我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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19-1 不和の…二柱(アクエリアス)

意識が消える寸前、部屋のドアが開き、誰か入ってくる。

それは義賊の二人だったのだろうか。

それともアルダープさんか。

いや、誰でもいい、この部屋には入っちゃだめだ――

 

そう、声を上げることは叶わなかった。

 

 

 

 

「ここは……」

 

気がつくと、俺は真っ白な世界にいた。

地面も、空も、何もかもが白一色。

音も、風も、温度さえ感じない。

ただ椅子とそれに座る俺がいるだけ。

けれど俺はこの光景を、どこかで見たことがあった。

 

「サトウカズマさん。ようこそ死後の世界へ」

 

後ろから聞こえてくる靴の音。

聞き覚えのある言葉と声。

振り返ると、そこには銀髪の女性が静かに歩いてくるのが見えた。

 

「私は、あたなに新たな道を示す女神エリス。この世界でのあなたの人生は終わってしまったので――」

「何やってんだクリス」

 

空間が凍り付く。

プリーストのコスプレをしているクリスの笑顔が崩れぬまま。

しばらくして、ようやくこの静寂をクリスが破った。

 

「……どうやら死んでしまった直後で意識が混濁しているようですね。私はクリスではなくエリス。あなたは、志ながら半ば死んでしまっ――」

「俺のことを元の場所に戻せよ誘拐犯!」

「えっ、いや、あの……ええええええええええっ!?!?」

「しらばっくれるなよ! ねりまきの魔法で寝させて無力化して、俺んことを人質として誘拐したんだろ! ねりまきはどこだ、俺に悪夢見させやがって……ドロップキック食らわせてやる!」

「ちがーっ! これは別にねりまきさんの仕業じゃ……」

「じゃあなんだ!? 混乱魔法なのか!? 俺は一体いつから混乱魔法を遣っていないと錯覚していた!? アルダープさんに神器返せやごるぁ!!」

「カズマくん錯乱しすぎだよ――じゃなくて、ですよ! 一回落ち着いてください! 別に盗ってないですから!」

 

 

このすばぁああっ!

 

 

「こほん、では改めまして、私は新たな道を示す女神エリスと申します」

「……なあ、悪事に手を染めてる盗賊が女神を名乗るのはどうなんだ? あと、クリスとエリスって一文字違いなんだが」

「あの、どうして私がクリスだって断定するのそんなに早いのですか? 髪も長さ違うし、雰囲気も変えてるはずなんですが」

 

いやだって、さっき俺がクリスとねりまきに部屋に入るなって言いかけてたばっかりだぞ。

その直後にクリスと同じ顔した人が「私は女神エリスです」なんて名乗っても「いや、お前クリスだろ」ってなるに決まってる。

それでも別人だって言い張るならドッペルゲンガー的なやつだ。

確かに最初は死んで、また天界に来たのかとも思ったが、目の前にいる女神がコスプレしたクリスってことは、これは夢か、それかクリスのおふざけだろう。

まったく、変なことしやがって……

そう心の中で思っていると、クリスはため息をついて観念したような顔で。

 

「この際、私がクリスであることは認めましょう。そうです、私はエリスであり、クリスなのです」

「流石に女神様の名前を名乗るのは罰が当たると思うぞ?」

「それ! それですよ! 私は本物の神様ですから!」

「いや、でも……」

「盗賊義賊やってる女神がいるんですかってきこうとしてるのでしょう!? いるんですよ、現に、目の前に!!」

 

なるほど、そういう設定か。

かわいそうに、これがねりまきと長らく一緒にいた弊害か。

自分のことを本当に女神だと思っている痛い子になっちまって……

俺にできることと言えば、中二病が完治したときに過去のトラウマで死にたくならないように、よい思い出にするためにその設定に乗っかってやることだ。

 

「あ、あの、今とてつもなく失礼なこと考えてませんか!?」

「別になんでもないよ、エリス様」

「し、信じてくれたみたいでよかったです」

「それで。エリス様が言うには俺は死んだんですね?」

「ええ、まあ……あの、死んだという事実を受け止めている割には落ち着いていますね? いえ、さっきは錯乱してましたが」

「いや、だって死んでないですし」

「……」

 

おい、なんだよその「ああ、やはり人の死を受け入れるのでさえ時間がかかるのに、自分事となれば……」みたいに慈しむ目は。

錯乱してたっていうか、悪夢の直後に義賊がいきなり女神を名乗ってたら誰だってそうなるに決まってるだろ。

神器を盗ってないっていってたから安心したが、嘘ついてる可能性だってある。

後で例の魔道具で検査してやろう。

 

