我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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10-2 螺旋状の…大転落(クリミナルケージ)

――拝啓。

そちらの世界においても寒さが厳しき折、父さん、母さん共におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

そちらはそろそろ雪解けの頃でしょうか。

弟は変わりなく過ごしていますか。

皆様ならば、きっと変わりなく、健やかに過ごしていることかと存じます。

俺はこの世界でも元気にやっておりますので――

 

「被告人、サトウカズマ。あなたの行ってきた度重なる非人道的な問題行為、及び街の治安を著しく乱してきた反社会的行為などを鑑みるに、検察官の訴えは妥当と判断。被告人は有罪、よって――判決は、死刑とする」

 

犯罪者となった親不孝な息子をどうか許してください――

 

 

 

 

「サトウカズマ。貴様には内乱罪および外患誘致罪の容疑が掛けられている! 自分とともに来てもらおうか!」

 

ギィ……とギルドの重い扉が開かれ、入ってきたのは背筋をピンと伸ばした黒髪の女性。

先ほどまで騒がしかったギルド内は、ピリつくような気迫を放ちに当てられたことによって静寂に支配される。

ギルドのお姉さんから賞金を受け取ろうとしてただけなのに国家転覆の容疑をかけられている件。

どうしてこんなことになってしまったのか。

何も心当たりがないと言えば嘘になるが、めぐみんの爆裂魔法のクレーターとか窓ガラス破壊だとか、そんな損害賠償しか想定しておらず、思わず思考が止まる。

そんな俺を見て、険しい表情をした目の前の女性は。

 

「状況を理解していないらしいな。自分は王国検察官のセナだ、サトウカズマ。貴様には現在国家転覆の容疑がかけられている。テロリスト、もしくは魔王軍の手先ではないかと――」

「ちょちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺が国家転覆を目論んだって言いたいのか!?」

 

テロリストだの魔王軍幹部の手先だの、予想外の言葉に思わず声を荒げてしまう。

場の注目は完全に俺一人に集まり、ギルドの冒険者たちがざわつきはじめた。

 

「犯罪者!? カズマさん犯罪者だよ犯罪者! 異世界に来てまで何をやらかしたのよ! ほら、早く謝って! 私も一緒に頭下げてあげるからカズマも早くごめんなさいして!」

「俺がやらかしたって決めつけんな!? 強いて誰が国家転覆罪で訴えられるかって言うんだったら爆裂魔法を公共の場で毎日ぶっ放してる紅魔族だろ!」

「お、おい! それは誰のことをいってるのかわかりかねますが、生け贄に差しだすつもりならやめてもらおうか!」

 

そう言って俺につかみかかろうとするめぐみん。

いや、俺の言葉に反応してるってことは自覚あるじゃんか。

 

「大体、私がしたことと言えば本能のままに爆裂魔法をかますくらいなもので、今までカズマがやらかしてきたことに比べたら……」

「俺が何をやらかしてたって! 俺は爆裂魔法で窓ガラス破壊しないし、殴り合いの喧嘩もしないし、お前に比べたらそれはもう全うに生きてるわ!」

「私は警察のお世話になるようなことはしてませんよ! 確かにカズマは国家転覆罪のような犯罪はする度胸もないでしょうが、セクハラとか下着泥棒とか、全うに生きてるだなんて口が裂けても言えないと思うのですが!」

「確かにこの男は全うに生きていると言えば嘘になる。だが、そんな大それた罪を起こせるとも思えんな。そんな度胸があるなら普段屋敷内を薄着でうろうろしている私をあんな獣のような目つきで見ながら何もしないなんてことはないはずだ。夜這いの一つもかけられないヘタレだぞ、この男は」

「ダクネスもめぐみんも俺のこと擁護してるのか喧嘩売ってんのかハッキリしろよ!?」

 

俺は今、人生最大級の危機に立たされているというのに!

味方なはずのやつらが全員敵にしか見えないのはどういうことだ!!

俺たちがそんな風に言い争っていると、ゆんゆんが俺たちの間に割って入ってきた。

 

「みんな落ち着いて! 変に口を開けば余罪がどんどん出てくるわよ!」

「俺たちに喧嘩売ってるんだったらはっきりそう言えよ! ちなみに俺は他の二人とは違って何の余罪もないはずだ」

「今こそ決着をつけるときのようですね、ゆんゆん! 私たち三人まとめて相手してあげましょう! ちなみに私こそ二人とは違って何の罪も犯していません」

「あれっ、わ、私、止めようとしてただけなのにどうしていつの間に3対1に!? というかまとめて相手してあげましょうって私の台詞だと思うんだけど!?」

「二人とも落ち着け、いくら図星だったからと言って病人を責めてやるな。ちなみに私は本当に全うに生きているはずで法に触れた行為は一切したことがない」

 

ダクネスに関しては風呂場であんなことやらこんなことまでしてるだろ!

