我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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12-2 突撃する…隣の晩ご飯(グルメレース)

竜車での旅は幾度となくモンスターに襲撃されるも問題なくアイリスが撃退し、順調に進んだ。

 

「てかさ、この調子ならさ、明日のドラゴン討伐もアイリスに任せれば――」

「カズマ、今回の件はあくまで私たちに課されたものだ。それにアイリス様が手を出すわけにはいかない」

「だよなぁ……」

 

俺は思わずため息をつく。

簡単に終わるんだったらそれに越したことはないんだがなぁ……。

そう思っているとアイリスが俺の方を心配そうな顔で見てきた。

 

「ため息をつかれて、どうかされましたかお兄様?」

「いや、ドラゴンの討伐が面倒くさいなぁ……って。アイリスがついてきてくれれば心強いんだが」

「ふふっ。お兄様たちなら私がいなくてもきっと立派にドラゴンを倒してくれるでしょう? だって、あんなに素晴らしい冒険をしてきたのですから」

「ま、任せておけって! この俺がちゃんと、首尾よくドラゴン退治してくるからな」

「まあ! さすがですお兄様!」

 

アイリスの言葉と、期待に満ちた輝く瞳。

こう言ってしまったのは兄としての威厳だろうか。

それともアイリスの期待に沿いたかったからだろうか。

 

「それに、私がこうして強くなれたのは、昔ララティーナに稽古をつけてもらったからです。だから、ララティーナのパーティーが負けるはずないと、私は信じています」

「ふふっ……勿体なきお言葉です。私などが、そのように仰っていただけるとは……」

 

アイリスはそう言って、微笑む。

その横でダクネスは頬を染め、嬉しそうにアイリスのことを見つめた。

 

……でもダクネスって今回の戦いで何も役に立ってないんだよな。

剣も当たらないし、稽古って何を教えたんだ?

そんな疑問をよそに竜車はどんどん目的地へ向けて走る。

 

 

 

――旅初日の夕方。

日が沈んで暗くなる前に、俺たちは野営の準備に取りかかった。

アクセルの街で各自準備した荷物を広げていたのだが、アイリスが首をひねりながら俺に質問をしてきた。

 

「お兄様? 皆さんは何をしてらっしゃるのですか?」

「何って、これから野営のためにテントとか火起こしをだな……。アイリスはもしかして持ってきてないのか?」

「何を言っているカズマ。まさかアイリス様を固い地面に寝せるわけないだろう」

「何を言ってるはこっちの台詞だが?」

 

ダクネスもアイリスも箱入り娘だ。

旅というものがどういうものかわかっちゃいないらしい。

いや、ダクネスに関しては冒険者だろうに……このパーティーで野営は初めてだが、知識くらいクリスに仕込まれたりしてないのか。

俺は呆れかえりながらも箱入りお嬢二人に手取り足取り旅のレクチャーをしようと思って――

 

「クレア殿。今回は例の魔道具を持ってきているのだろう? お願いできるか」

「もちろんだ。少し離れて待っていてくれ」

 

そう言って、クレアがカバンの中から取り出したのは、金属製の四角い小箱。

掌にすっぽり収まるそれを、クレアは開けた場所に放り投げた。

すると光と風が一瞬吹き上がり、小さな貴族の屋敷が建っていた。

しかもご丁寧に竜車用の小屋まで備え付けられてるときた。

 

「……なにコレ」

「何もこれもあるか。まさか一国の王女を野営でもさせるつもりだったか? これは国が保有する高級魔道具の一つだ。モンスター除けの結界に、中は個室、浴場、食卓、簡易の書斎もあって――」

「そういうのはいいんだよ! 俺たちがアクセルの街に帰った理由は!?」

「ゆんゆんと合流するためだろう?」

「そうだけど! そうだけども!」

「何を怒っているのだ。さあ、アイリス様とクレア殿も入られたし、お前たちも中に入るといい」

 

俺たちがテントとか寝袋とか準備してきた意味は……

そう思いながらも、ダクネスに促されて中に入ると、まあ、外見通りの豪華な内装。

……うん、確かにこっちの方が疲れもとれるだろうし、空調も効いてるし、テントなんかより快適なんだろうよ?

