初日の夕食を終え、ふっかふかのベッドで熟睡した俺たちは再び竜車に乗り込み旅の続きへ。
まあ、その道中も昨日と同様で、遭遇したアンデッドをアイリスが凄い技を繰り出したり、アクアがターンアンデッドで浄化したり、めぐみんがエクスプロージョンで爆裂したり、ねりまきが中級魔法と思われる魔法で焼き払ったり……
特に俺とかダクネスが出る幕なく終わった。
そして今日も今日とて晩ご飯の準備だ。
と言っても昨日余った餃子があるのでそれを今回は揚げてみたりしている。
いくら旨いといえど量が量なもので、ねりまきが作りすぎて食べきれなかったのだ。
と、そんなことをしているとアクアが自慢げにどんぶりを見せつけてきた。
「見てカズマ! ツナマヨご飯よ! 絶対おいしいわ!」
「……今日のメニュー揚げ餃子なんだが。もしかしていらないのか?」
「それはそれ、これはこれよ。それにこれは私の渾身の傑作料理……もう少し美味しそうだなーって反応してくれてもいいと思うんですけど」
「渾身って……それ、料理っていうかただツナとマヨ混ぜて白飯に乗っけただけじゃ――」
「あら、そんなこと言っちゃうってことはカズマはいらな――」
「いります」
「素直でよろしい!」
どうしてそんなドヤれるのか疑問だが、ツナとマヨと白飯なんて旨いに決まってる……それだけはわかりきってんね。
何が渾身なんだかわからないが、どう足掻いても旨いことは確定してる丼に思いを馳せていると。
「ねえアイリス、先に一緒に食べましょうよ!」
「で、ですがお兄様はまだお料理をしていますし……」
「いいのいいの。カズマの料理はまだ時間かかるし、お腹すいたでしょ?」
「ではお言葉に甘えて……。ところでその、今の一瞬で作り上げてしまったその料理は……」
「シーチキンとマヨネーズ、それから隠し味に醤油をかけた女神アクアのスペシャル丼よ! ネギとかラー油とかをトッピングしたらもっとおいしいわよ。ほら、食べてみて」
「そ、それでは、いただきます! ……んっ!? お、おいしいですっ!? 何ですかこれは、もの凄くおいしいですよ! 何て言いますか、マヨネーズが全てを調和して、後から抜ける醤油の香りがなんとも!」
そんな内容が聞こえてきた。
見るとテーブルの上には、炊きたての白米の上にどっさりとツナマヨを乗せた丼がさらに量産されて鎮座していた。
いや、王族に何てもん食わせてんだよアイツ……流石に手抜きが過ぎるんじゃないか?
そう思ったが、思いのほかアイリスには好評だ。
何なら他の箱入り娘たちも同様に「手軽においしい料理が完成する……だと!? これは革命だ!」だの「軍事基地に送れば……こ、これはレインに相談しなければ!」だの、褒めまくってアクアは「それほどでもありますけど?」と鼻高々である。
昨日の餃子と同じくらいのリアクションを見て、俺は何ともいえない気持ちになりながらそちらの方を見ていると。
「なぁにカズマ。こっちの方見ちゃって……羨ましいんでしょ?」
「……別にそういうわけじゃないんだが」
「カズマってば素直じゃないわねぇ。いいわ、私がおにぎりにして食べさせてあげるから口開けて待ってなさい!」
「いや、別にいいって。後で落ち着いてから食べるから」
「ほらほらぁ、これがほしいんでしょう? 食べてみなさいって! あーん!」
そう言われて、半ば強引に食わされたが……
「どう?」
「……なんだろう。劇的に旨いってわけじゃない。ご飯はべちゃべちゃだし、ツナは油っぽいし……それこそコンビニで買ったツナマヨおにぎりの方が旨い感じがする。けど、なんだろうこれ。懐かしいっていうか、お弁当あること伝え忘れて、朝になって母さんが怒りながらも急いで作ってくれたお弁当に入ってるような………………………………何これやばい!? 帰って来れなくなる!? 何だコレ!?」
「『ツナマヨおにぎり~在りし日の幻影を込めて~』よ」
「そんな隠されたサブタイトルが!?」
もうこいつは冒険者とか魔王討伐諦めてその道に進んだ方が大成する気がする。
旅を初めて早数日。
昨日の夕飯はめぐみんが担当した。
三日三晩餃子尽くししてようやくねりまきの餃子がなくなったが、めぐみんは一体何を作るのだろうか。
めぐみんはあれでいて俺と同じくらい、いや、それ以上に料理の腕がいい。
ねりまきの店で修行をしたからとのことだが、アクアみたいに変な創作料理でもなければ、ダクネスみたいに肉を焼くだけのシンプルな料理でもなく、ゆんゆんのような非常に手の込んだ料理でもない。
家庭の味に近しいも、それよりワンランク上の味付けで、パーティーメンバーはみんな絶賛している。
