我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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17-2 晦冥照らせ…永遠の輝き(ダイヤモンド)

「めぐみんの魔力がヤバくなったら使うつもりで覚えたんだけど、まさか初お披露目がカズマさんとの戦闘だなんて思わなかったなぁ」

 

何を言っているのか混乱してわからない。

ねりまきがアークウィザードじゃない?

俺と同じ、クラスとしての冒険者?

 

「まだ混乱してる? ほら、エルロードでのこと思い出してみてよ。めぐゆんには魔力で身体強化してるって話したけど、それだけであんなアサシンみたいな動きができると思う? あれはプリーストの魔法だよ」

 

そう言われてみれば筋が通る。

習得に大量のポイントが必要となる上級魔法を覚えてないのも、ねりまきがもの凄いスピードで走って行ったのも、今ドレインタッチを使えているのも、ねりまきがアークウィザードじゃなくて冒険者であれば……!

 

「さて、カズマさん。わかったら観念して私のパンツ返し――」

「『ダブルドレインタッチ』アンド『フリーズ』」

「――てぇええええええ!?!?」

「ぐははは! ここでおめおめと無抵抗でやられる俺じゃないのは知ってるだろ! それともスキルと魔法をいくつも習得してるのはお前だけの専売特許じゃないってこと忘れてたか? 応用に関しては俺の方が得意だろうし、何ならドレインタッチに関してはこっちの方が使い込んでるんだ! 負けてたまるか!」

 

ねりまきが俺の手からパンツを奪い取ろうとしたその瞬間、俺はドレインタッチを使って相手の隙を作り、フリーズの魔法を炸裂させる。

するとパンツと俺とねりまきの手はかっちんこっちんの氷付け――無理に動かそうとすると皮膚が裂けて痛たかろう!

 

「これで証拠もお前も逃げられなくなったな! 観念してお縄につきや――」

「『バインド』」

 

そう唱えたのはクリス。

俺とねりまきは抱き合うような形で縄で拘束されてしまった。

バランスを崩して思い切り前のめりになり、床に転がっていて――俺とねりまきが絡み合うような格好に。

 

「なっ、手が使えないせいで抜け出せない……! ちょっ、カズマさん近い!」

「お構いなく」

「構うよ! ちょっと体変に動かさないでよ! 縄が余計に絡まって身動きとれなくなっちゃう!」

 

うん、悪くない、悪くないぞ柔らかなものを感じる。

若干の気まずさはあるものの、このままクリスが逃げるならそれでもいいかと思えるほどだ。

しかしいつまでたってもクリスは逃げる気配がない。

 

「……あの、クリス? 俺とねりまきのことをこう、もう動けない状態なのにさらに拘束するのはなんというか……ダクネスじゃないんだし、俺とねりまき初の共同作業をまじまじと見ないでほしいんだが」

「カズマさんなんか言い方卑猥じゃない!? 単純に縄をほどこうとしてるだけだよね!? 共同作業の言い方がなんかねっとりしてて嫌なんだ――」

「ねえ、その技アンデッドのだよね」

 

クリスの声に俺たち二人は思わずぞくりと背筋が震える。

光がないクリスの瞳と声。

それは何かしらの地雷を踏み抜いてしまったかのような……

 

「私ね、二人に言ってなかったかもしれないけど、ダクネスと同じエリス教徒なんだ。それもとびきり敬虔な、ね」

「く、クリス? その、暴力は憎しみしか生まないと思うんだ……」

「あはは、そんな私が暴力を振るうみたいなことするわけないでしょ? ただ、私の中でも特別大事に思ってる子にアンデッドが何かしらの唾つけたと思うとね……。それでさ、君たちにその技を教えたリッチーはどこにいるのかな?」

 

さっきまで義賊として振る舞っていたクリスとは訳が違う。

エリス教についてはそこまで詳しくないが、アンデッドや悪魔は悪しき存在だとかいう習わしだったはずだ。

そしてエリス教の中でも信仰心が高いのだろうクリスは、それはもう恐ろしい目をしていた。

それがたとえ俺たちに対する殺意じゃないとしても、縮み上がらせるには十分だった。

クリスの瞳はまるでナイフのように鋭く、パンツがないのにちびりかけた。

 

クリスを落ち着かせないと義賊を捕まえる云々の前に死人が出る!

