我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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ゆんゆんのテレポートで、ねりまきは一足先にアクセルの街に帰宅しました。
アクセルの街のテレポート地点をエルロード王国に上書き登録したので、それを元に戻すようにですね。


第四特異点
16-1 帰還せし…姫と英雄(ドラゴンスレイヤー)


帰国後、場内は妙な熱気に包まれていた。

王国を救った英雄一行にふさわしい凱旋だから――ではない。

いや、もちろん数日前まではそう言う理由も含まれていたが。

 

熱気に包まれているのはベルゼルグ王国の城の一室。

ダクネスとレインが、お茶と菓子をつまみながら、呆れたように視線をやる先は俺とクレア。

 

「お前なぁ! あんな場面でよく婚約破棄を提案したな! 頭おかしいんじゃないか!?」

「情けない! あれほどアイリス様を思う気持ちを語っていたというのに! なぜ私が王子に媚びへつらうような真似をしなければならないのだ!」

 

俺とクレアは口論の真っ最中なのだ。

この分からず屋が考えを改めない限り、俺はアイリスを任せられない。

そう思って口論を始めてから早数日――いや、王城の中だけじゃなく帰国中の竜車の中でも行われていたからもう一週間になるか。

 

「……ずっとあの調子でよくもまあ飽きないものだ」

「ほんとですね。もう3日もあのようにやっていて……早くここでの業務をしてほしいものです。誰が代わりに仕事をしているのか、思い出してくれれば」

「ああ、だからレイン殿にうっすらとクマが。毎晩遅くまで光がついているので何をしているのかと思っていたが」

「お、お見苦しいところを。これでも隠したつもりだったのですが……」

 

……どうやらレインはクレアがサボっている業務をすべて引き受けているらしい。

レインの健康のためにも早く終わらせないと――

そう思っていたとき、この部屋の扉が開かれた。

 

「…………まだやっているのですか、あの二人は」

「今ならわかるわ。これだけ長くやってるんだもの、私の説得なんて無意味よね。はあ、早く仲直りしてくれないかなぁ……」

「ゆんゆん、この世の中には喧嘩するほど仲がいいって言葉があってね――」

 

部屋の中に入ってきたのはめぐみんとゆんゆん、それからアクア。

一応言っておく、俺はこいつと仲良くなんてない。

例えるならば今の俺たちは水と油のようなものだ。

そしてこれは、この口論は意地でも絶対に勝たなければならない戦いなのだ。

 

「ねえねえめぐみん、この私とどっちが勝つか賭けてみない? 私はクレアが勝つと思うの。めぐみんはカズマに賭けなさいな」

「エルロードでカジノは満喫したでしょうに、やり足りないのですか?」

「毎日めぐみんの爆裂散歩に付き合ってたじゃない。おかげでちょっと燃焼不良なのよ。ゆんゆんも一緒にやらない?」

「そ、それはちょっと……舌戦だったらカズマさんに賭けてもいいけど、あの喧嘩は……収まるどころかヒートアップしてるし、肉弾戦に発展したら勝負にならないんじゃ」

「カズマは四天王の中でも最弱ですし、皆がクレアに賭けたら勝負できませんからね」

「だから賭けるのはやめて別の遊びを……私、ちょうどトランプを持ってるの!」

「確かに弱っちいカズマに賭ける人なんていないもんね。いいわ、大富豪でもやりましょう!」

 

おい、お前ら三人あとで話がある。

クレアとの話が終わったら覚えておけよ?

そう思いながらもクレアとの話し合いは終わる気配すらない。

 

「だから! ベルゼルグ王国とエルロードの話が丸く収まりそうだったのに、そこの婚約破棄なんて爆弾をぶち込みやがって! 場の空気考えろって言ってんだよアクアじゃあるまいし!」

「今聞き捨てならないようなこと聞こえたんですけ――」

「それでも何とかなったのにどうして今更口論などしなければならないのだ」

「せっかくアイリスが仲良くしようと歩み寄ってるのに、それでも護衛か!?」

「信用ならないものを排除するのが護衛だ。それに、別に支援金の話がなくなろうともエルロード王国との仲がどうなろうともどうでもいい。私がこの身をもってアイリス様を守ればよいのだからな」

 

いくら自信があっても失敗したときにアイリスの悲しむ顔を想像したらあの場であんな発言はできないはずだ。

それなのにクレアは自分の欲望のために……

もしアイリスが結婚したら俺はショックのあまり三日三晩寝込み、結婚式をぶち壊してやろうかと思ってしまうだろうが、アイリスが望んでのことだったら心が引き裂かれそうになりながらも耐えよう。

 

でもこいつは違う!

