我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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19-3 潜みし…巨悪(ウロボロス)

俺が蘇生されて数時間後のこと。

めぐみんを抱きかかえたはいいものの、そのまま俺はバランスを崩し、思いっきり地面にダイブすることとなった。

地面はねっとりと鉄くさい赤色の海。

しかも浅瀬も浅瀬。

そんな浅い海に身を投げた俺は地面に激突し気を失った。

 

 

 

 

「……知らない天井だ」

 

思わずそんな言葉が口からでた。

いや、本当は見たことがある天井だ。

けれど、目を開けたらなじみのない天井で、しかも服まで着替えさせられ…………

 

「ぷーくすくす! 何カズマってば『知らない天井だ』って言ってるのよ! そういうこと言いたくなるお年頃だってのはわかるけど、知ってる天井でそのセリフって……ぷーっ!」

 

横を見ると大声で騒いでいるアクアがいた。

アクアの声に反応して、ドアの向こうから声が聞こえてくる。

ダクネスたちのだ。

どうやら部屋の外で待機していたみたいだ。

 

「それにしても本当によかったじゃない。私がいなきゃ本当にカズマってばあのままお陀仏だったのよ?」

「あ、ああ……ありがとう……」

「…………他には?」

「ほ、ほか?」

「そうよ。アンタのことを助けた偉大な女神であるこの私にほかにもっと感謝の言葉とかはないのかしら? それか、今まで散々私のことをぞんざいな扱いしてきたことに対して謝罪の一つもないのかしら! ほらほらぁ?」

 

そう言いながらアクアは俺の肩を掴んでを揺さぶってくる。

 

「いたっ、おまっ! こちとら患者だぞ、もっと丁寧に扱えよ」

「ぷー! 私の完璧な治療で傷口は完全に塞がってるのに痛いとかありえないんですけど! ほら、いいから早く謝って! もしくは褒めて褒めて甘やかして!」

 

こんのアマ……こちとら大けがで死にかけたどころか死んでショックなのに俺の傷口叩きやがって!

…………でも、なんでだろな。

えらくテンションが高いコイツを見てるとそんなショックも霞んでくる。

 

徐々に近づいてくるダクネスたちの声と足音。

俺はゆっくり上体を起こすと、ダクネスたちがドアを開けてやってくる瞬間を見計らって……

 

「カズマ! 大丈夫なの――!」

「きゃああああああああーーーーっ!! アクアの変態ぃぃいいい!!」

 

俺は服をはだけさせるのと同時に声を上げた。

アクアが誤解を解くのに苦労したのは言うまでもない。

 

 

 

 

「こんなことに時間を割く暇はないんだぞ!」

「誰のせいだと思ってるのですか!」

 

めぐみんが俺のことを睨んでくるが、悪いのはアクアだ。

俺はベッドの上で横になっていたのだが、めぐみんに言い返そうと立ち上がろうとして、立ちくらみで倒れかける。

 

「おっと、大丈夫ですか?」

「……普通、魔法使いは非力キャラだと思うんだ」

「大丈夫そうですね。やはりアクアの魔法でも失った血液まで戻すことはできないのですか?」

「いいえ、完璧に治したはずよ? たぶんカズマが非力で体力ないのと復活直後で疲れてるだけよ」

 

また有らぬ疑惑をふっかけてやろうか。

復活直後だからだってだけでいいはずなのに、わざわざ非力って言いやがって……!

 

「まあまあ、落ち着けカズマ。お前が言うとおり、今は余計なことをしている暇はないのだ」

 

ダクネスに拳を握りしめているのを見られてなだめられる。

確かにその通りなんだが……なんだろう、この釈然としない感じ。

俺が微妙な顔をしていると、ゆんゆんが思い出したかのように声を上げる。

 

「そ、そうよ! 今、アルダープの部隊が義賊を追いかけてて……王都で人相書きが出回ってるので捕まるのも時間の問題のはずですよ! でも、カズマさんを殺した極悪人は……私が……私がカズマさんの敵をとってきますから!」

「いや、敵とか言ってるけど、俺生きてるんだが。義賊に恨みなんてないし、危険なことわざわざしないでほし――」

「ふっふっふ、まさか稀代の大魔法使いたるこの私から逃げ果せるとは……しかし血でできた靴の跡を見逃す私ではありません。カズマはまだ体力が回復していないでしょうしどうか安らかに眠ってください」

「もしかして俺死んでることになってる? いや、確かに死んだけど、安らかに眠ってくださいって死んでる人に使う言葉じゃ――」

 

俺は自分勝手に行動しようとしてる紅魔娘に突っ込みを入れていたのだが。

ダクネスの方を見ると、どういうわけかソワソワした様子で落ち着きがない。

 

「どうしたんだダクネス? お前のことを連れ去らわなかった義賊に落胆して元気ないのか?」

「ち、ちがー! いや、違くはないのだが違うというか……!」

「何だよ、違わないんだろ? 言いたいことがあるならはっきり言えよ」

「うっ……そ、その、今めぐみんとゆんゆんが義賊を捕まえようみたいな話をしているが、カズマを殺したのは、その、本当に義賊だったのか?」

 