でもさ、旅ってこうじゃないじゃん。

俺が複雑そうな顔をして荷物を下ろしていると、ゆんゆんも俺と同じような顔をして――

 

「カズマさん。気持ちはわかりますよ、痛いほど」

「ゆんゆん……」

「でもこう言うのは考え過ぎちゃ駄目なんですよ。たとえ、私が準備してきた荷物の三割が無駄だったとしても、残りの七割はまだ使えるはずなんです。あえて外でたき火をしてマシュマロとかチーズを焼いたりもできるんです。もともと全部の道具を使うつもりでもなかったですし……」ブツブツ

 

ゆんゆんが重々しい荷物を二つ両腕に持ちながら呟く姿は、病み上がりなことも相まって随分とやつれて見えた。

旅の価値観を、自分の思い描いていていた計画をはちゃめちゃに破壊されたんだ、無理もない。

そう思っていると鎧を脱ぎ終わったダクネスが体を伸ばしながら。

 

「さて、クレア殿からは空いている部屋――一番奥の部屋とその隣以外は自由に使ってもいいと言われている。私は自分の部屋を探しに行ってくるが皆はどうする?」

「もちろん探索です! さあ、まず目指すは王族の部屋ですよ!」

「もしかして私の部屋に遊びに来てくださるのですか? 一番奥の部屋ですが、ご案内しますよ!」

 

めぐみんの声にアイリスが反応する。

今まで同い年程度の友人がいなかったせいか、その声は驚きながらも嬉しそうだった。

興奮気味にアイリスが「こっちです!」と指さしながらめぐみんを案内すると。

 

「我が眷属どもよ。我にふさわしい絢爛な部屋をこの手に!」

「イエス・ユア・マジェスティ! ……ほら、ゆんゆんも行くでしょ?」

「いや、ねりまきと違って別に私はめぐみんの眷属でも何でもないし、王女様の部屋にそんな気軽に入っていいものなの? 私、これからマシュマロを焼くためのたき火を準備するから遠慮してえええぇえぇぇ……!?!?」

 

アイリスの部屋に行くのだろう紅魔族二人と連行される被害者一人。

いや、被害者とか言ったが、誘ってほしいと言わんばかりにチラチラめぐみんの方を見てたし、ゆんゆんの顔を見ると満更でもなさそうだしこれでいいのだろう。

四人はアイリスと共に部屋に突入し――

 

「ようこそ、私のお部屋に! と言っても私も初めて入りましたが」

「す、すごい豪華な部屋……! ふかふかな天蓋付きのベッドもあるし、本当にすごい……!」

「さすが王族って感じだよね。高級宿屋でもここまでのはなかなかないんじゃない?」

「そうですか? 普通だと思いますが……」

「ふ、普通!? ……ふ。わ、我は闇に連なる王。ここまで煌びやかな部屋では寝るに寝れないと思われ……」

「もしかしてめぐみん、怖じ気づいたの?」

「あ゛ん? 今なんと? 考えてからもう一度言ってみてください」

「いや、寝れないとかいうから怖じ気づいたのかって……」

「『王女様の部屋にそんな気軽に入っていいものなの?』とか言って……真に怖じ気づいてたのはゆんゆんの方じゃないですか」

「でも……」

「でもじゃないです! ふっふっふ、今ここでどちらが怖じ気づいたのはどちらかはっきりさせようじゃないか! 私はベッドにダイブしてみせましょう!」

「ああっ、私のベッドですよ! 一番最初にやる権利は私にあると思うんですが!」

 

……声を聞く限り、三人衆その豪華さに驚き四人でダイブしているようだ。

きっとあの部屋の中で今夜は枕投げとかするに違いない。

そんな中、クレアはそんな四人を最初は止めようと部屋の外でソワソワしていたが、アイリスが普通の子供のように無邪気にはしゃぐ様子を見て、最終的に可愛さと嬉しさとで感極まっていた。