アイリスが望んだ結婚でもアイリスを説得し、婚約相手を脅してでも婚約破棄させるようなヤツなんだ。

真にアイリスを思えばこそ、そんな思考にはならないはずだ。

 

「貴様こそ、婚約破棄を望んでいたというのが嘘だったというのか! それだけが貴様と共通事項だと思ってなのに……なんという裏切り行為を!」

「最初に俺が婚約破棄の話をしたときに加勢もしなかった野郎に言われたきゃねーよ!」

「あれは無謀というものだ。政略結婚での婚約破棄を目指すなら、場を要しなければならない。貴様がやったのはただ徒に国家間の関係が悪く行為だ……正直失望だ」

「小声でもっと言ってやれって応援してたやつの発言か!? 失望はこっちの台詞だわ!」

 

いくら話してもクレアは自分の行為を間違ったものだと認めない。

俺はこの自分が常に正しいと思っているバカをアイリスから除かねばと決意した。

その気配を察したのだろうか、クレアも腰に帯びている剣の柄を握る。

 

それを見たダクネスとレインは慌てて間に入る。

ダクネスは豪腕で俺を羽交い締めにして抑え込み、レインも冷静な表情を崩さぬまま、詠唱でクレアを魔法の鎖で拘束する。

 

「レイン! 拘束魔法を解除してくれ! 大丈夫だ、こいつには手加減してやる。ああ、手加減してやるとも。その上でボコボコにするだけだ」

「クレア様、もうよろしいでしょう! どうしてアイリス様のこととなると、こうも冷静さを失ってしまうのですか……!」

「レイン! 私は、私はただ……アイリス様の未来を思って……っ!」

「アイリス様のことを思っているのは十分にわかりましたから! だから少しくらい私の業務を手伝ってください!」

 

拘束されてなおも噛みつこうとしているクレアを見て、レインは何度もため息をついて心底呆れている様子だ。

それはダクネスも同じで。

 

「おい、離せよダクネス! こいつには目にもの見せてやらないと俺の気が済まない!」

「落ち着け、カズマ……あれほど仲がよかっただろう? 互いにアイリス様を思う気持ちは本物だろうに、早く仲直りをするんだ」

「離せって! 仲直りだとかそういう問題じゃない! 騙されてるかもしれないが、こいつは自分の欲望に従って婚約破棄を提案しただけだぞ!」

「そんなわけないだろうに……クレア殿は貴族であり史実なアイリス様の護衛だ。どうやら喧嘩のしすぎで疲れて正常な思考ができてないらしい」

「このっ……ドMで頭も腹筋も硬いお前が、クレアの建前と本音を見破れるわけないだろ!」

「なっ!? て、訂正しろ! 頭と……あと腹筋は硬くはない!」

「ドMはいいのかよ。というか腹筋が六つに割れてるくせに硬くないとか……ぶふっ」

「ど、どこでそれを! ふ、風呂場か!? 一緒に入ったあのときの様子は、サキュバスのせいでおかしかったと……操られている間の記憶がないというのは嘘だったな!?」

「痛いっ!? ダクネスそれ痛すぎ――どっか折れる! 体から鳴っちゃいけない音鳴ってるから!」

 

なんで俺はこう余計な一言を言ってしまったのだろうか……ダクネス本当にダクネスの言うとおり今は冷静さが足りないのかもしれない。

こう言えばダクネスが顔を真っ赤に染めて、こうなることくらいわかってたはずなのに。

そんなときだった。

 

「お、お風呂場ですかぁぁあああ――っ!?」

 

突如として誰かが大声を上げた。

その方を――ドアの方を見ると、アイリス様が赤面させて口元を隠し、目はこれでもかというほどに見開いていた。

 

