我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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11-3 蛙殺しの…紅魔族(スカーレットデビル)

ウィズ魔道具店の扉を叩いたのは検察官のセナ。

爆裂魔法のせいでジャイアントトードが目覚めたとか言ってたが……

 

「俺たちさっきまで裁判してたのに一体どういうことだよ?」

「それが、先日の真夜中、めぐみんさんが放った爆裂魔法の衝撃で、地面の中で冬眠していたジャイアントトードが目を覚ましたようです。現在確認されている数は15匹。その話が裁判長の耳に入り、ドラゴンの討伐の前に村に被害が出る前に討伐するようにと」

「マジか……」

「それから私はそれを確認するように指示されましたので同行させてもらいますね。ドラゴンの討伐の前で忙しいところ申し訳ないのですがよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそホントすいません。ウチのパーティーメンバーが迷惑をかけて……」

「とりあえず、私は先に門の前へ向かってますから」

 

そう言ってセナはウィズ魔道具店の外に出て行った。

……爆発は春の季語だそうだ。

米花町に住んでいる博士が言っていたが――何かの間違いであってほしかった。

 

「ふっ。我が爆裂魔法の初夏のような爽やかな風は、生命に力を与える黄金の風だったようですね」

「はぁ……どうして俺のパーティーメンバーはろくなことしかしないんだ……。大体、ダクネスがいない中ジャイアントトードなんて!」

「何を弱気なことを。安心してくださいカズマ。我が爆裂魔法は滅びの風。ジャイアントトードなど滅ぼして見せましょう!」

「いや、さっき生命に力を与える風っつってたろ!?」

「……とにかく任せてください。デストロイヤーですら我が魔法の前には為す術なし、ステータスも昔とは比べるまでもなく。カエルごときに遅れはとりませんよ」

 

めぐみんがやる気満々で杖を握る。

……爆裂魔法一発使うと身動きとれなくなるのになんでそんな自信満々なのだろうか。

 

「じゃあ私は留守番してるわね! ゆんゆんの様子も見てなきゃだし……」

「お前は行くんだよ、爆裂事件の計画犯っ!!」

「で、でも私は誰かを癒やすプリーストなのよ! どうせめぐみんの爆裂魔法で全部倒すんだから私行く意味ないじゃない!」

「15匹も爆裂魔法だけで倒せるか! お前も前に出て戦うんだよ!」

「いやぁあ! どうせそんなこと言って私を囮にする気でしょ! 私の攻撃なんて効きっこないのに突撃させて私は粘液まみれにされるのよ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「…………しないよ?」

「わあああっ! やっぱりする気でしょ!」

「とにかく行くぞ」

「嫌よ! そう言うのはお色気担当のダクネスの役目なのにぃいい!」

 

ずいぶんと活きのいい囮だ。

これならしっかりカエルを引きつけてくれるだろう。

 

「めぐみん。アクアを連れていくの手伝ってくれ」

「カズマはカエルにぱっくりいかれた事ないからわからないでしょうけど、私はめぐみんと心の深いところでつながっているのよ。あれはトラウマよ。巨大な生物に捕食されるという、いくら死なないってわかってても忌諱すべき原初の恐怖よ! という訳でめぐみん、カズマに言ってやって! 私たちはカエル討伐に行かないって!」

「わかりました」

「ほぉら見なさい。やっぱりめぐみんは私と心の中で繋がって…………ねえ、めぐみん? 何で私の手をこう、なんていうか、恋人繋ぎするの?」

 

一瞬、めぐみんがアクアと逃げるのかと思ったが、めぐみんの手を見ると、手を取って逃げるにしては力強い握り方だ。

それこそ恋人繋ぎなどというイチャイチャした雰囲気ではなく、獲物を逃がさないという確固たる意思を感じる狩人のオーラで……

 

「アクア。……今日は爆裂魔法をまだ撃っていないのです」

「め、めぐみん? なんか私、嫌な予感がするんですけど……」

 

何かを察したアクアはめぐみんの手を振りほどいて逃走を図ろうとするが、強固に握られたその手は全くといっていいほど離れない。

冷や汗を垂らすアクアに、めぐみんはにこりととびきりの笑顔で。

 

「……一緒に逝きましょう」

「いいぃぃやあああぁああっ! カエルはいやぁああ!! 離してぇえええっ!!」

 

