我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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1-4 契約の…邪王真眼(イビルアイ)

クエストが完了してアクセルに戻った俺たち。

 

「蛙の中って、クサいですけどいい感じに温いんですね」

「知りたくもなかったそんな知識……」

 

ヌルヌルの美少女を背負い、俺は冒険者ギルド……の前に公衆浴場へ向かう。

そもそもヌルヌルの美少女と言えば役得かもしれないが、実際のところカエルの粘液でベトベトになったロリ――カエルの悪臭と犯罪臭が漂うだけだ。

さらに言えば、めぐみんだけじゃなく。

 

「ううっ……なまぐさい……なまぐさいよぉ……ひっぐ……」

「ア、アクアさん、わ、私も同じですから……だから泣かないでください、ね? ハンカチ使います?」

「ゆんゆん、ありがと、たすけてくれてありがとね……! ズビー!」

「い、いま、ずびーって……」

 

そんなやりとりをしているのは昨日の経験を何も生かすことなくカエルの口にホールインワンしたアクア。

それから女神の涙……ではなく、駄女神の鼻水によってハンカチを濡らされたネチョネチョゆんゆん。

アクアの鼻垂れのせいでさらにネチョネチョ度合いが増していた。

 

ちなみにゆんゆんはカエルに食われたわけじゃない。

確かにジャイアントトードは3体いたし、最初の大魔法のせいでゆんゆんの魔力が枯渇気味になっていたが、俺が機転を利かせて、不味すぎて走馬灯を見るポーションを投げつけて討伐したのだ。

 

まあその後、めぐみんが「私たちは仲間じゃないですか。仲間というものは、苦楽を分かち合うものだと思います」と言ってゆんゆんにアタックし、俺もおんぶをせがまれ、俺たちはみんな仲よろしく粘液まみれになってしまったのだが。

 

「ハンカチありがと……ちょっとだけすっきりしたかも」

「そ、それならよかったです! ふふっ」

 

どういうことか、ゆんゆんの口から笑い声が漏れる。

カエルに捕食されていないのにも関わらず、今や俺たちの誰よりもヌルヌルで光り輝いてるはずなのに……

まさか精神が狂ってしまったのだろうか。

 

「な、なあゆんゆん? ツラいようだったらちゃんと言うんだぞ?」

「えっ、別に私はそんなことないんですが……」

「そうなのか? 急に笑い出したから、ツラいことが重なりすぎて精神がおかしくなったのかと心配だったんだが」

「そんなことないですよ!? え、えっと、笑ったのは、苦楽を共有して汗水垂らして……なんだかそれが青春してるみたいで……あと、これからお風呂で流しっこできるかもしれないですし、それがちょっと楽しみだったりして、えへへ」

「お、おう、そか……」

「カズマさん? どうして私の方に哀れみの視線を送るんですか? アクアさんはどうして私の頭を撫でて……急に優しくぎゅっと抱きしめてどうしたんです? あの、その、ヌ、ヌルヌルがぁ……」

 

俺とアクアの行動の理由がわからず困惑しているゆんゆんだが……

そりゃあ、俺たちが垂らしてるのは汗じゃなくてカエルの臭い粘液だからだろ。

 

「ちなみにですが、私はきっとゆんゆんが一緒にお風呂に行きたいだろうと思い、あなたに粘液を擦り付けたのです」

「そ、そんな思惑があったなんて……!」

 

いや、ないだろ。

そんな俺の思いに反して、ゆんゆんはめぐみんの言葉を聞いて目を輝かせていた。

 

「一人だけ仲間外れなんて悲しいじゃないですか。……ほんの気遣いというやつです」

「ありがとう! めぐみん、本当にありがとう! お礼になるかわからないけどお風呂までおんぶさせて!」

「は、離れなさいゆんゆん、暑苦しいのです! あ、ちょ、カズマ! 私のことを下ろさないで……ネバネバが、ネバネバの化身が私の動きを封じんが如く侵食してくるあああああぁぁぁ……」

 

俺はめぐみんをゆんゆんに託し、男湯へ歩き出すのだった。

 

 

 

 