「まあ、仮にエリスの言うとおりに俺は死んだとしよう。うん、出てくるのがエリスじゃなきゃ死後の世界だって言われても信じてたくらいに高クオリティーだしな」

「本当に死後の世界なんですが……あと、私のこと呼び捨てですか!?」

「だってエリスはクリスだし、別に言葉遣い代える必要ないだろ?」

「確かにそうなのですね。態度が変わらない方が少しうれしく思います……なのですが……なんというか、女神として何か神格が落ちてるような……」

 

女神という生き物は舐められたら神格が落ちるらしい。

ほとんど昔のヤンキーみたいな生態をしてるな。

 

「まあそんなことはどうだっていいんだよ。俺のことを導いてくれるんだろ? 前にアクアにそんなこと言われた時には転生者特典を選ばせてくれたが……」

「アクア先輩ですね。カズマさんは日本から転生してきたときに対応して…………」

「うん? どうかしたのか?」

 

そう言ってる途中、クリスの声が小さくなっていく。

そのまましばし顎に手を当てて、何かまずいことに気がついたのか、引きつった笑顔になる。

 

「あ、あの、カズマさん」

「はい、カズマです」

「つかぬ事をお伺いするのですが、あの、カズマさんのパーティーのアクアさんって……」

 

そう呟いたその時だった。

 

『カーーズマーーーっ! もしもーし、聞こえてるー? きこえてるなら返事なさいよバカズマぁぁぁぁ!』

「誰がバカだ!」

『ああ、よかったわ。ちゃんと聞こえてるみたいね!』

 

どこからともなく、間の抜けた声が響いた。

それは、あの駄女神の声。

クリスはその声を聞いて「ええっ、まさかとは思ってたけど本当にアクア先輩!?」と目を大きく見開いていた。

 

「というかアクア、お前どこにいるんだよ。この場所結構声が響いてどこから聞こえてるんだかわからないんだが」

『どこって、天界とこの世界とは次元の壁があるし、上とか下とかそういうのじゃ言えないわよー! それより、今リザレクションの魔法かけたから早く戻ってきなさいな!』

「戻ってこいって、お前が迎えに来てくれたんじゃないのかよ? あとリザレクションって……」

 

俺の記憶が正しければ蘇生魔法だよな?

もしかしてアクアもクリスの遊びに付き合っているのあろうか。

 

『あら、もしかして説明されてないの? もしかして職務怠慢しちゃってるのかしら!?』

「いや、エリスって自称女神様に説明されたぞー。俺は死んだって」

『ぷーくすくす! エリスってば自称呼ばわりされてるのウケるんですけど! 確かにエリスは胸が異様に大きく膨れてるし、上げ底して背伸びしてるうちはこんな辺境の異世界担当よねぇ』

「なぁっ!?」

 

自称エリートにぼろくそ言われて辺境の女神様が顔引きつらせてるんだが。

しかしアクアは顔が見えないことをいいことにそのまま話を続ける。

 

『なるほどなるほど、つまりカズマはエリスの話を信じなかった訳ね。エリートな私のように嘘偽りなく女神をしてればいつかは昇進できると思うけど、あの子もまだまだね』

「わー! 違いますから! 確かに別の方面でやんちゃしましたけど、職務は全うしてますから! だからカズマさんに変な誤解を与えるようなこといわないでください!」

『あら、いやのねエリス。相変わらず元気そうでよかったわ』

「誰のせいですか!」

『もしかして私に会えたから元気になったのね』

 

一応アクアのせいではあるな。

ただ元気になったってよりは怒りと恥ずかしさで顔真っ赤になってるぞ?

 

しかし意外だ。

まさかクリスとアクアが先輩後輩の関係って……

確かにクリスはアクアのことをよくさん付けしてるし、もしかして今までのは全部伏線だったのだろうか。

そう思っていると先輩風吹かせたアクアが。

 

『うんうん! 元気そうで何よりね! カズマも死んだ甲斐があったじゃない!』

「俺の命を軽んじるようなこと言って本当に女神なのかこの駄女神!」

『だ、駄女神!? 今私のこと駄女神って言った!?』

「シュワシュワ飲んでは寝てばっかりの生活で、どこに女神要素があるんだか」

『カッチーン! 呪いを解除したりしてたでしょ! それに、今だって義賊にやられたカズマの体を修復して、心臓生やして蘇生してあげようとしてるのに! もう魔法やめてもいいかしら! ……やめっ、とめようとするのとめないでよダクネス! カズマが私のこと――!』

 

…………ちょっと待て。

俺が義賊にやられたってどういうことだ?

それ以上に体に心臓をはやすって何!?