残念だったな。

めぐみんの筋力ステータスは俺より高い。

アクアのステータスがカンストしているとは言え、レベル30でアクセルの街随一の喧嘩師の異名を持つめぐみんから逃れる術はないのだ。

 

「大人しく連行されろ! お前が巻いた騒動だろうが!」

「でもでも! めぐみんが爆裂魔法を撃つのは確定してたじゃない! どうして私が主犯なのよぉ!」

 

わめくアクアを連れてウィズ魔道具店を出ようとしたのだが――

その時だった。

俺たちがやかましくしていたせいか、ゆんゆんがおぼつかない足取りの中、寝間着姿のまま起きてきたのだ。

 

「カズマさんたち、ジャイアントトードの討伐行くんですか?」

「ああ、まあ……。ちょっとな」

「……それなら私も行きます。行かせてください!」

「でも、そんな状態じゃ……」

「それでもカズマさんたちだけじゃ心配で心配で……」

「ゆんゆん……」

 

それもそうか。

裁判の時に一人心細い思いをしたかもしれない。

仲間なのに力になれずに一人苦しい思いをしていたのかもしれない。

弱々しい声を聞くとそんなゆんゆんの気持ちがわかるような気がして――

 

「カズマさんは弱いし、アクアさんは攻撃力が足りないですし、めぐみんは論外ですし……私が守らないと!」

「おい、ほか二人はともかく、俺のことをどう思ってるのか聞こうか」

「と、とにかく、私も戦いの準備してくるので待っててくだ――」

 

そう言いながらゆんゆんは小走りで準備しようとして、ふらついて転びかけた。

幸いなことに壁が近くにあったおかげで倒れることはなかったが……

 

「無理すんなって。まだ本調子じゃないだろ? そんな息も絶え絶えで、足もおぼつかない状態で……今は安静にしておけよ」

「でも、私、今まで何も……!」

「言っておくけどな、俺たちは魔王軍の幹部も機動要塞も倒してきたパーティーだぜ? ジャイアントトードなんて雑魚モンスター、俺たちに任せとけよ」

「カズマさん……」

 

そう言って俺はニッと笑いながら、ひとつウインクしてみせた。

ゆんゆんは目を丸くして、それでも何か言いかけたが――

結局、小さく頷いて再び布団に身を沈めた。

 

「すみません、役に立てなくて……ジャイアントトードの討伐、お願いします」

「ああ、任せておけって!」

「あ、あの、私はやっぱりゆんゆんのことを見守る係に――」

「じゃあ行ってくる!」

 

そう言いつつ、俺とめぐみんは囮を引っ張って店のドアを開けて外に出た。

 

 

 

 

扉が閉まり、後ろ姿が見えなくなったあと、店の中には再び静寂が戻――

 

「いやぁあああっ!! ねえ どうしてめぐみんはそんなに乗り気なのよ! カエルの恐怖を爆裂魔法で克服するとか想定外なんですけどぉおおっ!」

 

――以前として騒がしく、窓の外からは仲間の青髪プリーストの叫び声が反響していた。

 

「やっぱり不安だなぁ……」

 

 

 

 

ジャイアントトード。

それはかつての俺にとって、トラウマレベルの強敵だった。

 

……だがしかし、今の俺は違う!

デストロイヤー戦を経て、今の俺のレベルは11。

ついに一桁を脱した二桁冒険者!

ステータスはレベル1の頃と比べて約3倍!(当社比)

 

……なのに魔法使いであるめぐみんに筋力ステータスで負けるとはこれ如何に。

いやほんと、爆裂魔法しか使えない魔法職なのに、俺より筋肉あるってどういうことだよ!

でも負けない!

そんな理不尽にもめげず、俺たちはジャイアントトードの討伐に出発した。

 

「カズマさんカズマさん」

「カズマですよセナさん」

「今回は作戦か何かあるのですか? 検察官という身ではありますが、数々の偉業を成し遂げた冒険者パーティーの戦いには興味があるのですが……」

「ふっ。もちろんあるとも、セナくん」

 

後ろで「なんかカズマがかっこつけ始めたんですけど……」とか「ええ、ええ。あれくらいの年頃の男の子は格好つけたくなるものです。ええ、わかりますとも」とかうるさいが気にしないものとする。

 