「ら、ララティーナとお兄様は……い、一体どういったご関係なのですか!?」

「ち、違いますアイリス様! これは誤解で……私とカズマはただのパーティーメンバーでそう言った関係ではなく!」

「俺たちの関係は、一緒にお風呂に入ったって事実を否定する程度だったっていうのかよ……!」

「爛れた関係……!?」

「違います! 違いますアイリス様! この男の妄言に惑わされないでください!」

 

その瞬間、ダクネスの力が一瞬だけ緩んだ。

やっぱり天は俺に味方してくれてるし、俺の冷静さはまだ健在だったみたいだ!

俺はすかさず抜け出し、クレアへと飛びついた。

レインの魔法で動けないでいるクレアの頭を取り、即座にドレインタッチを発動させた。

 

「あああああああーっ!?!?」

「ク、クレア様ーっ!? い、今解除しますから!」

 

レインがそう言い、急いでクレアにかけた魔法を解除するが、すでに襲い。

ドレインタッチで急激に体力を奪われたことによる虚脱感でクレアはもう動けまい!

そのまま抵抗する間もなく体力を吸い取ると、クレアはその場で意識を失い、ぐったりと崩れ落ちた。

 

「ふぅ……っ。俺の勝ち!! そしたら次は……」

「…………カズマ? 私を見てどうしたのですか? あの、何かしたのなら謝りますから、その嫌らしい手つきを見せるのをやめてほしいのです!」

「めぐみん、きっとあれよ! エルロードから帰るときに真夜中に爆裂魔法を撃ってモンスターをおびき寄せたじゃない! あの後めぐみんを怒る間もなくクレアさんと口論を始めたから」

「うん、違う。けどついでにそれも怒っておこうか」

「余計なことを言ってくれましたねゆんゆん! くっ、こうなれば意地でも尊厳を守るために、カズマが魔法を発動させた瞬間、隙を晒したその瞬間を狙ってこのアダマンタイト製の杖で殴殺してくれましょう!」

 

俺はさっき四天王でも最弱だのと言ってくれた爆裂魔法しかまともな攻撃手段がないめぐみんさんに最弱職の力を見せつけてやろうと手を構える。

俺は身構えるめぐみんに向けて手を突き出して、フリーズの魔法を唱え、足を封じた上でスティールを使おうと作戦を立て……頭に強い衝撃を感じて意識がなくなっていく。

走馬灯のようにゆっくりと時間が引き延ばされている感覚――

 

衝撃の方にゆっくりを目をやると、赤面したダクネスがいた。

ああ、そうだ、ダクネスと俺との関係をアイリスに誤解させたままだったな……

 

薄れゆく視界の中、心配そうに俺を見つめるアイリスの顔が見えた。

普段は付けていない小さなネックレスが、光を受けて揺れているのを最後に、俺の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

「……お兄様、大丈夫でしょうか?」

「心配いりません、少し強めに殴りつけて気を失っただけです」

「ダスティネス様の言うとおり、魔法で診ましたが大丈夫そうですよ。直に目を覚まします」

 

うっすらと意識が戻ると、そんな声が耳に届いた。

どうやらダクネスとアイリス、レインが話しているらしい。

俺はまだ体が動かないまま、まるで夢の中のように二人の会話を聞いていた。

 

「アイリス様の前で騒いでしまい申し訳ございません。ここ数日のカズマの目に余る行動の数々、平にご容赦下さい」

「いえ、いつもとは違う空気が新鮮で、私は気にしていませんので……」

「しかし、これだけの騒ぎを起こしておいて、これ以上ここに滞在するというのも……。しばらく世話になりましたが、これ以上二人を一緒にしておくと、ろくなことになりません」

「……帰るのですね、ララティーナ」

 

いや、どうしてそういう話になるんだ。

そもそもこの騒動の原因はクレアだろうに。

クレアはアイリスの護衛として、教育係としてふさわしくないのに、そんな中で俺たちが帰ればアイリスにどんな悪影響があるか。

 

「ええ。アクセルの街は私たちの拠点であり、大切な冒険者仲間があそこで待っているのです。まだ彼らには、カズマが処刑されずにエルロード王国でドラゴンの討伐をしたことを話しておりません」

