我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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14-3 覚醒する…強敵(ライバル)

ドラゴン討伐――それは冒険者なら誰もが夢見る偉業にして、最難関の試練だ。

あの化け物どもは魔法にも状態異常にも強烈な耐性を持ち、下手な魔法は弾かれて終わる。硬い鱗に覆われた肉体は鋼鉄よりも頑丈で、そこに繰り出される豪腕は巨岩を粉砕し、翼を広げて空を縦横無尽に飛び回る。あまつさえ、こちらの攻撃が届かない高度から鋼鉄すら溶かす炎を吐いてくるのだからたまらない。

討伐するにはパーティ全員のレベルを上げ、ステータスを極限まで強化して、文字通り力押しで叩き伏せるしかない。

 

そんな強敵に、低レベル冒険者パーティーが正面から挑もうとしている。

そんな死んでも直らないような馬鹿たちは止めるべきなんだが。

……そんな馬鹿は俺たちです。

 

いや、当初の計画では、眠っているドラゴンを爆裂魔法で叩き起こさないよう慎重に接近し、寝込みを狙ってやるつもりだったんだ。

だが現実は非常だった。

 

 

『緊急避難警報! 緊急避難警報! 金鉱山のドラゴンが街に迫っています! 住人は直ちに金鉱山の反対側へ避難してください! 繰り返します! 金鉱山のドラゴンが……』

 

 

仕方なしに作戦を変更し、ダクネスには防御に専念してもらい、ゆんゆんとねりまきはその間に攻撃魔法でドラゴンの気を散らし、アクアは支援魔法で全員の耐久を上げる。そして最後はめぐみんの爆裂魔法でトドメ……という風にしようと思っていたのだが、めぐみんは魔力が足りず、またも練り直し。

 

「ったく、なんでこうなるんだよ……!」

「カズマ、嘆いていても仕方がない。今できることを……私に指示をくれ。あのドラゴンの足止めをしてこいと。異国とはいえ、貴族が民のために体を張らずにどうする! さあ、命令するのだ。肉壁となり住人たちの避難が済むまで猛々しいモンスターに蹂躙されてこいと……ッ///」

「前半はかっこよかったのに後半で台無しだわ! というかお前でも数分は持たないんだろ? 今考えてるから先走らないで待ってろ」

 

まあ、どうせダクネスには防御に専念してもらうことになるが、それよりドラゴンを倒すための決定打がない。

後1時間か2時間かでめぐみんの魔力は回復するそうだが、それではドラゴンに致命傷は与えられないらしい。

 

「くそっ、爆裂魔法以外でドラゴンにダメージを与えられれば、それで爆裂魔法でとどめさせるレベルまで体力を削ぐ作戦ができるのに……」

 

めぐみん曰く、あのドラゴンには物理攻撃の方が効くらしいが、物理攻撃に特化したヤツはいない……強いて言えばミツルギとかアイリスが物理特化型だろうが、片方はいないしアイリスの手は借りられない。

ダクネスなんて攻撃スキルを持ってないし、そもそも当たらないので論外だ。

じゃあ攻撃魔法しかないわけだが……

 

「なあ、中級魔法でドラゴンにダメージ与えられるか?」

「それは……できなくはないです。けど、中級魔法を上級魔法並みの威力で撃つと燃費が悪いって言うか……撃てて一人二発か三発です」

「それじゃあ爆裂魔法と合わせても倒せない……私が上級魔法を習得していればよかったんだよね」

「嘆いても始まらないわ、ねりまき。私だって上級魔法を覚えられてないんだしそんな無い物ねだりしたって……」

 

しゅんと肩を落とすゆんゆんとねりまきを見て、俺も頭を抱える。

どうすればいいんだ。

俺は額を押さえて深くため息をついて呻いていると、隣からアクアがずいと顔を出してきた。

 

「ねえカズマ! 何かいい作戦はないの!? こういうときに小賢しい作戦を立てるのだけは得意でしょ!」

「頼りにしてるのか? それとも馬鹿にしてるのか?」

 

しかしそんな簡単にいい案など思いつくわけもなく、アクアに少しは「いい案の1つくら出して――」と言いかけて、俺はあることを思い出した。

 

「……待てよ? なあ、ゆんゆん。今ゆんゆんが持ってるスキルポイントっていくつだ?」

「え? えっと、29ポイント、ですけど……」

「上級魔法って確か30ポイントで覚えられるんだったよな。爆裂魔法と上級魔法を合わせればあのドラゴンも倒せるんじゃないか?」

「そ、それはそうかもですけどまだ覚えられな……って、まさか!?」

「ああ、そのまさかだ。今から1レベル上げて上級魔法を覚えれば……」

「む、無理ですよ! レベルは上がりにくいですし、今からレベル上げなんてしてる時間――」

「本当はスキルアップポーションがあればよかったんだが……まあ安心してくれ。とっておきがある」

 

俺は勢いのままゆんゆんの耳にコソリと天才的な案を打ち明ける。

それを聞いてさらに目を見開くが「それなら……」とゆんゆんは強く頷いた。

 

「ねりまきはテレポートアクセルの街を登録してたよな!」

「えっ、う、うん、そうだけど……」

「そのアクセルの街の地点を上書きしてこの街のすぐ外を登録してくれ!」

「な、なんで!?」

「私がレベルを上げて上級魔法を覚えるんだけど、狩り場からここまでは距離があるのと……く、詳しい話は後でするわ。お願い、ねりまき!」

「なんだかよくわからないけどゆんゆんがそう言うってことはそれでドラゴン討伐いけるってことだよね! よし、任せて!」

 

この作戦ならうまくいく。

そんなゆんゆんの強い眼差しを見たねりまき。

二人はテレポート地点を上書きしに外へ走り出した。

 