「クエストの達成を確認しました! では報酬の10万エリスですね」

「ありがとうございます…………あ、あの、ジャイアントトードって食肉として買い取ってくれるんですよね?」

「はい、討伐報酬とは別で、一匹あたり5千エリスで買い取らせていただいております! 今回はすべて買い取らせていただいても……」

「お願いします」

「では、討伐していただいたジャイアントトード5匹分で……追加分が2万5千エリスです」

「ありがとう……ございます…………」

 

ジャイアントトードの討伐クエストの結果は7匹討伐……うち、2体消失。

2日で12万5千エリスを獲得したわけだが、一人あたりの日当はだいたい1万5千エリス。

命がけなのに土木工事のバイトよりちょびっと高いくらいの値段……割に合わなすぎる。

 

「とりあえず反省会だ。まずはアクア、今回は何も言うことはない」

「フフン、当然よね! この完璧で麗しき私に反省すべき箇所なんて一つも――」

「元よりお前には期待してない」

「はあ!? 私女神なんですけど!! 期待してないってどういうことなの!!」

「昨日の反省活かさないで真っ先に食われたのに何言ってんだ! そういう風に女神を自称するんだったらもっと役に立ってから言ってくれ!」

「そんな風に言うのってあんまりだと思うの! 私だって役に立とうと思って頑張ったのに! うわぁあん、ゆんゆん、カズマが、カズマがぁ!」

 

正論でぶん殴られ、ゆんゆんの谷間に顔を埋めるアクア。

そんなアクアを慰めるようにゆんゆんはよしよしとその水色の頭を撫で……

……こいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだ?

というか公衆の目を気にすることなく13歳の少女に泣きつく年齢不詳の女神ってどうなんだ?

威厳もへったくれもないぞ、と思っているとめぐみんがアクアに。

 

「アクア、私の方に来るといいのです、慰めてあげますから。ゆんゆんの胸では窒息してしまいますよ?」

「……めぐみんの胸からは母性を感じないから遠慮しておくわ。なんだかゆんゆんの方がお姉ちゃんって感じがするし」

「なにおう! 私の胸のどこに不満があるのか聞こうじゃないか! それにゆんゆんは一人っ子ですよ! 加えて私には妹がいるのでゆんゆんよりちゃんとしたお姉ちゃんなのです! ほら、ゆんゆんではなく私に……」

 

そう言って、めぐみんは手を広げてアクアのことを呼ぶが……

悲しきかな、天然の枕に床が勝てるわけなどなかったのだ。

めぐみんに乗り換える気配など微塵もなく、再びゆんゆんの胸に顔を埋めるアクア。

ゆんゆんは嬉しそうにめぐみんに目線を合わせて。

 

「めぐみん、どうやら私の勝ちみたいね……!」

「…………いつから勝負になっていたのかはわかりませんが、わかりました。その一勝は譲ってあげますよ」

「あれ? めぐみんにしては珍しく今日はあっさり引き下がって……負けを認めてもいいの?」

「そうですね。今日くらいは勝利の美酒に酔いしれるがいいのです。……どうせすぐに垂れ下がりますから」

「えっ、何が!? ねえめぐみん、一体何が垂れ下がるって話!? 負け惜しみを言ってるつもりなら――」

「そういえば戦闘中にも聞こえてきましたが、その女神とは何ですか?」

「ちょっとめぐみん!? 話をそらさないで!」

 

さっきまでゆんゆんが勝ち誇ってたのに、今はというと立場が逆転した。

ゆんゆんが必死にめぐみんに抗議するも、アクアがいるせいで動けず、その様子にめぐみんは満足げである。

 

「それでカズマ、結局アクアが女神というのどういうことなんです?」

「自分を女神だと思っている可哀想な子だよ。気にしないで接してあげてくれ」

「「かわいそうに……」」

「ちょっとカズマ! 純粋な二人になんてこと吹き込むのよ! 私、歴とした女神なんですけど!! 信じちゃだめよ二人とも、この引きニートのいうことを信じちゃだめなの!」

 

めぐみんとゆんゆんに哀れみの目を向けられ、俺につかみかかりながら抗議するアクア。

しかし残念、誰もそんな素っ頓狂なアクアの言葉を信じるやつはいないのだ。

 