どっちがセクハラかわかったもんじゃない!

そんな騒ぎの中、今の騒ぎを見ても眉一つ動かさなかったセナは咳払いをして、冷たく言い放った。

 

「機動要塞デストロイヤーの核であるコロナタイト、といえば心当たりがあるでしょう。それが隣国のエルロードに飛ばされた」

 

その一言は、場の空気を一変させた。

俺の顔色は青ざめ、心臓はバクバク、背中には冷や汗が伝う。

当事者も当事者である俺とゆんゆんは目を背け、そのまま陰に隠れるように小声で。

 

「どどど、どうしましょうカズマさん! わた、私たち計画犯と実行犯ですよ!」

「おちけ、落ち着けゆんゆん、今はまだ焦るときじゃない……そ、素数を数えるんだ。確かにテレポートさせた事実はあるが、だからといってそのコロナタイトが俺たちのものとは限ら――」

「限りますよ! 伝説級の鉱石なんですよ! 世界にそういくつもあってテレポートさせた時期がかぶることなんてありませんよ! やめましょうよ、現実逃避は!」

「げ、現実逃避じゃねえし! ただ、テレポート先が人がいる場所とはまだ決まってないだろ!」

「それを現実逃避っていうんですよ! 王国検察官の方が来てて、国家転覆の容疑がかけられてるってことは、何が起きたかもうほぼほぼ確定じゃ――」

「あああああっ! 聞きたくない! 何も聞こえなーい!」

 

――どう考えても、絶望的。

万策尽きた感がすごい。

考えても絶望しかない現実……こんなの現実逃避以外にできることないだろ。

辞世の句でも詠んだほうがいいんじゃないかと、涙目になりかけたそのときだった。

 

「幸いにも落ちた場所に人はおらず、死傷者はいなかったそうだが――」

「そ、それじゃあ今回のデストロイヤー戦での死者はゼロってことか! よかった……」

 

セナのその言葉を聞いて、一瞬胸を撫で下ろした俺だったが――

彼女の目は鋭く冷たいナイフのままだった。

 

「何がいい! 貴様、状況がわかっているのか!」

「えっ、人が死んでないってことは俺たちは殺人罪はないってことだろ?」

「……貴様は隣国にコロナタイトという爆発物を送りつけた。これは外患誘致罪に該当する。たとえ死者が出ていなくても、ベルゼルグ王国が他国に対して攻撃的な意志を持ったと捉えられかねない――戦争の火種ともなる重罪だ」

 

そう言いながら、彼女の声には淡々とした怒りが滲んでいた。

事務的なはずの言葉に込められた糾弾の色は、ギルドの冒険者たちにも伝わったのだろう。

あたりの空気が再び、凍てつくように静まり返る。

 

「加えて、テレポート先によっては、国の重要施設を破壊する可能性もあった。それはもはや、魔王軍の妨害工作と何ら変わらない……。先ほども言ったが、テロリストか魔王軍の手先だと疑いが掛かっている。まあ、詳しい話は署で聞こう」

 

セナの言葉に静まりかえっていたギルドがざわめきだした。

それもそうだ。

ここにいる冒険者たちは俺のことをよくわかっている、そんなことをするようなやつじゃないってな。

そして、デストロイヤー戦においての活躍だって、この街を救うためにコロナタイトをテレポートしたんだと知っている。

俺がテロリストでもなければ魔王軍の手先でもないことは誰しもがわかっていた。

確かに隣国に爆発物を送りつけたことには火があるとは思う、が、人的被害が出てないし、こっちにも事情があるんだ。

情状酌量の余地どころか、大陸中を蹂躙する大物賞金首を討伐したともなれば無罪の可能性がある。

そんな中、めぐみんが一歩前に出る。

 

「何かと思えば……。カズマはデストロイヤー討伐の功労者ですよ? 確かに石の転送を指示したのは事実ですが、あれは緊急措置で仕方なくとった行動……。カズマがいなければこの街はコロナタイトの爆発で死者だって出たかもしれなかったのですよ? 非難されるいわれはありません」

 

そんなめぐみんの言葉に、ギルド内のあちらこちらから擁護の声が飛び交う。

その声に、俺にはこんな状況で味方でいてくれる仲間がこんなにいるんだと実感して、思わず目頭が熱くなった……のだが。

 

「ちなみに、国家転覆罪は犯行を行った主犯以外にも適応される場合がある」

 

――セナのひと言が、ギルド内に再び凍りついた沈黙をもたらした。

い、いや、俺たち冒険者は国の権力には屈さない!