 

そう直感した俺はどうにかしてこの状況を乗り越えようと思索する。

問題は俺たちがドレインタッチを使えるということ。

それを教えたのはウィズなのだが、それを言ったらウィズの命はないと思ってもいいだろう。

いや、あの人がそうそうやられることもないと思うが、それをやってのけるだろう凄味がクリスにはあった。

 

「……う、ウィザードの人が親切に教えてくれてさ。な、なんでもリッチーを討伐するときに命乞いしてきて、そのときに教えてもらったらしい」

「そうそう! カズマさんの言う通り! 私もその人から教えてもらってさ。まさかリッチーが命乞いするなんてね! その人は相当な実力者だよ、うん! 氷の魔女とかいう二つ名もあるみたいだし!」

「ふーん、それで? その魔法使いさんがリッチーをどうしたのかな? そのリッチーはどこにいるの?」

「……た、確かスキルを教えてもらった後に討伐したんじゃなかった……かな……?」

「そうだねりまき! 確かに言ってたな、命乞いしてきてスキルを諸々教えてもらってその後で用済みになったから倒したって! 宝のありかとかも聞いたみたいで、それを売っぱらったお金で今は隠居生活してるんだってよ!」

「…………」

 

無言で俺たちの様子を見てくるクリス。

蛇ににらまれた蛙のように身動きがとれず、汗だけがあふれ出る。

く、苦しいか……?

そう思っていたのだが。

 

「……ふーん、そっか! いやぁ、その人はいいことしたね! まさかリッチーからお金を巻き上げてスキルを聞き出してその上でぶっ殺すなんて! ちょっとリッチーの技を使うのはエリス教としては微妙なところだけど、人類の役に立ってるんだったら許そうじゃないか!」

「い、いいのか? 俺たちがドレインタッチ使ってても……」

「いいのいいの、そこはエリス様も超許すよ! アンデッドは許さないけど」

 

こっわ! この人こっわ!

確かに用済みになったから殺したっていったのは俺だけども、普通そこは鬼畜の所業にドン引きしたりするところだろ!

割と冒険者らしくやんちゃだけど常識がある人だと思ってたのに、蓋を開けてみれば犯罪者だしアンデッド絶対殺すウーマンだし怖すぎる!

……でもまあ、とりあえずは誤解というか、ウィズのことを誤魔化せてよかった。

 

「……なあクリス」

「うん? 何かな?」

「早くバインドを解いてくれないか? ほら、聞きたいことは終わったんだろ?」

「うん。だけどこのスキルって込めた魔力分だけ長く強く拘束するヤツなんだよね。ブレイクスペルとかないともうしばらくは解けないよ?」

「おい。どうすんだ、これ」

「まあまあ、氷が解けるまでゆっくり待ってなよ。その間に私のパンツでも返してもらおうか――な」

 

クリスがそう言った瞬間、ドアが勢いよく開く音が響く。

それと同時に部屋の電気がつく。

暗闇に目が慣れていたので一瞬何も見えなくなるが、徐々に視界が戻ってくる。

そして、俺は勢いよく開いたドアの方を見て、非常に困ったことになったと悟る。

 

「カ、カズマさん!? それにねりまきとクリスさん!? その体勢はなにを――!!」

 

そこにいたのはゆんゆん。

どうしてここに……とはならない。

さっき一緒に帰ってきたばかりだし、ここまで騒ぎ立てていればいずれゆんゆんが駆けつけてくれることは知っていた。

本当なら義賊を捕まえるための強力な助っ人が来てくれたことに喜ぶところなのだが、状況が状況だった。

 

パンツを握りしめる俺とねりまき。

その手は氷付けになっており、体は縄で縛り上げられている。

クリスはそんな俺たちの腕に息を吹きかけて氷を溶かそうとしていた。

床には俺のパンツ。

ゆんゆんは顔を真っ赤にしてドアに手をかけていた。

 

「も、もしかして三人はそういう……!? あ、ある国では重婚が認められているって聞いたことがあるし、そ、そういうのもみんなが幸せならいいと思うんです失礼しました!」

「おい待て。違うんだ、何か誤解して――」

「えっ、じゃあもしかして三角関係の方!? 痴情の縺れ!? 爛れた恋愛!? す、すみません、部外者がお邪魔してすみませんでした!」

「待って!? 本当にそういうんじゃないから!!」

 

俺の制止を聞くことなく、真っ赤になったゆんゆんはバタンとドアを閉めた。

 

「く、クリス! 早く! 早くゆんゆんを止めろ! このままだと俺が女の子二人を夜な夜な連れ込んで激しい大人の遊びをする特殊性癖の持ち主だって吹聴される!!」

「いやあああ! 私、カズマさんの愛人ポジションになんかないたくないぃいいっ!」

「それはそれで酷すぎないか!? と、とにかく、お前のせいで変な誤解されたんだから責任とってゆんゆんを説得してくれ!」

「あ、あたしのせいなの!? なんかその辺腑に落ちないんだけど!!」

 