「ダクネスは俺たちの準備が整うまで、アクアの支援魔法をもらってドラゴンの足止めをしてほしい。あの竜車を引っ張ってくれたモンスターに乗って逃げ回ってくれ」

「……なあ、もしそのリザードランナーがドラゴンを見て混乱して、振り落とされたり逃げたり、言うことを聞かない場合は私がその暴力に耐えても――」

「駄目だ。しっかり言うこと聞かせて逃げ回ってくれ………………不満そうな顔すんなよ」

「してにゃい」

「何気に一番大事な役目なんだからな? 間違えても自分から攻撃にあたりに行くようなマネするんじゃないぞ?」

「……善処する」

「絶対だかんな!?」

 

アクアから支援魔法をもらったダクネスは、不満げに、しかしここの住人の命がかかっているのだと渋々了承して外へ出て行った。

まったく、あの変態はどんなときでも変わらないな……

そんなことを考えながら周囲を見渡すと、残るはアクアとめぐみんだけなのだが、その赤い瞳には不安が滲んでいた。

 

「何だよ、らしくもなく変な顔して」

「変とは何ですか! いえ、その……ゆんゆんが上級魔法を覚えても、威力が足りなければ……と思いまして」

「いつもの爆裂魔法の威力じゃないにしろ、ゆんゆんが上級魔法で削ってもか?」

「ドラゴンの魔法耐性はデストロイヤーの魔鉱よりも高いのです。もう少し確実に倒せるようにしたい、と言いますか」

「なるほどな」

 

めぐみんにそう言われてどうしようかと一瞬悩むも、「デストロイヤー」という言葉を言っていたのを思い出し、おもむろにアクアの首にドレインタッチをした。

 

「ひぃやぁああ!? いきなり何すんのよ!? セクハラで鳥の糞が頭に落ちてくる天罰下すわよ!」

「落ち着け、めぐみんの魔力を早く回復させるためにはやむを得ないんだ」

「だからって断りなく首を掴むのもドレインタッチもやめなさいな! 嫌なのよね、吸われるときの感覚が。なんかこう、背筋がぞわぞわするし!」

「いや触ってるのは首だから。背中とか胸じゃないだけいいだろ」

「そういう問題じゃないしそういうことを言ってるんじゃないの! 大体、リッチーの技なんて女神であるこの私に使わないでほしいんですけど!」

「贅沢言ってる場合じゃないんだ、街が火の海になるかもなんだぞ!」

「そもそも私の神聖な魔力はそう簡単に人間に分け与えるものじゃないの!」

「こんの我が儘め! いいから魔力寄こせ!」

 

お前、それで本当に女神なのかと言いたくなる。

俺はアクアの襟首をつかみ、強引にドレインタッチを発動しようとしたが、アクアは必死に抵抗して腕をばたつかせる。

魔力がうまく吸えない。

なんでこんなに頑ななんだ……!

俺とアクアが格闘していると、めぐみんがやれやれと肩をすくめて口を開いた。

 

「いいのです。いいのですよカズマ。アクアに殴りかかろうとしなくても」

「め、めぐみん……でもこいつを今ここで叩きのめさないとドレインタッチできないぞ!」

「バカねカズマ。私の方がステータス高いのに倒せると思ってるの? プークスクス! めぐみんの方がまだ勝ち目あるんですけど! それともめぐみんが止めたってことはカズマの代わりに相手するのかしら?」

「いいえ。そもそも、アクアの魔力量では通常威力の爆裂魔法二発分もないでしょう。この前のデストロイヤー討伐の時も、その程度の増強しかできませんでしたし……やはりドラゴンを一撃で葬るとなると、アクア二人分はほしいところですね」

 

めぐみんの言葉を聞いたアクアがビクッと反応した。

 

「……ちょっと聞き捨てならないんですけど。私二人分必要ですって? あんなトカゲなんて、私の魔力ぜーんぶあげれば一発で片付くんですけど」

「はいはい、そう言いながら実際に譲渡するのを渋っているということはそういうことなんでしょう? 強がらなくていいですから。無駄な争いで体力を消耗するより、私が自己回復した方が建設的ですし――」

「誰が渋ってるですって!? いいわ、やってあげるわよ! 女神の威厳を見せつけてあげるんだから! ほら、早く吸いなさいよカズマ!」

「……ふ、チョロい」

 

こいつはコレを狙っていたのだろう。

めぐみんのゲス顔……ゲスみんだ。

さっきまでドレイン拒否していたアクアは手のひらを返し、今度はドレインタッチするように催促するので俺はため息をつきながらアクアとめぐみんの首に手をやった。

アクアは頬を膨らませてそっぽを向いて……やはりドレインタッチが気に入らないのだろう、不服の意を絶賛表明している中、めぐみんが俺にだけ聞こえるようにコソリと。

 

「しかし助かりましたよ。アクアの魔力とゆんゆんの上級魔法がなければドラゴンの討伐は難しかったでしょうし」

「……なあ、よく思えばアクアが魔力吸わせてくれるんだったらそれで大丈夫なんじゃないか? ほら、デストロイヤーのときだって大丈夫だっただろ?」

「いえ、デストロイヤーの時は移動方向が予測できましたが……ドラゴンは狡猾かつ尋常ではない魔法耐性を持っています。当てるために爆裂魔法の爆発範囲を広げれば威力が落ちますし、かといって範囲を狭めれば外れる可能性だって……。上級魔法があるのなら機動力も殺げますし、体力も少しは削ってくれるでしょう」

「それでも少しなのか……。せっかくゆんゆんが上級魔法を覚えられるのに、そう言われるとしょぼく感じるな」

「まあ、私と比べるのはおかしな話なので」

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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