我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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2-2 異端なる…盗賊娘(マジックダガー)

ゆんゆんが「食べきれないのでどうぞカズマさんも……」と、どこか嬉しそうに皿を差し出すので、俺はそれを受け取って口に運んでいた。

俺の皿が半分ほどになったあたりで、二日酔いのアクアが登場。

やっぱり昨日あれだけ飲んで、途中から水にしたからと言って焼け石に水だったのだ。

そんなアクアもまたゆんゆんから皿を受け取ったのだが……

昨日あれほど酒を煽ってゲロったのにも関わらず「向かい酒よ!」と朝っぱらから飲もうとしていた。

俺が鉄拳制裁してやったことは言うまでもない。

 

そんなパーティ、色気のいの字もなく。

そもそも、馬小屋生活なんてしてるんだ、色気なんてものを求めていい次元ですらなく。

俺は異世界で決意した、健康で文化的な最低限度の生活を営むことを。

そのためにも……

 

「スキルを覚えよう!」

「……ゴクン。いきなり立ち上がって何かと思ったら。まあ頑張んなさいな。モグモグ……」

「いや、少しくらい興味持てよ。俺、一ヶ月以上異世界生活をしててスキルとか魔法みたいなヤツを何一つ覚えていないんだが。そもそもどうやって覚えるのか何も知らないんだが。チュートリアルは? 元なんちゃらなんだったらそれらしく俺のことを導いてほしいんだが?」

「元じゃなくて現在進行形で女神なんですけど! というか、それが人にものを頼む態度なのかしら。この崇高なる女神から直々に教えを賜りたいのなら、それ相応の献上品とか言葉というものがあるんじゃ――」

「ゆんゆん、俺に魔法を教えてほし――」

「わあああ待って待って! 私に説明させて! 久しぶりに女神っぽいことできると思って調子乗っちゃっただけなのよ! お願いだから私に言わせてちょうだい!」

 

久しぶりに女神っぽいことできるって……

こんなんでも女神っぽくないって自覚あったのか。

そう思いながら俺はため息をつき、泣きながら俺の肩をつかんでくるアクアに話を促した。

 

「じゃあ教えてもらいたいんだが、どうやってスキルとか魔法って覚えるんだ?」

「普通は冒険者カードにその職業で習得可能なスキルが表示されているのだけど、カズマの職業は冒険者よね」

「おう。俺の冒険者カードには一つもスキルが載ってないんだが……」

「冒険者登録するときにギルドの受付の人から聞いたと思うんだけど、冒険者はどんな職業のスキルでも覚えることができるの。そんな冒険者は誰かにスキルを教えてもらうとカードにそのスキルが表示されて、それでスキルポイントを消費して覚えるのよ!」

「…………満足したか?」

「うん! とっても!」

 

その顔は自分の責務を全うしたと言わんばかり。

さっきまで二日酔いで肌はくすみ、髪はボサボサな状態だったはずなのだが、今や肌の状態は透き通り張り艶よし、髪もツヤツヤ。

……もしかして、女神っぽいことをするとアルコール分解が促進される機能でもあるのだろうか。

 

そんなことを思いつつも、アクアの説明を受けて、俺は何のスキルや魔法を教えてもらって習得しようか考え始める。

どんな職業のスキルでも覚えることができる、か。

幸いにも攻撃魔法のプロフェッショナルらしい紅魔族もいるし、せっかくの異世界だし魔法とか使ってみたいと思うのは中二病関係なく人類の性だろう。

 

「なあ、めぐみん、ゆんゆん。もしよかったら魔法について教えてほしいんだが……スキルポイントさえあれば昨日二人が使ってた魔法も覚えられるんだよな?」

「おおっ! そうです、その通りですよカズマ!」

 

俺の言葉に食いかかるように、めぐみんが目を爛々と輝かせてズイと身を寄せてきた。

余計なこといってしまったかもしれない……

 

「冒険者はアークウィザード以外で唯一爆裂魔法を習得できる職業なんです! カズマが爆裂魔法を使いたいというなら幾らでも教えてあげましょう! というか爆裂魔法以外で覚える価値のあるスキルなんてありますか? いいえありませんとも! さあ、私と一緒に爆裂道を……ウップ……ヤバい、ヤバいです。我の内に秘められし邪神の力が溢れそうなのです……」

「もうめぐみん、朝から食べ過ぎたせいで……というかカズマさんに何爆裂魔法を教えようとしてるのよ。カズマさんのレベルで爆裂魔法を習得できるわけないじゃない」

「ゆんゆん、確かにその通りなんだが、なんだか胸が痛むからはっきりと言わないでほしい……」

「あ、いや、カズマさんが弱いとかそういう話じゃないんですよ?」

 

絶妙に人の心を抉ってくるんだが!?