そんな言論弾圧のような、脅迫じみた権力の横暴なんかに屈さない!

そうだろ、みんな――

 

「…………カ、カズマはそこはかとなくいい人だった……けど、まあ、いい人だったわ。私はテレポートしたこと後から知ったし関係ないわよね!」

「あ、アクア? おま、何言って……もしかして俺一人に全責任を押しつけるつもりじゃないだろうな!? なあアクア!? 目を見て答えろ! そこの駄女神こらぁッ!」

 

そう思っていたのに、神は死んだ!

その場にいた誰よりも早く最初に仲間を裏切ったのは、他でもない駄女神。

どこか遠い国の風景を見ているような虚ろな目で、現実から逃避していた。

しかも、しれっと無関係を装って保身に走ってやがる……。

こ、こうなったら別の頼れる仲間に……そう思ってめぐみんに目配せをしたのだが。

 

「もし!」

「もし!?」

「私が、爆裂魔法の威力をセーブしていたら、アクアも私も一緒にデストロイヤーの中に入ることができたはずなのにー! ああ、こんなことになる前に止められたはずなのに! しかし、その場にいなかったものは仕方がありません。ええ、仕方ありませんとも」

 

ブルータスよ、お前もか!

意味深に悲劇の語り手ぶってはいるが、あからさまな自己保身。

それもこれも、どう考えても俺に罪を押しつける流れになっている。

 

「お前ら何で目そらすんだよ、ちょっとこっち見てみろよ」

「「……」」

「やましい気持ちないんだったら俺の顔見れるよな?」

「「……」」

「おい、さっさと目そらさないでこっち見ろ!!」

 

そんな俺の声を無視して目を合わせないでいる二名。

加えて周囲を見渡すとさっきまで俺を擁護してくれていた奴らが軒並み目をそらして――

手のひら返ししたやつの顔、覚えたからな!

アクアとめぐみんとまとめて後でものすごい目に遭わせてやる!

そう決意して拳を握りしめていると、ゆんゆんが震えながら挙手をして……

 

「あ、あの、私がテレポートをしたので、か、カズマさんのことはどうか見逃しムグッ!?」

「駄目ですゆんゆん! 今更あなたが名乗り出たところでカズマのことを無罪放免できる可能性はゼロに等しいのです!」

「そうよ! 犠牲が一人で済むのだったらそれに越したことはないわ! 辛いでしょうけど、ここはグッと堪えてちょうだい!」

 

ゆんゆんは敵にやられた!

希望は潰えた!

途中で言葉を噤んだその口元には、めぐみんの手がばっちりと押し当てられていたのだ。

 

い、いや、まだだ、まだ終わらんよ!

最後の希望の星、残る味方のダクネスに……!

そう思って俺はダクネスに助けを求める視線を送ると、頼もしく頷いてくれ――

 

「待て、王国検察官殿。主犯は私だ、私が指示を出した」

「だ、ダクネス……お前……!」

「だから是非とも、是非ともその牢獄プレイ……じゃなくて私のことを連行して激しい責めを負わせるがいい!」

「あなた、ずっとデストロイヤーの前に立ったままで、何も役に立たなかったそうじゃないですか」

「……ッ!?」

 

だ、ダクネス……お前……

バッサリと切り捨てられたダクネスは涙目になって俺の方を見てきた。

俺の方が泣きたい気分だわ。

なんせ頼れる味方が誰一人としていなくなってしまったのだから。

 

味方、全滅。

失った物ばかり数えるな、お前にまだ残っておるものは何じゃ!

そんな声が聞こえてきた気がしたが、もう何も残っちゃない。

 

あれ、この世界、こんなに生きづらかったっけ……?

 

気づけば、俺は動いていた。

誰も助けてくれない。逃げるしかない。

俺は殺されないように走る、味方のいない敵陣の中を。

冒険者を押しのけ、跳ねとばし、俺は黒い風のように走っ…………あぁ……ぁっ……。

 

「確保ォ!」

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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