 

「まったく、はしゃいじゃって。子供ねぇ……」

「まあ言ってやるなアクア。私たちだってあのような年頃はあっただろうし、子供は元気であることが一番だ」

「まあね。でも大人ならもう少しゆったりと心に余裕を持って行動すると思うの。私たちはしっぽりね。ほら、ここにおわしますはダニエルさんところのおいしいシュワシュワよ!」

「……ドラゴンの討伐なのにそんなものを持ってきてたのか。まったく、今はまだ早い。どこかにしまっておけ」

「……はーい」

 

ダクネスに言われて渋々シュワシュワをしまうアクア。

そのままアクアはヤレヤレといった様子で自分の部屋を見つけて中に入――る前に目敏くも備え付けのワインセラーを見つけてワインの所有権を主張していた。

アクアは大人の皮を被っただけで一番ガキだと思う。

 

 

 

 

その日の夜。

俺は夕食の下ごしらえをするために、俺は厨房へと足を運んだ。

王族が同行してるとはいえ、今日は野営の夜。

台所はあるがコース料理なんて作れないし、逆に落ち着かないだろうと思って――

俺が選んだメニューは安定感ある庶民飯。

でも、きっと高級食材ばっか食ってるアイリスやクレアには、こういうジャンクな感じの方が新鮮に感じるだろう。

そんな感じで調理に取りかかり始めたところで、ちょうど部屋の探索から戻ってきた少女四人組。

 

「カズマさん、今日は何の料理ですか? お手伝いしますよ?」

「ありがとな、ゆんゆん。今夜はチャーハンに餃子、それから卵スープだ。冷蔵庫に入ってたもののあり合わせだけどな」

「いや、十分じゃないですか。よかったら餃子の皮を包むの手伝いますよ」

「おっ、じゃあ頼むわ。そこにタネおいてあるから」

 

俺がそう言うと腕まくりをするゆんゆん。

蛇口を捻ると水が出る魔道具――まあ、蛇口のことだが、それで手を洗い始めた。

そんな中、怖ず怖ずといった様子でアイリスが。

 

「あ、あの。私もお手伝いをさせていただきたいのですが……その、ギョーザという料理を知らないと言いますか、そもそもお料理をしたことがないと言いますか……」

「もしかしてアイリスも手伝ってくれるのか! ……クレアとかダクネスに王女様に雑用させるなんてとか言われないよな?」

「そ、それは大丈夫です! ですが、その、もしご迷惑でなければ……」

 

まったく、アイリスは大人でもないのに気遣いして……健気すぎる!

本当は俺が手取り足取り皮の包み方を教えてあげたいと思うが……

チャーハンやスープの準備があるからどうしようか。

そう思って悩んでいると、三角巾とエプロンをきゅっとしめためぐみんとねりまきが。

 

「ふっふっふ。我が名はめぐみん! 紅魔族随一の居酒屋の料理を網羅し、新作メニューを真っ先に喰らい尽くす者! たまにそこで料理を手伝っていたときに身につけた我が禁断の秘技を伝授して差し上げましょう!」

「我が名はねりまき! 紅魔族随一の居酒屋の娘にして居酒屋の女将を目指す者! 餃子なんて定番メニュー、何度作ったか、その試行回数はいざしれず!! さあ、恐れることは何もない、私たちが餃子の皮包みの極意へと導いてあげよう!」

「めぐみんさん、ねりまきさん……! とても心強いです!! よろしくお願いします!」

 

ねりまきに関しては非常に期待できるが、めぐみんに関してはたまにお手伝いするだけの大食らいだろ。

こうして餃子作り体験会急遽始まった。

 

「こうして、まず餡をこのくらい取って……あとは皮の縁に水をつけて、ぎゅっと――。できるかな?」

「や、やってみます! こうして……わっ……あっ……破けちゃいました……」

「大丈夫ですよ、アイリス様。最初はみんなそんな感じでしたから」

 

やさしく声をかけたのはゆんゆん。

あまり餃子の皮包みをしたことがないのだろうか、ゆっくりヒダを丁寧につけて作っていた。

しかしながらその完成度はなかなかに美しかった。

 

「へぇ、すごいじゃんゆんゆん! これならお店で出せるレベルだよ!」

「そ、そうかなぁ、えへ…………へ? あの、ねりまき? その、いつの間にかねりまきの前にものすごい量の餃子が並んでるんだけど」

 

何あれ凄っ!?