これも長年ボッチの弊害なのだろうか……

 

「た、確かにカズマさんは魔力が低いし、爆裂魔法なんて使ったら干からびて死んじゃうんですけど、そうじゃなくて、ただ、アークウィザードですら習得に50ポイント必要って意味で!」

「あ、ああ、そうだな。スキルポイントは3しかないし、爆裂魔法は無理だな、うん」

 

ゆんゆんに背中をさすられながら特殊な呼吸法を実践しているめぐみん……

そもそも爆裂魔法を教えてもらえるような場合じゃない件。

俺は苦笑いを浮かべながら、その何とも言えない微妙な場をごまかしつつ。

 

「ところでゆんゆんの魔法はどうなんだ? 何か俺が習得できそうな魔法はあったり……」

「えっと、わ、私は中級……じゃなくて上級魔法しか覚えてなくて! その、紅魔族は上級魔法を使えるようになったら一人前で――」

「おい、その言い方だと私が半人前だと聞こえるのですが? というかゆんゆんも上級魔法は使え――」

「わあああ! 変なこと言おうとしてるめぐみんのことは気にしないでくださいね! 私は昨日見せたように泥沼魔法のような上級魔法しか使えないので!! 上級魔法はアークウィザードでも30ポイント消費するので私からカズマさんに教えられる魔法はないですねっ!!」

 

何か慌てた様子でめぐみんの口に両手を押し当てるゆんゆん。

ただスキルを教えてほしいって言っただけなのに激しく断られたんだが……

これって泣いてもいいよな?

少し涙ぐんでいると、そんな俺を見たゆんゆんがさらに慌てた様子で。

 

「あ、いえ、別にカズマさんに魔法を教えたくないわけじゃないんですよ!? ただ、冒険者はスキルや魔法を覚えるのに専門職より多めのスキルポイントが必要で、あの、その……だ、だから泣かないで……?」

「べ、別に泣いてねーし!? というか涙目なのはむしろゆんゆんの方だろ! ギルドのお姉さんがこっちに最低な野郎を見たときの冷ややかな視線を向けてくるから悲壮な雰囲気を漂わせないで!?」

「わ、私だって泣いてませんよ! とにかく、冒険してスキルポイントをためればいずれ習得できますから、だからカズマさんこそ落ち込まないでくださいね?」

 

めぐみんはもとより、ゆんゆんの魔法も駄目かぁ……

つい先日冒険者登録したばかりの俺に冒険者の知り合いがいるわけもなく、誰にスキルや魔法を教えてもらえばいいのか。

残るはアクアだけだが戦闘で全く役になっていないし……いや、でも背に腹は代えられないか。

 

「モグモg……うん? どうしたのカズマさん、背に腹は代えられないっていう覚悟とは裏腹に歪そうな表情してるけど?」

「どうしてそこまで読み取れているのに察し悪いんだ……。なあアクア、スキル習得したいんだがなんか俺に良さげなスキル教えてくれよ。お前、一応女神なんだから何かしら便利そうで低コストなヤツあるんだろ?」

「一応って何よ! ……まあでもいいわ、さっき女神っぽいことできたし気分がいいから特別に聞かなかったことにしてあげる。あ、できればなんですけどカズマさん、スキル教える代わり今晩の酒代なんだけど……」

「しょうがねえなあ。ちゃんとしたスキル教えてくれるなら今晩は俺の奢りでも――」

「さあ、私のとっておきのスキル見せてあげましょう! 今日は出血大サービスよ!」

 

未だかつてこんな調子のいいやつを見たことがあっただろうか。

というか昨日の飲み過ぎについて何も反省してないだろ!

まあ、スキルを教えてくれるっていうし今だけは見逃してやろうと思う。

 

「じゃあ今から花鳥風月ってスキルを一通りやってみせるわね」

「おおっ、何かかっこよさそうな名前だ……期待してもいいのか?」

「もちろん! ではではお立ち会い! まずはこの空になったコップを頭に乗せるわ!」

「おおっ……お? 何だって? コップを頭に乗せる?」

「そして次にこのコップにこの種を入れるわ。すると、あら不思議! 水を吸った種がにょきにょきっと……」

「誰が宴会芸スキル教えろっつった、この駄女神!」

「ええぇぇェェーー?!?!」

 

やっぱり駄目な女神は駄女神なんだな……

と、そんなことを思っていた時だった。

俺の後ろの方から高らかな笑い声。

振り返るとそこには昨日俺たちのパーティーに加入したいと行ってきた女騎士と、昨日は見なかった身軽な装いをした銀髪の少女がいた。

 

「あっはっは! 面白いねキミ! もしかして君たちが昨日ダクネスが言ってたパーティの人?」

「アンタは……」

「あたしはクリス、見ての通り盗賊だよ! ダクネスとは……腐れ縁ってやつかな? 昨日はダクネスが迷惑かけたみたいだね」

「お、おいクリス! 私は迷惑などかけては……!」

「迷惑かけられました」

「断言、だと……ン……クッ///」

 

こ、この人顔を赤く染めて体をくねらせてる……

昨日やんわりと断ったつもりだったんだが全然通じてなさそうだし、危険だ!