どう考えても屋敷に忍び込んだあげくバインドしたクリスが悪い、そう決まってる。

 

 

 

 

「だからあたしたちは別にカズマくんを取り合ったり、カズマくんとハーレム築いてるなんてありえないから!」

「よ、よかった! でもまさか私たちを驚かすためのサプライズで隠れてたらカズマさんに義賊だって勘違いされてこんなことになったなんて……」

「そうそう、全部勘違いから始まったんだよ! それでカズマくんとねりまきが掴み合いになったその瞬間、あたしが動きを封じるためにバインドを使ったんだよ。本当は魔王軍の襲撃で頑張った二人へのサプライズだったのにさ!」

「な、なるほど! それであんなことになってたんですね……」

 

いや、義賊だってのは勘違いじゃないぞ。

そう突っ込みたいがクリスの説明で納得している以上、これ以上何か言って事情をややこしくするなんて、戦いで激しく消耗している俺にはできなかった。

それでも、ゆんゆんの誤解を解けたのはよかった。

そのことに関してはねりまきも同意のようで。

 

「本当に誤解が解けてよかった! このままだとゆんゆんが私たちの関係を誤解したまま言いふらしてただろうしね」

「私のことをなんだと思ってるのよねりまき! 言いふらしたちなんかしないからね? ただ、アクアさんに相談しようとはするけど……」

 

それこそ一番最悪だろ。

アクアのことだ、こんな話聞いたら街中を回って言いふらすに決まってる。

その伝達速度は音速。

翌朝に街へ繰り出せば陰口を叩かれ、後ろ指を指され、部屋に引きこもることを余儀なくされていただろう。

 

「本当にアクアに伝わる前に止められてよかった。心の底から。というか一応俺は普通に義賊と戦ってただけなんだが、もし殺意がある義賊に襲われてたなら俺は今頃どうなってたか」

「す、すみません、知り合い同士だったのもあって全くそういう考えにならなくて……。た、確かに今言われてみればそう見えなくも……いや、あれはそうは見えませんよ! 何というかカズマさんとねりまきが抱き合った状態で拘束されて、挙げ句の果てにパ、パンツが散乱してて。しかもねりまきたちの服装も何というか、特殊だったし、何かそういうコスプレだったのかと……」

「改めて言われると本当にあの惨状はひどい絵面だったな」

 

先ほどのことを思いだして赤面したゆんゆんは頬を押さえた。

他の二人も今はパンツをはいた状態だとはいえ、ゆんゆんにノーパンでいかがわしいプレイにいそしんでいたと思っていたと指摘され、茹で蛸のようになる。

 

「でも、その……今見るとかっこいい服ね。流石に街の中で着るのはどうかと思うけど闇に隠れるにはピッタリだし、暗殺者みたいで――」

「そう! そうなんだよゆんゆん! ほんと、あの頃の紅魔族のこの字もなかったころのゆんゆんからこんなになるなんて……まるで雛が巣立つときに覚えるような……感動だよ!!」

「ど、どうしたのよねりまき、いきなり鼻息を荒くして……」

 

ねりまきはダクネスが強敵を見つけたときのように頬を染めて息を荒らげていた。

そんな様子を見て思わずたじたじになるゆんゆんだったが、ねりまきはたたみかけるようにゆんゆんとの距離を詰めた。

 

「興奮もするよ! 何を隠そうこの服をデザインしたのはこの私なんだからね! この動きやすく体にフィットする無駄を省いた洗練されたデザイン! ローブで骨格を隠すこともできて、ちぇけらさんにアドバイスをもらって作ってもらったメイドイン紅魔の一級品だよ!」

「そ、そうなんだ」

「ちなみに伸縮性が凄くて誰でも着ることができるし、なにより魔力を込めるとはためくの! しかも13種のパターン搭載済み! 13種類もだよ!? すごくない!?」

「でもあれは数秒でも魔力がごっそり減るし実用性ないんだけどね。大変だったなぁ、ねりまきを説得するの。……結局説得できなかったし」

 

クリスがため息をついた。

その顔を見ると随分と達観してるというか、遠い場所を見つめており、ねりまきと義賊の衣装についてずいぶんと激戦を繰り広げていたようだ。

正直俺も思う、13パターンもいらないし、何ならローブやマントをはためかせる機能もいらない……ロマンが詰まってることは認めるが。

クリスの疲れたような表情とは対照的に、ねりまきは溌剌としていた。

 