「作戦はこうだ。アクアのフォルスファイアで敵の注意を集め、一カ所に集まったところを、めぐみんの爆裂魔法で一網打尽にする!」

「おおっ! ……お?」

「どうしたのかね、セナくん。疑問があるのなら言いたまえ」

「え、えっとですね。爆裂魔法が原因でジャイアントトードの討伐をしているのにさらに爆裂魔法を使用するのですか? さらにジャイアントトードが目覚める可能性があるので中級魔法や剣などの方がいいと考えたのですが……」

「………………」

「あ、あの、カズマさん?」

 

ふっ。

鋭い着眼点だ。

だがセナは一つ重大なことを忘れている。

……このメンバーではまともな攻撃手段を持つヤツがいないということを。

アクアの打撃は全部無効化してくるし、めぐみんは爆裂魔法を一発放てば無効化される。

爆裂魔法を使わない方がいいと知っていても、俺たちは最終的に爆裂魔法を使わざるを得ないのだ。

俺は無言を貫いてセナの質問を躱すしていると――

 

「おっと、お出ましか。セナくん、向こうの方を見たまえ」

「あれは……ジャイアントトードの群れ!? さっきまでいなかったのにいつの間に!?」

「奴らは神出鬼没だ……アクア、魔法を見せてやれ! あのカエルがいる中心の方に引きつけるんだ!」

「任されたわ! 『フォルスファイア』!!」

 

俺の指示した通りにアクアは魔法を放つ。

その輝く光の球を見て、ジャイアントトードたちはそれに向かってズシンと大きな体を動かす。

そして、ほとんどのカエルが一カ所に集中した瞬間。

 

「めぐみん!!」

「承りました。さあ、我が宿敵たちに引導を! 私の爆裂魔法をとくと味わうがいい! 穿て! 『エクスプロージョン』――ッ!!」

 

めぐみんが爆裂魔法を放つと、いつも通りの巨大な魔法陣が出現し、爆炎の紅が雪原の白を覆い尽くした。

大地の揺れ、光と轟音の響きが収まると、そこにいたはずのジャイアントトードたちの姿は存在しなかった。

 

――数体を除いて。

 

「カズマ、ねえカズマさんどうしよう! カエルが1匹残ってるんですけど!」

「みっともないぞアクア。何のために連れてきたと思ってんだ。早く囮として役目を果たして来いよ」

「いやぁああああ! もう粘液まみれはいやなブペラァ!?」

 

俺に抗議したその時、アクアはカエルの舌に絡め取られて口の中に直行。

しかしこんな状況でも動じる俺ではない。

この程度、すでに何度も経験済みだし、対策だって講じてあるのだ。

 

「ふっ。ンッ、狙撃(ソゲキッ)――ッ!!」

 

俺はスキルポイントを弓スキルに割り振った。

弓スキルは弓の扱いがうまくなる、片手剣スキルの弓バージョンだ。

本当は狙撃(ソゲキッ)スキルという幸運値が高いほどに命中率が増すヤツとか、遠視や暗視ができる千里眼スキルも習得したかったんだが如何せんスキルポイントが足りない。

その二つは一応教えてもらったのでゆくゆくは習得するつもりだが、それらがなくてもこの距離なら……!

俺が放った矢はアクアを引きずり込もうとしているカエルの脳天を穿った。

そのおかげでアクアは口に入る前に舌から逃げることができ――。

 

パクっ。

 

「「あっ」」

 

 

 

 

「なまぐしゃい……なまぐさいよぉ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……。た、他愛ないぜ」

「…………貴方たちはいつもこんな感じでギリギリの冒険をしているのですか……?」

「本当はここにゆんゆんとダクネスがいるんで。今回はちょっとウチのパーティーの中でも特に問題児の二人だからしょうがないんですよ」

「は、はぁ、そうですか……」

 

失念していた。

俺の弓スキルは筋力の上昇とかの効果はないんだった。

打撃無効という初心者の街に出現するモンスターにあるまじき性能を持つんだ、俺の弓程度効くわけが……ううっ……。

 

ま、まあでも、流石にめぐみんの爆裂魔法で14匹、俺の剣で1匹、全部のモンスターを討伐しきるのは……

うん、俺たち、強くなったんじゃないか!?