 

「ま、まあ、普段からこんなんだけど根はいい子だからさ、そう邪険に扱わないでくれると嬉しいかな」

「普段からこんなんだったら断りたいんだが……。というかクリスだっけ? そんな耳障りのいい言葉で誤魔化そうとして、実は俺に問題児を押しつけようとしてるんじゃないだろうな?」

「お、おい、流石に無礼が過ぎるのではないか!? クリス、この男に言ってやってくれ、私は問題児ではないと!」

「あ、あはは…………その話は置いといて」

「クリス!?」

 

頬をかきながら誤魔化すクリス。

やっぱり問題児を押しつけようとしてるだけじゃねえか!

ダクネスはそれを見て、思わずといった様子で声を上げ、涙目になってクリスに掴みかかった。

 

「いたたたっ!? だ、ダクネス、手を離して! 手が、手がもげちゃうからぁっ! あたしの手を握りつぶそうとしないでっ!」

「まさか私のことを別パーティーに押し付けようと企んでいたなんて! 私とクリスの友情はそんなものだったのか!」

「別にダクネスの事を他のパーティーに押し付けようだなんて思ってないから! そもそもダクネスが加入したいって言い出したんでしょ! じゃあ親友であるあたしがそのパーティーのことを見定めないとじゃん!」

「そ、そうなのか? それはそれでなんと言うか、仲間に裏切られて売り飛ばされる女騎士感が無くなってつまらないんだが……」

「今、つまらないって言った?」

「言ってない」

「ううー、頭が痛い……前々から思ってたけど、大丈夫なのかなこの子」

 

駄目だと思うこの子。

先程まで手を締め付けられて悶絶してたのに、今や頭痛で頭を抱えてるクリス。

この人もだいぶ苦労してるらしい。

俺はその肩にポンと手を置いて。

 

「まあ、お互い頑張ろうな。じゃ、そう言うことで……」

「ああっ、ちょっと、どこ行こうとしてるのさ! 話は終わってないよ!」

「苦労人のよしみで見逃してくれよ。俺のパーティーにトラブルメーカーはもういらないんだ」

「よしみって言うならそう言わずに、今なら無料でスキル教えるからさ!」

 

スキル……スキルかぁ……

丁度スキルや魔法を覚えてみたかったし、魅力的な提案なんだがなぁ、そのついでに変な物まで押し付けられそうなのがなぁ……

そんな葛藤がギルドから立ち去ろうとしていた足を止める。

その隙をを逃さず、ニヤリと笑いながらクリスが。

 

「ねえきみ、カズマくんって言ったよね? 話を聞く限り便利でお得なスキルがほしいみたいじゃない。盗賊スキルなんてどう? とっても便利だよ! 盗賊スキルは習得にポイントがあんまりかかんないし、罠の解除に敵感知、窃盗、潜伏などなど、どれも冒険には必須だよ」

「確かに俺がほしいスキルにドンピシャだし、持ってるだけで冒険に役立ちそうなスキルがたくさんだ」

「でしょ?」

「でも問題児押し付けられるのはなぁ」

「また問題児って言われたぞ!? クッ、こんな仕打ち、は、初めて、だ……っっ……///」

 

俺の言葉が心外だったのか叫び、顔を赤くするダクネス。

いや、初めて会った昨日から何かヤバいものを感じるんだが?

トラブルメーカーに特有のオーラがダダ漏れなんだが?

さらに追い打ちをかけるようにダクネスに白い目を向けると、ダクネスはさらに顔を赤くして身震いしてるし……

やっぱり俺のレーダーは間違ってないと思う。

そんなことを思っていると、ダクネスの肩に手を置いたクリスが。

 

「カズマくん。ダクネスはね、どんな状況でも私が危険にさらされたら身を挺して守ってくれる騎士の鏡なんだよ。あんまりあたしの親友をいじめないでほしいかな」

「クリス……」

 

嬉しそうに顔を綻ばせるダクネス。

それを見て、今までダクネスのことを問題児として見てたのが少し申し訳なくなる。

今からは問題児としてじゃなく、ダクネスという一個人を見てみようと話しかけようとして――

 

「まあポンコツなのはご愛嬌だけど」

「クリス!?」

 

ひどい手のひら返しを見た。

 

「まあそういうことでダクネスのこと、一回考えてみてほしいな。それでどうかな? 覚えてみない?」

「……念のために言っておくが俺のところは問題児委託所じゃないんだからな? 俺にだって仲間を選ぶ権利はあるんだからな?」

「もちろん! ダクネスをパーティーに入れるかどうかは君たちがダクネスの実力を確認して、納得したらでいいよ。スキルは先輩冒険者からの餞別ってことで!」

「そう言うなら、まあ」

「よし、いってみよう!」

 

こうして、俺は盗賊スキルを習得するためにクリスについて行くのだった。

ストーリー進行の早さどうですか?

  • もっとはやく(伏線など要所に絞って書く)
  • ちょいはやく(アニメ各話ごとに~1万字)
  • 今で丁度いい(アニメ各話ごとに2万字)
  • もっと深掘り(アニメ各話ごとに2万字~)
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