確かにこの部屋の作り込みとか凄いし、悪魔に襲われるっていうリアルな夢みたし、クリスは女神だって言ってたけども、それにしては設定が凝りすぎてるというか…………

 

「も、もしもしクリ――エリスさん?」

「なんですかカズマさん?」

「もしかしなくても本当の本当に俺って死んでるんですかね? 冗談抜きで」

「そうですよ? 冗談ではありません」

「……ってことは、クリスがエリスさんってのもエリスさんが女神っていうのも」

「だから最初から真実だけをお伝えしてるつもりですよ、私は」

 

つまり、クリスは義賊で女神で、俺は死んだってこと……!?

やばっ、情報量多過ぎ……!

えっ、いや、ってことは俺が悪魔に殺されたってのは夢じゃなくて現実!?

 

「スゥー……混乱してるんですけど、一つだけ言っていいですか?」

「どうぞ?」

「女神様に生意気な口きいてすみませんでしたぁぁああああ!!」

 

 

このすばぁああっ!

 

 

「今度こそ、本当に落ち着かれましたか?」

「はい……このたびは本当に申し訳ありませんでした。後生ですから俺のことを地獄に落とさないでください……!」

「そ、そんなことしませんよ!」

 

今まで数々の無礼を、とんだ勘違いでしてきた俺は誠心誠意謝罪した。

額を床に打ち付ける勢いで、全力で謝る。

日本人ができる最上級の謝罪方法、土下座だ。

 

「私は気にしてませんから!」

「本当ですか……?」

「ええ。それより蘇生についてなんですが……申し訳ありません。天界の規定で、カズマさんを再び地上に送ることはできなくて……」

「その、なんとかなりませんかね? 仲間のことが気になるし、その、義賊も俺を殺してないので冤罪というか……。そう言えばエリス様はクリスとして地上で活動してるんですよね? 大丈夫なんですか?」

「実を言うと少々悪い事態になっていまして……。その、厚かましいお願いだとはわかってるのですが、折り入ってお願いがありまして……カズマさんを殺した者の正体について教えてくれませんか?」

 

エリス様は非常に申し訳なさそうな顔をしている。

そりゃそうか、俺が希望してた蘇生をできないって言ったのに、自分のお願いを聞いてほしいだなんて言いにくいだろう。

でも正直俺としては、アルダープさんの神器を狙うあの悪魔をいち早く討伐してほしいし、もちろん協力させてほしいと言いかけたのだが――

 

『カーーズマーーー!! しょうがないから高級シュワシュワ5本と霜降り赤がにのセットで手を打とうじゃないの。みんなが早く帰ってきてほしいって泣いてるんですけど! あの、本当に早く帰ってきてほしいんですけど! ぎゃあぁああああ! ゆんゆんやめてぇ! 悪魔の召喚はらめぇ! めぐみんも魔力が――!』

「……なんか大変そうだな」

「す、すみません。ですが天界の規定が……」

『ちょっと! そこにエリスもいるんでしょ!? 早くカズマのことをこっちに送りなさいな!』

「ええっ!? 先輩無茶言わないでください! そんなことしたら報告書とかいろいろ大変ですし、例外を作るわけには……!」

『エリスの頑固者ぉ! いいわ、そっちがその気なら私にだって考えがあるわよ! これからカズマを湯治にアルカンレティアに連れて行くついでに私の子たちにエリスが昔やんちゃしてた頃のお話広めさせるように言ってやるんだから! パッド入りって噂も広めるからね!』

「えっ!? う、嘘ですよね? 先輩、流石にあれは広めちゃだめですからね? 本気じゃないですよね……?」

『………………』

「あの、先輩? 聞いてますか? お願いですアクア先輩! わかりました! わかりましたから! カズマさんの蘇生を認めますから!」

『……わかったわ。しょうがないからやんちゃエピソードは言わないで起きましょう』

「あの先輩、胸の方も言わないでくださいね!? というかパッド入りじゃないですから!」

 

……エリス様はアクアに逆らえない弱みを持ってるらしい。

ひどく疲れたようにため息をついたエリス様。

 

「お疲れ様ですね、エリス様」

「誰のせいだと思ってるんですか、もう……。おかげでカズマさんの話を聞く必要がなくなったじゃないですか」

 

俺の方をジト目で見ながら、エリス様は両手を俺の方にかざした。

すると俺の周りに淡く青白く光る魔法陣が展開された。

 

「カズマさん、これから私とねりまきさんは一緒にアクセルの街に避難します。顔を隠してたとはいえ、髪の色とか特徴を見られてしまったので」

「ってことは俺は……」

「はい。これからはカズマさんとパーティーメンバーの方で、殺人犯の捕縛をお願いします」

 

……マジですか。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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