今回の戦いは少し手応えがなかったかもしれないし、もう少し多めでもよかっただろう。

――なーんて、調子に乗ってしまったのが地獄の始まりだった。

 

「アアアアアアアアッ!? かぁじゅぅまぁしゃあああん! カエル! カエルが増えてるんですけどぉぉお!!」

 

アクアの悲鳴とともに、新たに5匹のカエルが地面から出てきたのだ。

 

「ふっ。どうやら爆裂魔法とフォルスファイアの音に引き寄せられてきたらしいな」

「あの、カズマさん? やはり私が言ったと思うんですが、爆裂魔法での討伐はよろしくなかったのでは……」

「セナさん……駄目だとわかっててもやるしかない。冒険者にはそういう時があるんだ」

「何格好つけて――! カエルがこちらにやってきてるのですが!」

「一先ず俺が弓で迎え撃つ。さっきは一撃で決められなかったが、数打てばダメージが蓄積して倒せるだろ」

 

俺は弓を構えて射る。

風を切って放たれた矢はトードの額に突き刺さり、1匹倒し――1匹倒――1ぴk…………

 

「お、オレのそばに近寄るなああーッ!!」

「え、ええーっ!? 逃げ、逃げるんですか!?」

「に、逃げてねーし! これは戦略的撤退だ!」

「やっぱり逃げてるじゃないですか!」

 

一向に倒せないカエルに尻尾を巻いて逃げることしかできなかった。

情けない、雑魚モンスター一匹安定して倒せない、俺は情けないよ!

振り返ると、さっき爆裂魔法を撃って地面にぶっ倒れためぐみんが、ぐにゃぐにゃと舌で巻かれ――

 

「わひゃあああ!? こ、この感触は……懐かしいぬるぬるっ……!! ああぁ……トラウマが想起するぅぅぅ……わぷっ」

 

食べられた。

めぐみんが食べられた。

足だけ出して捕食されていった。

忘れない、めぐみん犠牲は忘れるまで忘れない――ッ!

 

「ま、待ってください! 私は冒険者じゃなくて、検察官で……きゃっ!?」

 

検察官、飲まれる。

残るはプロの囮担当の駄女神。

二体を引きつけながら一心不乱に逃げ丸その姿は見苦しいことこの上ないが、囮としての役割を十二分に果たしていた。

となれば俺は目の前の1匹を攻撃しながら逃げれば……!

 

「って、どうしてお前こっち来るんだよ!」

「だってだって! 後はカズマさんが囮として食べられれば、私は食べられずに済むのよ!」

「何言ってんだこいつ! もうすでに汚れてるだろお前! もう1回食われてるんだったら2回も3回も変わらないわ!」

「そんなこと言ったって嫌なものはやなの! そうよ、最悪死んでもリザレクションで蘇らせるしね! だから任せたわよ、カズマさぁあぁあああああぁぁぁ……ぷぺっ!?」

 

そして俺以外誰もいなくなった。

2対1のこの状況で俺が勝てる可能性は……

矢筒をみると俺の矢は残り数本、ステータスは低く、囮は飲まれ、俺にできるのは……

 

(やばい、やばい、やばい……このままだとまた、俺もぬるぬるの餌食に……!)

 

絶望に震えるしかなかった……その時だった。

空気を裂くように、一筋の雷が空中を貫いた。

 

「『ライトニング』――ッ!!」

「え……?」

 

俺の声をかき消した雷撃の音。

それがジャイアントトードに直撃すると、モンスターは痙攣し、プスプスと焦げ付き、絶命した。

まさか、まさか助けが来たのか……?

 

「『ファイアーボール』――ッ! もういっちょ! 『ファイアーボール』――ッ!」

 

2匹のジャイアントトードが炎に包まれ燃える。

今の魔法もさっきの魔法も……ゆんゆんがよく使ってる中級魔法のと同じだ。

 

「お、おい……今のは誰だ!? ゆんゆんか!? まさか体調悪いのに無理して来たのか!?」

 

俺は急いで魔法の飛んできた方を振り返る――が、そこにいたのは、ゆんゆんではなかった。

少し小高くなっている丘の上にいるのは、見覚えのある黒髪の少女だった。

 

 

「ふっふっふ。ゆんゆんに言われてきてみれば、まさかこんな事になってたとはね……」

「お、お前はデストロイヤーの時の……!」

「我が名はねりまき! 紅魔族随一の酒屋の娘にして、マイマスターの忠実なるサーヴァント! 邪王真眼の求めに応じて参上したのデスッ!」

 

そこに立っていたのは、以前デストロイヤーの討伐のとき、クリスと一緒に罠を張ってくれた、あの黒髪赤目、眼帯をつけた紅魔族少女だった。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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