めぐみんは冷蔵庫の中に入っている、ゆんゆんが持ってきた食材を吟味していた。
「ちょっ、これあと少し経ったら悪くなりそうじゃないですか! これも……これも!? ゆんゆん、しっかり新鮮な食品を目利きしたのですよね!?」
「えっと、結構急いでたから適当にぽぽぽぽーんって感じで……」
「まったく! この子はまったく!」
「ご、ごめん。でもいつもめぐみんが買い出し担当だから、詳しいことがわからなくって……」
「はぁ……この買い出し担当である私が今度買い物の時に指導してあげましょうかね」
「えっ、それってもしかして一緒にお買い物に行けるってこ――」
はにかむゆんゆんを無視してめぐみんは冷蔵庫の中を漁りまくる。
家でも食材の消費期限を考えてめぐみんが管理してくれてて、たまにこうして食材を調整してくれているのだが……
ロブスターとか生肉だとか、冷蔵庫がなきゃどうやって保存してたんだってもが冷蔵庫の中からどんどん出てくるので驚きを隠せない。
結局、今日の夕食はロブスターのエビチリとミノタウロスのチンジャオロースになったらしい。
ロブスターをエビチリにするってどんな贅沢だとか、ミノタウロスって食用だったのかみたいな疑問は捨てておく。
だって異世界だもの。
とりあえず料理の腕は紅魔族三人娘だけで足りるとのことで、俺は暇つぶしに外へ出た。
どうせ――
「おーいアクアー、アイリスー。またアンデッドが出たぞー」
「またぁ? いい加減面倒くさいんですけどぉ。どうせだったらドラゴンの討伐をする必要のあるカズマが倒せばいいじゃない。レベル低いんだし」
「バカだな。今更俺がレベル上げたってドラゴンの攻撃掠っただけで即死だ。ただ苦労するだけだったら楽な方を選ぶに決まってんだろ」
「……お兄様、さすがに今の発言は堂々とするものじゃないと思います」
アイリスにジト目で言われるが、それはそれでご褒美な気がする。
呆れられても喜ぶなんて、とうとう俺も末期かもしれない。
さて、そんなことより問題は周囲をぐるりと囲む形でやってくるアンデッドだ。
結界のおかげで放置しておいても問題なさそうなんだが、夜になるとうめき声と結界を叩く音でうるさい。
初日の夜はその声のせいで起こされて苛ついたが……
「そんじゃ今日も頼むわ」
「任せなさいっ! 腹ごなしの『ターンアンデッド』!」
アクアが光を放つとアンデッドたちはそれに包まれて姿を消した。
そして、その光に気づいたように他のアンデッドたちもアクアの方へ引き込まれるように……
「お前ってアンデッドだけには好かれるよな」
「アンデッドだけって何!? 人間にだって私の魔性の魅力の虜になってるわよ! 確かに私は女神だし、アンデッドモンスターが私の神聖なオーラを感じて救いを求めるのはわかるけど、アンデッドだけって言うのはおかしいと思うの!」
「そんな、お前が人間相手にモテモテだなんて……」
鼻で笑おうとして、一つ聞き捨てならない発言が聞こえた気がした。
「……おい、今なんて?」
「えっ? いや、アンデッドが女神に救いを求め――」
「お前かぁぁあああああぁっっ!!」
「いったいったいったい! やめ、頬を引っ張らないでぇ!」
アンデッドがよく集ってくる原因ってコイツかよ!
俺はアクアの頬を力の限り引き延ばした。
そんなことがありつつ、俺たちは数日かけてついにエルロード王国の王都に到着した。
馬車からその外観を見た瞬間、そこに広がっていたのは巨大かつ煌びやかなカジノやホテル、そしてそれらを埋め尽くすように行き交う人々。
「おお……ここがカジノ大国エルロード……」
その規模は思わず声が漏れるほどだった。
昼間だというのに、街のあちこちで掛け声が響き、熱気が肌を刺す。
カジノ大国と聞いていたのでそこまで驚きはなかったが、一つだけ気にかかることがって俺は眉をひそめた。
(ラグクラフトは俺を理由に経済支援を打ち切りたいって話し方だったから経済的に疲弊してるのかと思ってたんだが……)
もちろんサクラを雇ってそう見せかけてる箇所もあるが、この王都はもの凄い活気に包まれている。
こんなに活気があるんだったらもっと別に交渉することがあるだろうに、どうして裁判で支援の打ち切りを……。
宰相ほどの地位にいるヤツなら、ベルゼルグ王国は魔王軍の進行をせき止める防波堤みたいなもんだって理解してるだろうに。
もしベルゼルグ王国の支援を打ち切ったら滅んで、エルロード王国にも被害がでるって知ってるはず…………いや、だからこそベルゼルグ王国が断れないと踏んでか?