ダクネスの言葉に空気が凍りつく。

確かに、ちょうど俺もそれを訂正しようと思ってた。

めぐみんたちが先走って義賊のことばっかり言うが、俺をやったのは別人だ。

なんならその義賊はクリスというかエリス様という意味わからない状況なんだが。

 

「ダクネスは何を言ってるのですか!? あなたが第一発見者なのでしょう!? あの神器の部屋にはカズマと義賊しかいなかったと……!」

「そ、それはそうなのだが……巷で義賊と言われている者が殺人などするのだろうか、というか…………私は信じられないんだ、あの者たちが殺人を犯したと。本当に義賊の仕業だったらそれでいいんだが、もし義賊の裏に隠れた巨悪がいるのであれば、カズマを殺害した真犯人がいるのなら、そちらを放置しておく方がマズい。どうなんだカズマ。本当に、お前を殺したのは……義賊、なのか?」

 

ゆんゆんの指摘も、俺という生き証人がいなければもっともだ。

確かにダクネスの言葉には根拠など何一つないのだから。

しかし義賊が俺を殺したのを否定したいのか、ダクネスの目は懇願しているようだった。

 

「……ダクネスの言うとおり、義賊にやられたわけじゃない」

「えっ!? じゃあ一体誰に……」

 

ゆんゆんが叫ぶ。

それもそうだろう、あの俺が死んで発見されたときの状況は誰がどう見ても義賊の仕業にしか見えない。

しかしダクネスは俺の言葉を聞いた瞬間、どこかほっとしたような様子でいた。

 

「どうしたのダクネス? なんだかほっとしてるように見えるんですけど」

「ああっ、いや、その……」

「いいのよ、無理に言葉にしなくても。カズマがちゃんと生き返って安心してるんでしょ?」

「あ、ああ……そうだな」

 

アクアは得意げに鼻を鳴らすが、どうにもダクネスの顔は微妙そうだ。

俺が生き返ったことが嬉しくないみたいな反応はやめてほしい。

でも、ダクネスがほっとしている理由は……。

 

「なあ、ダクネス。もしかしてお前、義賊の正体……」

「……ッ」

「俺も知ってるんだよ。アイツらのこと」

「そ、そうか……」

 

小声でダクネスに聞くと、ダクネスはびくりと肩をふるわせ俺の方に振り向く。

どうやら俺の勘は当たったみたいだ。

……ダクネスまあ、そりゃ義賊の正体に気づきもするか、クリスとダクネスは親友だもんな。

 

「カズマ! 義賊が犯人じゃないとすれば一体誰が犯人なのですか! 偽善の裏に隠れた巨悪なんて、そんな紅魔族の琴線にビンビン反応することをしでかした犯人は一体誰なのですか!」

「ね、ねえめぐみん、流石にカズマさんを殺した相手に胸躍らせてるのはどうかと思うんだけど」

「ゆんゆんも紅魔族の端くれなら興奮しないわけがありません! ま、まさかゆんゆんが犯人……!?」

「めぐみんのバカ! そんなわけないでしょ!!」

 

俺のことを無視して話す二人に向けて、俺は咳払いをする。

視線が自分に集まっているのを感じながら、俺はベッドの横にある椅子に移動し、ゆっくりと腰を下ろし、顎に手を当てて組んだ。

 

「……俺、あの義賊に殺られたわけじゃなくて真犯人は――」

「悪魔ね! 絶対悪魔よ!」

「アクアは黙っててください! それでカズマ、真犯人は一体……!?」

「…………うん、悪魔です、はい……」

 

悪魔という言葉が出た瞬間、部屋の空気は一斉に重くなった。

めぐみんは興奮で震えているが、ゆんゆんは青ざめ、ダクネスは手を強く握りしめている。

俺はというと決めゼリフをとられて悲しみにうちしがれた。

代わりにアクアは胸を張って仁王立ち、水を得た魚のように鼻高々に話し始めた。

 

「ふふん、やっぱりね! なんだかカズマのどぎつい匂いでわかりにくかったけど、この部屋から悪魔臭がすると思ったのよね! でもこのひどい匂いの中でも悪魔臭がわかるってことは相当高位の悪魔か、もしくは長い間この部屋のどこかに潜んでたみたいね」

「俺の匂いがどぎついとか言うなよ、俺の体臭がヤバいみたいだろ! 言い直せよ!」

「で、でも本当なのよ!」

 

別にそこは信じてるから!

ただ、俺の匂いが凄すぎて悪魔の匂いをカモフラージュしてるとかいう言い方はやめてほしいだけだから!