「……そうですか。仕方がないのはわかっているのですが……少し、寂しくなりますね。でも……これ以上、皆さんと一緒にいたいなんて……そんな我が儘、言えません」

「アイリス様……」

 

アイリスの健気な言葉に、胸が締めつけられた。

無理して笑みを浮かべるアイリスは、痛いほど眩しくて、切なかった。

そのとき、レインがアイリスに優しく言葉をかける。

 

「アイリス様。カズマ様たちは、エルロード王国を救った英雄です。そしてベルゼルグ王国に拠点を持つ冒険者です。ドラゴンや機動要塞を討伐し、魔王軍幹部を二人も打ち破り、隣国のスパイを見抜いた……。その功績を讃えるため宴を開きましょう」

「……パーティー、ですか?」

「ええ。名目はそうですが――本当は感謝と別れの言葉を伝えるための時間ですよ。それに、何もこれが一生の別れではないです。ダスティネス様たちであれば再び魔王軍幹部を討伐してまたここに来るでしょう」

「ふふっ……それなら、素敵ですね」

 

その話を聞いているうちに自然と瞼が開き、アイリスの顔が見えてくる。

俺はゆっくりと上体を起こし、ぼんやりと見える彼女の背中を見つめた。

 

「お、お兄様!? 目を覚まされたのですか!?」

「……ああ」

「カズマ。状況はわかっているか?」

「まあ、さっきダクネスに殴られて気絶したってことくらいは。それと、今日帰るってな」

「……あの場でクレア殿に剣を抜かせるなどあってはならなかったのだ。わかってくれ」

「いや、お前が俺を殴ったのは、俺たちが裸の付き合いをする関係だってアイリスに誤解されたのが恥ずかしかったからだろ」

「そう言えば忘れかけていました! そこのところどうなのですかララティーナ! でもララティーナはお兄様を叩いて……お二人は爛れたご関係というやつなのでしょうか! 私、気になります!」

 

女の子は精神の成熟が早いというし、アイリスは恋愛に興味がある多感な時期なのだろう。

ダクネスとレインはあわあわしながら誤解を解こうとしているが、こういう話はたくさん聞いておけばいざって時に役に立つこともある。

 

「アイリス。ダクネスのあれはツンデレってやつだ。人からの好意を素直に受け取れない恥ずかしがり屋さんがツンツン冷たい態度をとってしまうっていうやつだ。ちなみにまだ俺とダクネスは付き合ってはいない」

「ま、まだ……!? まだ付き合っていないのにお風呂を一緒にしたのですか!?」

「待ってくださいアイリス様、本当にカズマ様の話を真に受けないでください!」

「ですがレイン! ララティーナが! あの凜々しく男性人気が高いのに独り身を貫いているララティーナが!」

「た、確かに気になります……」

「ですよね! レインも気になりますよね!」

「で、ですが、話がややこしくなるのでまた別の機会に――」

 

レインがアイリスを止めようとしてくるが、ここで止めたら夜悶々として寝れなくなる。

かわいい妹の健康と美貌を損なうようなことがあれば、俺はどう責任をとればいいのかわからない。

だから俺は話を続けるしかなかった。

……別にアイリスの反応がかわいくてしょうがないとかそう言うのはちょっとしかない。

 

「そう、あのときは俺が風呂場でうたた寝をしていたときだ。ダクネスが乱入してきて、そのまま背中を流してくれてな」

「乱入…………背中を流した…………」

「あああああアイリス様! こんな破廉恥な話を聞いてはだめです! まだ私たちには刺激が強すぎます!」

「ちょっとこっちに来いカズマ! もう一度叩いてやる! 安心しろ、実家でいくつか壊れかけの魔道具を叩いて直したことがあってな……まあ、そのうちのいくつかは一生使えなくなってしまったが、幸運値の高いお前ならきっと緩んだ頭のネジが締まって真人間になるだろう!」

「助けてアイリス! ダクネスに殺される! この話の続きを一生聞けずに毎晩もやもやして寝れなくなああぁぁぁ…………!」

 

俺は再びダクネスの鉄槌で意識を落とすことになった。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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