「さすがはひょいざぶろうさん、わかる人でよかったよ! 中途半端な性能にしたらかっこよさが半減どころか損なわれちゃうからね。でもまさか魔力を過剰に使うことで威圧感まで出せるようにアレンジしてくれるなんて本当に最高! まあおかげで私でも10秒くらいしかはためかせられないけどマナタイトに肩代わりしてもらえば問題ないよね! そしてこれを着て高い塔の上から夜の王都を見下ろして意味深にこう言うんだ――フッ、始まったか――ってね! くぅっ、かっこいい! というわけではい、ゆんゆんの分! 一緒に陰の実力者ごっこしよう! 本当はめぐみんにも用意したいんだけどこれ一着しか予備がないし、いろいろ理由があって……だからこのことはめぐみんには秘密だよ?」

「あ、ありがと……」

 

困ったようにねりまきから黒装束を受け取ろうとするゆんゆん。

どこからその服を出したのかとか、どうせねりまきの魔法とかクリスのスキルで闇に紛れるんだから適当な服でいいんじゃないかとか、そのマントに対する情熱はどこからわいて出てくるのかとか、無駄に性能をつけるせいで実用性皆無じゃねえかとか、いろいろ突っ込みたいところがあるが――俺はねりまきが渡そうとしてる服を床に叩き落とした。

 

「ゆんゆんを義賊仲間に引き入れようとするんじゃねえ!」

「ああっ!? 何するのカズマさん!」

「ゆんゆんもいらないらないらないって言って、無理しないで断れよ」

「いえ、その、かっこいいしお揃いの服だし、友達からプレゼントなんて数えるほどしかなくて嬉しかったんだけど、お出かけでは着ないし実用性がないなーって……」

「はぁ……せっかく一人前の紅魔族になってきたと思ったら。ゆんゆんには失望したよ」

「失望!?」

 

ねりまきの発言にショックを受けたゆんゆん。

最近のゆんゆんはだいぶ紅魔族寄りの感性を持ってるが、流石に本物の紅魔族の感性からしたらまだまだアウトだったらしい。

 

「ねえねりまき! お願いだからプレゼント没収しないで! 毎日大切に着るから!」

「だからゆんゆんはゆんゆんなんだ――って力強っ!? これは毎日着るようなものでもなければ私服でもないから! 代わりに明日買い物してプレゼント選びに行こう、ね?」

「えっ、いいの? そ、それじゃあ明日は朝から王都巡りして、お店はどこ行こうかしら……お昼は……こうしちゃいられないわ! 私、これからリサーチしなきゃだから、皆さん、お、おやすみなさいっ!」

 

ゆんゆんはそう言い残して、自室へ逃げるように去って行った。

そんなゆんゆんの足音が聞こえなくなった頃、俺は困難を乗り越えたという達成感で息を吐き出した。

 

「……紅魔族は毎日黒装束を着て過ごしたいおかしな感性を持ってるのかと思ったが、思い違いで安心した」

「普段着てたらこの服に腕を通したときの興奮が台無しでしょ? まあ、この感覚はゆんゆんには早かったみたいだし、しょうがないからこれはカズマさんにあげるよ。予定が決まったら呼ぶからその服着て集合ね」

「いやいや、その服渡して俺たちのことを厄介ごとに巻き込むなよ!」

「あっ、またはたき落とされた!? デザインが合わないとかだったら調整してあげるから言いなよ!」

 

デザインとかそういう問題じゃないんだが!?

大体、俺は義賊を捕まえたいっていってるのにそれを忘れて俺を義賊に誘うとか頭おかしいんじゃないか!?

ねりまきはそんな俺の考えを察したのか、さっきまでのふざけた雰囲気がなくなる。

俺は警戒してねりまきとクリスの方を睨み付けるが、クリスはそれを笑い飛ばす。

 

「そう身構えないでよカズマくん。流石にさっきの続きをしようかって言う雰囲気にはなれないでしょ?」

「……そうだな。ドレインタッチとかで体力消耗したし、もう捕まえる気力はない」

「私たちも同じだよ。まあ、ゆんゆんのせいでもあるけどね。でもこうなった以上、カズマくんには私たちの目的を教えておかないと」

 

クリスはそう言って俺の目をじっと見つめる。

その決意に満ちた表情を見て俺は嫌な予感を覚えた。

そう、この流れはまた大変な厄介ごとに巻き込まれるいつもの流れだ。

 