あとで教えてもらおう……

そう思えるほどには卓越した手さばき。

熟練の餃子職人がそこにはいた。

 

「今日は八名様のご案間よ! しかも客層は若めの世代……数を増やしてたくさん儲けるチャンス! 素早い提供で顧客満足度アップと回転率を上げるよ!」

「ねりまきここ居酒屋じゃない! 居酒屋じゃないから! それじゃあ手本にしようにもできないじゃない! しっかりゆっくり教えてよ!」

「えー……。じゃあほら、めぐみんを見て。あれが手本だよ」

「ふふん、我が餃子を見よ! ねりまきの家で手伝いをしていたので包むのは得意なのですよ」

 

ゆんゆんとアイリスがめぐみんの方に目をやる。

自信満々なめぐみんの手元を見てみれば――確かに早い。

しかも餡の量もちょうどよく、形も整っている。

まさか、この爆裂娘がこんな器用だったとは。

しかしねりまきの方が凄いのに、めぐみんが手本かぁ……

 

「……今、私の方が手本かと疑問に思いましたね? いいですか。あの人は例外も例外です。そもそもの精度練度が桁違いなのに今はさらに支援魔法で常人ならざる動きをしています。最初こそねりまきはゆっくりやって見せてましたが、居酒屋スイッチが入ったら手がつけられません。今手本にするなら私ですよ」

「うん。確かにねりまきのは凄すぎてマネできないからめぐみんを参考にした方がいいかもね……」

「ご指導よろしくお願いします、めぐみんさん!」

 

めぐみんの指導の甲斐もあり、あれよあれよという間に、餃子の山ができあがっていく。

夥しい量を見なければ、餃子の包みで賑わうその光景は平和そのものだった。

……これ、食い切れるのか?

 

 

 

 

結局チャーハンはなしになった。ついでに卵スープも変更せざるを得なかった。

火がついたねりまきが餃子をさらに追加して作り始め、量産した餃子は俺たちで食い切れるか怪しい量になったからだ。

というわけで今晩は餃子は焼き餃子とスープ代わりの水餃子の二種類に。

そんな料理のいい香りを嗅ぎつけて料理を手伝わなかった三人も食卓に着く。

そして――

 

「ゥンまああ〜いっ!!! 何て言いますか、外国の繁華街の風を感じるといいますか!! 味も香りも刺激的なのにそのすべてが調和してるといいますか!! とにかくアイリス様の味がします!!! 生まれて来てよかった〜〜!!!」

 

餃子を食べたクレアは大歓喜していた。

九割の餃子はねりまき産だから多分それもねりまきが作ったやつだろうが、まあ、クレアが喜んでるんだったらそれでいいか。

 

「何だこれは! この香ばしさとジューシーさ……っ! このような料理は食べたことがない!」

「おいしいです! お兄様! この餃子、すごく美味しいですっ! こんなにおいしいのに王城の食堂に並んだことはない……今度料理長にこれを作ってくれないか頼んでみます!」

「私も我が家で作ってくれないかお願いしてみるとしよう。カズマ、ねりまき。後でレシピがあればお願いしたいのだ……」

 

ダクネスとアイリスも目を丸くして嬉しそうにそれを食べる。

予想以上に喜んでくれてうれしい限りだ。

普段高級食材しか食ってない人たちからしたら、こういう庶民の味は目新しいだろうが、それでもここまで喜んでくれるとは。

 

王女様がキラキラした目で餃子を頬張る姿を見ながら、

俺は、ジャンクフードに感動してる箱入り娘たちを、どこか微笑ましい気持ちで見守るのだった。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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