「ね、ねえ、嘘でしょ? ふ、二人は女神だって信じてくれるわよね……?」

「私はアルカンレティアでの宗教勧誘に苦い思い出があるのでちょっと……」

「わ、私は、その、アクアさんは人間でも女神様でも変わらずアクアさんだと思いますよ?」

「ううっ……どうしてみんな信じてくれないのよ……こうなったらやけ酒よ! すんませーん、こっちの席にシュワシュワじゃんじゃん持ってきいてちょうだいなー!!」

「おい、毎回毎回言ってるけどリバースするまで飲むなよ? 介抱するのは俺なんだから――」

 

そんな俺の言葉なんて聞こえていないのだろう。

アクアは到着したシュワシュワを両手にセットしてマシンガンのような勢いで飲み始めた。

……店員さんに後半は水にすり替えておくように言っておくか。

どうせ出来上がっちゃえば水の味も酒の味もコイツにゃわからんだろ。

 

「はぁ……反省会だって言ったのにもう食い始めやがって。まったく、しょうがねえなぁ……一先ず俺たちも食うか」

「カズマって、案外面倒見がいいんですね。今日も私のことを負ぶってくれましたし」

「いや、アクアに関しては全然そんなんじゃないぞ? 面倒見がいいっていうか、どっちかって言うと面倒見なきゃトラブルになるっていうか……。コイツ、アルバイトで入った金を貯めようともせずに全部使うんだぜ? 仕舞いにはお金が足りなくなってすぐツケるし、目を離すと莫大な借金を抱えてきそうだし…………何だよニヤついて」

 

風呂上がりだからか、艶やかな髪と桜色の肌で妙にしっとりしているめぐみんが目を細める。

……見てくれはかなりの美少女なんだよなぁ……中身は中二病だけど。

 

「ふふっ、いえ別に、何でもないのです。……ただ、方向性は違うのでしょうが、ゆんゆんも目を離すと悪い男に引っかかったり詐欺に引っかかったりしそうなので、何となくカズマの放っておけないという感情がわかる気がしまして」

「だそうだが? ゆんゆん?」

「……私としてはめぐみんっていうじゃじゃ馬が引く暴走馬車を制御してる感覚なんですけどね。放っておいたら事故が起きそうで、ヒヤヒヤして……」

「ほう、まるで私が問題児だと言いたげですね?」

「実際そうじゃない。めぐみんが警察のお世話になりかけたり、爆裂魔法で大事になっムグッ!?」

「そんなことよりできたての料理が来ましたよゆんゆん! アツアツ冷めないうちに我らが宿敵の血肉を食らうがいい!!」

 

今ゆんゆんの口から何か大事なことが聞こえた気がするが、めぐみんが無理矢理その口にジャイアントトード料理を詰めた。

口いっぱいに詰め込まれて木の実を目一杯頬張っているリスみたいになっているゆんゆんを見やりつつ、俺はめぐみんに。

 

「なあ、今爆裂魔法で大事になりかけたって聞こえたんだが?」

「……聞き違いではないでしょうか」

「んなわけあるか! お前、一体何やらかしたんだ!? 問題児はアクアだけで十分なんだが!?」

「あう……そ、その、我が必殺の一撃である爆裂魔法は、今日お見せしたとおり尋常ならざる威力を秘めているのです。それで、何といいますか、魔王軍の手先扱いされまして」

「そうだったのか? そんな魔王軍が攻めてきたみたいな騒動一回も見たことないんだが……」

「私たちがアクセルの街についた直後のことでしたのでカズマたちはまだいなかったのでは? それに、最近はほとんど街の近くで爆裂してませんので問題は起きてま――」

「起きてるわよ! 結局爆裂魔法がうるさいって街中から苦情来てるじゃない!」

 

なんとか口の中に詰まっていた肉を飲み込み、テーブルを叩きつけて抗議するゆんゆん。

きっと爆裂魔法の音は、土木工事のバイト中の騒がしい声やツルハシにかき消されていたのだろう。

しかしまさか爆裂魔法が騒音問題に発展しているとは。

俺が驚いている中、めぐみんは意外そうな様子で。

 