「待て、聞きたくない! いや、いろいろ聞きたいんだけど聞いたら後戻りできない気がする!」

「そんなこと言わずにさ! お願いだから聞いてよぉ! 耳塞がないでさ、ねえねえ!」

「そうだよカズマさん! 本当は手伝ってほしいことはあるけど、別に今晩のことを黙っててくれるだけでいいから、ね? これが終わったら今回のことは忘れてくれたっていいから一回だけでも!」

「なんかその言い方、俺が無責任な男に聞こえるから嫌なんだが!」

 

クリスとねりまきが俺の方を見つめて懇願してくる。

正直、俺としてはもうこれ以上厄介ごとに巻き込まれたくないし、何も聞かず二人のことを追い出すのが一番いいんだ。

それがいいはずなんだが……

俺のことを真剣に見つめてくる瞳を無視できなかった。

 

「わーったよ、聞くだけだからな?」

 

俺がそう言うとクリスとねりまきは語り出した。

 

「あたしが探してるのは神器って呼ばれるものすごい力を秘めた魔道具でね、それが悪用されないように回収するためにこうして忍び込んでるって訳。今回も調査してたら、とある貴族がその神器を買って王都に持ち込んだらしくて、それを探すために宝感知スキルを使ってそれらしき貴族の屋敷を片っ端から調べてるんだけど……」

 

神器、か。

きっとそれは転生特典で貰えるやつだ。

もし俺がアクアを選ばなかったらその神器とやらで無双していたのだろう。

本当にあの駄女神を選んでしまったことが悔やまれる。

 

「で、今回はこの屋敷に侵入してみたわけなんだけど神器は見つかんないんだよね。かなりの反応はあるんだけど……まあでも、前々から義賊はやりたかったから侵入したついでに後ろ暗いお金をいただいちゃってるって訳さ」

「お前、ノリと勢いで義賊してたのかよ。というかアルダープさんのところに後ろめたいものは何もなかっただろ?」

「まあね、真っ白っていうくらい何も見つからなかったよ。あんな悪い噂があるのが不思議なくらいね」

 

クリスもねりまきもノリと勢いだけで行動して、まさか本当に噂だけでアルダープさんの屋敷に来るなんて。

そんなアホな義賊のくせに屈折魔法と消音魔法と潜伏スキルという隠れることに特化したスキル構成。

片方だけでもヤバい凶悪スキル持ちなのに、どうしてそんな二人がタッグを組んでしまったのか。

 

「なあ、真面目にどうしてこの二人が手を組んでるんだ。どっちも比較的まともだし、ノリで義賊やるやつじゃないと思ってたんだが。……そう言えば利害の一致とか言ってたけど」

「そうそう。クリスは神器を回収するのが目的って言ってたけど、私はもっと個人的でね。めぐみんの邪眼を制御するための魔道具を探してるんだよ。もしくは邪眼が制御できるようになるスキルとかね。ちなみに本職はアークウィザードだけど、洞窟探索とかするにはいろいろな種類のスキルを使える冒険者の方が都合よくて、ジョブチェンジしたんだ」

 

ねりまきは冒険者カードを見せてそう言った。

確かにこいつはめぐみんのサーヴァントを自称するほどには仲良しだ。

でもだからってそんな、普通に考えて最弱職にジョブチェンジして自分の時間を潰してまでするか?

めぐみんは今も普通に生活できてるっていうのに。

紅魔族ってのはわからないな……

 

「とまあ、そんなわけで私はあちこちダンジョンを巡ってるんだ。そこで偶然出会ったのがクリスね。強力な魔道具の発見っていう共通の目的でいろいろ協力することになって……デストロイヤーの襲撃があった半年前くらいだったかな?」

「確かそのくらいだったね。あのときはまさか同じお宝を狙ってる人がいるなんて思わなかったから驚いちゃったよ」

「私としては貴族の屋敷に忍び込むなんて言われた時の方が驚だったけどね。でも義賊やってるって聞いて即決だったよ、かっこいいし!」

「いやいや、紅魔族の人がアークウィザードじゃないし、宝感知スキルまで覚えてるし、そっちの方が衝撃的でしょ!? しかもそのスキルを覚えた方法、盗賊になってスキルポイントを割り振ってから冒険者になったって、普通じゃ考えられないよ!」

「どっちもどっちだろ」

 

そう言うと二人からどっちが常識外れか詰め寄られたが、犯罪を手伝えっていう方も二つ返事で犯罪に加担する方も同じくらいおかしいと思うんだ。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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