂魔法の威力! これこそが人類……いや、全生物の最高到達点なのです!」

 

ウィズの爆裂魔法跡のクレーター半径と比較しても大差ない。

しかしその威力は筆舌に尽くしがたかった。

何故ならめぐみんの爆裂魔法は足を破壊し尽くすにとどまらず、デストロイヤーの機体の一部を溶かしていたのだから。

これは、高名なアークウィザードだったウィズがリッチーになってようやく手に入れた魔法の高みを、めぐみんは人の身でありながら易々と超えて見せたということに他ならない。

紅魔族は確かに知力も魔力も高いと言われているが、流石にこれは……

 

「……なぁ、めぐみん。もしかしてデストロイヤーの本体を狙ってたらめぐみんの爆裂魔法だけで戦闘終わってた説な――」

 

めぐみんの方を見ると、いつものように魔力切れで横になっているのかと思っていたのだが違う。

うつ伏せになっているめぐみんの頭のあたりに血溜まりができていたのだ。

俺は思わずゾワリと背筋を凍らせる。

 

「めぐみん! めぐみん!? おい、しっかりしろよ!」

「み、耳元でうるさいですよカズマ……」

「で、でも、血が……! こんなに……!」

「ああ、すみません。ちり紙をお願いします。我慢の限界を超えた撃った爆裂の爽快感と魔力切れでの倦怠感で動けないのでできれば拭いてくれると……」

「いや、もう少し自分の体のことなんだから興味持てよ!?」

「いや、たかが鼻血ごときでそんな大げさな……」

「…………鼻血?」

 

俺がオロオロしながらめぐみんの上体を起こすと、そこには血だらけになっためぐみんの顔面があり、よく見ると確かにめぐみんの言うとおり鼻から血が垂れているようだった。

それを理解して少しだけほっと安堵が漏れ出るが……

いや、でもこの量……ちょっとやそっとのことじゃありえない。

顔面から地面に激突して重傷なんじゃないかと思うと不安に思うが、めぐみんはそんな俺を落ち着くようにとなだめる。

 

「安心してくださいカズマ。これは……そう、爆裂魔法の威力を底上げするために脳を酷使して魔力を制御して……かつても似たような状態に陥ったことがありましたし、あまり心配しなくていいですよ?」

「そ、そうなのか?」

「ええ、そうなのです。ですのでゆんゆんには黙っておいてもらえると助かります。あれはかなり心配性ですので、たかが鼻血ごときで大げさに心配するので。まあ、カズマもかなりの心配性でしたが」

「いや、誰だって心配するだろ。まあめぐみんがそう言うんだったら黙っておくが……」

「助かります」

 

俺が血を拭ってやると、もう鼻血は止まっており、めぐみんは壁にもたれたままそう言った。

めぐみんを見た感じ、あんな量の血を流してたのに顔面蒼白な状態じゃないし、むしろ血色のよい肌に戻ってきている気が……

きっと血まみれのせいで色がよくわかんないだけだろう。

そう思った瞬間だった。

 

 

先ほどまでデストロイヤーが鳴らしていたものとはまた違う毛色の地響きが再び始まる。

しかし振動は明らかにデストロイヤーの方からだった、さっきの爆裂魔法でもう動けないはずなのに。

 

『この機体は機動を停止しました。この機体は機動を停止しました。廃熱および機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は速やかにこの機体から離れてください。この機体は……』

 

機動要塞からそんな音声が繰り返し聞こえてきた。

排熱できない……ということはつまり爆発するお決まりのパターンなんじゃなかろうか。

日本人だから俺はわかるが他の冒険者たちは危険な状態であることは本能的に察知しているのだろうが、何が起ころうとしているのかまでは理解できていない様子だった。

せっかく動きを止めることができたのに一難去ってまた一難どころの話じゃないだろ!