「えっ、そうなのですか? ここ最近はそのような人たちの相手をしていないのでいい加減諦めたのかと思っていたのですが……」

「いや、めぐみんじゃ話し合いにならないから私の方に苦情言いに来てるだけよ! その度に頭下げてるんだけど私!」

「そ、それはゆんゆんに少々申し訳ないことを…………し、しかし、私は守衛さんの言いつけを守って街から離れた場所で爆裂してると、いつも付き添ってくれるゆんゆんは誰より知っているでしょう? その騒音は私たちのせいではなく、文句を言うのはお門違いだとクレーマーたちに反論しなかったのですか?」

「離れたおかげで解消されたのはクレーター問題だけなの! 爆裂魔法の騒音はどこで撃ったって改善されないから!」

 

クレーター――その言葉を聞いて、バイト中の埋め立て作業を思い出した。

最初は大岩か何かがあり、それを魔法で破壊した跡なのかと思っていたが、親方が「はた迷惑な冒険者のせいだ」って言っていたことが印象的で覚えている。

あれお前の仕業か!

 

「とりあえずめぐみん、騒音が問題になってるし、お前は爆裂魔法禁止な。明日からのクエストは魔力使い果たしてぶっ倒れないような魔法で――」

「使えません」

「………………今なんて?」

「使えないといったのです。私は爆裂魔法以外の魔法は一切使えません」

「……マジか」

「……マジです」

 

思わずゆんゆんに目配せをするが、気まずそうに視線をそらせるのを見て、マジのマジなんだと理解してしまった。

いや、そんな凄い魔法が使えるなら他の魔法も使えるはずだろ?

何だって他の魔法を覚えていないんだ?

そう思っているとめぐみんは眼帯を押さえながら。

 

「我が邪王真眼は膨大な魔力を生み出す祝福にして、その魔力は我が体を蝕む呪い。加えて邪眼なしにしても我が魔力量は紅魔族随一。故に爆裂魔法はその魔力を使い果たすための唯一の手段なのだ」

「で、本当は?」

「おい、私の言っていることがデタラメだと決めつけるのはやめてもらおうか!」

「じゃあ仮に、そのカラコンの呪いが本当だとして、上級魔法みたいな魔力の消費量が多い魔法は爆裂魔法以外にもあるだろ」

「………………ええ、わかりました、わかりましたよ! 白状します、私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです。爆裂魔法しか愛せないのです! なぜなら私は爆裂魔法を習得するためだけにアークウィザードの道を選んだのですから!」

「素晴らしい! 素晴らしいわ! 私は非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に感動したわ!」

「わかってくれますかアクア……お酒臭っ!? 我が瞳に共鳴してくれたことは嬉しいのですがちょっと離れ……お酒の席でのウザ絡みは遠慮していただきたいのですが!」

 

なんなんだこいつ。

ただのへっぽこウィザードじゃないか。

よりにもよってアクアが同調してる。

ここは早くパーティを解散して違うメンバーを募集しなけれ……ば……

 

そう思って席を立ち上がろうとしたとき、俺の肩にぽんと手が置かれる。

その方を見ると、ゆんゆんが獲物を逃がさない鷹のような目つきでいた。

 

「どこへ行くつもりですか」

「ゆんゆん。ちょっと手を離してくれないか。トイレに行こうと思うんだ」

「トイレはカズマさんが行こうとギルドの受付とは反対ですよ? まさか受付に行ってパーティー解散の申請をしに行こうだなんて思ってませんよね?」

「い、いやだなぁ、俺はそんなこと微塵も……」

「で、ですよね! カズマさん、これからは私と一緒に苦労を分かち合いましょう! それに苦労を一緒に乗り越えるって友達みたいで、えへへへ」

「ア、アハハハハ……」

 

ゆんゆんの圧に屈し、パーティーを解散することができなかった。

こうして俺はアクアとめぐみんという問題児を抱えたパーティーのリーダーになってしまった。

い、いや、ポジティブに考えるんだ!

問題児二人を抱えたが、代わりにまともで良識のある魔法使いが仲間に加わってくれたじゃないか!

まともで良識のある…………

今日の戦闘、ゆんゆんは足止めの魔法を撃って気絶してたけど、大丈夫だよな?

本当に俺の想像通り、ゆんゆんは常識人ポジションだよな!?




以上がアニメ1期の第2話部分でした。
もう少しスピーディーにやった方がいいですかね?

ストーリー進行の早さどうですか?

  • もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
  • ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
  • 今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
  • もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)
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