(……もしかしたら交渉に使えるかもしれないな。……理不尽な言いがかりをしてきたらアイリスと婚約破棄のついでに支援をどうするか追求してやる)
俺がそんなことを思っていると、唐突にアイリスの声が響く。
振り向くと、彼女はじっと俺の顔を見上げていた。
「お兄様、今のお顔……まるで暴れん坊ロードに出てくる悪代官のようです。何か企んでいるのですか?」
「い、いやいやいや、そんなわけないだろ!? 大体悪代官って……そんな悪い顔してたか?」
「はい、とっても」
どうやら俺はポーカーをしない方がいいらしい。
アイリス見破られて変な汗まで出てきた。
いや、別に企んでるってほど企んでるわけじゃないんだけどな!?
ただアイリスに内緒で婚約破棄の話を考えるのが若干後ろめたくて……
気まずくてアイリスから視線をそらせていると、クレアがニヤリと笑いながら俺に耳打ちをする。
「ふっ……流石は私の見込んだヤツだ。アイリス様の婚約破棄、何かいい手を思いついたんだな?」
「クレアは……金色のお饅頭を渡すエチゴヤみたいです」
「あ、アイリス様お戯れを! 私はアイリス様に使える清く正しい身です! し、信じてくださいアイリス様ぁ!!」
喋れば喋るほど嘘くさくなるのはどうしてなのだろう。
結局、クレアによる必死の弁明タイムが始まったのだった。
竜車の中でクレアが弁明しているうちに、俺たちが宿泊する宿へと到着した。
見上げれば、外壁に豪奢な装飾が施された三階建ての大きな建物。
外観だけ見れば高級ホテルだが、中もそれ相応の宿であるらしい。
荷物を各自部屋に置くと、自然と行動が分かれた。
クレアは「まずは王城に到着のご報告を」と城の方へ出かけていく。
めぐみんは「せっかくの機会です。ドラゴンの討伐の前に観光していきましょう!」と街へ繰り出した。
めぐみんだけなら心配だが、その後を「待ってよぉ!」と追いかけるゆんゆんに、言わずもがなねりまきもついて行くようなので街中で爆裂するなんてことにはならないだろうと安心して見送る。
一つ問題があるとすれば、めぐみんがアイリスの手を引いていたことだろうか。
「あっ、待てめぐみん! 護衛なしでアイリス様を連れ出そうとするな!」
「安心してくださいダクネス。私たちはこれでも武闘派集団として名を馳せている紅魔族。そんな頼もしい
「そう言われれば確かに…………い、いや待て! めぐみんは爆裂魔法しか習得していないのにどうしてそんなに自信満々に護衛を買って出ているのだ!?」
慌てた様子で追いかけて行ったダクネス。
……めぐみんはともかく、ゆんゆんとねりまきがいれば大丈夫だろう。
ゆんゆんは体調がほとんど戻ってるし、ねりまきなんてここ数日めぐゆん成分を摂取し続けているため旅の疲れなんてこれっぽちもなく肌の色艶が誰よりもいい。
しかしダクネスは自分がついて行ったところで攻撃が当たらないへっぽこ護衛だってことを承知しているのだろうか。
まあ、いいか。
アイリスもあんなに楽しそうだし、あんなに強かったし。
護衛なんて元からいらなかっただろ。
そう思いながら5人を見送ると、宿に残っているのは俺とアクアの2人だけ。
「さてカズマ」「カズマだよ?」
「ここがどこか知ってるかしら?」「エルロードだろ?」
「カジノ大国よカジノ! だったらまずはカジノに行かなきゃ!」「行かない方がいいと思うよ?」
「そこで大勝ちしたら、そのお金で美食巡りよ!」「へぇ~」
「絶対ここなら、とびきり高いシュワシュワだって売ってるはずだもの!」「あっそう」
いや、俺たちドラゴン討伐しに来たんだが。
俺は思わず眉をひそめる。
しかしそんな俺の表情を見ても何の反応も示さないアクア。
どうやら旅の目的を忘れてるらしい。
「おいアクア。俺たちはカジノしに来たんじゃないぞ? それに俺たち今巨額の借金を背負ってる状況だし」
「さあカズマ! めんどくさいこと何て抜きよ! カジノが私たちを呼んでいるわ!」
「まずはドラゴンの討伐をするために情報を集めたり、準備を――って話聞けぇっ!?」
アクアは何にも聞いちゃいなかった。
俺の返事も待たずに勝手に走り出す。
……言うまでもないが、アクアの幸運値は最低クラスだ。
どう考えても大勝どころか、瞬殺で資金が溶ける未来しか見えない。
しかも、こっちはまだ借金を抱えている身だ。
そしてこれからさらにエルロードから賠償金を請求される。
これ以上……コイツに変なことをされちゃあ困る!!
俺はドラゴンの討伐に関する情報収集をする前に、カジノへと追いかけることを余儀なくされた。
最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…
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第6章(現在の章)
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第7章
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第8章
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リメイクしてテンポよく進める