だがしかし、俺たちはやらねばならない……

俺は指示を出すために声を張り上げた。

 

『お前らあぁああっ!! 音声を聞くにデストロイヤーはこの後爆発するかもしれねえ!! だけどもよ! 俺たちはこの街にどれだけお世話になったか!! 中にはレベル30を超えてる奴もいるだろ! どうして俺たちはこの街にとどまることを選んだのか! 思い出せ! 俺たちの恩を返すときだろ!!』

「「「うぉぉおおおおおぉぉおおおっっ!!!!」」」

 

俺の声を聞いて男性冒険者は全員鬼気迫る表情でデストロイヤーの方へ走り出した。

全員……いや、魔剣の人以外は全員、例の店でお世話になったことがある同志なのだ。

まあ俺はまだ一度もまともにサービスを受けたことはないが、ここで諦めればあの店にもう一度いく機会がなくなる……ここで命張らなきゃどこで張るっていうんだ!

 

「めぐみん、俺もデストロイヤーに乗り込む! 一応もう鼻血も止まったし顔色も大丈夫そうに見えるが念のため誰かと一緒に……ウィズを呼ぶから、一緒についてってもらってアクアに見てもらえ!」

「心配せずとも私は大丈夫なのですが……まあ、カズマの指示に従いますよ」

「じゃあ俺はウィズ呼んでだらそのままデストロイヤーの方に行くから!」

 

そう言って俺は同志たちの後ろを追いかけた。

ちなみにその同志たちは、アーチャーが狙撃スキルで飛ばしてデストロイヤーに引っかけた紐付きの矢を使ってどんどん中に侵入していった。

途中ダクネスと遭遇したが、重い鎧のせいでなかなか登れずにいたが、俺はその背中を追い抜いてデストロイヤーに登り出す。

 

他の男性冒険者はダクネスと同様にめちゃくちゃ重い鎧を着てるし、さっきまで気を張ってたせいで体力の消耗が激しいはずなんだが……

何も動いていないダクネスがへばっているのにどうしてそんな常人離れした力がわいてくるんだと突っ込みたい。

まあ、俺も同類なので何も言わないことにする。

懸命にロープを使って登り終えると、そこには剣を抜いてゴーレムを対峙している2人の冒険者が目に入る……

 

「これが女神様から戴いた魔剣の力だ!!」

「ミツレギさん、ゴーレムは核を砕くと簡単に倒せます! あの魔石が埋まっている部分を狙って攻撃してください!」

「ありがとう、ゆんゆんさん! あと僕の名前はミツ――」

「あっ、カズマさん! 登ってこれたんですね!」

 

ミツラギとゆんゆんだ。

ゆんゆんは身軽だし、俺よりもレベルが上だし、スカートなのがちょいと気になりはするが全然上ってこられるだろう。

だがミツルギに関しては……うん、サキュバスサービスの存在を知らないはずなのに、鎧と大剣を持ってここにたどり着けているのは転生特典の効果だろう。

アクアから聞いた情報によるとミツルギの魔剣グラムは使用者の筋力ステータスを上げてくれる効果があるらしいしな。

そう思っていると俺の後ろから鎧を着けた冒険者たちが続々と登り切り、デストロイヤー内部に侵入を開始し始めた。

 

「乗り込めーっ!!」

「サーチアンドデストロイだッ!!」

「き、君たち! ここは危ないから僕に任せ――」

「邪魔だ邪魔だ! 退け退け退けぇい! トップを見つけ出したら引き釣り下ろせーっ! 俺たちの街を狙ったこと後悔させろォっ!!」

「う、うわぁ……か、カズマさん、私も一応武闘集団で名が通ってる紅魔族の一員のはずなんですけど、流石にあそこに混ざるのは何というか……」

「おいお前らぁっ! そのゴーレムは俺の獲物だ! どきやがれぇ!」

「カズマさん!?」

 

一緒に中に入ったゆんゆんは何か中に入るのを躊躇っているが俺は止まらない。

まるで無力な村を襲う野党か何かのような奇声を上げて動かない巨大要塞のゴーレムたちを殲滅し始めた。

 

「「「汚物は消毒だぜーッ!! ヒャッハーッ!!」」」

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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