 

「その悪魔がカズマさんのことを……」

「まさか悪魔が真犯人だとは。確かにあの惨状は人間が作り出せる域を超えている残酷さがありましたが、義賊なんかより相当やばい敵が出てくるだなんて思ってもみませんでしたよ」

 

ゆんゆんが口元を押さえて震え、めぐみんは顔をしかめ俯いて、ダクネスは悔しさと怒りが入り混じったような複雑な表情を浮かべている。

アクアは早くも浄化の準備をしようとしているし、皆が俺の言葉を信じてくれたことで、ようやく部屋に落ち着いた緊張が漂い始めた。

悪魔が潜んでいたという事実だけでも十分に厄介だが、逆に正体がわかったことで次の行動が取りやすくなる。

 

「高位の悪魔なら我が爆裂魔法の出番でしょう。さっきカズマが寝ている間に爆裂してきたばかりなので今来られたら困りますが……」

「私を忘れないでね? 私の退魔魔法なら公爵だろうが何だろうが当たれば一撃で沈めてやるわ」

 

俺が倒れてる間に何してんだよめぐみんは。

というか、めぐみんが爆裂魔法撃ったってことはゆんゆんも共犯か!

俺のこともう少し心配しろよ!

あとアクアは血気盛んすぎるだろ、一撃で沈めるって……

まあ、そんなふうに作戦会議っぽい空気が流れていた――その時だ。

 

「すまない! 義賊を捜索したが、すでに王都のどこにも姿はなかった!」

 

部屋のドアが勢いよく開き、慌てた足音とともにアルダープが飛び込んできた。

息を切らし、髪は乱れ、明らかに寝ずに走り回っていたであろう様子。

だが、俺の姿が視界に入っていないらしく、ドアを背にしたまま必死に報告し始めた。

どうやら俺が生きている事実だけはまだ届いていないようだ。

 

「兵士たちにも人相書きを渡し、包囲は万全! ま、まさか貴殿の敵を取り逃がしてしまうとは……無念だ!」

「アルダープさん」

「必ず捕まえる! 時間の問題だ! サトウカズマというベルゼルグ王国の英雄を殺した殺人鬼を一刻も早く――」

「アルダープさんってば」

 

ようやくアルダープの視線がこちらに向いた。

そして俺と目が合った瞬間、時間が止まったように固まる。

次いで顔がみるみる青ざめ、口がぱくぱく開閉し……。

 

「な、な、なんで生きてるんだ!? も、もしやゴースト……!?」

「ひどっ!? いや、それもそうなるか。アクアが蘇生魔法で生き返らせてくれたんですよ」

「そ、蘇生魔法……? そ、そんな、しかし貴殿は確かに息の根を……!」

「ちゃんと今こうして生きてるから安心していいですよ。アクアの魔法はまあそこそこ優秀で――」

「それなりじゃないわよ!? もっと心の底から、自信持って褒めなさいよ!!」

 

アルダープは脂汗をかきながら顔を引きつらせていた。

……かと思いきや、次の瞬間には汗を拭い、険しい顔で背筋を伸ばし、職務モードに戻っていた。

 

「い、いやー、よ、よかった! よ、よかったですなカズマ殿! ダスティネス様も泣いておりましたので、生き返ってくれたのであれば、うん、実によかった!」

「あ、アルダープ殿! 私は泣いておりませんのでそのようなことを言うのはやめていただきたく!」

「すみませんな。しかし、カズマ殿が生きているとは言え――義賊が殺人を犯したことに変わりはないのです。我々はこのまま調査を続行させ――」

「待ってくれ! 俺、義賊に殺されたわけじゃないんです! 悪魔だ! 悪魔に殺されたんだ!」

 

俺はアルダープさんに待ったをかける。

このまま義賊の調査をするのも大事だろうが、あいつらのことは大丈夫だ。

それよりも得体の知れない悪魔の方を調査した方がいい。

しかしアルダープさんは……

 

「な、何を……い、生き返った反動で記憶があやふやなんだろう! 今はゆっくりと休んで……」

「違うんです! 真犯人は義賊じゃなくて悪魔なんですよ!」

「落ち着くのだ、貴様は混乱しているのだ! 生と死の境をさまよった者にはよくあることだ!」

「でも、本当に悪魔なんで――」

「ま、まずは休め! 異常がないか確認を!」

 

俺のことを心配してくれてるのはわかるが、重要なのは悪魔の存在だ。

俺が襲撃された場所は元々アルダープさんの寝室だ。

思うに、ということは本来ならアルダープさんが襲撃されていた可能性だってあった。

そういう危険性を説明しようとしても、アルダープさんは一向に聞こうとしない。

いよいよ俺が説明を聞くことなくアルダープさんが部屋を出ようとした……そのときだった。

ダクネスがアルダープの肩を掴んだのだ。

 

「アルダープ殿。カズマは混乱していない。本当に悪魔がいたんだ」

「な、何を根拠に……」

「そうよ! 私の女神センサーが言ってるんだから間違いな「アクアは黙っていろ」何でよおおぉぉおお!」

 

説得しようとするダクネスとアクアの声を、アルダープは頑なに受け付けない。

どうやら義賊を捕まえられなかった焦りと責任感で、視野が狭くなっているらしい。

そして最後には顔を伏せ、悔しげに唇をかみしめながら――。

 

「……へましおって……!」

「は?」

「な、なんでもない! し、失礼する!」

 

吐き捨てるように言うと、アルダープは足早に部屋を出ていった。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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